著者
酒井 勝司
出版者
Carcinological Society of Japan
雑誌
甲殻類の研究 (ISSN:24330108)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.23-28a, 1986 (Released:2017-09-08)
被引用文献数
9 10

Upogebia narutensis sp. nov. is the fourth upogebid species found in the Inland-Sea, Japan. This species is closest to U. spinifrons from Australia.
著者
一寸木 肇
出版者
一般社団法人 日本甲殻類学会
雑誌
甲殻類の研究 (ISSN:24330108)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.177-182a, 1976 (Released:2017-09-08)
被引用文献数
6

日本のサワガニ属GeothelphusaなかでサワガニGeothelphusa dehaani(WHITE)の体色変異を神奈川県を中心に茨城県,千葉県,東京都,静岡県,山梨県,愛知県の各県にわたり調べ,次のような結果が得られた。サワガニの体色変異を調べたところ8型にわけることができ,それらの個体はBL型,RE型,DA型の3系統にまとめることができる。そしてそれぞれ一定の広がりをもって分布するように思われる。すなわち1)BL型地域(千葉県房総半島,神奈川県南部,静岡県東南部),2)RE型地域(静岡県西部,愛知県東部),3)DA型地域(茨城県中部,東京都西部,神奈川県北部・静岡県北東部・山梨県南部・長野県南部),4)BL・DA型混棲地域(神奈川県中部),5)RE・DA型混棲地域(静岡県北西部)の5つの地域にわけられる。
著者
荒川 好満
出版者
一般社団法人 日本甲殻類学会
雑誌
甲殻類の研究 (ISSN:24330108)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.40a-46, 1963-11-03 (Released:2017-09-08)

タカアシガニMacrocheira kaempferi DE HAANは,日本列島附近(相模湾-九州)の比較的深海(50〜300m)に棲息し,現棲甲殻類中,世界最大の種類として知られているが,従来,その生態・生活史等に関する知見は,きわめて乏しい。1961及び,'62年,広島県立宮島水族館で,延べ12尾におよぶタカアシガニを飼育し,その間,本種の性行動について観察する機会を得たので,以下に,その詳細を述べる。
著者
CHACE Jr. Fenner A.
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
甲殻類の研究 (ISSN:02873478)
巻号頁・発行日
no.16, 1987-07
著者
一寸木 肇
出版者
一般社団法人 日本甲殻類学会
雑誌
甲殻類の研究 (ISSN:02873478)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.57-60, 1980
被引用文献数
1 6

The author (1976) reported that the bio-geographical colouration of freshwater crab, Geothelphusa dehaani (WHITE) can be distingished fundamentally in three types as shown below : [table] The present short report deals with additional notes of the bio-geographical colouration of this species obtained from northern part of Honshu. In this area, all specimens are included in DA-type.
著者
伊藤 円 渡邊 精一
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
甲殻類の研究 (ISSN:02873478)
巻号頁・発行日
no.20, pp.35-42, 1991-12-31
被引用文献数
1

Fighting for a shelter between Palaemon pacificus and P.serrifer were investigated in aquaria. In both interspecific and intraspecific fighting,the smaller individuals were usually eliminated by the larger ones from the shelter. In the case that smaller individual was a winner, P. serrifer won more often than P. pacificus although P. serrifer was smaller. The second pereiopod was longer in P. serrifer than in P. pacificus. P. serrifer made up for smaller body size by larger second pereiopod length than P. pacificus relatively.
著者
安原 健允 青山 基圭 出口 吉昭
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
甲殻類の研究 (ISSN:02873478)
巻号頁・発行日
no.19, pp.79-82, 1990-12-31
被引用文献数
2

