著者
井野 千代徳 稲村 達哉 岸本 麻子 岸本 由里 久保 伸夫 山下 敏夫
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.840-843, 1997-11-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
11

食事に関連し耳下腺腫脹, 顔面紅潮, 喘鳴などを主訴とする症例を報告した. 患者は35歳女性で医師. CTでは異常所見なく, 耳下腺造影でも大きな異常は認めなかつたが造影後に著しい耳下腺腫脹と顔面紅潮, 呼吸困難が出現した. 初診時の耳下腺唾液は混濁などなく清明であり, その塗沫にて多数の好酸球をみとめた. アレルギー性耳下腺炎と診断したが, その原因としてヨードを疑つた. 報告されている類似疾患のなかでもヨードが疑われた例があり, ヨードと唾液腺との関係についても考察を加えた.
著者
坪井 康浩 東野 哲也 牛迫 泰明 森満 保
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.717-725, 1996

1995年5月までに宮崎医科大学耳鼻咽喉科にて行われた人工内耳手術は25例26耳であり, このうち2耳において顔面神経迷路部に近接する電極で顔面神経刺激が誘発された. 第1症例の原因は聴神経腫瘍による骨破壊や手術による骨削開で蝸牛骨包と顔面神経管の間の骨隔壁が脆弱となり漏電が生じたものと思われた. また第2症例では内耳梅毒に伴う骨病変のため迷路骨包の導電性が変化したためと考えられた. 術前のCTで, 迷路骨包と顔面神経管を境する骨が不明瞭であつたり, 迷路骨包の骨に病的所見を認める症例では顔面神経刺激誘発の可能性を考慮しておく必要がある. 本合併症に対して現時点では該当するチャンネルを不活性にするしか方策はないが, 電極の構造的な改良やマッピングの工夫とともに症例によつては蝸牛と顔面神経との間に手術的に絶縁体挿入の策も考慮すべきと考えた.
著者
竹内 裕美 樋上 茂 田中 弓子 山本 祐子 生駒 尚秋
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.S134-S137, 2000

鼻腔通気度検査は、鼻腔の開存度の客観的評価法として臨床で広く使用されている。通常、測定結果は、正常者から得られた正常値と比較して評価される。一方、左右鼻腔の鼻腔抵抗が経時的に変化する生理的現象は、nasal cycleとしてよく知られているが、鼻腔通気度検査で得られた鼻腔抵抗値をnasal cycleを考慮して検討した報告は少ない。本研究では、47人の20歳代の健康成人を対象として、1時間ごとに7時間にわたり、anterior法 (ノズル法) で鼻腔抵抗を測定した。総鼻腔抵抗の変動幅 (最大値と最小値の差) は、片側鼻腔抵抗の約1/4であったが、平均0.1Pa/cm<SUP>3</SUP>/sの変動があった。また、1時間前の鼻腔抵抗を100とした場合の変化率は、総鼻腔抵抗では平均22.8%であり片側鼻腔抵抗の変化率の約1/2であった。本研究の結果から、総鼻腔抵抗値へのnasal cycleの影響は片側鼻腔抵抗に比べると少ないが、鼻腔通気度検査の評価に影響を与えるには十分なものであることが明らかになった。
著者
井野 千代徳 芦谷 道子 南 豊彦 浜野 巨志 中川 のぶ子 多田 直樹 小野 あゆみ 山下 敏夫
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.194-200, 2003-05-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
7
被引用文献数
1

