著者
片岡 俊一 山本 博昭
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.110-129, 2007
被引用文献数
5

本研究では、青森県東方沖の地震を対象に、KiK-net の地中観測点の記録を回帰分析し、その値に対して、震度情報ネットワーク、K-NET、KiK-net の地表観測点の地震動指標 (最大加速度、計測震度) がどの程度増幅されているかを求めた。得られた結果に対する統計的評価を行い、さらに実測値との比較、1994 年三陸はるか沖地震の際のアンケート震度との比較を行った。これらを通して、本研究で得られた増幅度の妥当性を示した。
著者
久田 嘉章 野田 五十樹 松井 宏樹 久保 智弘 大貝 彰 村上 正浩 座間 信作 遠藤 真 柴山 明寛 市居 嗣之 関澤 愛 末松 孝司 山田 武志
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.130-147, 2009
被引用文献数
1

本研究では、震災直後を想定し、地域住民と自治体との協働による速やかな被害情報の収集・共有を可能とする体制作りを行い、「まちなか発災対応型訓練」(町内に被災状況を模擬的に構築して行なう発災対応型訓練)を活用した震災対応力の向上と同時に、住民・自治体間の情報共有を可能とする防災訓練を実施した。協力頂いたのは愛知県豊橋市であり、住民・市職員による協働体制を構築するために、地域点検マップを作成する防災ワークショップと防災訓練を行なう活動を2005~2006年に実施した。地域点検マップによって地域の地震防災上の現況を把握し、実状に即した発災対応型の防災訓練を企画した。さらに防災訓練では、まず住民による「まちなか発災対応型訓練」を行い、その後で校区の避難所を拠点として地域被災マップを作成し、市の災害対策本部へ速やかに伝送した。一方、対策本部では市全域の被災像を把握し、延焼・避難・交通シミュレーション結果などから住民へ避難勧告の発令など、重要な情報を市から住民に伝達する訓練を行った。さらに自治体担当者を主とする訓練参加者にアンケート及びヒアリング調査を実施し、協働体制および訓練の有効性と今後の課題を確認した。
著者
先名 重樹 小澤 京子 杉本 純也
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.2_90-2_108, 2021

<p>2011年東北地方太平洋沖地震では大規模で甚大な被害をもたらした液状化が発生したが,それ以降も,2016年熊本地震や2018年北海道胆振東部地震など,最大震度7を観測し,広い範囲で震度5強以上の強い揺れに見舞われ多くの地域で液状化が発生した.本研究では,詳細な航空写真画像による液状化判定が可能で,震度6弱以上を観測した,2011年東北地方太平洋沖地震,2016年熊本地震,2016年鳥取県中部の地震,2018年大阪府北部の地震,2018年北海道胆振東部地震の5つの地震の液状化発生地点の情報に基づき,4分の1地域メッシュ(以下,250mメッシュと呼ぶ)単位に基づく液状化発生率や250mメッシュ内の液状化面積を考慮した液状化面積率を推定し,液状化発生率と面積率の積による液状化危険率の推定式を提案した.</p>
著者
山田 真澄 溜渕 功史 WU Stephen
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.4_21-4_34, 2014 (Released:2014-08-25)
参考文献数
19
被引用文献数
3

現在、気象庁が用いている緊急地震速報の処理には、気象庁の観測網を利用する処理と、Hi-netのデータを用いた着未着法の2つの処理系統がある。これらは独立して行われ、それぞれ計算結果を比較して緊急地震速報に使用している。本研究では、より高精度、高速の緊急地震速報を実現するため、気象庁観測網とHi-netの統合処理を検討する。我々は、Hi-net 速度計に帰納的な方法で機械補正及びハイパスフィルタ処理を行い、気象庁の機械式地震計の応答と揃えた。また、Hi-net速度計が飽和する問題についても検証し、震央距離10km、深さ10kmの場合マグニチュード5.2程度まではP波が飽和せず使用可能である事を示した。Hi-netの地震計データは、適切なフィルタ処理により気象庁の地震計データと併用することが可能である。2つの観測網の統合処理によって、内陸部では平均3.6秒ほど警報発表時間が向上する。
著者
津野 靖士 明田川 保 山中 浩明 翠川 三郎 山本 俊六 三浦 弘之 酒井 慎一 平田 直 笠原 敬司 木村 尚紀
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集
巻号頁・発行日
vol.12, no.5, pp.5_102-5_116, 2012
被引用文献数
7

