著者
今西 幸男 松田 武久 川口 春馬 片岡 一則
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

長さ5cmのポリウレタン管の内壁に細胞増殖因子と接着因子を共固定化し,管の一端にシードした内皮細胞が培養によって成長し,他端まで管壁を一様に覆うのに要する時間が約1/2に短縮された。また,90日以上培養を続け,管壁が完全に内皮細胞層で覆れたあとも,細胞層ははく離しなかった。さらに,共固定化PMMA膜を用いて培養した内皮細胞のプロスタサイクリン分泌量は,流殖因子だけを固定化した場合の約1,7倍であった(今西)。ボロン酸素含有率を高めた水溶性ポリマーは,リンパ球の増殖能を有し,リンパ球増殖促進剤としてレクチン様の機能を有することが明らかとなった。このような合成ポリマーによるリンパ球活性化は,非抗原性,安定性など,天然レクチンに比して優れた特徴が期待され,新しい生物応答調節剤としての展開が考えられた(片岡)。表面構造をさまざまな制御した高分子ミクロスフェアを用いて,表面構造との生体成分との相互作用性の関係を解析した。また,DNA固定化ミクロスフェアを用いてDNA結合性転写活性因子の精製効率を上げるためDNAの固定化量を高めることを試み,成功した。さらに,細胞接着因子の活性部位テトラペプチド(RGDS)を固定化したミクロスフェアに対する顆粒球の認識応答として,特異的な活性酸素に基づく酸素消費を観察した(川口)。人工基底膜や平滑筋細胞を組め込むことにより安定性を高めた内皮細胞層は,非凝血性を著明に促進し,また,階層性構造をとることにより,高次の配向組織化をもたらした。平滑筋細胞の形質転換は,(1)生体中の環境因子(体液性因子および内皮細胞との細胞間相互作用),(2)拍動,および(3)三次元環境による細胞の形態,などの諸因子によって起こると考えられた(松田)。
著者
金嶋 聰 川勝 均
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

阿蘇火山広帯域地震計ネットワーク観測(ASO94)の実施中の阿蘇火山は、表面活動サイクル(数年程度の周期を持つとされている)中の『湯溜り』と『土砂噴出』のステージにあった。観測期間中においては、15秒に及ぶ長周期の微動の発生と爆発的な土砂噴出が顕著な現象であった。これまでに短周期の微動の起こり方や土砂噴出などに対応して、数種類の長周期微動が観測されている。これら長周期微動は、継続時間20〜30秒を持つ1〜2サイクルの孤立したイベントとして観測されることが多い。また周期15秒を基本モードとし、7.5秒や5秒程度の高次モードを持ち(川勝ほか、1994)、震源は中岳第一火口の南西深さ1から1.5kmである点(松林ほか、1995)で共通している。さらに、基本モードの波形を用いてモーメント・テンソル解を推定すると、等方震源成分と火口列に平行(北北西-南南東)な鉛直クラック成分の混合と解釈できる解を持つ。以下にこれまでに分類できている2種類の長周期微動についてその特徴をまとめる。(1)連続的な短周期微動発生が無い“静穏"期(1994年4、11月):引きで始まり、最初に短周期(2Hz程度)の振動を伴う。基本モードが卓越する場合や高次モードが優勢な場合がある。(2)土砂噴出が頻発している時期(1994年9月):押しパルスが卓越するが、小さい引きで始まる事が多い。短周期振動は伴わない。高次モードに対応する周期(5-7秒)が卓越する。爆発的な土砂の噴出の100秒程前に、超長周期の押し(膨張)の変位が生じる。この変位に伴い、長周期微動と同じ震源位置を示すパルスも発生する(松林ほか、1995)。このパルスは長周期微動(2)に類似した特徴を備えているが、多くの場合卓越する周期はより長く、長周期微動の基本モードの周期(15秒)程度である。噴出の直前には長周期微動(1)と酷似したシグナルが現れ、小さな短周期振動がはじまる。この短周期振動が30〜40秒継続した後、大きな引きの長周期パルスに伴い短周期振動の振幅が急増する。この時刻が概ね火口湖からの土砂噴出に対応する(川勝ほか、1995)。噴出開始後、超長周期変位は収縮に転じ、長周期パルスの振幅は小さくなる。収縮が止まると短周期振動も終了する。長周期微動(1)は、始まりが引きであること、および土砂噴出直前の波形に似ていることから、震源での減圧による収縮とそれに続く振動と考えるのが自然である。最初の短周期微動は水蒸気の移動など圧力解放のきっかけに対応している可能性が考えられる。長周期微動(2)は、押しが卓越すること、土砂噴出直前の膨張に伴うパルスに類似すること、から高温ガスとの接触による地下水の突発的蒸発がもたらす震源での圧力の増加に対応する可能性が考えられる。
著者
杉万 俊夫 米谷 淳 佐古 秀一 三隅 二不二
出版者
大阪大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1987

