著者
魏 興福 田村 隆善 老平 崇了
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.108-114, 2017

中国政府は,国民生活の向上を図るため,不動産業を国の主要産業と位置づけ支援してきた。このため,中国では経済の発展に伴って不動産業は飛躍的に拡大し,多くの不動産企業が設立され,規模を拡大させてきた。そのなかで,中国不動産大手企業は,販売用不動産を中心とした棚卸資産を増大させ,棚卸資産回転率は日本の大手企業と比較して低い値となっている。しかし,中国不動産中堅企業についての経営財務状況についての分析はこれまでなされていない。また,中国では,2010~2014年にかけてGDP成長率と住宅投資伸び率は鈍化傾向にある。そのような中国経済の減速は,中国不動産企業,とくに中堅不動産企業ないしはそれより規模の小さい企業の経営財務に大きな影響を与えていることも懸念される。本研究では,中国不動産中堅企業の経営財務を分析し,大手企業と比較しての中堅企業の特徴を明らかにする。結果として,中堅企業は大手企業に比べて棚卸資産回転率が高く,事業の多角化が進んでいるなどの特徴を明らかにする。
著者
永吉 実武 川端 勇樹 中村 潤
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-7, 2014 (Released:2015-06-10)
参考文献数
10

1990年代以降の不景気の中で業績が悪化した経営コンサルティング会社には,従来の中核であった経営診断ビジネスよりも情報システム構築ビジネスの割合が大きくなりつつあるところがある。本稿では,そのビジネスシフトのメカニズムが,経営コンサルティング会社などのプロフェッショナル・サービス・ファームの業績管理指標を一要因に,バリュー・ネットワークと呼ばれる価値意識により組織ネットワークが支配され,そして組織における同型化圧力が作用することによりビジネスシフトが発生しているのではないか,との議論を行う。
著者
宮脇 敏哉
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.397-410, 2005-10-10 (Released:2010-06-15)
参考文献数
20

果敢に挑戦するアントレプレナーなくして、乗敢に挑戦するベンチャー企業は発生しない。本稿では、まずアントレプレナーの定義をあげ、経灘学者、経営学者全般の考え方を提しした。次にアントレプレナーの出現から成長、発展を見でその人物像、資質と性格、能力と理念を検討した。さちに、アントレプレナーの教育と学歴、地域を検討してベンチャー企業発生の根源を検討した。検討の結果、アントレプレナーの出現には地域における影響が大きいことがベンチャー企業クラスター地域の京都、浜松を検討することにより理解できた。域域ビジネスあるいはベンチャー企業クラスター地域の特性をアントレプレナーを検討することにより解明したと考える。
著者
上原 義子
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.164-169, 2011 (Released:2013-03-02)
参考文献数
15

近年の多くの研究では,付加価値戦略としてブランド付与や経験価値,物語性の付与を行う重要性が説かれている。だが,例えば,伝統的商品である椿油にはこうした戦略が見られない。本稿では,こうした商品に対する消費者の視点に接近することで,新たなマーケティングの方向性を探索している。具体的には,近年になって改めて注目されている伝統的商品に着目し,それに関する消費者の着眼点への接近を試みた。調査では,インターネット口コミサイトに集められている椿油の感想に対してテキストマイニングを実施した。
著者
中島 康明
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.15-25, 2007

いわゆる「まちづくり三法」の改正に伴い,我が国は新たな,ある意味で本格的な「まちづくり」法制の第一歩を踏み出すことになったが,現実の「まち」は様々な課題を抱えており,その道程はかなり厳しいものと窺える。市場型商店街の再活性化のためのビジョンづくりに関与した経験から,まちづくりを成功させるためには,(1)私利私欲を排除するための仕組みづくり,(2)役割分担の明確化と適材配置,(3)民と官を繋ぐインタープリターの存在,(4)行政職員の"経営"感覚,(5)官民組織の横断的・統合的な一体診断の必要性が課題として明らかになった。
著者
後藤 時政 井上 博進
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.243-254, 2006

本研究では, わが国大手企業の特許認識を調査するため, 2004年度四季報に掲載されていた上場企業の中から, 一般機械, 電気機器, 輸送用機器, 精密機器, 化学工業製品企業882社にアンケートを送り, 特許取得状況, 特許活用および特許トラブルの状況などについて調査した。本調査から得られた結果を中小企業の結果と比較しながら, 大手企業の特許認識の状況を明らかにし, その特許戦略について提言を試みた。
著者
小島 貢利
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.159-163, 2008

