著者
中村 尚司 津田 守 広岡 博之 河村 能夫 鶴見 良行
出版者
龍谷大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

政治的な独立を達成した後に野心的な工業化が進めたアジア諸国では、急激な社会生活の変化と環境破壊を引き起した。南北間の経済格差とともに、南側諸国内における社会階層間や地域間の格差拡大も深刻である。永続可能な発展を目標にして、環境問題に配慮した新しい南北問題の社会経済指標を検討する必要がある。すでに、世界銀行や国連諸機関では、経済成長率以外の要因を加えた各種の社会経済指標を発表している。本研究は、社会経済発展に関する既存の諸指標を批判的に検討する一方、適切な代案を模索する。本年度は、4回にわたる研究会を開催し、調査研究の方法に関する考察を中心に、「厚生の指標について」、「社会経済指標の研究方法」、「循環、多様、関係という視点からみた発展指標」、「アジアにおける経済格差研究の問題点」、「農村における貧困研究の国際比較」という報告と討論を行ない、個別的な地域の課題として、「フィリッピンにおける経済発展の特質」、「仏教復興運動と農村開発」、「農村金融とエンパワーメント」などのテーマを取り上げ、実証的な報告とその批判的な検討を行なった。その一方で、東南アジアと南アジアの諸地域におけるフィールド7-7によって得られたデータに基づき、それぞれの地域社会の具体的な特殊性を考察して、国際機関による南北格差の指標の現実性を検討し、問題点の指摘を試みた。南側の対象地域としては、フィリピン、タイ、マレーシア、バングラデシュおよびスリランカを取り上げた。南北の比較に必要な北側の代表的な地域として、日本とアメリカ合衆国の対照的な指標を取り上げて吟味した。
著者
長谷川 真理子
出版者
専修大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1991

筆者が1987年から1989年にかけて、英国サセックス州のペットワ-ス公園に生息するダマジカのレック繁殖行動を調査した資料を分析し、レック繁殖における雄どうしの闘争の機能の解明と、レックにおける雄間の繁殖成功度の偏りを表わすシミュレ-ション・モデルの開発に関して研究をおこなった。ダマジカは、レック内において頻繁に雄どうしが闘争を行なうが、その闘争にどのような意味があるのかは不明であった。分析の結果、レック内での闘争のほとんどは勝敗の結着があいまいな、60秒以下の闘いであること、闘争のほとんどは、闘争をしかけた個体もしかけられた個体も、なわばり内から雌のほとんどすべてを失う結果に終わること、闘争に勝つことと繁殖成功度との間には相関がないこと、なわばり内の雌の数が少ない雄が、なわばり内に多くの雌を持つ雄に対して闘いをしかけることが明らかとなった。なわばり内にいる雌の数と各雄の繁殖成功度との関係を分析すると、レック内にいる雌の、各雄のなわばりへの分布の分散が大きいほど(つまり分布に偏りがあるほど)、各雄の繁殖成切度間の分散も大きくなることがわかった。これよりダマジカのレックで行なわている闘争は、配偶の確率の低い雄が、レック内の雌の分布の偏りを平均化し、特定の雄の配偶のチャンスを低める機能を持っていることが推測される。上記のようなレック内の闘争による、雌の移動、雌が他の雌のいるところへ行きたがる傾向などを組み込み、実際のデ-タから得られた値を導入して、レック内の各雄をそれぞれ一つのセルとみなし、セル・オ-トマトンの考えでレック繁殖のモデルを開発した。これについては、いくつかの点について改良をほどこしている段階である。
著者
伊吹山 知義 藤原 彰夫 宇野 勝博 作間 誠 小磯 憲史
出版者
大阪大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

