著者
菅野 道廣
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.217-222, 2017 (Released:2019-08-05)
参考文献数
31
被引用文献数
1

本誌17巻第2号(2017)に掲載されたビタミンとしてのコリンの生理活性についての日比野の論文1)は関連分野の理解に大いに資するものであが,コリンの代謝産物で,健康と関わりがあるトリメチルアミン-N-オキサイド(TMAO)に関しては割愛されている。 摂取したコリンの一部は腸内細菌によってトリメチルアミンに変換され体内に取り込まれ,肝臓においてTMAOに変換され,動脈硬化の危険因子となることが指摘されている。したがって,TMAOは安全性と関わる成分でもある。実際には,コリンはそのものとしてよりも大部分がホスファチジルコリン(PC)として摂取れているが,PCは動脈硬化予防的に働くことが指摘されていて,問題は複雑である。卵はコリンのよい供給源であり(Lタイプで147 mg),1 日1~2個程度の摂取では血清中のTMAOレベルの上昇は認められないようである。腸内細菌との関わりは,コリンの認知機能とも結びつく興味深い話題の1つでもある。
著者
越智 知子 木下 葉子 太田 千穂 丸山 武紀 新谷 〓 菅野 道廣
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.275-283, 1996-03-20 (Released:2009-10-16)
参考文献数
15
被引用文献数
2 3

輸入品及び国産品のビスケット類に含まれているトランス脂肪酸量について調査した。1) 総トランス酸含量には輸入品及び国産品ともかなりの幅があった。主たるトランス酸は輸入品及び国産品ともt-18 : 1 であった。また, 輸入品の1銘柄と国産品の3銘柄から魚油硬化油に由来する少量の t-20 : 1, t-22 : 1が検出された。2) 輸入品の多くの試料はトランス酸を20%以上含み, 国産品の多くの試料のトランス酸は 15% 以下で, トコトリエノールが検出された。このことは輸入品は植物硬化油を多く配合し, 国産品はパーム油と植物硬化油を混合して用いることが示された。3) 各試料の1サービング当たりのトランス酸含有量は輸入品では 0.26~1.78, 国産品では 0, 40~1, 05 と算出された。日本人の1人1日当たりのビスケット摂取量から求めたトランス酸の摂取量は230 (輸入品) ~140 (国産品) と見積もられた。
著者
菅野 道廣
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.313-321, 2006-12-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
38
被引用文献数
2 1

大豆油は, 大豆食品中ではもっともアレルゲン性が高い食品にリストアップされている。しかし, 食用大豆油の総タンパク質含量は理論的にも, 状況証拠的にもアレルギー反応を引き起こす閾値よりずっと低い。この不一致の背景について考察した。その結果, 原因として考えられる, (1)反応を引き起こす量のアレルゲンが残存している, (2) 反応を促進する量の脂質過酸化物が混在する, (3) 多く含まれるリノール酸が関与する, のいずれの点からも, 大豆油をもっとも危険な大豆食品にランク付ける科学的根拠は見出されなかった。おそらく, 食用油脂精製技術が未熟な時代の情報が, 無条件に引用されてきたためであろうと推測された。大豆油に反応する敏感な大豆アレルギー患者は皆無ではないが, そのような特例を除けば, 少なくとも大豆油は危険きわまりない食品ではなく, タンパク質含量にかなりの違いがあり使用範囲も広い大豆レシチン標品に注意する必要があるように思われる。
著者
河野 三津子 趙 英子 菅野 道廣
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.217-222, 1982-06-10 (Released:2009-11-16)
参考文献数
13

家庭用マーガリン15種, 業務用マーガリン33種, 学校給食用マーガリン5種, 業務用ショートニング26種, および健康な22~29歳の青年の血清の脂肪酸組成をGLCにより分析し, トランス型不飽和脂肪酸 (t酸) の種類と含量を測定した。水素添加製品中のt酸のほとんどは, t-18: 1であり, c, t-18: 2およびt, c-18: 2の割合はきわめてわずかで, t, t-18: 2はほとんど検出されなかった。t酸含量は, 家庭用マーガリンで平均13.7%, 業務用マーガリンで平均12.2%, 学校給食用マーガリンで平均15.5%, そして業務用ショートニングで平均14.3%であった。業務用製品でt酸含量が低かったのは, 強く水素添加したものが多かったため, あるいは, 原料として不飽和脂肪酸の少ない脂肪を用いたためであった。主として大学食堂で食事を摂っているヒト血清中のt酸含量は全脂質中では1%未満であった。各脂質画分間でわずかながら違いがあり, 遊離脂肪酸中で最も高かったが, それでも2~4%であった。
著者
菅野 道廣
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.362-367, 2019-09-15 (Released:2019-09-26)
参考文献数
45

