著者
境 有紀 中川 文寛 鈴木 達矢
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.4_54-4_81, 2010 (Released:2011-11-09)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

2008 年岩手県沿岸北部地震を対象として,震度6 弱以上を記録した全ての強震観測点と5 強を記録した一部の強震観測点周辺の被害調査を行った.その結果,いくつかの観測点周辺で外装材の落下,外壁のわずかなひび割れ,窓ガラスの破損といった軽微な建物被害は見られたが,いずれの観測点周辺でも,大破・全壊といった建物の大きな被害はなかった.観測された強震記録の性質について検討した結果,そのほとんどが0.5 秒以下の極短周期が卓越した地震動で,建物の大きな被害と相関をもつ1-2 秒応答は小さく,このことが大きな震度にもかかわらず建物の大きな被害が生じなかった原因と考えられる.
著者
境 有紀 野尻 真介 熊本 匠 田中 佑典
出版者
JAPAN ASSOCIATION FOR EARTHQUAKE ENGINEERING
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.79-106, 2008 (Released:2010-08-12)
参考文献数
8
被引用文献数
6 6

2007年能登半島地震を対象として, 震度6弱以上を記録した全ての強震観測点と5 強を記録した一部の強震観測点周辺の被害調査を行った.震度6 強を記録した全ての強震観測点周辺で, 全壊木造建物が見られた.中でもK-NET穴水と輪島市門前町走出震度計周辺では, 木造建物全壊率は20%近くに達していたが, 多くは老朽化した建物, 1階が商店等で開口部が広い建物であった.震度6弱を記録した観測点は, 全壊木造建物が見られたところとそうでないところがあり, 同じ計測震度でも被害状況にばらつきが見られた.また, いずれの強震観測点周辺にも非木造建物で大きな被害を受けたものは見られなかった.強震記録を見ると, 様々な周期特性をもった地震動が発生しており, 中でも周辺に大きな建物被害があり, かつ, 1.5-2秒程度とやや長い周期に大きな応答をもった地震動が初めて記録されたJMA 輪島は, 貴重なデータとなった.収集した建物被害データと観測された強震記録を用いて, 建物被害と地震動の性質の関係について検討した結果, 強震観測点周りの被害は, 概ね建物の大きな被害と相関が高い1-2 秒応答で説明できるものであったが, JMA輪島の被害レベルは, やや説明が難しいものであった.
著者
境 有紀 田才 晃 隅澤 文俊 柏崎 隆志
出版者
東京大学
雑誌
東京大學地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.243-291, 1993
被引用文献数
1

1993年1月15日に,北海道釧路市の沖合深さ107kmを震源とし,マグニチュード7.8の「1993年釧路沖地震」が発生した.震源に近い釧路市では震度6(烈震)の強い揺れに襲われ,北海道から東北南部の太平洋岸にかけての広い地域で震度4(中震)以上を記録した.強震記録によると,釧路地方気象台の地動水平加速度の最大値は気象庁の強震計で922cm/s2,建設省建築研究所の強震計で711cm/s2と非常に大きな値を記録した.震源が深かったために津波は発生しなかったが,器物の落下などにより2名が亡くなり,数百名が重軽傷を負った.被害は北海道から東北の広い範囲にわたり,北海道釧路支庁が最も被害が大きく,十勝支庁,根室支庁,青森県などでも相当程度の被害が生じた.特に釧路市を中心に,港湾,道路,鉄道,橋梁など地盤に起因する土木関連の被害が大きく,ライフラインの被害も大きかった.筆者らは,この地震による被害の概要を把握するため1月19日から23日までの5日間,震央に近い釧路市から帯広市にかけての地域の主として鉄筋コンクリート造公共建物,特に学校建物を中心に被害調査を行なった.その結果,鉄筋コンクリート造建物の被害は,一部崩壊1,一部大破2,中破4,小破10で,ほとんどの建物は軽微な被害であり,1968年十勝沖地震,1978年宮城県沖地震等の過去の大きな被害地震に比べ鉄筋コンクリート造建物の被害は小さかった.非常に大きな地動最大加速度を記録したにもかかわらず,建物の被害が小さかった原因としては,いくつかのことが考えられるが,1つには,地震動の性質があげられる.即ち,釧路地方気象台および建設省建築研究所で記録された強震記録は,非常に短周期が卓越しており,一般に建物は短周期になるほどその保有耐力が大きいことを考えると,地動最大加速度の大きさの割には,建物に対する破壊力は小さかったといえる.このことは,地動最大加速度が必ずしも建物に対する地震動の破壊力指標として適していないことを意味している.The 1993 Kushiro-oki Earthquake which occurred on January 15 offshore Kushiro City with magnitude of 7.8 at the depth of 107 km brought about damage over a wide area from Hokkaido to Tohoku. Very strong shaking(6 on the JMA scale) was observed in Kushiro City near the source of the earthquake, and strong shaking(more than 4 on the JMA scale) was observed over a wide area from Hokkaido to the south of Tohoku which faces the Pacific Ocean.
著者
神田 和紘 境 有紀
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.7, pp.7_38-7_45, 2012 (Released:2012-11-28)
参考文献数
8

