著者
尾内 一信
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.11, pp.2117-2119, 2016-11-10 (Released:2017-11-10)
参考文献数
1

日本人の海外渡航者は毎年1,600万人を超え,その中でもアジアなど発展途上国への渡航者が増えている.また,発展途上国での滞在期間が延び,日本ではあまり経験しない熱帯病などの感染症に感染する機会が増えている.日本人の渡航者は,欧米人に比べて海外渡航時の体調不良には無関心であり,準備不足であるので,海外での感染症に罹患するリスクについてさらなる啓発が必要と思われる.

1 0 0 0 OA 12.筋無力症

著者
松本 英之 宇川 義一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.8, pp.1994-2000, 2013-08-10 (Released:2014-08-10)
参考文献数
10
被引用文献数
3 3

重症筋無力症では抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体の他に,筋特異的チロシンキナーゼ(MuSK)抗体が発見され,その抗体の種類により臨床像が異なることが判明した.また胸腺摘出術のメタ解析で有効性が証明されず,また治療の選択肢が増加しており,治療方針が大きく変化している.Lambert-Eaton筋無力症候群は,肺小細胞癌などの悪性腫瘍の治療の進歩により,症状の改善が期待されるようになっている.
著者
高後 裕
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.9, pp.2412-2424, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
56
被引用文献数
1
著者
斉藤 喬雄 佐藤 博
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.82, no.11, pp.1797-1801, 1993

重症の高血圧による急速な腎機能の低下は,悪性高血圧の症状の一つとして重要である.重症の本態性高血圧でコントロールがきわめて不良なため悪性腎硬化症を呈する場合,全身性進行性硬化症や結節性多発性動脈炎など膠原病に伴う場合,内分泌性あるいは腎性高血圧などの場合でこのような状態が生じることがあるが,さまざまな降圧薬の開発や基礎疾患に対する早期診断や治療により,その頻度は減少しつつある.
著者
服部 理男
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.608-621, 1959

鉄剤が人体に投與された際の鉄の處理様式殊に鉄剤受容者側の状態が如何なる影響を鉄剤の處理に及ぼすかについて檢討した. 筋注鉄剤を血清に添加し, その前後で血清不飽和鉄結合能 (UIBC) を測定すると, UIBC値は不変で從つて筋注鉄剤は血清それ自体に対しては安定であり, トランスフェリンに鉄が直接移行する事はない. この事実は又濾紙電気泳動による実驗結果からも推定された. 種々の段階にある貧血患者群及び対照群にデキストラン鉄100mgを靜注し, 鉄剤の處理態度を比較すると, 血漿鉄の消失度は各群共ほゞ同一であるが, 注射後におけるUIBCの減少率は, 各群間に差が認められ貧血の強い群では他の群に比較し, 注射後血清鉄結合能の飽和される傾向が著明に少ない. 又他の各群間にもそれぞれ特徴あるIBCの飽和度の推移が觀察された. 又鉄剤投與時の副作用を報告し, 急性鉄中毒により起こつた副作用である事をUIBC値の完全飽和の事実から推定した.
著者
寺嶋 淳
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.11, pp.3154-3161, 2012-11-10
参考文献数
10

イノシシなどの野生動物の肉を生食して寄生虫疾患に罹患することがあるが,近年では,食肉用家畜の食肉を生食することによるカンピロバクター,腸管出血性大腸菌などの細菌感染症が発生している.腸管出血性大腸菌感染症では溶血性尿毒症症候群や脳症で死亡することもある.また,馬肉の住肉胞子虫による食中毒や豚レバー刺しによるアジア条虫症も報告されており,肉の生食による危険性を十分に認識しておかねばならない.<br>
著者
森田 昂 岡田 隆道 大賀 辰次郎 加納 正 岡田 弘
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.397-403, 1979
被引用文献数
1

系統的アミロイド症を伴つた骨髄腫に2種の癌を併発した希な症例を経験した.またこの例は6年前の喉頭癌の手術時にすでに単クローン性γ血症をみとめ,その後次第にM成分量の増量と共に骨髄腫の病像を完成した点でも興味がもたれた.症例: 70才,男性. 64才時に喉頭の扁平上皮癌で摘除をうけ,癌周囲組織に形質細胞浸潤が目立つた.血清総蛋白7.8g/dl中fast γ域に1.8g%のM成分を認めたが放置. 5年後心不全症状で緊急入院.血清総蛋白10.4g/dl中IgG-λ型のM成分が3.7g%を占めたが,この時期では尿BJ蛋白は陰性.骨髄中の形質細胞は未熟型のものも含めて4.8%で,骨髄腫の診断を確定しえなかつた.その後右足にBowen病を発症し,その切除標本の癌周囲組織には形質細胞浸潤はなかつた.入院7カ月後に至つてBJが出現,すなわちBJ escapeがみられ,さらに血清蛋白M成分の漸増と正常γ-glの著減,骨髄中異型形質細胞の著増をみとめて骨髄腫と診断した. prednisolone, cyclophosphamideの併用治療を開始し著効を見たが,心不全が増強し死亡した.剖検により全身諸臓器の骨髄腫細胞浸潤と,心,肝,脾,腎,副腎などにアミロイド沈着が認められた.本例の検討を通じて単クローン性γグロブリン血症と癌の関係,骨髄腫・アミロイド症・癌の複雑な合併にみられる免疫学的背景,骨髄腫の自然史などについて考察した.なお, Bowen病は種々の悪性腫瘍を合併するが骨髄腫を合併した報告例はない.本例が最初である.
著者
吉田 俊治
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.10, pp.2490-2496, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
7

