著者
西崎 信男
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.23-28, 2015

2012年英プレミアリーグのManchester United(MANU)がニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場,そして新株発行による資金調達を行った(IPO)。安定性に欠け収益性にも問題があるサッカークラブが,投資家保護が徹底し世界で最も厳しいNYSEになぜ上場できたのか? そこには新規創業を促進し,雇用を産み出すために,証券発行市場,流通市場の規制を緩和して(Jobs Act),成長企業に米国資本市場を再開放するとの米国政府の強い決意があった。米国側には規制緩和のシンボルとして,MANU側にはオーナーの資金繰り問題,広告塔としての上場があった。サッカークラブのファイナンスと米国ベンチャー企業施策を論じる。単なるプロスポーツクラブの上場ではない。その背景に世界各国の資本を巡る取引所経由の戦いがある。
著者
福田 康典
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.21-26, 2014 (Released:2015-06-10)
参考文献数
14

本研究の目的は,価値共創のモデル化におけるプラクティス概念の適用がどのような貢献を果たすのかという点を明らかにすることである。ここでは,価値共創のモデリングにおける研究課題として,価値共創行為の説明と価値共創の連結構造の説明という二つの課題を取り上げ,プラクティス概念の適用がこうした研究課題の解決にどのように寄与するかを考察している。考察の結果,プラクティス概念を用いることで,顧客の価値共創行為の発生や変容を,従来とは全く違った社会文化的な視点から説明できるようになることが明らかになった。また,プラクティスの束と複合体という概念を利用することで,価値共創の連結構造をつながりの密度ごとに識別できるようになる点が確認された。最後に,こうした考察結果のマーケティング診断に対するインプリケーションについて検討を行った。
著者
清水 恵一
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.183-188, 2012

本論文のねらいは,提携の概念とパースペクティブについて考察を加え,統合化を試みることにある。具体的には,第1に,提携の定義や種類を明らかにしている。第2に,提携の動機としてのパースペクティブについて考察を行っている。ここでは特に,従来議論されてきたパースペクティブの類型化が中心となっている。第3に,パースペクティブに基づいた提携を行う利点や欠点について明らかにしている。本論文は,こうした作業を通じて,提携の全体像を再構築するとともに,今後の実証研究に向けた一助とする。
著者
川村 悟
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.37-43, 2013

中小企業診断士には,フリーランスとして活躍する「独立診断士」,企業に所属する「企業内診断士」という二つの属性がある。後者の企業内診断士は,所属企業の副業禁止規定によって,企業外において診断サービスを提供しても,有償で活動を行うことが難しい。したがって,無償の診断を余儀なくされ,サービス品質を向上しにくい問題が存在する。本報告では,診断報酬の有償化によって企業内診断士のサービス品質向上が実現できることを検証する。有償化が引き金となり,「企業内診断士のモチベーション向上」と「中小企業の要求品質向上」が相互に作用する好循環が生まれ,中小企業診断士の専門性発揮や中小企業の経営改善に貢献しうる可能性を示す。
著者
髙村 清吾 高野 研一
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.75-81, 2017

本研究は,過去の倒産企業に共通した組織風土を導き出すことを目的としている。このため,公開されたデータベースから,対象とする倒産企業76社を抽出し,企業倒産に至った根本原因(本源的な倒産原因)を突き止める「根本原因分析」を行うとともに,倒産原因の本源的な問題である経営者問題(倒産要因におけるハザード)を中心に,「数量化III類」を適用し,本質的な問題である経営者問題に関係する企業の組織風土について考察を行った。考察の結果,「傲岸不遜,士気低下,私利私欲」の経営者問題に係る「腐敗堕落」型の組織風土が倒産企業に共通する根本原因との結論に至った。
著者
田原 静
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.48-54, 2017

電子書籍サービス等のデジタル・コンテンツ提供サービスでは,従来の有形グッズの所有とは異なり,利用者は所有対象に対する所有権を持たない。本研究では,これらのサービスが作り出す不安定な所有の状況に対する消費者の意識と反応,またサービスの一環として提供される,所有権を伴わない消費対象に対し所有意識を持つケースがあることを明らかとした。この結果は従来のデジタル・コンテンツおよびアクセス・ベース消費の研究を補完し,サービスの価値や利用者の満足度に関する経営診断に新たな知見を与える可能性を開く。
著者
矢野 耕也 鈴木 英之 竹中 理
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.15-20, 2008