昨今うつ病の増加が指摘されている。特に軽症うつ病の増加が注目されている。軽症うつ病とは身体症状が強いことに特徴があるが、その身体症状の中に耳鼻科医にとってなじみ深いものが多い。そこで、耳鼻咽喉科とうつ病との関係を調べた。対象とした疾患は耳鼻科医が一般外来でしばしば遭遇する疾患の中でその発症に心因性要素が関与するとされる疾患ないし症状のうち突発性難聴、低音障害型感音難聴、めまい、耳鳴、Bell麻痺、顎関節症、口内異常感症を対象とした。方法はSDSを用いた。結果、306人中56人がうつ病の範囲に入った。検査期間の4カ月に少なくても56人のうつ病患者が耳鼻科を受診したことになる。疾患別では口内異常感症が最もSDS値が高く、50例中23人46%がうつ病と判定された。他疾患がすべて18%未満であることより驚異的に高い数値と思われた。これからさらにうつ病の増加が指摘されている。耳鼻科医も積極的に対応すべきと考えている。
著者
浜田 慎二 福島 孝徳 神尾 友和
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5Supplement5, pp.1123-1125, 1991-10-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
3

1, 三叉神経痛 (TN) に対するmicrovascular decompresssion施行例1533例において聴神経腫瘍23例が発見された.2, 聴力障害および平衡機能障害が先行してみられていたにもかかわらず, TNを発症するまで診断がつけられていた例はなかつた.3, TN発症後もTNの症状が典型的であることが多いため, 聴神経症状がマスクされ, 鑑別診断を困難にしていた.4, TNを発症させる程度の大きさの聴神経腫瘍は, ほとんどがCTで発見可能であつた.
著者
藤井 正人 神崎 仁 大築 淳一 小川 浩司 磯貝 豊 大塚 護 猪狩 武詔 鈴木 理文 吉田 昭男 坂本 裕 川浦 光弘 加納 滋 井上 貴博 行木 英生
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.225-231, 1994-03-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
8

セフポドキシムプロキセチル (CPDX-PRバナン錠®) は三共株式会社が開発した経口用セフェム系抗生物質で広範囲な抗菌スペクトルムを有するのが特色である. 今回, われわれは耳鼻咽喉科領域の感染症に対する有効性と安全性を検討した. 166症例に対して CPDX-PRを症状に応じて一日200mgないし400mg分2投与を4日以上最大14日間投与した。著効が51例, 30.7%にみられ, 有効例は68例, 41.0%にみられた. 疾患別では急性扁桃炎と急性副鼻腔炎が高い著効率を示した. 慢性中耳炎の急性増悪, 急性咽頭炎では高投与量で良好な効果を示した. 自覚的症状の改善度では, 咽頭痛の改善が良好な結果であつた. 投与前後の細菌検査を行つた20例30株では菌消失率では77%と良好な結果であつた. 副作用は1例に発疹が見られたのみであつた. 以上よりCPDX-PR は耳鼻咽喉科感染症に対して高い有効率と安全性を示すと考えられた.
著者
ト部 晋平 浜村 亮次 藤野 有弘 田中 弘之 宮國 泰明
出版者
耳鼻
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.174-181, 1995

マスキングなしの気導域値に左右差があるとき, オーバーマスキング (OM) の可能性がない最高のノイズを用いる骨導聴力検査のマスキング法を考案した. 本法の手順はA BC法やABCI法よりも単純であり, 理論的に最も能率的なマスキング法である. さらに, 非検耳の気導骨導差 (A-B gap) が気導音の両耳間移行減衰量 (IaA) に等しい場合でも, プラトー法を応用することによつて, 検耳の真の骨導域値を推定できる場合があることを述べた. A-B gapとIaAの関係式は, マスキング法を理論的に解析する上で最も重要な式である.
著者
高畑 淳子 松原 篤 池野 敬一 新川 秀一
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.269-275, 2002

