著者
長谷川 尚史
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.143-154, 2000-08-15
参考文献数
27
被引用文献数
3

林分の地位格差が林業経営の収益性に与える影響について分析した。スギ人工林林分収穫予想表から3水準の地位(上,中,下)および2水準の植栽密度(3,000本/ha,6,000本/ha)の計6通りの仮想林分において,収穫表に沿った施業を行った場合の収益性に関して試算を行った。80年生時点の「密植」における「地位上」と「地位下」の格差は,利用材積で3.18倍であった。収入間伐を実施できるまでの年数は「地位上」で26〜27年生時点であるのに対し,「地位下」ではすべて保育間伐となった。主伐後の総収支は「地位上」では45年生以降の主伐で黒字となったが,「地位下」では80年生時点でも赤字となった。また賃金単価を変動させて分析したところ,賃金単価が高くなるにしたがって地位の低い林分における収益性が急激に悪化した。伐出費と間伐および主伐収入が均等になる年数を比較した場合,賃金単価が2,000円/人・日程度であれば地位格差はほとんど見られないが,賃金が上昇するにつれて地位格差は非常に大きくなった。以上の結果から林分の地位格差は収益性に大きな影響を与えており,これらをゾーニングして管理する必要があると思われた。
著者
今冨 裕樹 鹿島 潤
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.3-12, 2004-04-15
参考文献数
12
被引用文献数
1

本研究は温熱環境の視点から,生理的快適性に富むチェーンソー保護衣開発のための基礎資料を得ることを目的として,市販されている3種類のチェーンソー保護衣の衣服内気候を調べた。ズボンタイプの保護衣の着用は,冬季では,温冷感尺度は「やや暖かい」,快適感尺度は「快適」,春季では温冷感尺度は「暖かい」,快適感尺度は「不快」,夏季では温冷感尺度で「暑い」〜「非常に暑い」,快適感尺度は「非常に不快」に区分された。したがってわが国においてズボンタイプの保護衣の着用は冬季では適するが,それ以外の季節では温熱環境の視点から適用しにくいものと考えられた。チャプスタイプの保護衣の着用は,冬季ではズボンタイプの保護衣と比べて暖かさは劣るが,未着用に比べるとかなり暖かさが確保されること,春季では衣服内湿度が比較的低いためにさほど蒸れも感じられないこと,夏季では暑さや蒸れが感じられることがわかった。夏季では時折,留め具を緩めて保護衣内の換気をよくすることにより,暑さや蒸れによる不快感を緩和させることができるものと思われた。なお,保護衣内の温度上昇に伴う生体負担の変化を調べた結果,着用保護衣の違いから生じる温熱環境と生体負担との間に明確な関係を見出すことはできなかった。
著者
佐藤 宣子
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.67-69, 2011-01-31
参考文献数
5
著者
坂本 朋美 芝 正己 川村 誠
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.3-10, 2008-04-15

地域森林管理の担い手としての森林組合に期待が高まる中,日吉町森林組合における施業の団地化が注目を集めており,全国から研修が相次いでいる。本研究は,日吉型団地化施業の導入における現状と課題を明らかにし,他の森林組合への普及可能性を考察した。日吉町森林組合で研修を行った9森林組合に対し,日吉型団地化施業の導入状況と導入上の課題,導入に伴う変化を聞き取り調査した。その結果,5組合がほぼ同様の事業に着手,1組合は実践に向け準備中,3組合が導入を見送っていた。導入の有無には,所有者意識や優良材生産の有無など,各地域の林業をめぐる状況が大きく影響していた。導入に至った5組合には,研修前からの準備や他機関との連携などの共通点が見られた。団地化施業導入に伴う主な課題は,人材育成や職員間の連携など森林組合の体制の強化であった。また,団地化施業の導入に伴い,職員の意識や組合の体制に変化も見られ,日吉型団地化施業が単なる団地化促進策にとどまらず森林組合改革のきっかけになる可能性も示唆された。今後は地域の所有者意識や生産目標などを踏まえ,日吉とは異なる独自の施業法や見積りの立て方などを工夫していく必要がある。
著者
清水 裕子 酒井 秀夫 南 知栄
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.75-84, 1996-08-15
被引用文献数
3

新素材の作業服として,今回,綿・ポリエステル高次複重層糸織物の作業服Aと,アクリル極細繊維編物の作業服Bを下刈作業服に用いた場合の衣内気候について検討を行った。衣内温度,絶対湿度の変化の全体的な傾向は外気の黒球温度のそれに一致していた。作業服Aは,多量の発汗が生じたときは通気性が阻害され,衣内湿度が高くなっていた。作業服Bは吸水率が高くて通気性もよいが,汗で完全に濡れた場合には熱伝導率が大きくなる。作業服A,Bは本来,通常の屋外での着心地を重視した開発意図によるものであり,多量の発汗には適応しきれなかったが,例えば曇りで風があるときや,晴れていても湿度が低く,風があるときのように,風,湿度等の条件がそろえば,蒸散によって身体を冷やし,その機能を発揮することができるものと思われる。