木造建物の全壊といった建物の大きな被害と対応した震度を迅速に計算するために,計測震度の算定に用いるフィルタの周波数特性を修正することを試みた.具体的には,過去に発生した地震動の観測点周辺の木造建物全壊率と対応するようにフィルタの周波数特性を修正した.その結果,フィルタの周波数特性を修正することにより,木造建物の全壊率と対応した震度を迅速に計算できることがわかった.
著者
境 有紀 福川 紀子 新井 健介
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.5_21-5_28, 2009 (Released:2011-06-13)
参考文献数
12
被引用文献数
3 3

地震発生直後の面的被害推定,あるいは,地震被害想定をより正確に行うことを目的として,建物の構造種別や層数などの建物種別を考慮に入れた建物群を人口データから構築することを試みた.具体的には,人口が集中する都市部ほど非木造建物,非木造高層建物が増えるのではないかと考え,建物種別を木造,9階以下の中低層非木造,10階以上の高層非木造の3つに分類し,1kmメッシュを対象として,関東圏3万メッシュから人口の大小,夜間人口と昼間人口の比を万遍なく網羅するように20メッシュを選んで調査を行い,そのデータを基に,メッシュ当たりのそれぞれの建物種別の棟数を国勢調査による夜間人口,昼間人口から推定する式を構築した.その結果,いずれの場合も高い精度でメッシュ人口からそれぞれのメッシュの建物種別の棟数を推定できることがわかった.ただし,団地など特殊なケースで,推定値が実際の棟数と異なり結果となり,その解決が今後の課題である.
著者
境 有紀 境 茂樹
出版者
科学技術・学術政策研究所
巻号頁・発行日
2012-07 (Released:2015-07-14)
著者
境 有紀 纐纈 一起 神野 達夫
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.67, no.555, pp.85-91, 2002
被引用文献数
12 22

We investigated earthquakes in Japan, where strong ground motion records coincided with building damage data, examining correlation between various indices of seismic destructive power and building damage ratios. We also carried out earhtquake response analyses and calculated responses to one-cycle sine-wave inputs. We proposed the average elastic acceleration or velocity response at periods from 1.2 to 1.5 s with a damping factor of 0.05 as an optimum destructive power index of strong ground motion for predicting building damage ratios. The period range is based on the equivalent periods that are calculated for residences with typical elastic periods considering inelastic elongation. We then formulated the vulnerability function using this proposed index and modified the JMA seismic intensity scale for obtaining better correlation with actual building damage.
著者
境 有紀 神野 達夫 纐纈 一起
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.69, no.585, pp.71-76, 2004
被引用文献数
3 21

We propose a method of calculating seismic intesities by using response spectra in various period ranges. In the original JMA scale, weak, middle and strong ground motions are measured by human body sense and indoor objects motions, moderate damage to buildings, and heavy damage to buildings, respectively. These indices correspond to ground motions in period ranges of 0.1-1s, 0.5-1s and 1-2s. We then formulate low, middle and high intensities with average response spectra in the period ranges. We also propose an algorithm to synthesize these intensities into a single instrumental seismic intensity.
著者
境 有紀 青井 淳 新井 健介 鈴木 達矢
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.4_14-4_53, 2010 (Released:2011-11-09)
参考文献数
10
被引用文献数
3 5

2008 年岩手・宮城内陸地震を対象として,道路事情により調査できなかったものを除く震度6 弱以上を記録した全ての強震観測点と5 強を記録した一部の強震観測点周辺の被害調査を行った.その結果,いくつかの観測点周辺で外壁のひび割れや外装材の落下,屋根瓦のずれといった軽微な建物被害は見られたが,いずれの観測点周辺でも,大破・全壊といった建物の大きな被害はなかった.観測された強震記録の性質について検討した結果,そのほとんどが0.5 秒以下の極短周期が卓越した地震動で,建物の大きな被害と相関をもつ1-2 秒応答は小さく,このことが大きな震度にもかかわらず建物の大きな被害が生じなかった原因と考えられる.
著者
山田 恭央 間渕 利明 境 有紀 山越 隆雄 八木 勇治 松島 亘志 庄司 学
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、大規模斜面災害に対する予測精度向上を目指して(1)最新の国土基盤情報データベースを導入した解析支援システムの構築(2)高精度な強震動予測手法の開発(3)地盤の飽和度が斜面流動に及ぼす影響の検討と(4)降雨による集水地形評価・危険斜面の簡易抽出・斜面崩壊危険度および流動範囲予測を組み合わせた多段階斜面崩壊・流動シミュレータの開発(5) 斜面崩壊危険度を地震動特性から予測する被害関数の構築、および(6)斜面崩壊に伴う道路インフラ等の被害の類型化と被害関数の構築を行った。