1.本年度は、対称行列のなすJordan algebra内のconeのゼータ関数として、重さk(整数)の次数nのSiegel Eisenstein級数 E^n_k(Z)に付随するKoecher Maassのディリクレ級数L(s,E^n_k(Z))(E^n_k(Z)のMellin変換で得られるゼータ関数)を取り上げた。今年度のこの研究における主定理として、任意のnに対して、L(s,E_n^κの完全に具体的な公式を得た。このゼータ関数の具体型はn=1は古典的によく知られている。また、n=2はフーリエ係数のMaassによる公式から、Boechererが導いている。しかし、一般の公式は予想等もこめても、全くなにも知られていなかった。結論は、多くの専門家の思いこみに反して、いたって単純な形に記述される。すなわち、nが奇数ならリーマンゼータ関数の平行移動の積の2つの線形結合になり、またnが偶数なら、重さ半整数の2つの1変数Eisenstein級数のMellin変換のconvolution productとリーマンゼータの平行移動の積、およびリーマンゼータの平行移動の積の2つのディリクレ級数の和になる。(以上桂田英典氏との共同研究による。)以上の結果の要約は数理解析研究所講究録に掲載予定。また、英文論文は準備中。保型形式の次元公式のために使用する、概均質ベクトル空間のゼータ関数と跡公式の核関数の間の関数等式、および次元公式の寄与への関係についての研究者の成果を数理解析研究所講究録に公表した。
著者
錦織 千佳子
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

フロンガスによるオゾン層の破壊が進むと従来オゾン層により遮断されていた300nm以下の、より生物効果の大きい短波長の紫外線(UV)まで地球に到達するようになり、UVB領域(280-320nm)の紫外線の人体に及ぼす影響と、その防御について研究することは、急務である。本研究は太陽光紫外線がヒト遺伝子レベルでどのような変化を及ぼすかを解明することを目的としてヒト皮膚に類似する無毛マウス背部に太陽光近似の紫外線を照射し、その紫外線の照射量に依存してp53遺伝子にどのような変化がおこっているかをみた。一方、紫外線によって、露光部に皮膚腫瘍が生じる疾患である色素性乾皮症(XP)患者に生じた露光部皮膚腫瘍におけるp53遺伝子の変化についても調べ、実際のヒトにおいて太陽光によってp53遺伝子にどのような変化がおこっているかを解析し、マウスの結果と比較しすることをめざした。紫外線は点突然変異をおこしやすいとされており、これまでの私達の研究から、紫外線がras遺伝子に突然変異をおこさせることにより20%くらいの頻度でras遺伝子が活性化されることが明らかになった。p53遺伝子では、点突然変異をおこすことにより正常の機能の制御からはずれる例が知られているので、p53遺伝子に着目し、露光部と非露光部皮膚及び肝臓でこれら遺伝子の変化がないか、またどのくらいの照射量によりどのような変化があらわれるかについて解析した。無毛マウスに健康蛍光ランプを週2-3回、20週照射したマウス皮膚の露出部皮膚に生じた腫瘍からDNAを抽出し、PCR法で増幅したp53遺伝子部を一本鎖DNA高次構造多型解析法(SSCP法)によりp53遺伝子のエクソン6、7、8の突然変異の有無をスクリーニングしたところ3/16に正常とは異なる永動度を示すものが検出された。一方XPの患者皮膚腫瘍では16/37にSSCPの異常が見つかった。それらについて、塩基配列を決定したところCC→TT(4つ),C→T(2つ)の変異が多く見られ、大腸菌などにUVCを照射して得られた研究結果で示されているように、ピリミジンの並んだところに変異がおこりやすい傾向がみられた。しかし、一塩基挿入、G→C,G→TなどのトランスバージョンもみられUVBとUVCとで損傷の種類、生じる突然変異のタイプが異なる可能性もしめされ太陽光近似のUVBをもちいることの重要性が示唆された。今後マウスにおいてSSCPの異常がみられたものについても塩基配列を決定して実験的なサンランプ照射が実際の太陽光照射のモデルとしてどの程度有用かを検討したい。
著者
花村 克悟 三松 順治 熊田 雅弥
出版者
岐阜大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

