著者
森井 志織 鍵 裕之 桧垣 正吾
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2019年度日本地球化学会第66回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.196, 2019 (Released:2019-11-20)

福島第一原発事故により環境中に放出された放射性セシウムの形態の一つとして、不溶性セシウム粒子 (CsMPs)が放出されている (Adachi et al., 2013)。本研究では2012年春に福島県の一般市民が日常生活の中で着用した不織布製マスクに付着した放射性セシウム(Higaki et al., 2014)について、CsMPsに特に注目して分析を行い、CsMPsの経時分布の把握、事故由来の放射性セシウムの形態、放出後の再飛散などについて明らかにする。マスク1枚ずつから放射性セシウムの定量測定を行い、1 Bq以上の放射性セシウムが検出されたマスクからCsMPsを探索した。測定した結果、4枚のマスクから1 Bq以上の放射性セシウムが検出され、2019年7月現在までに2つのCsMPsがマスクから単離されている。これらの粒子は2号機由来であると考えられている。
著者
徳永 紘平 高橋 嘉夫 香西 直文
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2019年度日本地球化学会第66回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.193, 2019 (Released:2019-11-20)

福島第一原子力発電所事故によって放出された放射性ストロンチウム(Sr)は、海水中の他の元素の影響を受けやすいため従来の鉱物や樹脂を用いた処理が難しく、福島の海水を含む汚染水からの有効な除去技術は未だ開発されていない。本研究では、これら多種の放射性核種に対する新規の除去法として、バライト構造の一部をカルシウム(Ca) などの不純物で置換させ、結晶構造に不安定性を与えたバライト試料(Ca部分置換のバライト試料)を利用した、放射性Srの新しい固定化法の開発を行った。
著者
三浦 輝 栗原 雄一 山本 政儀 坂口 綾 桧垣 正吾 高橋 嘉夫
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2019年度日本地球化学会第66回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.195, 2019 (Released:2019-11-20)

福島原発事故により、放射性セシウム(Cs)を含む不溶性微粒子(Type-A)が環境中に放出された。Type-Aは134Cs/137Cs放射能比などから二号機もしくは三号機由来であると考えられている。その後、一号機由来と考えられる新たな不溶性微粒子(Type-B)が報告された。本研究では放射光X線を用いた分析により、Type-A、Type-B中に含まれるそれぞれのUの化学状態を調べることを目的とした。分析の結果、Type-B中のU粒子の大きさは数ミクロンであり、Ochiai et al. (2018) で報告されたType-A中のUを含むナノ粒子よりも大きいことが分かった。この違いはType-A中のU粒子が蒸気から生成されたのに対し、Type-Bではメルトから生成された可能性を示唆する。Type-Bにおいて、Uが検出される部分では燃料被覆管に用いられているZrも検出されることから、Type-BでもType-Aと同様にUはZrと共融混合物を形成していると考えられる。
著者
原田 耀 三村 耕一
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2019年度日本地球化学会第66回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.143, 2019 (Released:2019-11-20)

リン脂質は、現在地球上に存在しているほとんどの生命体において、細胞膜の主成分となっており、生命の起源を議論する上で欠かせない生体分子である。隕石の中には、リン脂質の材料物質を全て含むものが発見されており、そのような隕石や彗星は約40億年前には多量に地球に衝突していたと考えられている。本研究では、彗星が初期地球に衝突する際に被る高温高圧環境において、彗星に含まれるリン脂質の材料物質が化学反応し、リン脂質として初期地球に供給された可能性を検討した。彗星含有物を模擬した出発物質を反応容器に封入し、火薬銃で加速した弾丸を当てることで高温高圧を作り出す衝撃実験を行い、リン脂質前駆体であるモノグリセリドとグリセロリン酸の生成を確認した。
著者
益田 晴恵 武内 章記 石橋 純一郎 松島 健
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2019年度日本地球化学会第66回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.122, 2019 (Released:2019-11-20)

水銀は地圏では活動的な元素であり、マグマ活動と関連する熱水活動に伴って移動する。しかし、西南日本ではマグマ活動が顕在しない地域で水銀が10mよりも浅い井戸水に観察されることがある。霧島連山硫黄山で得られたマグマ水中の水銀の挙動と比較して、大阪平野の地下水中水銀の起源について考察した。マグマ水中ではヒ素がイオウと親和的に挙動するのに対して、水銀は気体になりやすい傾向が明らかであった。大阪平野では水銀検出井戸は大部分が活断層に平野周辺の活断層に沿った3ヶ所に集中して出現する。20〜30kmの深度の深部低周波地震の発生地点と水銀検出井戸出現地域が一致することと水銀同位体比から、水銀は地殻下部の脱水現象と関係していることが推定される。
著者
宮﨑 雄三
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2019年度日本地球化学会第66回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.13, 2019 (Released:2019-11-20)

海洋表層に由来する大気エアロゾルは雲凝結核や氷晶核として大気の放射収支や雲・降水過程に影響を与えるほか、大気-海洋間における生元素の循環にも影響を及ぼす。これまで海洋表層の微生物活動が活発な海域(亜寒帯西部北太平洋、亜熱帯東部太平洋)において、国内外の研究船による海洋大気観測を重点的に実施し、エアロゾルと表層海水中の微生物活動指標との系統的な比較など、海洋大気エアロゾルの主要成分である有機物の起源や変質過程に関わる研究を行ってきた。本講演では、上記の海域において明らかになってきた、海洋表層と大気のインターフェースにおける有機物を介した生物地球化学的なリンケージに関する研究を紹介する。
著者
北川 俊輝 河西 大悟 下内 良平 児玉谷 仁 神﨑 亮 冨安 卓滋
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2019年度日本地球化学会第66回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.259, 2019 (Released:2019-11-20)

水俣湾は1977年~1990年にかけて25 mg kg⁻¹以上の水銀を含む底質は浚渫・埋め立てが行われたが、未だにバックグラウンドの数十倍の水銀を含む底質が存在する。本研究では2013年~2018年に採取された底質中の総水銀濃度及び底質化学組成の測定を行い、排出された水銀の拡散について検討を試みた。八代海表層底質中総水銀濃度は、水俣湾に近いほど高く、遠ざかるほど低くなる傾向が見られた。底質化学組成を見ると主要成分はSiO₂、Fe₂O₃、Al₂O₃であった。SiO₂に対しFe₂O₃及びAl₂O₃をプロットすると、八代海底質ではともに正の相関が見られ、水俣湾沿岸に近い程それらの割合が高くなる傾向が見られた。水俣湾、袋湾の底質では、SiO₂に対するFe₂O₃、Al₂O₃の割合は八代海底質に比べて高く、SiO₂に対するこれらの値は八代海底質とは明らかに異なる領域にプロットされた。
著者
大場 武
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2019年度日本地球化学会第66回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.120, 2019 (Released:2019-11-20)

Giggenbach (1986)は,ニュージーランド,ホワイトアイランドの火山ガスを詳細に研究し,火山ガス(噴気)にはマグマに直接由来する成分(マグマ成分)と,熱水系に由来する成分(熱水系成分)が共存していることを発見した.Ohba et al (2019)は,箱根山で噴気を繰り返し採取し,マグマ成分と熱水系成分の比率が火山活動と相関して変動することを見出した.本論文では,箱根山における結果を中心に,マグマ成分と熱水系成分の比率の変動と,火山活動評価への応用を紹介する.