著者
深澤 透 堤 崇史 東海林 茂 荏原 絋 丸山 武紀 新谷 イサオ
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 = Journal of Japan Oil Chemists' Society (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.247-251, 1999-03-20
参考文献数
11
被引用文献数
18

5種類の有機リン系農薬 (ジクロルボス, パラチオンメチル, マラチオン, クロルピリホス及びクロルフェンビンホス) を大豆油に添加し, 脱ガム, 脱酸, 脱色及び脱臭工程を行った後の精製油中の農薬残留量を測定した。得られた結果は次のとおりである。 (1) 脱ガム処理では原油中の各リン系農薬はわずかに減少した。 (2) 脱酸処理では脱ガム油中のジクロルボスは明らかに減少したが, 他の農薬は約80%以上残存した。 (3) 脱色処理では吸着剤による脱酸油中のジクロルボス及びクロルフェンビンホスの減少率はそれぞれ約70%及び60%であった。一方マラチオン及びクロルピリホスの減少率はそれぞれ約30%及び5%であった。パラチオンメチルは活性炭を含む吸着剤を用いると極端に減少した。 (4) 260℃の脱臭処理により全農薬が完全に除去された。 (5) 原油中のリン系農薬 (ジクロルボス, パラチオンメチル, マラチオン, クロルピリホス及びクロルフェンビンホス) は一般の精製処理により完全に除去されることを確認した。
著者
松崎 寿 太田 千穂 木下 葉子 丸山 武紀 新谷 イサオ 菅野 道廣
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 = Journal of Japan Oil Chemists' Society (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.195-199, 1998-02
被引用文献数
1 5

1996年に購入したポルトガル, ベルギー, オランダ, イギリス, アメリカ及び日本産の家庭用マーガリン類のトランス型脂肪酸含量について分析した。<BR>1) ポルトガル及びベルギー産マーガリンは全銘柄とも3%以下, オランダ産のマーガリン類は1銘柄を除き3%以下であった。イギリス産ではカートン包装品は3~17%, カップ包装品は1~18%で, 19銘柄中8銘柄が3%以下であった。アメリカ産ではカートン包装品が20~34%, 平均で24.8%, カップ包装品は6~23%, 平均14.2%であった。日本産マーガリン類の総トランス酸はマーガリンではハードタイプは15~28%。ソフトタイプでは総トランス酸が3%以下のものは5銘柄で, 20%を超えるものが1銘柄あった。ファットスプレッドでは総トランス酸が5.2~17.3%, 平均12.2%であった。<BR>2) イギリス, アメリカ及び日本産マーガリンの総トランス酸は, 1990~93年調査時とかわりがなかった。<BR>3) トランス酸の少ないマーガリンは飽和脂肪酸が多い傾向を示した。総トランス酸と総飽和脂肪酸量の総和はいずれの国とも類似した値である。いずれの国においても, カートン包装品のトランス酸と飽和脂肪酸の合計は, カップ包装品よりも多かった。この合計値は基本的に5カ国において同様であった。
著者
鈴木 平光
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
日本油化学会誌 = Journal of Japan Oil Chemists' Society (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.1017-1024, 1999-10-20
参考文献数
72
被引用文献数
3 3

魚油には, ドコサヘキサエン酸 (DHA) やエイコサペンタエン酸 (EPA) といったn-3系多価不飽和脂肪酸が豊富に含まれている。これらの脂肪酸は, 心血管系疾患, がん, 炎症の予防に有効であるため, 生物学的に重要な脂質として広く認められている。さらに, 魚油, 特にDHA, の摂取は, 脳の発達, 記憶学習能, 視覚機能に影響するということが多くの研究で明らかにされている。最近では, 痴呆症や精神障害に及ぼすDHA油の予防及び治療効果が報告されている。この総説では, 魚油の健康機能についてまとめると同時に, 高齢者の知能や視力に及ぼすDHA油の効果についてのデータも紹介する。
著者
矢作 和行 岩井 秀隆
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 = Journal of Japan Oil Chemists' Society (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.1133-1143, 1996-10
被引用文献数
1 3

香粧品における界面活性剤は洗浄用途とスキンケア用途に大別される。シャンプーにおける界面活性剤の応用はマイルドな界面活性剤の開発とコンディショニング効果の付与が大きな流れになっている。更にどの素材を組み合わせるかによって大きく性能が異なることから配合組成が重要となる。リンスではカチオン性界面活性剤が毛髪に吸着残留してはじめて機能を発揮することから,機能開発の指針も毛髪への吸着残留性並びに毛髪表面物性をいかに変化させるかという視点で応用開発が進んでいる。スキンケア化粧料では高機能化が求められ,様々な有効成分を安定に分散させるための界面活性剤の選択が重要になってきた。さらにリポソームや液晶のように生体類似の高次構造体からなる新しい製剤の開発も行われている。
著者
松崎 寿 青山 稔 馬場 明 丸山 武紀 新谷 〓 柳田 晃良 菅野 道廣
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 = Journal of Japan Oil Chemists' Society (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.625-630, 2000-06-20
被引用文献数
1 2

13カ国で製造された菓子類に含まれるトランス酸含有率を, ガスクロマトグラフィーと銀イオン薄層クロマトグラフィーを併用して分析した。<BR>総トランス酸含有率はアメリカ (27.1%) が最も高く, 次いでカナダ (22.3%), スイス (18.7%) 及びベルギー (15.0%) であった。オランダ, ノルウェー, スウェーデン及びイギリスの総トランス酸含有率は11~12%であり, デンマーク, フィンランド及びドイツのそれは6~8%であった。オーストラリア及びイタリアの総トランス酸含有率はそれぞれ3.5%及び3.1%であり, イタリアは最低値を示した。<BR>菓子類に含まれていた主要なトランス異性体はC18 : 1トランス異性体であったが, C20 : 1及びC22 : 1トランス異性体も7銘柄でみられた。<BR>菓子類の総トランス酸含有率と家庭用マーガリンのそれを比較したところ, カナダ, アメリカ及びイギリスでは菓子類と同程度の値であった。対照的に, ベルギー, デンマーク, ドイツ及びオランダでは家庭用マーガリンよりも菓子類が高い値を示した。
著者
古谷野 哲夫
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 = Journal of Japan Oil Chemists' Society (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.1185-1191, 1999-10-20
被引用文献数
1 2

近年の油脂結晶化技術の進歩について, 特にココアバター及びこれに関連したトリアシルグリセリン (TAG) 類について概観した。ココアバターの主要構成成分である, POP, POS, SOSの多形現象をココアバター多形と比較検討し, さらにこれらTAGの結晶化挙動の解析結果から, チョコレート製造におけるテンパリング工程で起こっている現象を考察した。また, 従来のテンパリング工程に変わる方法として, BOB (β<SUB>2</SUB>型) 油脂結晶粉末添加法とこれにより得られるブルーム防止法についてまとめた。さらに, OSOとSOSが等量で分子化合物を形成する特徴を利用し, チョコレート物性を大きく変化させる方法を紹介した。