タカアシガニMacrocheira kaempferiの卵を培養して,ゾエア1・2期,メガロッパを経過し稚ガニまでの完全飼育に成功した。1990年3月19日に駿河湾戸田村沖で漁獲したタカアシガニの抱卵雌1個体を静岡県下田市にある日本大学農獣医学部下田臨海実験所の水槽で飼育し,1990年5月27日にこのカニの腹肢から卵を採取し,腰高シャレー(90×72mm)に400mlの海水を入れ水温15℃で培養した。ゾエア1期は8月15日から18日の間に孵化した。ゾエア2期には8月25日から9月2日の間に,また,最初のメガロッパは9月7日にできた。メガロッパが脱皮をして10月5日に最初の稚ガニができたが,メガロッパの期間は28日であった。タカアシガニでは,今迄に稚ガニを得ることができなかったので,この稚ガニが最初の記録となる。その後,8個体の稚ガニができたので合計9匹の稚ガニを得た。幼生の飼育条件は,アルテミアのノープリウスを餌料として与えた。割合は飼育海水1ml中,3,6,10個体とした区からそれぞれ2,2,5匹の稚ガニが得られた。また,飼育用シャーレーの底には砂の他に貝殻を砕いて0.5mm程度の厚さに敷いた。海水の塩分量は3.2-3.4%,水温は常に15℃を保ち毎日換水した。稚ガニは,甲幅1.9〜2mm,甲長3〜3,3mmでやや丸形をしており,第2歩脚の差渡しの長さは,甲幅の約5倍程度である。体色は薄い茶褐色,脚に赤褐色の小さな斑点がある。体表全体に剛毛が生えており,餌やアルテミアの死殻などを付けている。額棘は成体のカニと同様に左右の額棘と下に向く一つの額棘とで三角を呈して,タカアシガニの特徴を表わしている。
著者
セレーン ラオール 小田原 アキ子
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
甲殻類の研究 (ISSN:02873478)
巻号頁・発行日
no.4, pp.71-74, 1971-07

歴史と観察-酒井(1938)は,瀬戸(白浜)産,59×31のオスのnipponesisについて述べている。酒井に依れば,本種は次の点で大西洋産Portunus vocans A.M.E.と異なる。1)甲殻の後部が狭くなっている。2)前側縁歯は基部が幅広く先が尖っていない。3)心域は明確に稜線をなしていない。4)前鋼線は前方に向って強くカーブしている。5)鋏脚の長節には2棘でなく3棘ある。6)鋏脚長節の擦音器の棹は中途で途切れている。現在ある雌の標本は酒井(1938,1939)の観察引例と説明に一致する。鋏脚の長節の僅かな差異は恐らく標本の性差に依るのであろう。即ち(1)前縁において(第三の)後縁歯は酒井(1938)の標本よりも短かく,明かに未発達である。(2)発音器り桿は酒井の図ほど明確ではないが途切れている。前側縁腹面の発音桿が下眼窩の外葉の歯状縁に接して居り,又vocansについてラスバン(1930)が報告しているものと近似していることを記述する。酒井の図(1938)は,この点が相違している。窩眼外角は第一前外歯(酒井の第二,1938)の背面に位置する。即ち発音器の桿(本標本では27ある)の列は末端が下眼窩の外業の縁の5歯になっていることである。異る特徴の1の価値を正確にするために甲殻の後縁幅の長さを前側縁歯端間の最大計測値で比べてみた。この標本では甲殻の最大幅は後縁の幅の3.7倍である。それはnipponensisのType標本とは似ているが一方vocansではたった3.1倍でしかない。測定値はnipponensisのTypeについては酒井(1938)の図により,vocansについてはRathbun(1930)の図によった。ボルネオのPontianakからの標本記録はその地理的分布をかなり拡げた,そして本種は恐らく広くインド洋太平洋に分布しているという酒井(1938)の見解を確証した。私はエドモソソソ(1935)の標本即ちオアフ(ハワイ)採集の6×11の♂はnipponensisの幼型であるとする酒井(1938)の考えと一致している。タイプ標本の棲息環境は報告されていたい。現標本が77mの深さで採集された事は海岸近くにはなく又その記録の珍らしさを示している。
著者
本尾 洋 ブリ プラシット
出版者
一般社団法人 日本甲殻類学会
雑誌
甲殻類の研究 (ISSN:02873478)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.86-94, 1981
被引用文献数
5

