著者
森木 貞信
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.210-215, 1963-08-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
13

The author reported a case of injury by air-rifleshot. The patient was 4 years old female, who was shot through the left eye ball and posterior ethomoid cell. The bullet was found lodging in the anterior portion of the left maxillary sinus. Ten days later it was removed by means of Caldwell-Luc Operation.The literatures were reviewed with reports of 45 cases of foreign body in maxillary sinuses in Japan. Unfortunately the patient lost her left sight.
著者
蓑田 涼生 宇野 研吾 福島 正人 土生 健二郎 杉 宣宏 石川 哮
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.780-786, 1994-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
12

オフロキサシン (以下OFLX) はグラム陽性菌, グラム陰性菌に広い抗菌力が認められているキノロン系抗菌剤で, 耳用液は各種感染性耳疾患において用いられている. 耳浴時間は従来の耳浴時間にならつて10分間とされているが, 薬剤の性質を考慮すると, 耳浴時間の短縮は充分可能であると思われる. 今回, 従来通りの10分耳浴群と2~3分の短縮耳浴群の2群においての臨床効果について比較検討を行い, その可能性について検討した. その結果2~3分耳浴両群においても10分耳浴と同様に高い臨床効果と安全性を認めた.
著者
木村 淳子 藤吉 昭江 井手 朱里 西村 美紀 光吉 佳奈 福島 邦博
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.222-227, 2020-11-20 (Released:2021-11-20)
参考文献数
9
被引用文献数
1

難聴者が社会で適切な支援を受け、よりよく生きるためには難聴当事者自身が自身の聴こえや補聴方法など必要な配慮について周囲に説明できるセルフアドボカシーの能力が欠かせない。セルフアドボカシーの育成のためには幼少期からの系統だった教育プログラムが必要だが、学齢期を通じてどのようにセルフアドボカシーが発達するかは明らかになっておらず、またそれを適切に育成していくカリキュラムも確立されていない。本研究では、小学校在籍中の聴覚障害児を対象にしたセルフアドボカシー能力の評価を目的に、米国版のチェックリストを元に日本語版を作成、本邦におけるセルフアドボカシーの現状について検討すると同時にチェックリストの有用性を検討した。その結果、 1 )学年が上がるにつれて得点も上昇するが、高学年でも「習熟している」レベルに達するのは 20%にとどまること、 2 )学年別の習得率は項目によって差があること等が認められた。聴覚障害児の福祉のためには、セルフアドボカシー習得のための方略を準備することが必要であるが、そのためにもまず本邦における現状把握が必要である。
著者
唐帆 健浩 兵頭 義浩 松村 優子 北川 洋子 田部 哲也 北原 哲
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.454-458, 2003-11-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1

嚥下障害患者に対して、内視鏡を用いた嚥下機能検査と咽頭食道造影検査を実施し、誤嚥の検出精度に関して両者を比較し、内視鏡検査の信頼性を検討した。対象は、誤嚥を疑われて当科を受診した86例である。患者の原疾患は、脳血管障害30例、ALS7例、脳腫瘍術後7例などである。誤嚥に関して内視鏡検査と造影検査は高い連関性を示した。内視鏡検査にて誤嚥を認めたのは86例中40例であり、このうち造影検査でも誤嚥を認めたのは32例であった。造影検査での誤嚥検出を基準とすると、誤嚥に関する内視鏡検査の鋭敏度は74%、特異度は81%であった。両検査は、嚥下機能検査として相補するものであり、特に内視鏡検査は誤嚥のスクリーニングに有用と考える。
著者
野田 哲哉
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.275-281, 2001-07-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
17

動揺病の発症を最も説明できるのは感覚混乱説といわれているが、筆者には次のような疑問がある。感覚混乱の分類は適切か。自律神経症状の発現を説明できるのか。動揺病の発症に前庭が不可欠なのは本当か。これらの疑問に対する筆者の答えはいずれも否定的である。動揺病の発症には感覚混乱ではなく、平衡機能障害が重要な役割を果たしている。
著者
東野 正明 林 伊吹 高橋 俊樹 須原 均 二村 吉継 櫟原 新平 青野 幸余 松尾 彩 川上 理郎
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.Suppl.2, pp.S181-S188, 2010 (Released:2011-12-01)
参考文献数
8