近年、好酸球浸潤の程度が鼻内ポリープの再発に深く関与すると考えられてきている。今回、われわれはポリープと篩骨洞粘膜における好酸球と肥満細胞の浸潤が慢性副鼻腔炎の予後にどのような影響を及ぼすかについて、形態学的に詳細な検討を行った。慢性副鼻腔炎の鼻内視鏡手術初回手術例21例を対象として、手術時に、ポリープと篩骨洞粘膜を採取した。活性化好酸球、肥満細胞を免疫組織化学的に染色し、各々の部位における陽性細胞数を算出した。予後判定には術前術後の副鼻腔CT陰影をスコア化したものから改善度を求め、活性化好酸球、肥満細胞の浸潤程度と比較検討した。その結果、篩骨洞粘膜への活性化好酸球浸潤の程度と術後の改善度との間において有意な負の相関 (回帰分析:p&ge;0.05) が認められた。このことから、篩骨洞粘膜における活性化好酸球浸潤の程度が最も予後を反映することが示唆された。
著者
彭 解人 程 雷 黄 暁明 三好 彰 陳 潔珠
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.609-623, 1998

上咽頭癌 (nasopharyngeal carcinoma: NPC) は中国では最も多い悪性腫瘍の一つである。疫学的には広東省を中心とする中国南部の住民に多発する傾向がある。疫学的特徴としては、著しい地域集中性、群体易感性と家族集中現象および発癌率の一定性がみられる。病因学研究では、発癌の要因にEBウィルスの関与をはじめとする生活環境因子の影響が強い。中国におけるNPCと遺伝子との関連性について、癌遺伝子ras、c-myc、c-erB-2と癌抑制遺伝子RB、p53、p16などが注目されている。なお、遺伝子TX の発現に関して検討した。早期診断について、1986-1995年、中山医科大学癌センターは広東省のNPC高発生地域で10万人の住民を対象として集団健診を行った。健診の結果に基づき、NPC高発生地域での癌健診方式を提案し、NPCの前癌状態、前癌病変の判断基準を定めてきた。臨床分類に関しては、1992年に中国は新たなNPC臨床分類法を出した。この分類法はUICC分類法 (1996、改訂案) と比較して、両分類法とも大体一致しているが、NPC臨床分類法のほうが癌の進展と浸潤程度をより重視し、TN 分類についても合理性が高い。治療の面では、NPCは放射線感受性の高いものが多いので放射線治療が主体となる。多分割照射法・加速多分割照射法および個体化治療方案も重視されている。三次元照射治療はNPC放射線治療の技術で最も技術的に進歩をとげたものである。放射線療法に化学療法、外科治療を併用することで、生存率とQOLの改善はより効果的になる。前癌病変阻害剤と遺伝子治療に関する研究は重要な課題であり、新たな治療法として期待が持たれている。
著者
菊池 良和 梅﨑 俊郎 澤津橋 基広 山口 優実 安達 一雄 佐藤 伸宏 中川 尚志
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.41-46, 2017-03-20 (Released:2018-04-23)
参考文献数
34

吃音症は成長していくにつれ、表面上の吃音は軽減したようにみえる。しかし、吃音を隠す努力を行うことで、思春期・青年期に社交不安障害(SAD)を合併することがある。 そのため、吃音症における社交不安障害の合併とその性質を把握することが必要である。 本研究では、2011 年から 2016 年まで九州大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科に吃音を主訴に来院した 100 名(平均 24 歳、男女比 3.7:1)に、社交不安障害の重症度尺度である LSAS-J を記入したものを解析した。年代で比較すると、10 代、20 代に比べて、30 代は有意に LSAS-J の値が低下していた。性別差を検討すると、10 代のみ女性が男性よりも有意に LSAS-J の値が高かった。また、成人吃音者では、50%が SAD に相当した。以上より、吃音を主訴で来院する場合は、表面上の吃音だけではなく、SAD の合併の有無を考えて診療する必要があることが示唆された。
著者
ロールアツヘル フーベルト
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.209-217, 1966-12-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
22