企業の与信を評価する際に,定性スコアリングシートを使用する場合がある。そのとき,定性的な評価に対して客観性を持たせることと,また与信を正しく評価可能とする尺度を与えることが課題であった。またスコアリングシートは評価項目が多いために,定量的な尺度で総合評価することが望ましいといえる。ここではスコアの配列を一種のパターンとして捉え,スコアから総合パターンの値を求める方法に品質工学のマハラノビスの距離を用いた。またパターンの規則性を可視化するために直交表の適用を図った。その結果,36項目の定性スコアを一元化した数値で求められ,また直交表から得られる要因効果図で,潜在構造を可視化することを達成した。
著者
加藤 里美 伊藤 直美 森 智哉
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.74-80, 2016 (Released:2017-09-16)
参考文献数
8

経団連によれば,企業が新卒採用時に重視する要素はコミュニケーション能力である。このことは,企業は新卒者にコミュニケーション能力に長けた人材を求めているということを示している。企業はどの程度のコミュニケーション能力を新卒者に求めているのであろうか。また大学生はどのように自己評価しているのであろうか。本論文の目的は,企業が新卒者に求めるコミュニケーション能力と大学生が自己評価するコミュニケーション能力に関する認識にギャップがあるのかどうかを明らかにすることである。仮説検証の結果,大学生と企業には明らかなギャップがあることが示された。
著者
長谷川 路子 稲福 善男
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.92-98, 2019 (Released:2020-09-05)
参考文献数
3

本稿では,地域の実態を検証するための方法,および,全国で展開されている地域づくりの調査・研究を横断的に一つの規矩で整理し直し,比較を通して,その共通性や特異性を浮き彫りにし,根元的な課題に迫るための思考形式などを試論した。論考は現実での妥当性を得て正鵠を射る。証左をある農村集落での適用に求めた。結果,同集落の状況はもとより,住民の多様な生活の側面,あるいは伝統と変化の許容という地域精神を立体的に描き出すことができた。また,その結果による同地への説明は住民にも改めて地域を見直すことができるとの反応を得た。さらに簡明な説明とフレーム図として準備を整え,各地域の検証例を確保し,所期の研究を進めていきたい。
著者
新井 信裕
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.104-108, 2019

<p>日本に経営診断と云う用語が登場したのは,第二次世界大戦により荒廃した経済を復興するために,1948年に創設された「中小企業診断制度」においてであるとされる。その語源は当時の日本医学の主流であったドイツ医学のダイアグノーシス(診断)を充て,医師と患者との関係を,経営コンサルタントとその助言を得た企業との関係と見做したことによると説明されている。しかしながら狩猟・農耕・工業社会を経て,第4次文明社会に入り,ディスラプター(創造的破壊)に対応するためには,従来の経営診断を超えた高度の進化を目指す経営革新が求められているのであり,ここに従来のダイアグノーシスをコンサルティング・サイエンスへと進化させるよう提言することとする。</p>
著者
木村 雅敏 岩坪 友義
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.49-55, 2010 (Released:2011-02-04)
参考文献数
22

コーヒーは,各々の特性によりレギュラーコーヒー,インスタントコーヒーならびに缶コーヒーの3タイプに分類され,さまざまなシチュエーションで飲用されている。本論文では,生産販売の実績データや財務諸表を基にした業界および企業の分析を行うとともに,消費者評価がコーヒー製造企業の経営行動に与える影響について,アンケート調査により主要企業の当該市場における位置付けを行った。それらの結果,主要企業をそれぞれ「ガリバー型」,「製品品質重視型」,「コアブランド重視型」,「自動販売機偏重型」等に分類・位置付けし,企業実績等により各社の優劣を考察した。
著者
森下 俊一郎
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.115-121, 2017

おもてなしは日本独自の文化を反映した,提供者個々の器量や経験に依存する属人的なハイサービスと考えられている。一方,組織全体として従業員が優れたおもてなしを提供している旅館も散見される。先行研究では,おもてなしの個から個への伝承が中心に論じられ,組織的なマネジメントに関する論述は手薄である。本研究では,おもてなしで有名な「加賀屋」と「黒川温泉」を事例に,それらの優れたおもてなしを創出する要因を調査し,比較分析を行った。その結果,顧客志向の理念をおもてなしとして具現化し,個々の従業員に伝達,顧客へ実践され,そのフィードバックの共有と議論から,よりよいおもてなしを創出するマネジメントモデルを提示した。
著者
福田 康典
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.8-14, 2016 (Released:2017-03-09)
参考文献数
13