本研究は、熱可塑性高分子ポリマー微粒子の超高速溶融・凝固プロセスを解明すべく、粒子内の粘弾性流動及び伝熱のメカニズムを実験的に明らかにすることを目的としている。本年度はラジアントフラッシュ定着(溶融)過程における単一実用トナー(高分子ポリマー)微粒子のふく射吸収特性を把握することに焦点を絞って研究を進めた。直径10μmの実用トナー粒子1個を、粒子と成分が等しい直径4μmの高分子繊維の先端に静電気にて付着させ、He-Neレーザーの平行光を照射し、溶融前の不定形粒子とわずかに溶融した後の球形粒子の散乱相関数を測定した。この場合、球形粒子については粒子内部のふく射吸収過程を含めたRay-Tracing法による理論値と比較することで吸収係数が見積もられ、その値は0.18(1/μm)であり、主成分がポリスチレンに近いと考えると複素屈折率は1.592-0.009iであることがわかった。さらに表面反射による散乱現象が支配的であり、それに1次の透過光が前方散乱を助長している。また、2次以上の透過光の寄与は小さく無視していることが明らかとなった。一方、溶融前の不定形粒子については粒子の外周近傍では前方散乱が強く、それ以外では拡散反射を呈する平板の性質に近い散乱位相関数が得られた。このモデルを構築することは容易ではないので測定された位相関数そのものを用いて先のふく射輸送を解析したが、実験との良好な一致は得られず、むしろ、散乱体が一様に分散された均質モデルを仮定し、Heneyey-Greensteinの近似位相関数を用いた解析手法がよく実験結果を説明できた。すなわち、不定形粒子層では単一粒子の特徴がそれ程強く反映さないことが明らかになった。
著者
饗場 篤 中村 健司
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

本研究では、化学発がん物質をH-ras遺伝子欠損マウスに用いて、発がんにおけるH-ras遺伝子の役割を直接検証すること、および新たながん遺伝子を単離することを目的とした。H-ras遺伝子欠損マウスおよび野生型マウスにDMBAの単回投与およびTPAの反復投与により、パピローマの形成能を調べた。その結果、野生型では一匹あたり、平均約16個のパピローマが観察されたのに対して、H-rasヘテロ型欠損、ホモ型欠損マウスでは、その2分の1、および7分の1程度の数のパピローマしか観察されなかった。このことはH-ras遺伝子がパピローマの形成において重要な役割を果しているが、その形成に必須ではないことを示している。また、パピローマのDNAを抽出し、H-,K-,N-rasのすべてについて12,13,61番目のアミノ酸残基をコードするDNA塩基配列を決定したところ、野生型マウスに形成されたパピローマのDNAではすべてH-rasの61番目のコドンに突然変異が検出された。一方、H-rasホモ型欠損マウスに形成されたパピローマのDNAでは半数以上でK-ras遺伝子の12,13,61番目のコドンのいずれかに突然変異が検出され、他のパピローマでは、K-,N-ras遺伝子のいずれにも突然変異は検出されなかった。この結果により、K-ras遺伝子の活性化によってでも皮膚パピローマの形成はおこることを初めて示すことができた。今後は同様の系を用いて、腫瘍の悪性化にどのようにH-ras,K-ras遺伝子および他の発がん遺伝子が関与しているかを検討したい。
著者
板垣 雄三 永田 雄三 斯波 義信 佐藤 次高 湯川 武 後藤 明
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1988

本研究計画は最終年度にあたり、総括班の連絡と調整のもとに研究活動のとりまとめが行なわれた。具体的には1.研究会の開催:公開性を原則とし、研究班組織にとらわれず、また研究分担者以外の研究者も参加した多様な形式の研究会が組織され成功した(3年間に191回)。とくに総括班の機能性を発揮して、クウェ-ト危機、地震、都市環境に関するセミナ-など現実の問題に即応した研究会がもてたことも成果のひとつである。2.第2回国際会議(中近東文化センタ-との共催 12月27〜29日)を開催し国際共同研究を充実させた。3.成果の流通:共同研究の新しいモデルとして、研究分担者や関連研究者に研究成果を迅速に公開することを目的とした出版活動も順調に行われた。3年間の出版物は231点になる。4・成果の公開性:特に今年度は研究成果の社会的還元のために、大学院生・学部学生を対象としたサマ-・スク-ル(7月23〜27日)を、一般市民を対象とした講演会を各地(仙台・大阪・福岡など)で開催した。1991年2月11〜12日の「大学と科学」公開シンポジウムー都市文明イスラ-ムの世界ーにも全面協力した。2.全体の研究活動のとりまとめとして全体集会(12月1〜2日)を開催し、共同研究・比較研究の総括がなされた。また、招へいしていたDale F.Eickelman、Hassan Hanafiの両氏より国際的見地からの評価ととりまとめに対する助言をうけた。3月23日には本研究のしめくくりの研究会を予定している。5.新たな理論枠組みに基づく研究成果のとりまとめとして、研究分担者全員および関連研究者が執筆に当たる『事典「イスラ-ムの都市性」』、『イスラ-ム都市研究史ー歴史と展望』、『イスラ-ム都市から世界史をみなおす』等の刊行が準備されている。
著者
板垣 雄三 黒田 壽郎 佐藤 次高 湯川 武 友杉 孝 後藤 明
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1988