2011年東北地方太平洋沖地震の本震と余震の強震記録を用いて、首都圏および周辺地域に於ける周期2秒以上の地震動特性とサイト増幅特性を評価した。約650点の本震記録を用いたPGVとPGAから地震動が首都圏で複雑な分布を示すこと、擬似速度応答スペクトル分布から川崎~品川付近の東京湾沿岸部で周期2秒と3秒の速度応答が極めて大きいことが分かった。地表/地中の速度応答スペクトル比から算出したサイト増幅特性は、周期3秒以上の地震動に対して震源の位置に依存し、首都圏およびその周辺地域では東北地方の地震よりも長野県北部や静岡県東部の地震による地震動が大きく増幅されることが分かった。
著者
山田 真澄 山田 雅行 福田 由惟 スマイス クリスティン 藤野 義範 羽田 浩二
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1_20-1_30, 2012 (Released:2012-02-22)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

我々は、2011年長野県北部の地震(Mj6.7)の震源域で木造建物の全棟調査及び高密度の常時微動計測を行った。木造住家の全壊率は、長野県栄村の青倉地区と横倉地区で30%を超えており、観測記録の得られている森地区では10%以下であった。また、震源近傍で得られた地震観測記録と常時微動記録から青倉地区と森地区での強震時の地震動を推定した。推定された地震動は、地区の中の揺れやすさを反映することができ、その特徴的をとらえた分布を示した。推定した地震動(PGA, PGV)と木造建物被害率との相関は概ね良く、被害分布と矛盾しない地震動分布を推定できたことを示している。本研究で求められた被害率曲線では、150cm/sを境にして木造建物の倒壊率が急増し、倒壊率が半数を超える結果が得られた。
著者
若松 加寿江 先名 重樹
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.2_124-2_143, 2014 (Released:2014-05-23)
参考文献数
42
被引用文献数
2 1

本論文は、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震によって東北地方に発生した液状化とその被害、および液状化地点の土地履歴、微地形区分について述べている。東北地方で液状化が確認された市区町村は、東北6県63市区町村に及んだ。最も液状化が多く発生したのは、宮城県、次いで福島県、岩手県である。青森県、秋田県、山形県でも局所的に液状化被害が起きた。液状化発生地点は、北上川、鳴瀬川、吉田川、江合川、阿武隈川などの大河川の沿岸に集中していた。東北地方は、関東地方に比べて埋立地が少なく、海岸部は津波で浸水したこともあり、埋立地で確認された液状化は少なかった。仙台市では丘陵地帯の造成宅地の谷埋め盛土部分での液状化被害も多かった。宮城県の大崎平野には池沼の干拓地が多く存在するが、これらの旧池沼には液状化の発生は確認されなかった。
著者
山崎 泰司 瀬川 信博 石田 直之 鈴木 崇伸
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.5, pp.5_55-5_68, 2012 (Released:2012-11-07)
参考文献数
15

本論文は、東日本大震災に際し、日本電信電話株式会社における電気通信土木設備の被災状況を報告するとともに、被災状況の傾向分析により、これまで実施してきた耐震対策の有効性を確認したものである。阪神淡路大震災と比較した場合、津波被害を除く地震動及び路面変状等による被災率は、東日本大震災の方が低い傾向にあることが確認できた。また、今後予想される首都直下型地震、東海・東南海・南海地震を想定した耐震対策については、公開されている地盤情報に基づき被災しやすい箇所を想定することが可能であることが確認できた。
著者
正月 俊行 翠川 三郎
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.6_1-6_11, 2015 (Released:2015-11-25)
参考文献数
13
被引用文献数
1