The evidence from epidemiological studies supports the conclusion that consumption of 1~2 eggs per day does not influence blood cholesterol levels in healthy individuals receiving the prudent eating pattern. However, the judgement is based on the presence of non-responder to dietary cholesterol at two-thirds of whole population. Attention is therefore necessary to the egg intake in people who are responsive to dietary cholesterol. There is no decisive evidence supporting the allowable limit of egg consumption for Japanese due to multiple confounding factors. In the association between egg and blood cholesterol we should thoroughly recognize an interpretation limit of the epidemiological studies and correspond from a nutritional viewpoint. In Japan the egg is one of the most important foods contributing to our healthy longevity, even though it is providing nearly half of our cholesterol intake.
著者
松崎 寿 太田 千穂 木下 葉子 丸山 武紀 新谷 イサオ 菅野 道廣
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 = Journal of Japan Oil Chemists' Society (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.195-199, 1998-02
被引用文献数
1 5

1996年に購入したポルトガル, ベルギー, オランダ, イギリス, アメリカ及び日本産の家庭用マーガリン類のトランス型脂肪酸含量について分析した。<BR>1) ポルトガル及びベルギー産マーガリンは全銘柄とも3%以下, オランダ産のマーガリン類は1銘柄を除き3%以下であった。イギリス産ではカートン包装品は3~17%, カップ包装品は1~18%で, 19銘柄中8銘柄が3%以下であった。アメリカ産ではカートン包装品が20~34%, 平均で24.8%, カップ包装品は6~23%, 平均14.2%であった。日本産マーガリン類の総トランス酸はマーガリンではハードタイプは15~28%。ソフトタイプでは総トランス酸が3%以下のものは5銘柄で, 20%を超えるものが1銘柄あった。ファットスプレッドでは総トランス酸が5.2~17.3%, 平均12.2%であった。<BR>2) イギリス, アメリカ及び日本産マーガリンの総トランス酸は, 1990~93年調査時とかわりがなかった。<BR>3) トランス酸の少ないマーガリンは飽和脂肪酸が多い傾向を示した。総トランス酸と総飽和脂肪酸量の総和はいずれの国とも類似した値である。いずれの国においても, カートン包装品のトランス酸と飽和脂肪酸の合計は, カップ包装品よりも多かった。この合計値は基本的に5カ国において同様であった。
著者
菅野 道廣
出版者
Osaka Urban Living and Health Association
雑誌
生活衛生 (ISSN:05824176)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.177-182, 1998-09-30 (Released:2010-03-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1
著者
菅野 道廣 高松 清治
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.3, pp.148-155, 2004-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
34
被引用文献数
1 1

大豆は米と共に最も馴染み深い食品であり, 機能性の優れた食品でもある。このことは大豆を使った食品群の豊富なことからも経験的に感じてきたことである。その機能性の宝庫である大豆タンパク質の生理活性成分の効用について先端的な研究例を紹介していただいた.(ここで言う大豆タンパク質とは, 学術研究に汎用されている純度90%程度の分離大豆タンパク質標品で, タンパク質以外にイソフラボン, サポニンなどを含んでいる。)
著者
松崎 寿 青山 稔 馬場 明 丸山 武紀 新谷 〓 柳田 晃良 菅野 道廣
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 = Journal of Japan Oil Chemists' Society (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.625-630, 2000-06-20
被引用文献数
1 2

13カ国で製造された菓子類に含まれるトランス酸含有率を, ガスクロマトグラフィーと銀イオン薄層クロマトグラフィーを併用して分析した。<BR>総トランス酸含有率はアメリカ (27.1%) が最も高く, 次いでカナダ (22.3%), スイス (18.7%) 及びベルギー (15.0%) であった。オランダ, ノルウェー, スウェーデン及びイギリスの総トランス酸含有率は11~12%であり, デンマーク, フィンランド及びドイツのそれは6~8%であった。オーストラリア及びイタリアの総トランス酸含有率はそれぞれ3.5%及び3.1%であり, イタリアは最低値を示した。<BR>菓子類に含まれていた主要なトランス異性体はC18 : 1トランス異性体であったが, C20 : 1及びC22 : 1トランス異性体も7銘柄でみられた。<BR>菓子類の総トランス酸含有率と家庭用マーガリンのそれを比較したところ, カナダ, アメリカ及びイギリスでは菓子類と同程度の値であった。対照的に, ベルギー, デンマーク, ドイツ及びオランダでは家庭用マーガリンよりも菓子類が高い値を示した。