フィリピンではウシエビポストラーバは養殖用種苗に利用されているが,時折査定ミスがみられる。そこでクルマエビ属ポストラーバの査定を試み,2種,2グループに分類した。1) P.monodon:大型で色素胞がよく発達,第1触角内鞭は外鞭の2倍以上, 2) P.semisulcatus:小型で尾扇中央部で色素胞を欠き,内鞭は外鞭の1.6-2倍, 3) P.merguiensis group:小型で色素胞の発達が極めて貧弱で,内鞭は外鞭の1.6倍以下, 4) P.japonicus group:中間型で,色素胞はよく発達するが,第6腹節背面に小棘が列生し,額角は眼の先端を越えない。
著者
武田 正倫 三宅 貞祥
出版者
一般社団法人 日本甲殻類学会
雑誌
甲殻類の研究
巻号頁・発行日
vol.4, pp.157-163, 1971

ヤワラガニ科の多くの種は河口の汽水域にみられるが,現在まで純淡水産の4種が知られている。それらはニュージーランドおよびオーストラリア産のHalicarcinus lacustris(Chilton),フィリッピン産のH.wolterecki Balss,中国中部産のNeorhynchoplax introversus(Kemp)およびイラク産のN.kempi(Chopra et Das)である。ここに報告する種も淡水産で,パラオ諸島,バベルダオブ島のガルドック湖付近の川で採集されたものである。本極は第3顎脚が口部を不完全に閉ざしていること,および雄の腹部が4節からなっていることによりNeorhynchoplax Sakai,1938に含まれる。この属のカニでは額角は通常3歯よりなるが,N.rostrata(Haswell),N.nasalis(Kemp)および本種においては1歯である。本種では額角が短い三角形の突起にすぎないが,他の2種では顕著である。他の特徴も著しく異なっているため上記既知種から容易に区別される。本種の模式標本は九州大学農学部動物学教室に保管されている。種の特徴の概略は下記のとおりである。Neorhynchoplax inermis sp. nov. 完模式標本においては,甲幅3.6mm,側壁を除いた背面の最大幅3.0mmである。甲は丸みのある三角形で,背面はほとんど平滑である。各域を分割する明瞭な溝が発達し,また背面の周縁にわずかな縁どりが認められる。前側縁はわん曲するが,側縁は互いにほぼ平行である。側線に近く側壁が突出し,甲の最大幅を形成する。眼窩外歯は認められず,また前側縁,側壁も歯ないし棘を欠く。額角はきわめて短い三角形の突起で,短毛で縁どられている。鋏脚の長節下縁に1小突起が認められるが,他の節は歯または棘を有しない。不動指および可動指は先端近くで内側にわん曲し,それぞれ3ないし4個の互いにかみ合う歯を備える。歩脚の長節の前縁末端は突出せず,また指節後縁も辣を有しない。指節は前節とほぼ等長である。追記-最近オランダのホルサイス博士により淡水産ヤワラガニに関する論文が公表され,ニューギニア,パプァ区産の1種Halicarcinus angelicusが追加された。ホルサイス博士はニューカレドニア産のH.pilosus(A. Milne Edwards)も加えて合計6種を数えている。H.pilosusは汽水域にもみられるので"淡水産"としてはやや疑問があるが,同属の淡水産3種と共通の特徴をもつ。したがって,H.pilosusおよびここに報告したNeorhynchoplax inermisを含めると,ヤワラガニ科の淡水産の種は2属7種となる。
著者
ライス エー エル
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
甲殻類の研究 (ISSN:02873478)
巻号頁・発行日
no.4, pp.62-70, 1971-07