Mikrovibration (体表面微細振動) の研究が日本ほど盛んに行なわれている国は他になく, その日本の科学雑誌に寄稿するのは喜びにたえない. さて, こゝでは生理学的および技術的問題点を取り上げてみたい.Mikrovibration (以下MVと略す) は温血動物のみにみられる全身的の不断の微細振動であると定義することができよう. これは肉眼的な振動と比較され, Miner Tremor (稲永, 1959) とかphysiologischer Tremor (Stuart, et al. 1963) と呼称された. だが Tremorというのは一定条件 (寒さ, 興奮) で起こる生体の反応や脳疾患 (パーキンソン氏病) で起こるものであり, MVは生涯間断なく続くものである. しかもこれは生体の反応でなく, 永続的な筋活動である. 従つてTremorというよりMVと命名する方が妥当である. それで私は「MVとは温血動物のみにみられ, 全身に存在する永続的な振動で, 健康成人は7~14cpsの周波数をもつものである」と定義する.生物学的問題: MVの生物学的機能はまだ不明である. しかし体温保持と筋緊張が問題となる. 運動神経を切断された四肢ではMVが消失する (菅野, 1957) ことから, これは筋線維の収縮によつて生ずるといえる. またMVは温血動物のみに存在することから, 永続的筋収縮によつて体温を保持するに必要な熱量が生産されていることと関係があると思われる. 身体の弛緩状態および睡眠中は筋肉の活動電流は認められない (Buchthal, 1958). だがその場合でも存在する収縮性筋トーヌスはいかなる機構でなされているかという問題が生ずる. 冷血動物の筋トーヌスはいわゆる遅速線維-温血動物にはみられない-の収縮によつて生ずるようである (Reichel, 1960). また組織と体液のリズミカルな振動が生体の化学的作用に無関係とは思われない. これらの点に大きな意義を有すると考えられるMVの力学的力は, 鉛板による測定実験で, 意外に大きいことが判明した.MVのもう一つの生物学的作用は迷路の受容器の刺激にある. 三半規管の内リンパ液がMVによつて一定の振動をなしていて, そこに存在する受容器は常に刺激されていると考えられる. その刺激が中枢へ伝えられることによつて, 人間は安静時でも方向知覚を保持するのであろう. この仮説の証明のために, 平衡障害患者と正常人で比較実験が行なわれ, 前者では周波数は高く, 振幅は小さいことが実証された (永淵, 1966). この仮説から次のことが考えられる. すなわちMVを欠く冷血動物は温血動物に比較して, 迷路から体位についての情報が少なく, そのため平衡維持が困難であろう. このように考えると, MVは系統発生学にも意義をもつてくる. 温血であることもMVによつて初めて生ずることから, 哺乳動物や鳥類に重要な二つの器官-体温と平衡調節-は系統発生史上ほぼ同時期に現れたといえる.MVの発生に二つの仮説-心搏説と筋原説-がある. 心搏説 (Brumlik, 1962, Buskirk & Fink, 1962) によると, MVは心搏動による身体の共振であると述べている. だがMVは死後数分間認められる (Rohracher, 1954, 菅野, 1957, 吉井, 1965). 実際には心搏の影響をMVから完全に分離することは出来ない. MVの機構は筋原説でうまく説明出来る. 各運動神経線維は多くの筋線維を支配しており, 個々の筋線維が, それぞれ収縮を行なうと周囲に振動を及ぼし, それが綜合されて一つの持続的な微細運動を形成する. 菅野 (1957) と吉井 (1963) は動物実験で頸部脊髄を切断してもMVは存続することを証明した. 脊髄反射が筋線維の収縮に大きな役割を果していることは明らかである. 菅野は脊髄後根を切断すると, その領域の MVは一時増大したあと消失することを証明した. このことから菅野と福永 (1960) はMVの発生に脊髄反射が関与していると述べている. MVの発生機序には脊髄反射以外に中枢支配も考えねばならない. 温度が低下すると, MVの周波数は増加し, それによつて筋肉内の熱量が産生される. この調節は非常に正確に行なわれており, その中枢は視床下部にある. この中枢と筋収縮との間には, 脊髄の運動細胞, ガンマ運動神経, 筋紡錘が関与している.低温ではMVの周波数は高い成分が優位となり, 振幅は減少する (Rohracher, 1954, 1958). だがこの逆の事実が発見された. すなわち人体のMVは冬でその周波数が高く夏で低いという実験結果である. また温帯地方の住民は寒帯地方の住民よりMV周波数は高い (日本人とオーストリア人の比較実験). この説明はまだなされていない.技術的問題: 技術的に最も困難なことはMVの正確な測定である. Marko (1959) は光学的にMVを可視出来るように試みた. 他には電気力学的にこれを把握しようと工夫されている. MVが正絃波振動であれば正確に測定出来るが, 実際は複雑なので正確な測定は困難である. MV測定の理想は, ピツクアツプが小さくて軽いこと, そして振幅と周波数を積分せずに正確に記録出来ることである. 現在はまだこれがないので, 加速度型ピツクアツプと積分装置で測定しなければならない. MVはこの他, 筋活動の本体, 臨床医学的応用, 更に筋活動に必要なエネルギーと体温との関係等の問題をもつている.
著者
森満 保 平島 直子 松元 一郎
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.20-30, 1973