長周期地震動により超高層建物で大きな揺れが発生すると、家具が大きく滑動して周囲の家具や壁と激しく衝突し続ける危険な状態が生ずる可能性がある。このような室内被害と床応答の大きさの対応関係を明らかにしておくことは被害軽減策を考える上で重要であるが、大きな変位の揺れに対して複数の家具や壁の衝突等を考慮した上で、定量的に検討した研究はみあたらない。そこで、超高層住宅の一部屋を想定して家具群の地震時挙動をシミュレーションして室内被害を予測し、室内被害の様相と床応答加速度の大きさの対応関係について整理した。その結果、1次モードの揺れが卓越する超高層住宅上階では、i) 床応答加速度が200cm/s2程度以下の場合はほとんどの家具は動かず、ii) 200~300cm/s2程度になると背の高い家具が倒れ始め、iii) 300~450cm/s2程度では、転倒した家具も含めて多くの家具が滑動するが、滑動量は小さく、部屋のレイアウトもあまり崩れないのに対し、iv) 450 cm/s2程度以上になると、固定されていない家具は周囲の家具や壁と激しく衝突しながら滑動する危険な状況が長時間続く結果となった。また、シミュレーションと簡易な室内被害評価手法の結果を比較し、想定する床応答加速度が大きな場合は、簡易な手法による評価結果が過小となることも指摘した。
著者
山田 雅行 小田 義也
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1_59-1_76, 2018

<p>本論は日本の12の主要活断層帯を対象として,P波の減衰特性の推定と活断層の特性との関係を考察したものである.減衰特性の推定においては,活断層をまたぐ観測点ペアと遠方の地震に対して二重スペクトル比法を適用し,震源特性,活断層近傍までの伝播経路特性,そして,サイト増幅特性を除去した.推定された減衰特性は12の活断層でそれぞれ異なっていた.減衰特性の違いについて考察した結果,断層破砕帯の大きさとの相関は見られなかったが,その一方で,地震後経過率とは明瞭な正の相関を示した.このことは本論で推定した減衰特性が活断層の応力状態,すなわち地震発生の切迫度を反映している可能性が考えられる.</p>
著者
戸松 誠 岡田 成幸
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.2_1-2_19, 2011 (Released:2012-01-24)
参考文献数
24
被引用文献数
3

本研究は活断層による都市直下地震を対象に、36パターンの断層パラメータを設定して実施された複数の被害評価結果に基づき、自治体が最優先すべき想定地震を決定するための手法を提案するものである。防災対策項目を構造化し、防災対策を実施する自治体関係部局に対して、階層分析法(AHP:Analytic Hierarchy Process)を応用し防災対策項目の重要度評価を行う。さらにこの重要度と複数の被害評価結果を用いて、複数の想定地震の優先度を求め、優先地震を決定する。
著者
中村 亮一 鶴岡 弘 加藤 愛太郎 酒井 慎一 平田 直
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1_1-1_12, 2020 (Released:2020-01-31)
参考文献数
15

関東地方には約300点の加速度計から構成される高密度なMeSO-netが展開されており,2008年から連続波形記録が蓄積されている.これら高密度観測記録を用いることで,より高分解能の三次元減衰構造を求めることができることが期待される.ただし,各地震計は地中約20mの深さに設置されており,観測波形記録には地表からの反射波の影響が含まれると考えられるため,これらの影響を考慮してゆく必要がある.そこで,まず波形記録のスペクトルに現れる特徴を調べた.その結果,地中設置のためスペクトルに谷が形成されていることが確認できた.次に,MeSO-netとK-NET及びKiK-net記録を用いた三次元Q値とサイト増幅特性の同時インバージョンを行い,地中設置による地盤増幅特性への影響について解析を実施した.ここで,地盤増幅は卓越周期からグループ化し,それぞれのグループで同じ増幅をもつと仮定する手法であり,K-NET及びKiK-netの地表観測地点は8グループに分け,MeSO-netの地中記録は,それとは別の2グループに分けた.その結果,減衰構造は先行研究と整合した結果が得られた.地中設置の場合でも,その増幅率を適切に考慮することにより減衰構造を求めることができることを確認した.また,平均的にみて地中記録の増幅特性は地表の岩盤サイトに類似しており,地表の地盤の差異による影響に比べて小さいことがわかった.
著者
村田 幸一 宮島 昌克
出版者
JAPAN ASSOCIATION FOR EARTHQUAKE ENGINEERING
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.27-42, 2007 (Released:2010-08-12)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