災害時の避難誘導方法として, 指差誘導法, 吸着誘導法という2つの対照的な誘導法をとりあげ, それらの誘導法によって引き起こされる群集全体の行動パターンを解析した. 指差誘導法とは, 誘導者が, 大きな声と動作で避難方向を指示して誘導する方法で, 従来, 避難訓練の場で最も広く用いられてきた代表的誘導法である. 一方, 吸着誘導法とは, 各誘導者が, 自分のすぐ近辺にいる1名ないし2名の少数の避難者に対し, 自分についてくるよう働きかけ, それら少数の避難者を実際に引きつれて避難するという方法である. したがって, 吸着誘導法においては, 誘導者が出口の方向を具体的に指示したり, 多数の避難者に対して大声で働きかけるようなことはしない. 第1に, 現場実験により, 吸着誘導法の方が, より迅速な避難誘導を達成できる場合があることが見いだされた. しかし, いかなる場合にも, 吸着誘導法が有効であるわけではない. 特に, 誘導者と避難者の人数比を操作した実験を行なったところ, 誘導者対避難者の人数比が比較的小さいときには, 吸着誘導法がきわめて有効であるが, 人数比が大きくなりすぎると, 吸着誘導法では十分な避難誘導を実現できなくなり, むしろ, 指差誘導法の方が有効であった. 第2に, 2つの誘導法を比べると, 誘導によって生起する群集全体の行動パターンに著しい違いが見いだされた. すなわち, 吸着誘導法が成功する場合には, まず, 誘導者, および, その直接的働きかけを受けた1名ないし2名の避難者から成る即時的小集団が形成され, その即時的小集団が「雪だるま式」に周辺の避難者を巻き込むことによって, 出口に向かう一本の群集流が形成された. 一方, 指差誘導法においては, 吸着誘導法の即時的小集団に相当するような特定の核が形成されることなく, 個々の避難者が, ばらばらのまま, 均質的に出口方向に移動した.
著者
肥田野 登
出版者
東京工業大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

本研究では、これまで注目されることの少なかった都市内移動過程における移動者の行動に関して、文献調査および実態調査から基礎的な知識を得た。(1)文献により移動の機能の調査これまでの研究により示唆されていた移動の機能の具体像を都市内での移動過程を描いた文献をもとに分析した。対象としては日本の明治以降の小説、髄質に加え、現状にとらわれない自由な視点から移動をとらえているまんが「ドラえもん」をとりあげた。この結果、移動の機能としては大きく情報授受、心理状態の変化の2つがみられ、それらの内容が利用交通手段や移動の頻度(定期または一時)により異なることが示された。(2)移動の機能の実態調査JR常磐線、営団地下鉄丸の内線および日比谷線を対象として車内の乗客の行動の観察調査を行った。この調査では、筆記に加え小型ビデオカメラを用いて乗客の行動と周囲の状況を同時に連続してとらえた。また、本調査では車内での乗客間および乗客と設備の間での情報の授受形態を明らかにすることに重点を置いた。得られた結果としては、まず乗客の密度が情報授受形態に大きな影響を与え、座席定員程度の時がもっとも情報の授受が活発に行われることが示唆された。また、駅の間隔や地下と地上との出入りにより生じるリズムが乗客の行動をある程度規定し、したがって、これらの条件の違いによって乗客の情報授受形態が異なる可能性が示された。
著者
長田 敏行 渡辺 昭 岡田 吉美 中村 研三 三上 哲夫 内宮 博文 岩淵 雅樹
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1991

体勢上レンガ積み構造に例えられる植物体に発達された内・外的刺激に独特の応答反応を示す現象の分子機構の解明を目的として立案された本研究組織において、研究期間終了にあたって次のような成果が得られた。まず、植物ホルモンのうち作用が最も広範かつ劇的ゆえ重要とされるオーキシンについて発現制御をする遺伝子を探索して得られた遺伝子は、グルタチオンS-トランスフェラーゼをその翻訳産物と同定したが、これはオーキシン制御の遺伝子で機能の同定された最初であった。また、やはりオーキシン制御の遺伝子で細胞増殖に関っていると推定されるGタンパク質のβ-サブユニット様の遺伝子も同定したが、これは植物で初めてのGタンパク質関連遺伝子であり、タンパク質Cキナーゼを介する新しい信号伝達経路の展開を予測させたが、同様な展開は蔗糖により誘導されるβ-アミラーゼでも、Ca依存タンパク質キナーゼの介在を予測させ、斯界に本邦発の情報として貢献できたといえる。また、植物ホルモンが形態形成に果たす役割についても遺伝子の同定がなされた。一方、植物への病原菌の感染に伴う応答機構については、エリシターに対応する受容体の同定、中間で作用するホスホイノチド代謝経路の推定もなされ、病原菌抵抗性植物の再生も試みられた。さらに、植物ウイルスであるタバコモザイクウイルスの感染に関しては、ウイルスの複製酵素領域が抵抗性を支配していること、またウイルスの細胞間移行に関する30kDaタンパク質のリン酸化が抵抗性に関与していることも示された。なお、本研究グループで広く用いられたタバコ培養細胞株BY-2は、高度な同調化が可能ということで世界18ヶ国で使われるにようなったが、その流布にあたっていは本研究グループが大いに貢献してた。
著者
高杉 英一
出版者
大阪大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1988

