著者
村上 雄一 丹羽 幹 服部 忠
出版者
名古屋大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1987

長寿妙高選択性ゼオライト触媒を調製するための第一段階である脱アルミニウム法について研究した. ここでは, 主に塩酸の濃度を変えることによって種々の脱アルミモルデナイトを調製し, キャラクタリーゼションによって得られる構造的特徴とMTG反応における触媒寿命とを対比することによって, 長寿妙なゼオライトの持つ特徴を把握するための研究を行った.キャラクタリーゼションとMTG反応のの結果以下の事実を得た.(1) 塩酸濃度を上げるほど脱アルミニウムの程度が進むが, 結晶性や結晶粒子径にはおおきな変化はみられない. B酸, L酸の割合にも大きな変化はみられない. 酸量はアルミニウム濃度の減少に比例して低下するが, 酸強度とアルミニウム濃度には一義的な相関性はみられない.(2) アルミニウムのゼオライト結晶内部布は脱アルミニウムによって大きく変化する. 結晶内部から脱アルミニウムが進むと酸強度が効果的に弱められ逆に外部からの脱アルミニウム程度が高い場合には酸強度を弱めることなくしかも, 細孔入口径を狭めるために, 大きな分子の拡散が著しく不利になることが分かった.(3) MTG反応における寿命はゼオライト内部のアルミニウムが効果的に除去され, 酸強度が弱められ, 細孔構造が維持されている場合に非常に長くなることが分かった.以上の結果長寿命なモデルナイトを脱アルミニウムによって得るためにはゼオライトの内部から効果的に脱アルミニウムすることが重要である. これはゼオライトを均一に脱アルミニウムすることに対応する. したがって, さらに均一に脱アルミニウムするための条件を検討したところ, 脱アルミニウムの温度が極めて重要なパラメーターであることが分かった.
著者
錦見 盛光 松井 仁淑
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

ヒトを含む霊長類はビタミンCの合成ができないが、その原因は合成経路で働くグロノラクトン酸化酵素(GLO)の欠損による。われわれは、機能を有するラットのGLO遺伝子と機能を失ったヒトのGLO遺伝子の塩基配列をすでに報告した。本研究では、ヒトの遺伝子において特定された4つのエキソン(VII,IX,X,XII)の配列についてラットの配列と比較し分子進化学的検討を加えた。ヒトのGLO遺伝子における非同義置換は、遺伝子が機能をなくした後は選択圧を受けないため、同義置換と同じ頻度で生じてきたと推定される。この推定が正しいと仮定して、ヒトとラットの間の非同義サイトにおける置換数の値(0.16)と霊長類の同義サイトの進化速度(2.3×10^<-9>/サイト/年)とから、ヒトがGLOを失った時期は約7,000万年前以後と推測した。また、チンパンジーとマカクのゲノムDNAを鋳型にしてPCRを行い、エキソンXを増幅して得られたDNAの塩基配列を決定した。その結果、ヒトの配列と比べたホモロジーはそれぞれ97.6%と89.7%であった。これらの値は霊長類の祖先がGLOを失って以降、GLO遺伝子で塩基置換がランダムに起きていることを示しており、この遺伝子が進化の中立説を説明する恰好の例であることが分かった。さらに、ヒトの配列においてエキソンXIは欠失していることが分かっているので、この欠失が類人猿においても認められるか否かを調べた。ヒト、チンパンジー、およびゴリラのゲノムDNAを鋳型として、エキソンXからエキソンXIIにわたる領域をPCRによって増幅した結果、いずれも同一サイズ(23.5kbp)のDNAが得られたことから、エキソンXIの欠失はこれらの類人猿の分岐以前に起きたものと想定された。