ウィリアムソン(1965)はオーストラリアのニュー・サウス・ウェルスのハッキング港沖で,眼上部や甲殻背面側面に非常に長い棘をそなえたホモラ科のメガロパを採集し,このメガロパについて記述し,一応Paromola petterdi(Grant)のメガロパとした。著者はさらに1967年に,このメガロパがHomola orientalis Hendersonに属するのではないか,そして別の亜種か,または酒井(1965, pl.6, Fig.4)によって図示された非常に短かい側棘を有するメガロパと同じ種の変種であることを提案した。疑いなくウィリアムソンのと同じ種に属する第3番目のメガロパとまたHoloma orientalisの幼蟹は両方とも相模湾産で,天皇陛下の御採集品であるが,最近酒井恒博士の好意により私の手元に入った。オーストラリアの標本と異なり日本のメガロパはその付属肢を全て有し,ウィリアムソンが観察できなかった二三の細かな形態を具えている。しかしながらさらに重要なことはそれが相模湾に産するために同定に便宜を提起していることである。
著者
小川 数也 松崎 加奈恵
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
甲殻類の研究 (ISSN:02873478)
巻号頁・発行日
no.16, pp.39-46, 1987-07

三宅島周辺浅海域に生息するムギワラエビの摂餌生態を実験室内にて観察した。本種には3タイプの摂餌方法がみられる。第1のタイプは鉗脚で歩脚のGroomingやCleaningを行った後,第3顎脚を使って鉗脚指節・掌節剛毛に捕捉された懸濁物質塊を掻き取り,これを摂蝕する方法である。この行動は休みなく,ほぼ規則的に行われる。現場で固定した標本の胃内容物は,デトライタスと砂粒であったことから,この摂餌方法が基本的なものと思われる。第2のタイプは粉末餌料等を投与した直後にみられるもので,第3顎脚を伸ばし,盛んにすき取り運動を行い懸濁餌料を直接捕捉する方法である。また,餌料を投与すると歩脚を順番にゆるやかに伸ばし,タイプIの摂餌も同時に始まる。第3のタイプは狭い容器内でみられた特殊な場合で,海綿類など他の試料と一緒に入れた際,これを鉗脚・第3顎脚で直接捕捉しむさぼり喰うものである。本種はツノサンゴ類やヤギ類に懸着共生するのに都合の良い極めて長い歩脚を有しているが,これを十脚甲殻類に広くみられるGroomngやCleaningの他に,摂餌の機能に利用している。なお,これまでの観察記録から,本種の寿命はほぼ一年,抱卵は年1回と推定される。
著者
武田 正倫
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
甲殻類の研究 (ISSN:02873478)
巻号頁・発行日
no.7, pp.69-99c, 1976-02

オウギガニ科の種の同定は難かしいことに定評があるが,これは種類が多く,形態的にも変化に富んでいるため,近縁種を見い出すことに相当の経験を必要とするからでろあう。種類が多いことは当然古来からの文献が多いことも意味し,各種の異名の整理や文献の入手もなかなか思うにまかせない。これらの前提条件がある程度かなえられれば,種の同定自体は決して難かしくはないが,属以上の系統分類には多くの種を調べる必要があり,困難な問題が多い。オウギガニ科の属に関しては,最近の傾向として,パリ自然史博物館のD.GUINOT女史やすでに引退したR.SERENE博士が主として追及しているように,雄の第1腹肢による細分が著しい。さらに上位の体系として口腔部に位置する出水溝の形成の有無によって,無溝類と有溝類に分けられることが多い。しかし,これは亜科よりももっと広い意味をもっていることは明らかで,他の科と比較すれば,それぞれXanthidaeとPilumnidaeとして科に昇格させることも可能ではないかとさえ考えられる。オウギガニ科に関してもっとも重要な貢献をしているALCOCK(1898)は無溝類を3亜科に,有溝類を4亜科に細分しているが,有溝類はその後BALSS(1932)によって3亜科にまとめられている。本報告ではパラオ諸島産のカニ類にもとづいて,1試論として14亜科に細分したが,とくに無溝類の亜科に異論があるものと思われる。Actaeinae, Carpiliinae, Chlorodiinae, Cymoinae, Etisinae, Euxanthinae, Galeninae,XanthinaeおよびZosiminaeの9亜科は無溝類の特徴を,Eriphiinae, Pilumninae, Polydectinae, PseudoziinaeおよびTrapeziinaeの5亜科は有溝類の特徴をもつ。これらを一応系統順に解説するが,ここでは紙面の都合によりCarpilinaeとXanthiinaeのみを扱っている