当研究の目的は電磁弱統一模型の現象論的解析、およびこの模型では起こり得ないような現象の可能性を調べこの模型の妥当性を吟味することにある。そのために次のような3つのテーマについて研究を行った。1)CPの破れの起源の研究:CPの破れの起源は小林・益川機構によるものか、他の機構なのかは重要な問題である。Bメソン系でCP非対称性は純粋に弱い相互作用だけで決定されることから、CPの破れの起源解明の重要な鍵となってきた。当研究では、CPが最初から破れている小林・益川理論とは対照的なCPが自発的に破れる理論での諸現象を考察し、小林・益川理論の予言と比較した。特にこの模型ではトップクォークの質量は、500GeV程度の軽い質量でよいことや、色々の崩壊モードで差が現れることがわかった。[論文1]2)超粒子を探る研究:超粒子は超対称性理論に現れる粒子である。たいてい質量は1000GeVぐらいと考えられているが、ジーノZ^^〜と呼ばれているZボソンの相棒の質量はよく分かっていない。νの相棒のν^^〜が非常に軽い場合があるが、その場合2つの電子と共に2つのν^^〜を放出する二重ベータ崩壊が考えられている。この崩壊巾はZ^^〜の質量にのみ依存するため、二重ベータ崩壊の寿命からジーノの質量の下限がえられ、MZ^^〜>1GeVを得た。[論文2]3)ダイバリオンを探る研究:最近筑波大の岩崎らは格子ゲージ理論の計算により6つのクォークssdduuの束縛状態であるH粒子の質量が核子の質量の2倍より軽いことを示した。当研究ではN_i→N_f+H,N_i→N_f(H)+e^++νの理論計算と実験との比較を行い、M_H>18700GeVをえた。結果としてHが2つに核子の質量より軽い可能性はほとんど排除された。[論文3]
著者
高木 幹雄 本多 嘉明 柴崎 亮介 内嶋 善兵衛 谷 宏 梶原 康司
出版者
東京理科大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

1)多数のパソコンをネットワークを介して並列に結合することで,多量のGACデータを効率的に自動処理するシステムを開発し,GACデータの処理を開始した。一年分のデータを約1ヵ月で処理することが可能となった。2)東南アジアを対象にして,ランドサット画像を自動モザイクし,さらにランドサット画像にNOAA画像を組み合わせることで,土地被覆分類をより効率的に,かつ正確に行う手法を開発した。時系列ランドサット画像から土地被覆変化を抽出する作業を行っている。3)土地被覆分類結果や,植生分類結果の現地検証用データとして撮影された地上写真を,ネットワークを介して分散データベースとして構築する為のソフトウェアを開発し,データベース化を行った。これにより,それぞれの撮影者が別個に作成したデータベースを統合的に共有することが出来る様になり,地上写真データを容易に蓄積することが可能となった。4)衛星データから時系列に得られた植生指標を,さらに気温や降水量のデータと組み合わせることにより,植生の季節変化と環境条件(気温,降水量)の空間的,時間的相関関係を明らかにすることが出来た。ユーラシア大陸では,特に寒冷地となる東シベリア地域では,森林が緑となるのが最も遅いものの,落葉するのも最も遅いこと等興味深い発見があった。5)土地の農業生産性推定を基礎とする土地利用変化の推定モデルに関して,そのフレームワークが確立され,タイ国を対象として検証を行った。また,生産性の推定の基礎としてアジア地域で最も重要な穀物である水稲に関する生産性推定モデルを開発した。6)衛星画像から推定される植生指標の信頼性を改善する為に,大気補正手法,地形補正手法などを開発し,実装を行い,NOAAデータから定期的に植生データを作成し,コンポジット画像を作成している。
著者
三隅 二不二 ハフシ モハメッド 米谷 淳 橋口 捷久
出版者
奈良大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1990