心臓血管外科手術患者において、術後の嚥下障害を術前や術直後に予測できるかどうかを検討した。症例は、心臓血管手術後経口摂取に問題があり、本院栄養サポートチーム (NST) に栄養管理の依頼があった 20 例 (男性 14 例、女性 6 例) で、手術から最終食事内容に至るまでの期間が 1 カ月未満であった 8 例 (A 群) と、1 カ月以上かかり術後の嚥下障害が大きな問題となった 12 例 (B 群) に分けて、両群間で比較検討した。その結果、心臓血管手術後嚥下障害を起こす要因として、年齢 (70 歳以上)、Body mass index (BMI)≧25 の肥満もしくは BMI < 18.5 の低体重、高度心機能低下 (EF ≦ 40%) の有無、脳梗塞の既往の有無、呼吸器疾患の既往の有無、緊急手術か否か、大動脈手術か否か、長時間手術 (10時間以上) か否か、の 8 項目のうち 4 項目以上に該当すると嚥下障害を引き起こす可能性が高いと考えられた。その中でも緊急手術、肥満、大動脈手術が影響していると考えられた。この 8 項目をスコア化したものと手術から最終食事形態に至るまでの日数との間に相関が認められた。また、心臓血管外科手術後患者の嚥下障害に対する NST 介入の効果も示された。術前スコアから術後の嚥下障害のリスクがあると予測される患者家族に対しては、十分な術前説明をするとともに、適切かつ迅速な対策を講じる必要があると考えられた。
著者
北島 敦子 西田 之昭 安田 宏一
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.1218-1223, 1979-08-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
11

When a 31-year-old man, lying on his left side, was cleaning his right ear with an earpick made of bamboo, his child touched the earpick by accident. In no time at all, he developed earache, tinnitus and hearing impairment. On the 6 th disease day pullsating otorrhea occurred. Otologic examination revealed severe sensori-neural hearing loss in the right ear with a prolonged rightward nystagmus. An antibiotic drug regimen coupled with blockage of the stellate ganglion brought about, in about one and a half months, an arrest of the otorrhea and recovery of hearing to a level of 30 dB on the average. The nystagmns also disappeared. A test for vestibular function (rotation test) demonstrated no residual abnormalities with no left-to-right differences.Of great interest is the fact that the patient restored his hearing to a conversable level after sustaining an injury to the inner ear with a leak of perilymph and probable damage of hair cells of the cochlea. This favorable outcome is probably explained by the intactness of endolymph which facilitated return of function to hair cells with recovery of perilymph.
著者
宮本 佑美 永野 広海 大堀 純一郎 黒野 祐一
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.154-160, 2020-09-20 (Released:2021-09-20)
参考文献数
30

ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)は過去には Histiocytosis X とされ、病状に応じて Letterer-Siwe 病、Hand-Schüller-Christian 病、好酸球性肉芽腫に分けられていたが、現在はすべて LCH と表現されている。本疾患は腫瘍性疾患と炎症性疾患の両方の特徴を併せ持つ特異的な疾患である。LCH はさまざまな臓器で組織傷害を来す疾患であるため、症状は発熱、皮疹、難治性の中耳炎、難聴、骨痛など多岐にわたる。耳鼻咽喉科領域では、天蓋部を除く頭蓋顔面骨の病変は中枢神経晩期合併症を来し得る中枢神経リスク病変である。これまでの報告では側頭骨領域が多く、眼窩、篩骨洞領域は症例報告が散見されるのみで極めてまれである。今回われわれは、当初顔面外傷による眼瞼腫脹が疑われ当科受診し、眼窩から篩骨洞に原発した限局性病変の LCH の診断に至った症例を経験したため、若干の文献的考察を加えて報告する。
著者
野田 哲平 松本 希 髙岩 一貴 小宗 静男
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.140-147, 2015-07-20 (Released:2016-07-01)
参考文献数
9

難聴の本質はコミュニケーション障害であり、言語獲得、学業、就労、家庭など人生のさまざまなステージで多大な問題を引き起こしている。現在広く用いられている補聴の機器としては補聴器と人工内耳があり、これらの装用者は難聴患者の増加に伴って今後増加すると予想される。しかし、補聴器はその外見や価格などからすべての難聴者に受け入れられているとは言い難く、また難聴の程度によっては十分な効果が得られないことも多い。反響や残響、周囲の騒音レベルなどによっても、補聴器や人工内耳の効果は減退する。 こういった問題を補完するため、2013 年冬に難聴支援スピーカー Comuoon® が発売された。強い指向性と高音域を増強する周波数特性を持ち、聴取改善に寄与するとされる。その有用性を検証しここに報告する。
著者
全田 貞幹
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.64, no.Suppl.1, pp.S64-S67, 2018-11-20 (Released:2019-11-01)
参考文献数
3