In 1971 Morimitsu et al reported on the effects of sodium chloride crystals administered on the round window membrane upon the cochlear microphonics which were recorded from the basal turn of the cochlea of guinea pigs with differential electrodes technique. The amplitude of CM after the administration of NaCl-crystals showed changes in a regular pattern which is composed of an initial overshoot, a primary decrease, a recovery and a secondary decrease. It was considered that the action of NaCl-crystals should be affected by the permeability of the round window membrane, the production and absorption of the inner ear fluids and the vulnerability of the organ of Corti by the biophysical changes of the fluids.<BR>In order to clarify the mechanism ofthese changes of CM and the effects of sympathomimetic and sympathoplegic drugs in the cochlea, the changes of CM modified by NaCl-crystals were observed after the intravenous injection of the following drugs; norepinephrine, isoproterenol, epinephrine, phenoxybenzamine and propranolol. The &alpha;-receptor stimulant (norepinephrine) prolonged the initial overshoot and depressed the grade of the primary decrease of CM, but did not influence the grade, of the secondary decrease. The &beta;-receptor stimulant (isoproterenol) depressed the grades of both decreases and therefore the recovery after the primary decrease was complete. The &alpha;-receptor blockade (phenoxybenzamine) caused a slight decrease of CM prior to the initial overshoot, and depressed the grades of both decreases. The &beta;-receptor blockade (propranolol) acted to depress the grade of the primary decrease of CM, but did not influence the grade of the secondary decrease. The &alpha;-&beta;-receptor stimulant (epinephrine) caused a slight decrease of CM prior to the initial overshoot and influenced so as to depress the both decreases. The action of epinephrine showed a slight resemblance to that of the 13-receptor stimulant. The results obtained showed that the &beta;-receptor stimulant and the &alpha;-receptor blockade have a favorable effect on the reactivation of the homeostatic processes govering the labyrinthine fluids and have a effect to minimize the irreversible damage of the organ of Corti occurring after the placement of NaCl-crystals. Considering different actions between &alpha;-receptor acting drugs and the &beta;-receptor acting drugs, it is suspected that the sympathetic nerves in the cochlea also consist of the a and &beta;-receptor which act in a sense antagonistic. As the several possible mechanisms of the actions of these drugs, an effect on the permeability of the blood vessels of the cochlea and of the round window membrane besides an effect on the cochlear blood flow was considered. Furthermore, an effect on the sympathetic nerve which was recognized in the basilar
著者
多田 直樹 南 豊彦 中川 のぶ子 浜野 巨志 小野 あゆみ 井野 千代徳 金子 明弘 山下 敏夫
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.18-23, 2004-01-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
22
被引用文献数
1