災害時、もしくは災害警戒期における人々の対応や態度を社会的なネットワ-クの観点から分析することが本研究の課題である。昭和64年には、スモ-ルワ-ルド・メソッドというネットワ-ク調査手法で焼津市を予備的に実験調査することによって、市役所・消防署などの防災機関と一般市民との間に潜在するネットワ-クを実験調査した。その結果、防災関係者と一般市民との間には、平均2〜3ステップ程度の連鎖のリンクでもって双方を連結させてやることが可能であろうことや、防災→市民ル-トよりも、市民→防災ル-トの方が連鎖が完成しやすことなどを明らかにした。平成1年度には、伊東市で生じた海底噴火に対する住民の災害時の行動や態度と日常のネットワ-クについてヒアリング・郵送調査をもって検討した結果、ネットワ-クの密な地区と疎な地区とでは、防災訓練への参加度や防災意識の高低などが、密な地区のほうが疎な地区よりも高い傾向があることが見いだされた。本年度は、再び伊東市の自主防災組織のリ-ダ-や市役所・消防などの防災関係機関、特にガス・電気・電話等のライフライン組織の責任者などに、おもにアンケ-トの結果を評価してもらうヒアリングを実施するともに、様々な機関が公式・非公式に、海底噴火当時の対応を記録した資料などを収集・分析した。その結果、災害時情報を、時期別・地区別・ネットワ-クの質別(近隣・親類・役所関係者・町内会関係者・自分の仕事関係者など7項目)分析した結果、地域防災上の相談のような部分的・短期型の情報の場合は、近隣・仕事関係ネットワ-クが利用される割合が高いのに対して、観光が伊東市に及ぼす影響といった全体的・長期的情報の場合は、親類関係ネットワ-クが利用されていた。また、災害時に流れた様々な噂を分析したところ、噂の内容には、「〜が地割れしている・〜の人々が避難した」といった地域密着情報の場合は、近隣ネットワ-クが、「富士山が噴火する・津波がくる」といったマスコミ報道の反復的な情報の場合は、親類・近隣を中心として不特定なル-トが利用され、「魚が異常な行動や大漁だった」という特殊な情報な場合は、魚業関係者のル-トが利用されるという傾向などがあった。
著者
秋山 伸一 原口 みさ子 古川 龍彦
出版者
鹿児島大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

MRPがグルタチオン抱合体排出ポンプとして機能していることを示唆する報告がなされた。MRPの発現している多剤耐性変異株C-A120からmembrane vesicleを調製し、ロイコトリエンC_4(LTC_4)の取り込みを調べたところ、ATP依存性にLTC_4を輸送することが判明した。LTC_4に対するKm値は1,55μM、ATPに対するKm値は80μMであった。LTC_4の取り込みはジニトロフェノールやシスプラチンのグルタチオン抱合体で阻害された。これらの結果から、C-A120細胞で発現しているMRPがグルタチオン抱合体を輸送することが明らかとなった。そこでブチオンスルホキシミン(BSO)により細胞内のグルタチオン(GSH)レベルを低下させることによりC-A120細胞の薬剤耐性を克服できるかを調べたところ、100μMのBSOはC-A120細胞のビンクリスチン(VCR)に対する耐性を完全に克服した。BSOはC-A120細胞のGSHレベルを親株KB-3-1細胞でのGSHレベルに低下させ、C-A120細胞内へのVCRの蓄積も上昇させた。つぎにP-糖蛋白質の関与した多剤耐性を克服する薬剤(ベラパミール、セファランチン、PAK-104P)がMRPの関与した多剤耐性を克服するかを検討した。ピリジン誘導体PAK-104PのみがC-A120細胞のVCRに対する耐性を完全に克服した。PAK-104PはC-A120細胞へのVCRの蓄積を増加させ、C-A120membrane vesicleへのLTC4の取り込みを阻害した。VCRのグルタチオン抱合体はまだ確認されていないが、VCRがグルタチオン抱合されMRPにより細胞外へ排出されることを示唆している。また、PAK-104PはP-糖蛋白質とMRPを同時に発現した多剤耐性腫瘍の耐性克服に有用と考えられた。腫瘍でのMRPの発現を調べたところ、肺扁平上皮癌で高い発現が認められた。胃癌や大腸癌では肺扁平上皮癌でみられたような高いMRPの発現を示すものはなかった。肺扁平上皮癌の一部では、少なくとも部分的にMRPが抗がん剤耐性に関与しているのではないかと考えられた。
著者
川村 尚 海老原 昌弘 辻 康之
出版者
岐阜大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

