著者
讃岐 徹治 一色 信彦
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.381-386, 2005-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
7

痙攣性発声障害は、まれな疾患で病態も全く不明といってよく、有効な治療もないと考えられてきた。現在、神経筋接合部に作用するボツリヌストキシンが痙攣性発声障害に応用され、外来で治療でき恒久的な障害も残さない利点があることから、世界的に普及している。しかし有効期間が3-6カ月であり再注射が必要という問題点もある。われわれは、内転型痙攣性発声障害患者に対して声門過閉鎖の防止を目的に喉頭枠組みを開大し、持続的で再発の可能性が少ない甲状軟骨形成術2型を1997年6月から行い、極めて良好な結果を得ている。そこで2004年10月までに得られた手術実績 (64症例、66件) をもとにそれらの症例をまとめ、その手術適応と手術のコツを中心に述べた。本手術の術式は決して難しくはないが、甲状軟骨の切開、剥離さらに開大幅の調節を慎重に正確に行うことが、手術成功に必要な条件であると考えられた。
著者
樋上 弓子 樋上 茂 竹内 裕美 生駒 尚秋
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4Supplement3, pp.S174-S176, 2000-01-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
6

閉塞性睡眠時無呼吸症候群 (OSAS) の気道閉塞部位は軟口蓋部と舌根部が多く、声門部が原因となることはまれである。われわれは睡眠中のみに声門開大障害が生じたOSASの1例を経験したので報告した。症例は68歳男性で主訴はいびきであった。内視鏡検査では、覚醒時の声帯の可動性は良好であったが、睡眠中には吸気時に声門は閉鎖し、呼気時も声帯の開大は副正中位までに制限されていた。中咽頭食道内圧測定では、無呼吸時の中咽頭圧は全く変動しなかったが食道内圧は最大-23.0cm H2Oまで陰圧化し、舌根部以下の狭窄が示唆された。中枢性疾患の合併を伴わず、特発性Gerhardt症候群と診断した。
著者
野坂 彩 竹内 裕美 河本 勝之 花本 美和子
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4Supplement3, pp.S115-S118, 2000-01-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
13

一酸化炭素 (CO) 中毒事故後に両側の高度難聴を来した心因性難聴の1例を経験した。症例は54歳女性で、自営の工場で一酸化炭素中毒事故が起こり、夫や従業員を助ける際に自身も軽度、COに暴露された。事故後の警察、消防、マスコミへの対応でかなりのストレスを受けたと思われる。CO中毒に対して高圧酸素療法を行ったが、治療中に両側の高度難聴を生じた。自覚的には聾となったが、純音聴力検査、聴性脳幹反応、語音明瞭度検査および自記オージオメトリーの検査結果と矛盾しており、心因性難聴と診断した。精神科的治療を併用しているが、現在まで症状の改善は認めていない。