水道供給システムでは, 地震が発生した直後, システムに物理的なダメージが無くても急激な流量増加と水圧減少という異常挙動を発生することがある.この現象は一時的であるものの, 発生中は水道供給システムを機能低下させることがある.本論文では, この影響について観測結果を報告するとともに, これらの原因と考えられる受水槽のスロッシングについて, 観測データから因果関係を解明した.さらに, 大阪市で観測された地震波形を用い, 受水槽のスロッシングによる水面最大変位と地震動の振動数特性との関係を分析するとともに, 発生が予想される東南海・南海地震についても, 予測地震動を利用して水道供給システムへの影響を分析した.
著者
源栄 正人 ツァンバ ツォグゲレル 吉田 和史 三辻 和弥
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.5, pp.5_117-5_132, 2012 (Released:2012-11-07)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

本論文では、2011年東北地方太平洋沖地震で大きな被害を受けたSRC造9階建て建物を対象に、地震時とその前後における振幅依存振動特性の分析を行うとともに、実観測記録に基づく動的履歴特性を分析した。ウェーブレット解析に基づく倍調波成分の励起の確認により浮き上がり振動を起こしていたことを示唆し、被害状況とも調和することを示した。また、竣工以来40年に及ぶ微動レベルから強震動のレベルの長期モニタリングデータに基づく振幅依存振動特性について整理分析を行った。
著者
瀬﨑 陸 丸山 喜久 永田 茂
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.6_244-6_257, 2019 (Released:2019-10-31)
参考文献数
23

本研究では, 車載カメラから取得した画像から, 地震による道路被害を深層学習によって自動で抽出することを目的としている.あらかじめ目視で被害の有無を分類した教師用画像を使用し, それらを畳み込みニューラルネットワーク(CNN)で深層学習し, 画像判別モデルの作成を行った.この画像判別モデルに学習に使用していない精度評価用画像300枚を判別させたところ, 道路閉塞の判別精度は87%, 無被害の判別精度は90%と高かったが, 道路被害の判別精度は66%とやや低かった.この結果を踏まえて, 地震直後の利用を想定した条件設定を行い, 道路変状の自動抽出シミュレーションを行った.本研究の手法は地震後の道路被害の早期把握に有効と考えられ, 道路管理者の震後対応に貢献できる.
著者
星 幸男 久田 嘉章 山下 哲郎 鱒沢 曜 島村 賢太
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.2_73-2_88, 2010 (Released:2011-07-27)
参考文献数
7
被引用文献数
6 5

近年首都圏に建つ超高層建築では巨大地震に対する対策の重要性が指摘されている。巨大地震に対する被害想定や被害低減案を示すには、地震時における正確な振動性状の把握が不可欠である。本論文では新宿副都心に建つ最高高さ143mの超高層建築物である工学院大学新宿校舎を対象とした観測記録および立体フレームモデル解析結果の比較検討による振動性状の評価を示す。はじめに常時微動観測および人力加振観測より得られた固有周期およびモード形を表す変位振幅図を立体フレームモデル固有値解析結果と比較を行い両者が一致する事を確認した。続いて対象建築物の強震観測システムより得られた地震観測記録と立体フレームモデル応答解析結果との比較を行い両者が良い対応を示す事を確認した。解析に用いる減衰は人力加振観測より算出した減衰および超高層建築に一般的に用いられる、初期剛性比例減衰の2種類を用い比較検討を行った。これより初期剛性比例減衰では高次モードの減衰を過大に評価している事を確認した。さらに、モーダルアナリシスを用いた最大応答値の評価や、観測記録の振幅レベルによる固有周期の変化についても考察した。
著者
大原 美保
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.5_2-5_16, 2015 (Released:2015-10-21)
参考文献数
21