金属原子間結合電子系と配位子π電子系の間の共役を利用して、酸化還元電位の制御されたクラスター錯体を創製し、これを機能性材料としての応用する可能性を探ることを目的として本研究を進めた.1.ロジウム複核錯体カチオンラジカル塩の合成と物性解析.[Rh_2(mhp)_4](mhp=2-oxo-6-methylpyridinato)と[Rh_2(mmap)_4](mmap=2-methylamino-6-methylpyridinato)のCVは化学的に可逆な1電子酸化波をそれぞれ0.48,-0.49V vsFc^+/Fcに示した.この結果は,金属原子間結合と配位子間のσ-π共役が化学的意味をもつことを示している.カチオンラジカルの塩[Rh_2(mhp)_4]SbCl_6・o-C_6H_4Cl_2の結晶において隣接ラジカル分子のピリジン環が互いに重なりあった3次元的相互作用系が形成されていた.一方,[Rh_2(mmap)_4]SbF_6・2o-C_6H_4Cl_2の結晶構造においては,ラジカルの2次元配列が見いだされた.前者結晶のペレットの室温における電導度は8×10^<-8>S/cm^<-1>であって、セレンと同程度の電導度をもつ半導体であることが示された。2.第10族,11族元素複合錯体の構成,構造,分子物性.新規複合錯体[M(mnt)_2{Ag(PR_3)_2}_2],(M=Pt,Pd;R=Bu,Ph;mnt^<-2>=maleonitriledithiolate)の生成を見いだし,それらの構造と電気化学的挙動等を調べた.これらの錯体は,結晶内で平面状のM(mnt)_2の上下に2つのAg(PR_3)_2が結合した3核錯体構造をもつ.これら錯体のCVは,化学的に可逆な1電子酸化波を示したが,生成カチオンラジカルは単離できるほどには安定ではなかった.^<195>Pt-NMRはAg核による分裂を示さず,Pt-Ag結合距離が短いにも拘わらず,Pt-Ag間には化学結合の存在しないことが示された.
著者
高原 淳 戈 守仁
出版者
九州大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

表面自由エネルギーの低い末端基を有する高分子固体の表面には分子鎖末端が濃縮される。本研究では低表面自由エネルギー末端基を有するポリ(スチレン-b-4-ビニルビリジ)[P(St-b-4VP)]ブロック共重合体膜の表面ナノ構造に及ぼす末端基構造の影響について検討した。水素末端のP(St-b-4VP)-H及びフルオロメチル基末端のP(St-b-4VP)C_2C^Fをリビグアニオン重合で合成した。薄膜を調整し、表面組成はX線光電子分光(XPS)測定に基づき、また、薄膜の表面凝集構造及び力学特性を原子間力顕微鏡(AFM)及び水平力顕微鏡(LFM)測定に基づき評価した。423Kで90時間熱処理後のP(St-b-4VP)-HとP(St-b-4VP)-C_2C^Fの表面P4VP組成の膜厚依存性を評価した。P(St-b-4VP)-Hの場合、表面自由エネルギーの低いPS成分は熱処理より空気界面へ濃縮された。一方、P(St-b-4VP)-C_2C^Fの場合、P4VP側の低表面自由エネルギー末端基CF_3が空気界面に局在化ため、末端基に連接されるP4VPは高表面自由エネルギー成分であるにもかかわらず熱処理後も表面に配向している。またP(St-b-4VP)膜のLFM像は水平力の高い領域と低い領域を示した。高い水平力を示す相は表面自由エネルギーがカンチレバ-のSi_3N_4に近いP4VP相に対応すると考えられ、表面におけるP4VP相の存在が確認された。
著者
西村 俊一 西野 節男 柿沼 秀雄 石川 啓二 三笠 乙彦 皆川 卓三
出版者
東京学芸大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1987

中国, 台湾, アメリカ西岸, オーストラリアについて, 華僑教育関係機関の資料収集を行い, 分析を進めた. また, 東アジア比較研究の観点から, 中国と台湾, 韓国と北朝鮮の僑民教育政策を比較するため, 北朝鮮の資料収集もあわせて行った.収集した文献・資料は, 既収集の関係資料及び学外機関の資料と共にカード化し, 約170ページに及ぶ『華僑教育関係文献・資料目録』(東京学芸大学海外子女教育センター刊)を刊行し, 研究機関等に配布すると共に, 研究者との交流に活用し始めている.また, 分析結果については, 次回日本比較教育学会において共同研究発表を行うべく, 準備・調整中である.第2年度は, 補充調査及び補充的な資料収集を行いつつ, 資料分析を本格化する計画である.
著者
林 春男 田中 重好 卜蔵 建治 浅野 照雄 中山 隆弘 亀田 弘行
出版者
広島大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