イスラムの都市性を比較の視点から検討しその総合的解明を目指す本研究において、総括班は共同研究の実をあげるために、研究全体の活動の相互の連絡・調整に当たった。即ち、互いに関連する研究班の合同研究会やセミナーの開催、研究成果の発表のための出版活動、海外の研究者・研究機関との交流などに努めた。具体的には、1.研究会の開催:個別研究班を統合した合同研究会、外国人招聘研究員Anouar Abdel-Malek, Nurcholish Madjid氏を中心とした国際セミナー、在日中のMochtar Naim, Abdallah Hanna, Mahmud Hareitani, EmileA. Nakhleh氏を招いた研究集会や公開講演会を開催した。これにより、個別研究の枠を超えた情報交換を実現し、国際的共同研究を進展させ、成果を広く社会に還元することに努めた。2.成果の流通:研究成果を研究分担者全員が随時共有するため、ニューズレター「マディーニーヤ」(創刊準備号〜15号)、研究報告シリーズ(1〜23号)、研究会報告シリーズ(1〜7号)、Monograph Series(No.1〜8)、広報シリーズ(1〜2号)を出版し、国内外の研究者・研究機関に配布し、研究連絡網を確立した。3.総括班副代表の後藤明をアメリカ合衆国に派遣し、本研究活動に対する当地の研究者の協力を要請するとともに、関係学会、研究機関との研究協力態勢の確立につとめた。4.来年度開催予定の国際シンポジウムにむけて、数次にわたる準備連絡会議をもち、各セクションのテーマの設定、招聘研究者の選定などの作業を行った。すでに第二次サーキュラーを内外の研究者に配布した。以上の諸活動により、イスラム世界の都市性についての研究視角が明確化し、都市研究における新たな参照テーマとしてイスラム圏の都市研究の重要性が広く認識され、活発な比較研究を刺激・促進する結果を生んだ。
著者
長尾 真 中村 裕一 小川 英光 安西 祐一郎 豊田 順一 國井 利泰 今井 四郎 堂下 修司
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

感性情報は情報科学でこれまで取り扱ってきた情報に比べ、はるかに微妙なものであり、また主観的、多義的、状況依存的で曖昧なものである。従って、情報科学的なアプローチと心理学、認知科学的アプローチの両者の共同により、この微妙で曖昧な情報の客観的な記述と抽出、感性情報のモデリングの研究を行った。得られた成果は次のようである。多くの会合を持ち、討論を行なって、感性情報の概念を明らかにした。 (全研究分担者)変換構造説に基づいて感性的情報の認知機構を明らかにした。 (今井) 画像パターンの学習汎化能力に感性的情報がどのようにかかわるのかの学習モデルを作成した。 (小川) 官能検査法の感性の計測に利用する方法を明確化した。 (増山) 新しい人間の視覚現象を発見し、そのメカニズムの研究を行い、画像の認知における感性の働きを究明した。 (江島) 微妙な曲率をもった曲面の見え方の画像解析の研究を行い、三次元世界と二次元世界との対応について究明した。 (長尾、中村) 雑音の聞こえ方についての実験を行ない、人間の感性にかかわる概念との関係を明かにした。 (難波) 音声の微妙な特徴の抽出の研究を行ない、同様な概念との関係をを明かにした。 (河原) 人間の表情変化の計測をし、その位相情報を取り出し、人間の感情との関係を明かにした。 (国井) ロボットのセンサーフュージョンと自律性についての実験を行ない、感性的行動のできるロボットの基礎を与えた。 (安西) ソフトウェアの使い易さ、使いにくさを感性的立場から評価した。 (豊田) テキスト・リーディングにおける人間の眼球運動の観察を行ない、視覚の感性的側面が果たす役割、効果を明かにした。 (苧阪)
著者
安保 正一 山下 弘巳
出版者
大阪府立大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