Recently, the standard treatment for head and neck cancer in each stage include various treatment modalities (surgery, radiotherapy and chemotherapy). Complex regimens such as TPF induction chemotherapy followed by cetuximab with radiotherapy or surgery followed by chemoradiotherapy have various adverse reactions and these often cause treatment interruption and multidisciplinary approaches are necessary. It is important that we have common recognition for the same matter in multidisciplinary treatment, however, I think we don't have enough skill to use common terminology criteria yet. As for hematological toxicities, there are objective borders between grade 1,2 and 3,4. On the other hand, most of non-hematological toxicities have subjective borders and this judgement often need global assessment which consist of findings, ADL and patient reported outcome (PRO). To evaluate non-hematological toxicities, discussions with medical staffs are mandatory. Then, we should discuss about how to use 'terminology' in clinical practice.
著者
前山 忠嗣 前原 法文 進 武幹
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.581-588, 1993-07-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
17

慢性副鼻腔炎患者20例に「オースギ小青竜湯エキスG」を投与し, その有効性および安全性について検討し, 次のような結果を得た.1) 有効率 (やや有効以上) は短期 (3~6カ月) 投与群では75%, 長期 (7~12カ月) 投与群では92%であり, 全体としては85%であつた.2) 他覚所見より自覚症状の改善率の方が高かつた. とくに鼻閉, 鼻汁, 後鼻漏の改善率が優れていた. 嗅覚障害に対してはあまり効果がなかつた.3) 副作用は認められなかつた.4) 本剤は副鼻腔炎の治療に有用であると考える.
著者
藤吉 昭江 福島 邦博 伏見 久未子 北野 朱里 菅谷 明子
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.136-142, 2021-05-20 (Released:2022-05-20)
参考文献数
12

人工内耳装用を行った言語習得期前難聴児で、知的な障害がなく、音に対する反応も良好であるにもかかわらず言語発達の遅れを呈した児(disproportionate language impairment:DLI)に対して、音韻処理過程を考慮した言語指導を実施した 2 例について報告した。いずれも知的な遅れなく、また人工内耳装用下での聴取閾値も 20 − 30 dBSPL で良好な反応を示していたが、言語発達では 3 歳以上の遅れを呈していた。両症例とも非語の復唱で著しい困難さを呈しており、音韻認識の障害の合併を推定した。種村の既報をベースにした音韻認識をターゲットにした言語指導を行い、それぞれ指導後の 1 年間で順調な言語発達の伸びがみられた。音韻障害に起因する DLI 児に対しては、病態に応じた言語指導が有効である可能性が示された。
著者
平川 勝洋 杉本 嘉朗
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.811-815, 1979 (Released:2013-05-10)
参考文献数
7

Patients suspected of having neuralgia of the superior laryngeal nerve were treated by nerve block. The block was performed using the technique originated by Hoffman, using 1% lidocaine as the anesthetic. Fifteen of eighteen patients (83.3%) responded with diminution or disappearance of pharyngo-laryngeal pain.Patients with a history of pain of long duration tend to respond less well than patients with a shorter duration of symptoms.There were no complications. We conclude that patients suspected of superior laryngeal nerve neuralgia, which is characterized by pharyngo-laryngeal pain, tenderness midway between the hyoid bone and thyroid cartilage 1 cm anterior to the superior thyroid cornu, and no known organic lesion, may benefit considerably from this technique. Alcohol block or neurectomy should be considered for patients with severe pain who do not respond to the lidocaine block.
著者
君付 隆
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.16-20, 2005-01-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
11

甲状軟骨上角の形成異常は、欠損や内方への屈曲例がこれまで報告されているが、舌骨大角とともに外側に屈曲偏位したまれな症例を経験したので報告した。症例: 71歳、男性。一年前より右頸部を触れると腫れた感じがあり、同時に圧痛があった。触診で頸動脈分岐部の奥に辺縁明瞭な弾性硬の隆起物を触れ、甲状軟骨の辺縁と考えた。3DCTにて外側に屈曲偏位した右甲状軟骨上角と、それに伴った右舌骨大角の外側偏位を認めた。
著者
池田 勝久 小林 俊光 伊東 善哉 高坂 知節
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.535-538, 1988-03-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
5