広島地区(2124名)及び弘前地区(928名)で共通のフォーマットを用いた住民への意識調査を行い以下のような結論を得た。(1)今回の調査では人口109万人の広島市、17万人の弘前市、さらに純農村である青森県平賀町を調査対象とした。人口規模では大きな差異がみられる広島・弘前両市の住民の間には、今回の台風を契機とするライフライン災害に対する対応には差異がみられなかった。しかし、平賀町と市部との差異は顕著なものであり、少なくとも人口100規模までの都市では都市型災害の様相及び防災対策に共通性が存在しうる。(2)被災住民のがまんには3日間という物理的上限が存在すること。(3)復旧に関する情報の提供のまずさが被災住民にとって最も不満であった。住民が求める情報と提供される情報との間には大きなギャップが存在し、情報伝達手段もマスメディア主体となるために、一方的な情報提示に過ぎなかった。こうした事実をもとに被災地域内での情報フロー・システム構築の必要性が議論された。広島地区では中国電力をはじめとする各種行政機関及び指定公共機関を対象に台風9119号に対する危機対応についてヒヤリングを中心にして検討した。その結果、広島市の中央部が配電線の地中化事業が講師が完成していたために、他の地域とは違い停電期間がきわめて短く、広島市における「文明の島」として機能したことが明らかになった。こうした文明の島の存在によって、停電期間中であっても広島市民は「個人的生活」に関する不安は高かったものの、「社会的サービスの提供」に関する不安は低く、それが停電期間中に大きな社会的混乱がみられなかったことに貢献していることが議論された。
著者
中塚 晴夫 渡辺 孝男 池田 正之
出版者
東北大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1988

一般家屋に於ける空気の汚染源としては、暖房装置と炊事用熱源が挙げられるが、本研究では前者に注目し、その種類によって自覚症状に変化が見られるか否かを調査した。対象は宮城県仙台市・涌谷および田尻町の3地区40歳以上の男女32124人(男14383人、女17741人)とし、この人達にアンケート調査をした結果の解析を行うとともに、これに同県白石市の8千人の対象者を加えるための調査を行った。暖房に関する質問として、(1)暖房しない(2)電気ストーブまたは電気ごたつ(3)エアコン、セントラルヒーティングまたはスチーム(4)クリーンヒータ(5)煙突付きのストーブ(6)煙突無しストーブ(7)炭や煉炭の火鉢やこたつなど、のどれを使うかを回答してもらい、汚染源となる(6)(7)のいずれか一つでも用いる群(I)と、いずれも用いない群(II)とに対象者を分けて自覚症状に差が見られるか否かを検討した。その結果、撹乱因子の少ないと思われる非喫煙者を見ると、男子では涙が出やすい(Iで13%、IIで10%、値はいずれも年齢訂正有症率、以下同様)と疲れやすい(I16%、II13%)という自覚症状が汚染源を使用する群に有意(P<0.05)に多く、女子では鼻汁がよく出る(I11%、II10%)と不眠(I10%、II8%)に有意の差が現れていた。それ以外では統計的に有意とはならないが、男子では、せき、たん、眼の充血、眼がコロコロする、女子では眼の充血、眼がコロコロする、涙が出やすいなどが増加する傾向を示した。また、生活環境に影響を与える道路に面した家屋に住んでいるか否かについても解析したが、この影響は明確で、非喫煙女子では「症状無し」も含め17項目中9項目に有意差が認められた。以上のことから、暖房にともなう屋内汚染の人体に対する影響は若干認められるが、その程度は道路に代表される屋外環境の影響よりは少ないと推定される。
著者
中村 尚司 津田 守 広岡 博之 河村 能夫 鶴見 良行
出版者
龍谷大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

本年度は、2年目であるため報告書のまとめ方を念頭において、4回にわたる研究会を開催した。5月27日の第1回研究会では、津田守が「ピナトゥボ大噴火にともなう災害とルソン島中部の地域開発」について報告し、自然災害に対する救助活動の国際比較をまとめることにした。6月27日の第2回研究会では斉藤千宏「貧困・ニーズの充足・指標--80年以降の諸理論の比較検討」について報告した。あわせて中村尚司が「参加型農村開発の諸問題」を取り上げ、コロンボ大学との共同研究案を紹介した。第3回研究会は、9月8、9の両日に原グループと合同で福岡にて研究合宿を行った。川村能夫が「貧困概念とその指標について」、広岡博之が「社会経済指標の再検討について」報告した。10月17日に行なった第4回研究会では、斉藤千宏が「民衆科学運動と政府の相互作用--インド・ケララ州の事例--」、中村尚司が「海の交易と経済システム」について報告した。12月16日に、食道ガンの予後が思わしくなかった研究分担者の一人である鶴見良行が急逝し、共同研究を続けることができなくなった。まことに残念である。最終回の第5回研究会は、2月13日から15日まで長浜市において合宿し、報告書の執筆内容について各自が概要を報告し、その研究内容について討論した。この研究会の報告書は、鶴見の執筆を得られないものの、次年度の総括班の刊行物として印刷される予定である。
著者
小濱 靖弘 三村 務
出版者
大阪大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