本研究では,まず,日本経済の今後の推移について説明し,円が今後強くなる可能性は乏しいことを指摘する。さらに,外国為替証拠金取引(FX)の特徴に関して紹介し,投資家がFXにより気軽にグローバル投資を行うことができることを示す。また,株式市場とFXとの比較を行い,FXは,一年中,平日24時間取引可能であり,イベントリスクに対して,より迅速に対応可能な取引システムであることを説明する。最後に,円資産に固執することのリスクを,日本人は強く認識すべきであり,将来の円下落や国内低金利継続に対して,FXは有効な資産保護対策になりうることを主張する。
著者
永吉 実武
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.92-98, 2012 (Released:2013-06-29)
参考文献数
8

本論文では,小規模小売業の店舗数拡大時における業務改善事例を取り上げ,得られた効果を既存研究の理論に当てはめることにより,業務改革と効果獲得との間の因果関係メカニズムについて考察を行った。小規模企業が事業の拡大を行う際に,さまざまな課題や問題が発生し,それに対して,経営者は適切な対応策を講じていく必要がある。その際に業務改革や情報システムの導入を実施する企業が多いが,「プロセス志向」の醸成が重要である。これらは,業務改善に取り組む企業に有用な示唆を与えるだけでなく,既存理論が小規模小売業の店舗数拡大時の業務改善策が効果を獲得するに至る因果関係の考察にも有用であることを示すものである。
著者
庄司 真人
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.63-68, 2011

近年,企業と顧客の役割のとらえ方を見直す必要性が議論されてきている。企業だけが価値を生み出すのではなく,企業と顧客が共に価値を創造するという価値共創が注目されている。サービス・ドミナント・ロジックでは,顧客を価値の創造者として拡張することによって,顧客の持つ価値創造性について考察している。しかし顧客の価値創造の視点については十分に議論されていない。そこで,本稿では,経営診断という視点で,顧客の価値創造の役割について概念的に考察し,生み出される価値の問題,顧客の価値への関わりが価値創造で中心となることを提示する。
著者
菅原 浩信
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.91-96, 2008 (Released:2009-06-08)
参考文献数
11

本稿では,商店街組織と外部組織の協働活動について分析を行った。その結果,(1)商店街組織は,外部組織との協働活動により,地域コミュニティからの信頼を獲得し,地域コミュニティにとって必要とされる存在になる,(2)地域コミュニティの人々が商店街組織に関わりをもつことによって,商店街組織が活性化され,大型店等との差別化を図ることが可能となる結果,商店街組織の存続可能性が出てくるという2点が明らかとなった。さらに,こうした協働活動を推進していくにあたり,商店街組織は,地域コミュニティを構成する様々な外部組織の間に,橋渡し型ソーシャル・キャピタルを形成していくことが必要であることも明らかとなった。
著者
小島 貢利 田村 隆善
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.98-102, 2010-02-15 (Released:2011-01-20)
参考文献数
26

ジャストインタイム(JIT)は,「必要なものを,必要なときに,必要なだけ生産する」思想として,特にものづくりの分野で,高品質,低価格,迅速な生産を実現する上で,大きな影響を与えてきた。自動車業界において,JIT 生産システムを採用した企業が世界の頂点を極めた。さらに,JIT はものづくりの分野に限らず,先端技術を応用した製品,サービスや社会システムなど,様々な分野に応用されている。本研究では,JIT の観点で必要とされるであろう,製品やサービスなどに関して紹介し,JIT の応用分野や今後の発展性に関して説明する。さらに,JIT を推し進めることで,今後顕在化するであろう,社会的な問題に関しても言及する。
著者
小島 貢利
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.159-163, 2008 (Released:2009-06-08)
参考文献数
17

本研究では,まず,日本経済の今後の推移について説明し,円が今後強くなる可能性は乏しいことを指摘する。さらに,外国為替証拠金取引(FX)の特徴に関して紹介し,投資家がFXにより気軽にグローバル投資を行うことができることを示す。また,株式市場とFXとの比較を行い,FXは,一年中,平日24時間取引可能であり,イベントリスクに対して,より迅速に対応可能な取引システムであることを説明する。最後に,円資産に固執することのリスクを,日本人は強く認識すべきであり,将来の円下落や国内低金利継続に対して,FXは有効な資産保護対策になりうることを主張する。
著者
中丸 宏志
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.20-26, 2011 (Released:2011-10-20)
参考文献数
9

近年のエレクトロニクス製品において,自社の革新技術を基に顕在的ニーズを満たす「技術的イノベーション」ではなく,異業種に埋もれた既存技術を寄せ集めて製品開発をマネジメントし消費者の潜在的ニーズを創出する「ポットラック・イノベーション」による製品が現れた。そのアーキテクチャを考察すると「設計インテグラル・組立製造モジュラー」という特徴が見られ,水平的・垂直的な業界内の取引によるものではなく,製品を構成する主要な既存技術が普及段階に入る前のタイミングで異業種など非関連企業から採用されている。考察より,多額の投資を必要としないポットラック・イノベーションの製品開発戦略における意義を提言する。
著者
西崎 信男
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.145-151, 2008