色素ロ-ダミンB(RhB)をミクロ孔やメソ孔を有するゼオライト(ZSM-5、MCM-41)に吸着させ、担体の変化に伴うRhBの光物理化学特性の違いについて検討した。RhBの分子径よりも小さい細孔を有するZSM-5ゼオライトに吸着したRhBは蛍光寿命がnsオーダーのものに加え数百psオーダーの蛍光寿命を示し、RhBがゼオライトの外表面に、モノマー種およびダイマー種として存在することが解った。一方、RhBの分子径より大きいメソ細孔を有するゼオライトに吸着したRhBの蛍光寿命はnsオーダーの長い寿命成分のみが観測され、モノマー種のみでダイマー種の存在は見られないことが解った。すなわち、メソ細孔を持つゼオライトを用いて機能性色素を孤立した分布状態で吸着できることが解った。さらに、Ti種が四配位構造で高分散状態で固定化されているTi-MCM-41ではTi種とRhBが相互作用することにより、高い吸着量の範囲まで孤立した分布状態でRhBが存在できることを見出し、光増感型光触媒系の設計に適した反応場を構築できることが解った。また、Ti-MCM-41触媒は光照射下NOを選択性良くN_2とO_2に分解し、主にN_2Oを生成する粉末TiO_2光触媒とは異なった反応性を示した。以上の結果は、RhB-Ti-MCM-41が可視光照射下で機能し、粉末TiO_2光触媒系と全く異なる触媒選択性を有する色素増感光触媒として作用する可能性を強く示唆するもので、新規な光触媒の設計に重要な知見を与えるものである。
著者
坂部 知平 坂部 貴和子 田之倉 優 江橋 節郎 三井 幸雄 山根 隆 大沢 文夫 京極 好正 芦田 玉一
出版者
(財)国際科学振興財団
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

本重点領域ではこれまで4年間放射光を利用して蛋白質結晶構造のダイナミックスの研究を、蛋白質が関与する反応及び調節などの機構を3次元構造を基礎にして理解するために必要な研究を勢力的に進めてきた。本年度の目的はこれまでの研究成果報告を行い評価することと、これまでの成果をまとめて報告書を出版することであった。この目的を達成するため、平成5年度〜平成8年度研究生果報告会を東京大学山上会館て7月16日から18日まで開催した。会議では実行班の計画研究代表者、分担者、公募研究代表者全員が成果を報告を行い、総括班の評価委員が座長を受け持った。出席者は142名と盛況で盛んな議論が展開された。そしてこの時点で研究グループが解散するのは大変残念であるとの声が多くの参加者から出た。これまでのすべての報告をもとに作られた小冊子が10月16日に文部省で行われた最終ヒアリングで提出された。ヒアリングの席でこのような研究をさらに広範な分野に広げることは出来ないかとの質問が出された。また、会議に先だってアブストラクト等を収録したNewsLetter5-1(108頁)を発行した。各研究者の会議報告うは4年間の研究成果報告書(630頁)に収録された。総括班会議は2回行った。初回は成果報告会中の7月17日、2回目は平成10年1月24日であった。会議の中心議題はこれまで盛り上げてきた学際的な研究態勢を今後どのようにして維持し、研究の活性を維持し、さらに広い領域に発展させるかということであった。最終的には今後発展が期待される時間分割ラウエ法利用研究において最高の成果を上げられた京大化研の小田順一教授が世話役になり広範な領域の研究者が参加した『動的構造研究会』を母体にして特定Aの申請がなされた。以前から懸案になっていた英文のモノグラフ発行については次期特定が認められた場合その成果も交えて出版することが認められた。
著者
林 雄二 植村 元一
出版者
大阪市立大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1990