魚類由来ACE阻害ペプチドtuna AIの血管内皮細胞機能への作用を牛大動脈内皮細胞(BAEC)培養系を用いて解析した。アンジオテンシン11産生-BAEC培養系におけるアンジオテンシンIからIIの産生を多形核白血球(PMN)の遊走法(Boyden法)で測定したところ、tuna AIはこの系におけるアンジオテンシンII産生を抑制した。遊走、増殖-血管損傷や血管新生時に最初に起こる現象の遊走、増殖について、テフロンフェンスで接触阻害したBAEC培養系を用いて調ベた。Tuna AIは内皮細胞の遊走、増殖を増強した。また、tuna AIはBAECにおけるインターロイキンI産生およびマイトーゲン(PDGF,c-myc)のmRNAの発現量を増加し、これらの作用は遊走、増殖の増強につながる変化と考えられた。しかし、tunaAI自身は増殖因子活性及びプロテアーゼ阻害活性を示さなかった。抗血栓性- ^3H-アラキドン酸を取り込ませたBAECからのアラキドン酸及び抗血栓性PGI_2の遊離に対して作用を示さなかった。血管トーヌス-内皮細胞が産生する最も強力な血管収縮物質エンドセリンの産生を有意に抑制した。一方、弛緩物質のNOの産生に対して作用を示さなかった。血管内皮細胞に備わっている様々な生理機能の傷害ならびにそれにともなってもたらされる細胞膜等の構造破壊は動脈硬化や心筋硬塞の初期病変として注目されている。また血管平滑筋やコラーゲン繊維等の基底膜を含めた血管壁における様々な液性因子による機能調節機構が次第に明らかとなってきている。今夜、食品ペプチドの血管内皮細胞に対する作用のメカニズムの解析とともに食品の第三次機能因子としての有用性についてさらに研究を進めて行きたいと考えている。
著者
藤本 薫
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

硝酸による脱アルミニウム処理によりZSM-5と同等までSiO_2/Al_2O_3比を高めたモデナイト、およびUSY型ゼオライトを調製し、水素のスピルオーバー効果を得るために含浸法により調製したPd/SiO_2をゼオライトに対して等重量物理混合したハイブリッド触媒を用いて各種C7パラフィンの水素化分解を行った。パラフィンの水素分解反応では、水素のスピルオーバーによりゼオライト上にプロトンが供給され活性が向上するとともに、同時に生成するハイドライドにより中間体カチオンが安定化されるためこれらの重合、および重合物の分解が抑制され分解生成物は少数のパラフィンに限定された。各種C7パラフィンの反応性にはゼオライトにより大きな違いが認められ、モルデナイト、USY型ゼオライトでは2,4-ジメチルペンタン(DMP)>2-メチルヘキサン(MHK)>ヘプタン(NHP)の順となった。これらの序列はH-ZSM-5ハイブリッド触媒と全く逆である。H-ZSM-5ハイブリッド触媒では、2-MHK、2,4-DMPではW/Fを0に外挿したときの分解の選択性は0に近い値になるが、NHPでは40%以上の高い分解の選択性を示すことである。これらの実験結果からモルデナイト、USY型ゼオライトではパラフィンの水素化分解において従来から広く受け入れられてきたカルベニウムイオンのβ開裂により分解が進行するが、その酸強度、および酸量から予想されるよりも遥かに高い活性を示すH-ZSM-5では、プロトン化シクロプロパン環を中間体として分解が進行することが示唆された。ヘプタンの転化率(異性化反応を含む)が酸強度がモルデナイトよりも低いH-ZSM-5が高いことから、H-ZSM-5の狭い細孔構造がプロトン化シクロプロパン環型中間体の安定化に寄与し、優れた炭化水素の反応の場となっている可能性がある。
著者
溝口 敏行 松田 芳郎 松本 俊郎
出版者
一橋大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1987