Twenty-two patients (30 ears) with tinnitus were given Tsumura-Daisaiko-to and its clinical usefulness was evaluated. The drug was remarkably effective in 16.7% of the ears, moderately effective in 6.7%, slightly effective in 26.7%, and not effective in 49.9%. About 46% of the patients showed a tendency to improve tinnitus. The drug showed a significant decrease of serum cholesterol and triglycerol values and was suggested to affect the auditory system via metabolism of lipid.
著者
井野 千代徳 稲村 達哉 木下 卓也 加藤 真子 柳田 亜由子 井野 素子
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.759-764, 1994-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
19

唾液腺型の高アミラーゼ血症を主訴とした2症例を報告した. 1例目は, 20歳の女性で, 嘔吐などがあり, 20kgを越す体重の減少があり, anorexia nervosaが疑われた. 両側の顎下腺腫脹があり, 穿刺組織診で唾液腺症と診断された. 2例目は, 40歳の女性で, 既往歴として高尿酸血症と甲状腺機能亢進症がある. 後者の方は, 現在コントロールされているが, 前者は, 依然として高値のままである. 両側の耳下腺の腫脹があり, 穿刺組織診で唾液腺症と診断された. 唾液腺症に高アミラーゼ血症を伴う例は, anorexia neruosaに合併した唾液腺症以外は報告されていない. 唾液腺症の腺房細胞の顆粒は, clear, dark, mixedに分類されるが, clearな顆粒を有した腺房からは, 唾液中にアミラーゼが多く分泌されるという. 今回報告した2症例の分泌顆粒はclearなものが優位なため, 高アミラーゼ血症を呈したものと考えた.
著者
山口 優実 荒川 友美 川口 美奈子 東野 好恵 松本 希 中川 尚志
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.121-129, 2018-07-20 (Released:2019-07-01)
参考文献数
10

UD トークは、音声認識機能を用いて難聴者と健聴者とのコミュニケーションを支援するソフトである。しかし、その音声認識精度は完璧とはいえない。われわれは、その音声認識ソフトを利用して構音障害患者の発話明瞭度評価を客観的に行う方法を検討した。 標準ディサースリア検査の教材用音源を UD トークに聴き取らせたところ、UD トークは健常者以外の音声を高率に聞き取れず、構音障害の程度に応じた聞き取り成績を示した。 UD トークは 36/53 の音声で言語聴覚士による評価に沿った評価を下し、15/53 の音声で言語聴覚士による評価より厳しい評価を下し、残りの 2/53 の音声で言語聴覚士より甘い評価を下した。この評価方法を利用し、従来言語聴覚士の主観的評価に頼っていた構音障害患者の発話明瞭度が客観的に評価できる可能性が示唆された。
著者
西 康行 平川 治男 佐々木 淳
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.37-41, 2013-01-20 (Released:2014-02-07)
参考文献数
11

うつ病の既往を持ち、精神症状の増悪を主症状に当院精神科入院となり、副甲状腺腺腫摘出術後、精神症状が改善した副甲状腺腺腫の 1 例を経験した。基礎疾患に精神疾患を有する場合、副甲状腺機能亢進による高 Ca 血症に伴う精神症状が、基礎疾患の増悪ととらえられ、診断、治療が遅れることがあり、精神症状を主症状とする副甲状腺機能亢進症があることを認識すべきと考えられた。また今回の症例において、副甲状腺腺腫摘出術により精神症状が改善しており、精神症状の改善に関して、副甲状腺腺腫摘出術が有効であると考えられた。
著者
松尾 聡 中村 陽祐 松尾 紀子 竹内 裕美
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.57-62, 2021-03-20 (Released:2022-03-20)
参考文献数
12

頭部低位に体位変換(Head-down tilt:HDT)すると、交感神経活動が抑制され一過性に血圧が低下する。この血圧応答は、HDT による体液の頭方移動で圧受容器が賦活された結果生じたと考えられるが、前庭器が関与する可能性がある。そこで頸部前屈により頭位変換し、同様の応答が起こるか麻酔ウサギを用いて調べた。腹臥位、水平位を保ち、45° 頸部を前屈し、頭部を下方に 5 秒かけて頭位変換した。そして 1 分間その姿勢を維持し、動脈圧と腎交感神経の活動を記録した。この頸部前屈刺激によって、交感神経活動が抑制され一過性に動脈圧が低下した。動脈圧低下応答は自律神経節遮断薬であるヘキサメソニウムの投与で消失し、両側前庭障害群で著明に減弱した。これらの結果は、HDT や頸部前屈によって左右を軸に頭部を下方に頭位変換する前庭刺激が、交感神経抑制を介し動脈圧を低下させることを示唆している。