経済発展に伴い、第3次産業がGDPで6割超を占める先進国の経済構造では、サービス業活性化が不可欠である。一大サービス産業である英国プロサッカーを見る。無形性等サービスの特質から、スタジアムはサービス提供システムで重要な役割を担う。有料TV発達等も加わり、サッカーは「スポーツからビジネスへ脱皮」した。そこでは自前のスタジアムが、差別的優位性を発揮している。クラブの売上高の中で、景気に左右されない入場料は経営の基盤である。入場者数を増大させるためには、ファンのクラブへの思い入れを毀損しないことである。そのためには、スタジアムを単なる「経営資源」ではなく、「地域共有資産」と位置づけることが重要である。
著者
辻 朋子
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.9-14, 2008
被引用文献数
1

本研究は,不可視のサービス機能の変容を通して,共同体を閾値の突破に向けていかにファシリテートするかの試みである。まず,触媒機能を持つヒトや組織を"セレンディピティ"とし,これを共同体に組み込む支援を通して不可視サービスの可視化過程を導く。次にそうした,一連のプロセスはゆらぎとしての混沌から秩序が形成されるオートポイエーティック・システムであり,これが自己組織化の本質であることを論証する。結論として仕事を分割するための分業が支配する"不幸せなコミュニティモデル"に対し,補い合うための協働から創発されるのが"幸せなコミュニティモデル"であり,それを誘発させるのがファシリテータの役割であることを示す。
著者
洪 萬杓
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.319-329, 2006

ロシア革命以来, 人類史に始めて登場した旧社会主義体制が 「崩壊」 し十数年が経過したが, 今や市場経済のみが唯一の普遍的原理となりつつある。果たして, そのようにほとんど未来永劫, 人類史の今後を規定していくと結論付けてもよいのだろうか。歴史の現段階においては, 「現実社会主義」 自体が資本主義と存否を懸けて対決する体制と言うよりは, 先進資本主義にやや遅れて近代的国民国家を形成させた 「近代化のもうひとつの道」 であった, と総括することが可能になった。このようなことを踏まえると, 人類史はいま一度, 市場経済の論理が専一的に貫徹するのではない 「新しいゲマインシャフト」 を志向する可能性を東アジアの中のヴェトナム社会から 「試論」 を定立させ, 「命題」 として考えてみた。
著者
ナサンデルゲル ツェレンダシ
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.178-183, 2008

本稿では、移行経済における消費者のマーケティングに対する態度を図ることを目的として掲げ、モンゴルの消費者を対象に、調査を行い、それに基づいて、モンゴルにおける消費者のマーケティングに対する態度を検証した。具体的には、GaskiとEtzelの開発した消費者態度尺度を評価し、モンゴルにおける消費者のマーケティングに対する態度をマーケティングミックスの4つの要素に対する態度を図ることにより、計測し、その結果を同じ調査が実施された国々の結果と比べることを試みた。
著者
原田 保
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.3-14, 2007

昨今,流通業の競争戦略は熾烈であるが,それでも次から次へと新たな覇権企業が立ち現われてきた。そうなると,最初は辺境から生まれた,まさに取るに足らないような企業がいかにして短期間で業界のヘゲモニーを確立できるのか,という疑問が湧いてくる。そして,これに応えるべき解が本稿で示される「コンテクスト・ドリブン・ビジネスモデル」に見出される,ということが著者の主張である。 なお,著者はかねがねビジネスモデルとはコンテンツ(提供内容)とコンテクスト(提供方法)からなるものと考えているが,後者のコンテクストとはコンテンツが保持する潜在的価値を顕在化するための,あるいは価値を増大するための装置である,ということにその戦略性が見出されるのである。このある種の装置としてのコンテクストの優位性によって成功した企業が,すなわち,そのポジションを「辺境」から「中心」に転換した代表例が「ファースト・リテイリング」「良品計画」「デル」「吉野家」「ディズニーランド(拠点名)」である,と考えることができる。
著者
バーサンフー ジャムサランジャワ
出版者
Japan Management Diagnosis Association
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.348-359, 2007
被引用文献数
1

本研究では,Web上の製品評価クチコミデータをもとに商品のブランド力を可視化することを目的とする。ブランド力の構成要素として「ブランド認知」,「ブランド・イメージ」,「知覚品質」,「ブランド・ロイヤルティ」に関するフレーズをクチコミデータから抽出し,対象ブランドにおけるそれらの出現割合の比較を行った。また,評価ポイントの高位(5位)と低位(2位)の割合を定量化し,ブランド力の時間的変化の可視化を試みた。その結果,ブランド力の可視化にWeb上に累積されたクチコミデータは有用であることが確認された。