著者
益田 晴恵
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.6, pp.573-584, 2022-12-25 (Released:2023-01-12)
参考文献数
58
被引用文献数
2

The history of hot spring studies and research in Japan is reviewed mainly from the viewpoint of Earth science. Studies on the geochemistry of hot spring waters started with geochemical analyses of hot spring water in the 1830s. The relationships between the issuing mechanisms of hot springs and volcanism, active faults, and earthquakes have been studied since around 1910. These studies reveal sources and recycling paths of waters and dissolved materials in the Earth's crust and the upper mantle in relation to plate tectonics and subsequent volcanism. Microbiological studies on living organisms, such as algae, bacteria, and archaea, living in hot springs, began in the late 1880s, and have contributed to documenting the origins and evolution of life. Combined with mineralogical studies, minor and trace element analyses of hot spring water have contributed to an understanding of the formation mechanisms of ore deposits. Studies on hot spring waters triggered an understanding of the essential role of water in the Earth and its evolution.
著者
益田 晴恵
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.295-313, 2000-11-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
89
被引用文献数
3 3

地殻表層付近の水とその周辺環境におけるヒ素の挙動を概観し.ヒ素汚染地下水の形成過程を説明した.ヒ素は.一次的には地殻深部から熱水や火山ガスなどに伴って還元的な物質として供給される.それが.熱水からの直接流入やヒ化鉱物や硫化鉱物の風化作用を含む酸化的化学反応にともない.一部は環境水中へ溶出する.環境水中のヒ素は懸濁粒子に吸着されたり生物遺骸として堆積物中に固定される.堆積物中に固定された物質からの脱着反応と分解反応は地下水中の溶存ヒ素を規制する要因となる.地下での生物化学的作用もヒ素の挙動を規制する重要な要因である.各地で問題になっているヒ素汚染地下水の汚染拡大の要因は単一ではなく.さまざまな現象が組み合わさったものであることが多い.ヒ素は自然循環過程で環境基準を超える濃度を環境水中にもたらすが.人為的作用は汚染の拡大に寄与する.特に.人為的汚染物質の放出は.局所的に高濃度のヒ素汚染層を形成し.その後長期間にわたって汚染を拡散する.
著者
磯﨑 行雄 長谷川 遼 益田 晴恵 堤 之恭
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.126, no.11, pp.639-644, 2020-11-15 (Released:2021-02-15)
参考文献数
20
被引用文献数
3

Detrital zircon U-Pb ages were measured for nine non-fossiliferous sandstones from the uppermost Izumi Group, a “Late Cretaceous” forearc clastic sequence in the eastern Izumi Mountains of western Kii Peninsula, SW Japan. Seven out of nine sandstones yielded Paleocene grains. These results confirm that the uppermost Izumi Group was deposited in the Paleogene (Selandian-Thanetian or younger), extending the total depositional duration of the group to ca. 27 myr, almost double the previous estimate. The new age data raise the possibility that a stratigraphic interval across the Cretaceous-Paleogene extinction boundary may be preserved within the group. The occurrence of Paleogene strata further constrains the onset of the low-angle Median Tectonic Line to post-Paleocene.
著者
益田 晴恵
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2021年度日本地球化学会第68回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.124, 2021 (Released:2021-12-15)

地球内部に起源を持つヒ素と水銀の地質学的循環に伴って発生する地下水・土壌汚染について概説する。ヒ素と水銀は火成作用に伴って、マグマやマグマ性流体とともに地殻・水圏・大気圏に移動する。ヒ素は新生代堆積物にも深刻な汚染が発生してきた。降下火山灰と流域母岩に含まれる熱水性・マグマ性のヒ素含有鉱物の溶解が主な原因である。一方、水銀は気体として振る舞う性質が強いことから、大規模な断層に沿って土壌ガスとして地表に放出されることがある。大阪平野の境界断層である、生駒断層・上町断層・内畑断層系の直近で、水銀を含む浅層地下水や土壌中での水銀の濃集が観察される。水銀汚染地下水出現地点は深部低周波地震の震源と重なることも多い。また、和泉山脈では、MTL直近で最大の1200ppbの水銀が検出された。水銀は有馬型塩水と類似の起源を持つことが強く示唆される。
著者
益田 晴恵
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.132, no.1, pp.1-16, 2023-02-25 (Released:2023-03-09)
参考文献数
53
被引用文献数
3

Occurrences of non-volcanic hot and mineral spring waters, found in Niigata and the surrounding areas, as well as central to southern Kinki District, are documented in relation to the local tectonics to discuss on the importance of plate tectonics as sources of heat and dissolved chemical compositions in the deep groundwater/fluid cycle. Fossil seawater was altered at different temperatures, and remains as low-temperature mineral waters in Gunma Prefecture, and as oil and gas field brine and related hot springs in Niigata Prefecture and surrounding areas. One of the hot springs in Niigata, i.e., Matsunoyama Hot Spring, is known to contain geo-pressure hydrothermal water. The brines in Niigata Prefecture are heated via tectonics at the boundary between the Eurasian and North-American plates without contaminating modern local meteoric water. In the Kinki District, hot spring waters > 40°C appear only in three regions: coastal area along the Sea of Japan, Arima and surrounding area of Osaka Basin, and southern part of Kii Peninsula. In this area, mantle-derived fluids, such as He and CO2, are upwelling with slab-derived saline waters from the subducting Philippine Sea Plate. Non-volcanic hot spring waters occasionally give the important information on heat and energy cycles at the plate boundaries, as well as valuable information for understanding the mechanisms of inland earthquakes related to the deep-fluid movements.
著者
益田 晴恵 三田村 宗樹 ファルーキ アビダ
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2007年度日本地球化学会第54回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.71, 2007 (Released:2008-01-18)