サルコイドーシスは非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を呈する原因不明の多臓器疾患である.皮膚の遅延型過敏反応が抑制され,病変部位でのCD4/CD8比が増加する.血清ACE活性やガリウムの取り込みの増加などもみられる.関節炎で最も高頻度に見られる急性型は大関節に好発し軟部組織の腫脹がみられるが,骨変化はない.多くは自然治癒するが,潜行性発病例,特に多臓器に肺外病変のある例は慢性に進行し,副腎皮質ホルモンの治療は症状を改善させる.
著者
永山 寛 片山 泰朗
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.8, pp.2212-2218, 2012 (Released:2013-08-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

神経疾患と関連する肝胆膵・消化管疾患として,ここでは肝性脳症に関連した2疾患,Wilson病,IgG4関連神経疾患を取り上げた.前三者は古くから認識されている疾患であるが様々な面で進歩もみられるので,病態や分類,臨床的特徴,治療を最近の知見を含めて改めて把握したい.IgG4関連神経疾患はこれから症例の蓄積や知見の整理が期待されるが,病理学的概念も合わせてその特徴を知っておくべき疾患である.
著者
斎藤 清二
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.92, no.10, pp.2053-2058, 2003-10-10
参考文献数
12
被引用文献数
2

近代医学は生物科学的側面を過剰に重視するあまり,患者の心理社会的側面を含む全人的な配慮をおろそかにしてきた.このような近代医学の偏りを補償するムーブメントの一つとして, Narrative Based Medicine (NBM:物語りに基づく医療)が提唱され,注日を集めている. NBMは,ポストモダンなパラダイムである社会構成主義をその理論的背景とし,人類学,社会学,心理学などの関連領域との学際的な連携をその特徴とする.一般医療におけるNBMの特徴は, 1)個々の患者の病いの体験と人生についての物語りの尊重, 2)語り手としての患者の主体性の尊重, 3)医療における多元性の尊重, 4)非因果論的観点の重視, 5)治療としての対話の重視,などにまとめられる.また, NBMとEvidence Based Medicine (EBM)とは,互いに補償しあう,患者中心の医療実践のための車の両輪的方法論であると言える.
著者
島倉 淳泰 高田 正信
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.2, pp.335-343, 2013 (Released:2014-02-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

動脈硬化症の診断に用いられる血管機能検査には心臓足首血管指数(CAVI),脈波伝播速度(PWV),足関節上腕血圧比(ABI)がある.CAVIとPWVは血管の硬さを表す指標であるが,PWVは測定時の血圧の影響を受け,CAVIは血圧の影響を殆ど受けない.CAVI,PWVともに高血圧,糖尿病,脂質異常症,メタボリックシンドロームなどの生活習慣病,虚血性心疾患,慢性腎臓病,脳血管障害の患者で上昇している.ABIは末梢動脈疾患の検出に有用であり,また異常例では心血管系リスクが高くなる.

1 0 0 0 OA AIDSと肺病変

著者
後藤 元
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.83, no.10, pp.1834-1840, 1994-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
16

呼吸器疾患はAIDSの最も重要な合併症であり, HIV感染者の65%において, AIDS初発症状は,呼吸器症状であり, AIDSの80%において,経過中なんらかの呼吸器疾患が出現する.これらは日和見感染症および腫瘍性病変から成るが,その頻度,重症度からカリニ肺炎が最も大きな問題となっている.カリニ肺炎に関する研究は,最近10年間に大きく進展し,基礎,臨床のいずれの分野においても,その内容はほぼ一変した観がある.本稿ではこうした状況を,カリニの分類学上の位置づけ,病態生理,伝播経路,診断,治療,および予防の各面から解説した.
著者
松永 卓也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.7, pp.1676-1681, 2013-07-10 (Released:2014-07-10)
参考文献数
4
被引用文献数
1

腫瘍細胞が全身に播種している悪性腫瘍性疾患のうちで,抗癌薬治療により治癒する可能性がある数少ないものの1つに白血病がある.白血病を治癒に導くためには,迅速に確定診断して適切な治療を行う必要がある.臨床症状と血算などの血液検査により白血病を疑い,確定診断は骨髄穿刺・生検試料を用いた形態学的所見,細胞化学染色所見,染色体・遺伝子所見および表面抗原所見によりなされる.
著者
舘田 一博 木村 聡一郎 山口 惠三
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.11, pp.2677-2681, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10

細菌の産生するホルモン様物質を介した情報伝達機構,クオラムセンシング(Quorum-sensing)が微生物学・感染症学・化学療法学の分野で注目されている.これはビブリオ属細菌における菌数依存的な蛍光物質産生という現象から見つかってきたシステムであるが,その後,多くの病原細菌が本機構を用いてバイオフィルム形成など様々な病原因子発現をコントロールしていることが明らかとなっている.