著者
川崎 拓郎 村尾 修 諫川 輝之 大野 隆造
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.4_263-4_277, 2012 (Released:2012-09-28)
参考文献数
12
被引用文献数
3

本研究では、沿岸部住民の津波避難行動に着目し、2008年と2011年の2度にわたって千葉県御宿町を対象とした避難行動に関するアンケート調査を実施した。そして、想定津波および東日本大震災直後の避難経路についての空間的な比較分析を行い、(1)標高、(2)海岸線からの距離、(3)想定浸水域内の残存者数の観点から考察した。その結果、実際の避難行動における多様性、自動車による避難行動の多さ、避難距離の長さ、浸水域に留まる事例の多さ、などが明らかになった。
著者
藤生 慎 沼田 宗純 高田 和幸 松原 全宏 大原 美保 目黒 公郎
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.4_177-4_188, 2012 (Released:2012-09-28)
参考文献数
8
被引用文献数
2

本研究では、東北地方太平洋沖地震時に発生した帰宅困難者に対してwebアンケートを実施し、帰宅困難者の基礎特性や帰宅経路などを明らかにした。その結果を集計したところ、火災の危険性や建物の倒壊の危険性が高い地域を経由し帰宅行動がなされていることが明らかになった。また、帰宅困難者を被災地内(都心)で受け入れるための施設の在り方の検討を行った結果、病院では、帰宅困難者が多数発生する一方、出勤困難者に対する対応も必要であることが明らかとなった。
著者
岩城 麻子 藤原 広行
出版者
JAPAN ASSOCIATION FOR EARTHQUAKE ENGINEERING
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.4_1-4_18, 2013

広帯域地震動計算のために実用的に広く用いられるハイブリッド合成法においては、低周波数側と高周波数側の地震動がそれぞれ差分法等による決定論的地震動計算手法と統計的グリーン関数法に代表される半経験的・統計的手法によって別々に計算される。このとき低周波数側と高周波数側でそれぞれ全く独立のデータと手法を用いて合成されることになるため、時刻歴波形の経時特性まで含めて両者の整合性を保つことは困難である。本稿では、周波数帯間の地震動特性の関係に着目し、低周波数地震動が持つ情報を利用して高周波数地震動を合成する手法を提案し、関東地域において適用性を検討した。観測地震記録に基づいて各評価地点における加速度エンベロープの経時特性の周波数帯域間の関係性を抽出し、その特徴を関係式として整理した。求められた経時特性を基となる低周波数地震動に掛け合わせ、適当な位相情報を与えることにより高周波数地震動の合成が可能であることを示した。
著者
境 有紀 青井 淳 新井 健介 鈴木 達矢
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.4_14-4_53, 2010 (Released:2011-11-09)
参考文献数
10
被引用文献数
3 5

2008 年岩手・宮城内陸地震を対象として,道路事情により調査できなかったものを除く震度6 弱以上を記録した全ての強震観測点と5 強を記録した一部の強震観測点周辺の被害調査を行った.その結果,いくつかの観測点周辺で外壁のひび割れや外装材の落下,屋根瓦のずれといった軽微な建物被害は見られたが,いずれの観測点周辺でも,大破・全壊といった建物の大きな被害はなかった.観測された強震記録の性質について検討した結果,そのほとんどが0.5 秒以下の極短周期が卓越した地震動で,建物の大きな被害と相関をもつ1-2 秒応答は小さく,このことが大きな震度にもかかわらず建物の大きな被害が生じなかった原因と考えられる.
著者
久田 嘉章 久保 智弘 松澤 佳 松本 俊明 田邉 朗仁 森川 淳
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集
巻号頁・発行日
vol.12, pp.4_104-4_126, 2012
被引用文献数
1

2011年東北地方太平洋沖地震の広義の余震と考えられている2011年福島県浜通り地震(Mj7.0)では、大規模な地表地震断層が出現し、多大な建物被害が発生した。この地震は正断層の活断層帯の地震であるが、周辺で観測された強震動や距離減衰式による検討から、逆断層の地震と比べて特に地震動が弱くはなかったことを確認した。さらに、地表地震断層と震源近傍の強震による建物への影響を調べるため、地表断層のごく近傍において建物の悉皆調査を行い、191棟の建物被害の特徴を整理した。その結果、建物の大きな被害は地表断層の直上による地盤変状(断層すべりや地盤傾斜)に起因し、強震動による甚大な被害は殆ど無く、断層の近傍で推定される震度も6弱から5強程度であることが分かった。また地表地震断層の直上の建物では、最大で80 cmにも達する断層すべり変位の影響により、大きな変形や傾斜による被害が生じたが、耐震性に劣る1棟の寺院の山門を除き、倒壊した建物は無かった。