本研究の目的は,企業による使用文脈データの利用が消費者の知覚する不快感に及ぼす影響の実証的な考察を通じて,マーケティング・リサーチが抱える新たな倫理的問題の輪郭を描くことである。サーベイ・データに対する統計解析の結果,収集された使用文脈データがどう利用されるかによって知覚される不快感の程度が異なること,そのなかでも特にデータの第三者への譲渡は不快感を大きく増大すること,譲渡の事前告知や譲渡先企業の信頼性がそうした不快感の増大を緩和することなどが示された。IoTなどを通じて,消費者が何かを使用することが企業のデータ収集に直結するようになってきた最近の状況を考慮すると,こうした知見は,データの取り扱い方に関する健全性が企業の経営診断の項目に含まれるべきであり,それに関連した診断指標が開発される必要があるという点を示唆していると思われる。
著者
髙村 清吾 高野 研一
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.75-81, 2017 (Released:2018-12-20)
参考文献数
15

本研究は,過去の倒産企業に共通した組織風土を導き出すことを目的としている。このため,公開されたデータベースから,対象とする倒産企業76社を抽出し,企業倒産に至った根本原因(本源的な倒産原因)を突き止める「根本原因分析」を行うとともに,倒産原因の本源的な問題である経営者問題(倒産要因におけるハザード)を中心に,「数量化III類」を適用し,本質的な問題である経営者問題に関係する企業の組織風土について考察を行った。考察の結果,「傲岸不遜,士気低下,私利私欲」の経営者問題に係る「腐敗堕落」型の組織風土が倒産企業に共通する根本原因との結論に至った。
著者
平安山 英成
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.91-96, 2019-09-27 (Released:2019-09-27)
参考文献数
15

本研究では,従来マスメディア広告の主たる効果とされた説得や補強とは全く異なるアジェンダ設定機能について議論する。この機能は,消費者反応プロセスの認知段階に作用し,アジェンダを設定することを通じて「いかに何らかのテーマを設定し,その範囲を限定するか」を目的としている。さらに,質的側面に着目した「属性アジェンダ」について考察を行った。この議論では,諸属性がどのように送り手から受け手に転移したのか,また受け手はどのように転移した諸属性を基にして頭のなかで対象を構築したのかを解明することが可能であり,より効果的なアジェンダ設定やそれを前提とした広告物作成のための指針が得られる有意義な議論だと考えられる。
著者
横山 淳一 山本 勝
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.79-84, 2010-02-15 (Released:2011-01-20)
参考文献数
4

本論文において,著者らは個人の生活習慣に関心を喚起するための生活行動記録システムを提案し,携帯電話で利用できるシステムのプロトタイプを開発した。生活行動記録システムは,食事や飲酒といった生活習慣に関わる行動について,利用者がそれらの行動を行う度にボタンを押すことで,時間および行動内容を記録するものである。本論文では,11名の大学生を対象に生活行動記録システムを利用する11日間の実証実験を行った。その結果,システム利用前と利用後で健康に対する関心および生活習慣に対して有意な向上が見られた。以上のことから,本システムが個人の生活習慣を見直すきっかけとなる有効性が示唆された。
著者
庄司 真人
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.151-156, 2011 (Released:2012-06-22)
参考文献数
22

本発表はチェーン組織をとる小売業に対するアンケート調査を基にして,顧客関係管理と市場志向との関係について考察するものである。市場志向尺度についてはさまざまな議論があるが,顧客関係管理と関連性が高いと考えられる「情報発生,情報伝播,対応」に関する尺度を利用し,それらと顧客識別,顧客重視,データ活用,従業員教育,それから関係成果との関係について考察している。これらの関係を統計的に分析した結果,市場志向と顧客関係管理には高い関連性が見られることがわかった。
著者
田原 静
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.48-54, 2017 (Released:2018-12-20)
参考文献数
8

電子書籍サービス等のデジタル・コンテンツ提供サービスでは,従来の有形グッズの所有とは異なり,利用者は所有対象に対する所有権を持たない。本研究では,これらのサービスが作り出す不安定な所有の状況に対する消費者の意識と反応,またサービスの一環として提供される,所有権を伴わない消費対象に対し所有意識を持つケースがあることを明らかとした。この結果は従来のデジタル・コンテンツおよびアクセス・ベース消費の研究を補完し,サービスの価値や利用者の満足度に関する経営診断に新たな知見を与える可能性を開く。
著者
秋葉 武
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18834930)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.190-199, 2005-10-10 (Released:2010-06-15)
参考文献数
14

近年, 多くの地方自治体とNPO間で組織間関係が生成し, 維持されるようになった。反面, 両者間で多くのコンフリクト (Conflict) が発生している。中間支援NPOおよび地方公共団体へのフィールドワークをベースにして, 本稿では以下の点について論じる。つまり, 組織間関係に関して地方自治体からNPOへの事業委託をキーワードとして, 組織論的アブローチを用いて検証する。またコンフリクトに関して, 特に地方自治体の弱いガバナンス機能に焦点を当てて分析を試みた。