著者
岸本 忠之
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.15-25, 2018-10-25

本稿の目的は,明治後期の『黒表紙教科書』から終戦直後の『算数』までを対象として,算数教科書における小数の乗法の取り扱いに関する歴史的変遷を分析することである。そのため,小数と分数の位置づけ,純小数と帯小数の乗法の位置づけ,具体的場面と乗法の意味の観点から分析を行った結果以下のようなことが明らかとなった。黒表紙教科書では,分数よりも小数が先行していたが,分数との結びつきも既に見られるようになった。緑表紙教科書では,小数は分数の特別な場合であるとし,分数が先行していたが,水色表紙教科書では,小数が先行するようになった。当初黒表紙教科書では,純小数の乗法が中心課題とされていたが,緑表紙教科書以降では次第に帯小数の乗法から導入するようになった。ただし緑表紙教科書では,「4km,0.1km,0.8km,2.5km」の順序であったが,水色表紙教科書では,「4m,2.5m,0.1m,0.4m,2.3m」の順序に変わり,帯小数の乗法が純小数の乗法よりも先になった。意味づけについては,具体的場面を導入課題とした緑表紙教科書からと考えられているが,実際は,黒表紙教科書の第3期で意味づけについて注意が払われている。
著者
岸本 忠之
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.121-129, 1999-06-10 (Released:2017-06-30)
参考文献数
16

The purpose of this paper is to establish the learning phases for the choice of operation regarding word problems involving multiplication of decimal fractions. A research test and standards were developed to identify the learning phases. Three hundred and forty-four primary-school students ranging from fourth to sixth grade were tested. As results, four learning phases were identified the choice of operation in word problems involving multiplication of decimal fractions. In phase, I students can solve the word problems only with multiplication of integers, but can't solve the word problems with multiplication of decimal fractions. In phase II, students can not choose the operation in the word problems with multiplication of decimal fractions but calculate that operation. In phase III, students can choose and calculate the operation in the word problems with multiplication of decimal fractions. In phasd IV, students can choose and calculate the operation in the word problems through multiplication of decimal fractions based on the meaning of multiplication of decimal fractions.
著者
岸本 忠之
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.33-36, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
37

本稿の目的は,海外における乗法・除法を中心とした研究動向について,研究のレビュー,専門誌,書籍の観点から示すこととする.その結果,1980年~2000年では,数学的問題解決と認知心理学への着目によって,文章題解決が研究対象とされた.乗法・除法を対象とした研究レビューもなされた.国際会議が開催され,報告書も出された.2000年~2020年では,認知・理解,比較,教師教育など研究対象の事例として取り上げられるようになる.2010年までは認知・理解研究がみられるが,2010年以降は教師教育の研究が多くなる.書籍も,シリーズ中で事例として取り上げるようになる.
著者
礒田 正美 銀島 文 小原 豊 松嵜 昭雄 岸本 忠之 溝口 達也
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究の目的は、日本型教科教育を国際共有する契機として、算数教育の場合においてそのターミノロジー(学術用語体系)を英語で著す教員(研究者を含む)研修書を開発し、そのターミノロジーの採用によって、いかに教材を語る教授学的内容知識が深化するかを示すとともに、その成果をふまえ個別算数教育用語の語用マップを作成し、そのターミノロジーをユニバーサルに通用する内容に更新することにある。
著者
岸本 忠之
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 44 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.17-20, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
9

本稿の目的は,小数の乗法の文章題における演算決定に関する様相モデルを明らかにすることである.演算決定に関する様相モデルとして,「様相1.比例関係の理解」「様相2.演算決定の根拠」「様相3.乗法の知識の組織化」の3つの様相を設定し,その段階における観点も示した.この様相に対して,児童が90×0.6となる文章題に関して行った演算決定の記述を例示した.その結果,除法を選んだ児童と乗法を選んだ児童において学習課題が異なること,また除法を選んだ児童は演算が誤りであることが意識されるため,演算決定の根拠や乗法の意味について理解が図られることが挙げられる.
著者
礒田 正美 野村 剛 柳橋 輝広 岸本 忠之
出版者
公益社団法人日本数学教育学会
雑誌
日本数学教育学会誌 (ISSN:0021471X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.2-12, 1997-01-01
参考文献数
40
被引用文献数
1

本研究は,数学的コミニュケーション力育成という今日的教育目標に対して,一斉指導の場面で二人教師が対立意見を闘わす討論を常設したティームティーチングの新たな方法を導入することで,生徒がいかに二人教師の討論に関係を持ち,授業への参画の仕方を変化させていったかを1年にわたり記録し,分析したものである.,生徒は,教師の討論に耳を傾けることにはじまり,自然に討論に口を挟むようになり,やがて,自由に意見を言うようになった.,そして,生徒が自ら教師の討論を代弁し,さらには生徒どうしが自ら討論を起こすようになっていった.,その分析から,教師が討論の見本を示せば,生徒も漸次討論に加わるようになり,やがて自ら討論できるようになること,自ら討論に加わることにこそ価値を認めた数学の授業観が生徒に育つことが確認された.,そして,適切な見本を示し,生徒の討論への参画の仕方が漸次進化するように年間指導計画を構成し,日々の学習指導を工夫すればすれば,討論は指導可能であることが示唆された.,
著者
岸本 忠之
出版者
一般社団法人日本科学教育学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
vol.26, pp.71-72, 2002-09-12
参考文献数
5
被引用文献数
1
著者
礒田 正美 大谷 実 二宮 裕之 溝口 達也 岸本 忠之 小原 豊 讃岐 勝
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、授業力を改善する教師教育教材書(含むビデオ)を海外共同研究者等と日本語・英語で開発することを目的に行われた。ビデオ教材と日本語の教員研修書、英語版教材書の開発がおこなわれ、教師向け日本の指導法教材書出版、算数教科書英語版、教師教育用算数問題解決教科書が開発された。 本研究の成果を教員研修ツールとして採用した国・機関は、オーストラリアNSW州教育省、タイ教育省教員研修プロジェクト、東南アジア教育大臣機機構などである。成果は、国際的に注目され、筑波大学・アジア太平洋経済協力国際会議をはじめとする著名な国際会議で全体講演の形などで報告された。