東日本大震災後以降、多くの自治体が「災害・避難情報伝達手段の多層化」に取り組みつつある。災害・避難情報伝達手段には、受信者の状況に関わらず情報を伝達可能であるPUSH型の手段と、受信者側で何らかのアクションを行わないと情報を閲覧できないPULL型の手段があり、両者の効果的な活用が必要である。本研究では、首都圏の自治体へのアンケート調査を行い、自治体におけるPUSH型及びPULL型の災害・避難情報伝達に関する現状と今後の課題に関する分析を行う。前半ではまず、自治体での各種伝達手段の利用状況を概観する。後半では、近年普及が目覚ましい携帯電話を用いた情報伝達に着目し、PUSH型の手段である緊急速報メール(エリアメール)と、PULL型の手段である住民登録型のメールサービスを比較した上で、利用状況・発信内容の違いや今後の課題を明らかにする。
著者
染井 一寛 浅野 公之 岩田 知孝 宮腰 研 吉田 邦一 吉見 雅行
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.6_42-6_54, 2019 (Released:2019-10-31)
参考文献数
33
被引用文献数
1

2016年熊本地震および一連の地震活動による熊本県および周辺177地点での強震記録に対してスペクトルインバージョン法を適用し, 震源・伝播経路・サイトの各特性を分離した.地震基盤から地表までのS波サイト増幅特性は, 平野や盆地内の観測点では他点に比べ1 Hz付近で大きな値を示した.分離した182地震(MJMA: 3.0-5.5)の震源スペクトルから推定した応力降下量には, 震源深さ依存性が見られた.また, 分離したQs値は, 0.5-10 Hzの周波数帯域でQs=73.5f0.83とモデル化された.
著者
加藤 研一 宮腰 勝義 武村 雅之 井上 大榮 上田 圭一 壇 一男
出版者
JAPAN ASSOCIATION FOR EARTHQUAKE ENGINEERING
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.46-86, 2004 (Released:2010-08-12)
参考文献数
125
被引用文献数
3 8

内陸地殻内で発生する地震を対象として、既存の活断層図等の文献による調査、空中写真判読によるリニアメント調査、現地における地表踏査等の詳細な地質学的調査によっても、震源位置と地震規模を前もって特定できない地震を「震源を事前に特定できない地震」と定義し、その地震動レベルを震源近傍の硬質地盤上の強震記録を用いて設定した。検討対象は、日本およびカリフォルニアで発生した計41 の内陸地殻内地震である。地質学的調査による地震の分類を行い、9 地震12 地点の計15 記録 (30 水平成分) の強震記録を、震源を事前に特定できない地震の上限レベルの検討に用いた。Vs=700m/s 相当の岩盤上における水平方向の地震動の上限レベルとして、最大加速度値450 cm/s/s、加速度応答値1200cm/s/s、速度応答値100 cm/s が得られた。
著者
飯田 福司 山岸 邦彰 西村 督 後藤 正美
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.2_1-2_10, 2015

木製水槽は、公共施設、病院等の重要施設で受水槽として使用されており、大地震時における機能保持は必要不可欠な性能である。しかし、木製水槽における耐震設計の研究は進んでいない。本研究では、1Gを超える水平地震動による振動実験から木製水槽の変位応答、加速度応答及び歪応答を分析した。そして、強震動時の挙動に関する実験結果から、本実験で使用した木製水槽の主要構造部材は1Gを超える水平地震動に対して、機能を損なう破壊は生じないと考えられ、地震時の安全性確認のための基礎資料を得た。