顎関節症にはさまざまな全身症状の合併が認められ、中でも耳閉塞感をはじめとする耳症状の合併は古くから報告されているが、その成因に関してはいまだに明確ではない。今回われわれは顎関節症患者76名を対象として、まず耳閉塞感を訴えた患者の割合を算出し耳閉塞感の有無それぞれの中で顎関節症のI型からIV型まで分類した。次に耳閉塞感を伴う顎関節症患者に対して耳管機能検査を施行した。その結果耳閉塞感を訴えた症例が44名 (57.9%) で、耳閉塞感を訴えなかった症例は32名 (42.1%) であった。また耳閉塞感のあった症例での顎関節症の分類はIII型が最も多く、I型、IV型はわずかであった。一方耳閉塞感のなかった症例は耳閉塞感のあった症例と比較してIII型がわずかで1型が大きな割合を占めていた。耳管機能検査は耳閉塞感を伴う顎関節症患者44名中37名に施行した。その結果37名中23名 (65%) が開放パターン、1名 (3%) が狭窄パターン、13名 (32%) が正常パタ-ンであった。今回の検討結果から顎関節症に伴う耳閉塞感の原因は耳管開放症によるものと思われた。
著者
岩沢 武彦
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.31-48, 1967-03-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
19

Kimotab is a proteolytic medicine which consists of Bromelain and Trypsin. It was given through mouth to 24 chronic paranasal sinusitis patients.They consciously responded to it in 5 to 14 days. The intranasal appearance became better in 10 to 14 days. Roentgenologically the effects appeared in 10 to 20 days.Eleven of the patients (50%) remarkably responded, nine (37.5%) medially, and the rest three(12.5%) were unresponsive. So, the patients who were responsive amounted to 87.5%.This percentage is very high probably because Kimotab is a mixture medicine and the author selected the patients who had been suffering for a shorter period (one year on an average) and whose intranasal appearance was mild.
著者
荻野 敏 高橋 桜子 川嵜 良明 水津 百合子 入船 盛弘
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.31-36, 2000-01-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
9

アスピリン喘息 (AIA) を対象に日常の食事などにより発作を増悪させる可能性のある物質 (添加物) について問診により検討した。9名中6名で何らかの物質により症状の悪化、出現を見た。誘発物質は (1) 歯磨き、 (2) たくあん、漬物類、 (3) 缶ジュース類、 (4) カレー、香辛料、 (5) 野菜、果物類の5群に分類でき、それぞれにAIAの誘発に関連の可能性がある防腐剤や色素が含まれていた。また見られた症状は喘息、鼻炎の出現から喉のイガイガ感、異物感、咳などであった。このようにNSAIDs以外にも多くの物質により発作の増悪がみられ、このことがAIAの治療を難しくし、またこれらの指導が治療に重要であると思われた。
著者
荻野 敏 入船 盛弘 有本 啓恵 岩田 伸子 荻野 仁 菊守 寛 瀬尾 律 竹田 真理子 玉城 晶子 馬場 謙治
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.247-251, 2006-07-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
5

73名のスギ花粉症患者を対象に、スギ、ヒノキ花粉の飛散量にかなりの変動が認められた2001年1月からの3年間、特異的IgE抗体価の経年的変化を検討した。スギ、ヒノキの大量飛散によりスギ、ヒノキ特異的IgE抗体価は翌年の1月には有意に上昇し、飛散少量年の翌年には有意に低下する経年的な変化が見られた。それに対し、HD、カモガヤでは同様の変動は見られなかった。この変動は年齢にかかわらず認められた。以上のように、特異的IgE抗体価はアレルゲンの曝露量に極めて大きな影響を受け、スギ、ヒノキ花粉の大量飛散後には、特異的IgE産生が亢進し、翌年まで高抗体価を持続することから、少量飛散年と予測されても被曝量を減らすことを考慮した生活指導が必要と思われた。
著者
久保 和彦 荒木 弘幸
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.162-166, 2010 (Released:2011-07-01)
参考文献数
2