東アジア諸国のうち, 日本・台湾・韓国の戦後の経済発展には,(1)高い経済成長率が達成されたこと,(2)工業化に必要な技術導入がスムーズにおこなわれたこと,(3)工業化にともない生じがちな所得分布の不平等化が他地域と比較して大きくなかったことが知られている. 一方, 本研究代表者等による戦前期の台湾・朝鮮の経済発展に関する統計整備の結果, 戦前期の両地域の経済成長率は, 日本のそれとほぼ同じであり, 当時の国際水準として非常に高かったことが判明している.この研究の第一の目的は, 最近時点の分析にかたよりがちな台湾・韓国経済の分析に, より広い視野をあたえる目的から, 戦前期・戦後期のデータを連結し, 長期経済発展モデルを作成することである. 同時に第二の目的として, これらの地域の所得分布が比較的平等に保たれた理由を追求しようとするものである. 後者の研究は, 他の発展途上国へ, 貴重な情報となり得るものである.本年度実施した作業は以下の通りである.1.戦前期朝鮮の国民経済計算(完成済)を韓国領域分に分割する.2.台湾・韓国戦前期の推計分を, 名目によび実質レベルで1955年以降のデータに接続する.3.1, 2のデータをテープに入力する.4.日本・台湾・韓国の経済発展の比較分析これらの成果は, 当重点領域の他の研究者へ配布を予定しており, これらの研究の基礎資料となることが期待できる.
著者
松本 吉弘 大森 匡 鰺坂 恒夫
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

本研究は、ソフトウェアシステムの中でも、その要求の論理が多元的であり、その意味領域が複雑であるものを対象としている。この場合、要求分析過程で観点の異なる複数のモデルが形成されることになり、これを統合してソフトウェアシステムへ変換する必要が生じる。これに対して本研究では、今年度つぎのように研究をすすめた。1.多元的要求を満たす意味モデルの記述法を研究し、さらに、多元的要求を統合した結果として形成されるべき統合モデル(メンタルモデル)にふさわしい検証可能モデルの記述方法や適合性について研究を行った。その結果,(1)並行エージェントモデル,(2)時次元を含むメンタルモデルを高レベル・ペトリネットで表し、その仕様を代数的に記述,検証する方法,(3)メンタルモデルを状態機械として表し、その振る舞いを含む代数的仕様の記述法,などを得た。2.上記のメンタルモデルを代数的仕様で表したものに関して,パラメタライゼーション,輸入,輸出による仕様代数間の関連づけを行い、関連を関手によって表現し、関手を橋L(言語)によって記述した。関手と仕様代数から構成される網をPCTE(ECMA標準に準じたソフトウェア開発支援環境)のスキーマとして定義することによって,相互のナビゲーションを可能とした。これらの研究はさらに、PCTE上で関手の実行を可能とし、代数的仕様におけるプロトタイピングをPCTEの実行制御機構の上で実現する研究に今後展開される。3.前年度から行っている,ソフトウェアエンジニアリング・デーテベースKyotoDBの研究,開発を続行し、自己反映的なヒューマンプロセス(ソフトウェア生産物表現に対する値付け操作に対するメタ)の実働,生産物表現が束縛されている値との間に存在する制約関係の維持管理,PCTEとの結合,などの研究をすすめた。
著者
住 斉
出版者
筑波大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

化学反応の速度に関する標準理論は遷移状態理論(TST)である。ところが80年代に入って、種々の溶液反応においては溶媒のゆらぎが遅いためにTSTの基本仮定が成立しないことが明らかになり、非常な注目を集めてきた。これを記述するため二つの異なる理論の流れが生じた。一つはGrote-Hynesの理論(1980年)である。他は住と(1992年度ノ-ベル化学賞受賞者)Marcusの理論(1986年)であり、住は1991年この住・Marcus模型の与える反応速度定数の一般形を明らかにした。実験においては1992年浅野(大分大工)は、圧力により溶媒粘性率を大幅に変え、TSTが成り立つ領域から非TST領域までを覆う光異性化反応の速度定数のデータを提出した。1994年住は浅野と協同して、このデータが住理論の与える光異性化反応速度の一般式を検証することを明らかにした。今年度は、このデータとGrote-Hynes理論との対応を調べた。溶媒中における溶質分子の溶媒和構造は、溶媒の熱ゆらぎにつれてブラウン運動ゆらぎをする。この揺らぎが遅いことがTSTが成立しない原因である。このブラウン運動ゆらぎの動力学は、ゆらぎを励起する乱雑な力とそれを減衰させる摩擦力によって規定されている。Grote-Hynes理論では、摩擦力の相関時間が基本的に重要な役割を演ずる。もしこの理論が適用できるならば、観測データを再現するのに必要な摩擦力の相関時間が観測データ自身から得られることを明らかにした。一方、揺動・散逸定理により摩擦力の相関時間は乱雑力の相関時間に等しい。従ってそれは、理論的に、溶質分子の異性化部分と同程度の波長をもつ溶媒励起のエネルギーの広がりに関係している筈であり、これも他の実験から推定できる。このことを基礎に、Grote-Hynes理論は実験データを記述できず、その適応性には基本的問題点があることを明確にした。