パキスタン・パンジャブ地方には,高濃度のフッ素とヒ素の汚染地下水に伴う健康被害が知られている。これらの汚染物質の移動には,硫酸イオン・リン酸イオンを伴うことがある。また,土壌からはトリフルオロ酢酸が抽出された。これらの観察事実から,フッ素の原因物質は肥料>工場排水>大気汚染物質であり,ヒ素の汚染物質は大気汚染物質>工場排水>肥料(農薬)であると推定された。地下水浸透に伴って,汚染物質は被圧帯水層へ移動する。このとき,帯水層下部の形状が汚染の拡大にとって本質的な役割を担っている。すなわち,帯水層下部の傾斜に沿って埋没河川に流入し,この埋没河川に沿って汚染物質は水平移動する。
著者
益田 晴恵 武内 章記 石橋 純一郎 松島 健
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2019年度日本地球化学会第66回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.122, 2019 (Released:2019-11-20)

水銀は地圏では活動的な元素であり、マグマ活動と関連する熱水活動に伴って移動する。しかし、西南日本ではマグマ活動が顕在しない地域で水銀が10mよりも浅い井戸水に観察されることがある。霧島連山硫黄山で得られたマグマ水中の水銀の挙動と比較して、大阪平野の地下水中水銀の起源について考察した。マグマ水中ではヒ素がイオウと親和的に挙動するのに対して、水銀は気体になりやすい傾向が明らかであった。大阪平野では水銀検出井戸は大部分が活断層に平野周辺の活断層に沿った3ヶ所に集中して出現する。20〜30kmの深度の深部低周波地震の発生地点と水銀検出井戸出現地域が一致することと水銀同位体比から、水銀は地殻下部の脱水現象と関係していることが推定される。
著者
土岐 知弘 中屋 眞司 新城 竜一 新垣 典之 原 由宇 満留 由来 安村 幸真 大嶋 将吾 益田 晴恵 井尻 暁
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2021

<p>竹富海底温泉のホウ素同位体比と,竹富島掘削試料のホウ素同位体比をそれぞれ測定したところ,150℃程度で平衡に達している可能性があることが明らかとなった。SF6濃度から滞留時間は20年程度。水の同位体比からも,地下水と深部流体が混合したリザーバーの存在が示唆された。</p>
著者
益田 晴恵
出版者
日本温泉科学会
雑誌
温泉科学 (ISSN:00302821)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.203-221, 2011-12-28
参考文献数
51
著者
安元 純 野崎 真司 中屋 眞司 益田 晴恵 細野 高啓 土岐 知弘 新城 竜一
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.65, 2018

<p> 本報では、環境トレーサや数値シミュレーションを用いて、琉球石灰岩地域の地下水の流動特性、滞留時間及び水質形成機構、さらに、同地域の沿岸域でみられる海底湧水の湧出速度や栄養塩濃度に関する研究成果を報告すると共に、今後の熱帯・亜熱帯島しょ地域における統合的水資源管理の在り方について考察する。</p>
著者
淵田 茂司 水野 友貴 益田 晴恵 土岐 知弘
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.27, 2013 (Released:2013-08-31)

アミノ酸およびその高分子体は海洋における有機炭素の主要なリザーバーとして,生物地球化学サイクルの中で重要な役割を果たしている。本研究では,南部マリアナトラフ付近から採取した熱水中に含まれるアミノ酸量を測定し,熱水循環に伴うアミノ酸の挙動について考察した。200℃以上の高温の熱水からは,10 μM以上の加水分解性アミノ酸が検出されたが,50℃以下の低温の熱水および海水では1 μM以下で,アミノ酸の濃度は一貫して低かった。一般的に,アミノ酸等の有機分子は温度の上昇に伴不安定となるが,今回,高温の熱水ほどアミノ酸の濃度は高くなった。生物由来のアミノ酸を含む岩石や堆積物と高温の熱水が反応することで,アミノ酸の溶出が促進されているのであろう。
著者
中屋 晴恵(益田晴恵) 三田村 宗樹 奥平 敬元 篠田 圭司 西川 禎一 隅田 祥光
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

アジア諸国で拡大しつつあるヒ素汚染地下水の形成機構を研究した。バングラデシュの調査では,ヒ素を含む緑泥石が完新世の帯水層上部で化学的風化作用により溶解してヒ素を地下水中に溶出させていることを明らかにした。パキスタンやベトナムの調査でも整合的な結果が得られた。ヒ素を含む酸水酸化鉄が還元により分解されるとした定説を翻し,この観察事実はヒ素汚染地下水形成の最初期の過程として一般化できる。