医療保険のないホームレスに対する医療行為には種々の制約があるため、多くの社会的・医学的問題を抱えている。今回、国民医療費について大いに考えさせられるホームレス症例を経験した。症例は、40 歳、男性。船員で、海上勤務ばかりで自宅を持たず、陸上勤務時に置き引きに遭い、船に戻れず解雇されてホームレスになった。右血性耳漏が出現して当科を受診し、右真珠腫性中耳炎再発の診断で右耳手術 (canal wall down) した。退院すると通院加療ができないため、入院を継続して術後処置を続け、定期的なガーゼ交換が必要なくなってから退院した。この症例で、ホームレスでなければ払う必要のなかった過剰な医療費は 177 万 1,695 円だった。景気回復は、経済的な理由でホームレス化した約 3 分の 1 のホームレスを一般社会に戻せる。政府は保険診療点数を減らすことで国民医療費を下げるのではなく、もっと本質的な問題に力を注ぐべきであろう。
著者
渡辺 宏 小宮山 荘太郎 笠 誠一 広戸 幾一郎
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.236-241, 1976 (Released:2013-05-10)
参考文献数
19

Physiological properties of the pharyngeal constrictor muscles were investigated by an electromyogram. The adult dogs were carefully anesthetized under neuroleptoanalgesia. Bipolar hooked wire electrodes were inserted into upper and lower portion of the hyopharyngeal, thyropharyngeal and cricopharyngeal muscle.The contraction of the middle pharyngeal constrictor muscles showed a regularity of phasic pattern in fashion sinchronized with expiration. However the cricopharyngeal muscle burst unconcerned with respiration.The contraction of the cricopharyngeal muscle was transitorily inhibited on swallowing. The bursts of the hyopharyngeal muscle were synchronized with thyropharyngeal muscle contracted simultaneously.Bursts of the upper portion of the thyropharyngeal muscle preceded to the bursts of lower portion with a time lag of 200 msec, which meant us occurence of peristaltic movements.
著者
君付 隆 堀之内 謙一 外山 勝浩 春田 厚 紀井 登志哉 原 由紀代 鳥原 康治 松浦 宏司 大迫 廣人 竹中 美香
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.131-136, 2005-03-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
18

耳に掻痒感を訴える患者は多く、一般的にステロイド含有軟膏などの塗布が行われている。今回、耳掻痒感の訴えのある患者に抗ヒスタミン薬であるベシル酸ベポタスチンを投与し (T群) 、その効果をアンケート (かゆみスコア) により検討した。投与3日後、1週後で有意差をもってスコアが改善した。即効性の検討においては、服用後30分で既にスコアの改善を認めた。プラセボ群 (通常の治療群、P群) との比較においては、T群とP群の両群で1日後よりスコアの低下を認めたが、T群とP群間での差は認めなかった。
著者
五十川 修司 鳥谷 龍三 犬童 直哉 大礒 正剛 田中 文顕 鳥谷 尚史 中野 幸治 江浦 正郎
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.27-33, 2007-01-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
10

湿疹におけるかゆみの誘発に関してはヒスタミンが重要なメディエーターと考えられている。従って、外耳道湿疹におけるかゆみの軽減に抗ヒスタミン薬は有用であると予測される。今回、われわれは外耳道湿疹患者 (15歳以上) を無作為選択 (封筒法) により、ステロイド外用剤 (ベタメタゾン・ゲンタマイシン配合剤) 単独治療群 (30例) と第二世代抗ヒスタミン剤である塩酸フェキソフェナジン1201ng/日を併用した治療群 (39例) に分け、1週間の治療後に外耳道所見、ならびに自覚症状 (かゆみスコアにて評価) の改善度を比較し、塩酸フェキソフェナジンの外耳道湿疹における有用性を検討した。治療終了時における外耳道所見の改善度ではステロイド外用剤単独治療群と塩酸フェキソフェナジンを併用した群の間に有意差は認められなかったが、自覚症状 (かゆみ) においては併用群に有意に高い改善効果を認めた (p<0.05)。外耳道湿疹におけるかゆみに対して塩酸フェキソフェナジンの有意な改善効果が示されたことになり、外耳道湿疹におけるこの薬の有用性が示唆された。