生物間相互作用物貭の研究は最近数多く行われており,植物・動物間の相互作用のうち,植物成分と昆虫の間では極めて興味深い作用物貭が種々報告されて来た。しかし,更に高等な草食哺乳動物と植物成分との相互作用に関与する物貭が見出された報告は殆んど見当らない。私達は奈良公園で鹿が食べない植物の代表として知られるナギとイワヒメワラビの成分をこれまでに検索し,興味ある新しい化合物を見出して来たが,これらが鹿の摂食忌避と結びつく知見を見出せずにいた。そこで,小形の草食動物としてモルモットを用い,定性的な摂食忌避試験を指標としてナギの葉の成分をしらべた。酢酸エチル可溶部に忌避活性がある事が判ったので分画を繰返し,最終的にはアセチル化後,三種の化合物をアセタ-トとして單離,構造決定し,これらがナギラクトンC,ナギラクトンA,1ーデオキシー2,3ーエポキシナギラクトンAの各々のアセタ-トである事を知った。これらの化合物のもとのアルコ-ル体は,これ迄にナギから得た既知化合物であるので,標品を用いて作用を調べたところ,忌避活性を示すことが明らかになった。ナギ葉の抽出物に対するモルモットの摂食忌避は致命的なものであり,粗抽出物を添加した人工飼料だけで飼育すると,摂食量ゼロのまゝ体重は減少し続け,約三週間後に餓死する。これはナギラクトン類の忌避が,單純な動物の嗜好等に基づくものではなく強い毒性によるものと推定される。今までに知られているナギラクトン類の生物活性,たとえば,昆虫の幼虫や白アリに対する毒性,がん細胞に対する細胞毒性などが高等動物に対しても作用をもつ事を示している。現在,他の鹿に対して摂食忌避性をもつ植物の活性成分の探索と,より定量的な信頼のおける結果を与える生物試験法の開発を検討中である。
著者
井上 稔 阿座上 孝
出版者
名古屋大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1990

マイクロ波の熱作用と放射線が複合して作用した場合,単独被曝とは異なった生体影響が現れる可能性がある.本年は,マウスにマイクロ波を照射するためのアプリケ-タを設計・製作し,マウスのSAR(比吸収率)を測定した.この装置では実験者が漏洩電波に被曝する恐れは無い.50匹のSlc:ICRマウスに,マイクロ波に影響を受けないファイバ-センサ温度計をもちいてリアル・タイムで直腸温測定をしながら,体温が42.5℃になるまでマイクロ波照射を行った.体温の上昇直線とマウスの体重,比重,頭臀長,腹囲の測定値よりSAR(比吸収率)を計算した.マウス胎仔の大脳が最も高い障害感受性を示す妊娠13日の母獣に2.45GHz,0.5W(非妊娠マウスを用いて計算したSAR:134W/kg)のマイクロ波照射を3分間行い,胎仔の脳に及ぼす急性影響を検索した.この時,直腸温は42.3±1.3℃に達した.マイクロ波処理1ー12時間後に母獣を殺して胎仔の脳を採取し,一部71kdの熱ショック蛋白の検索に用い,他は組織切片にした.大脳外套脳室帯の細胞死の頻度を調べたところ,対照群の0.14%に対して照射5時間後には1.0%の増加し,生体影響が検出された.熱ショック蛋白hsp70は検出されなかった.つぎに複合被曝の実験として,マイクロ波被曝1ー12時間後にさらに0.24Gyのγ線照射を行い,γ線被曝8時間後に同様に胎仔を採取し,大脳の細胞死頻度を観察した.マイクロ波被曝1ー9時間後のγ線被曝では,γ線単独被曝による細胞死8.3%と比べ有意な差はなかったが,12時間後のγ線被曝では6.8%(p<0.05)と,わずかながら低抗性がみられた.
著者
奈良 貴史 鈴木 敏彦
出版者
東北大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

アバクチ洞穴遺跡出土人骨は東北地方において初めての保存状態良好な弥生時代幼児人骨である。我々は、日本列島の人類史を解明する重要な手がかりになると思われるこの人骨の人類学的位置付けを早急に行わなければならないと判断し研究を着手した。弥生時代の日本列島には縄文人的な特徴を持つ人骨とアジア大陸からの渡来系の要素が強いとされる人骨の2系統が少なくとも存在していたことがこれまでの研究で判明している。研究分担者の鈴木の歯冠計測値による予備的な分析では、この人骨が渡来系弥生人に近いことが示された。これを踏まえて、その他の特徴においてもこの人骨に渡来系弥生人的な形質が認められるかどうかに主眼を置き、詳細な計測値および非計測的形質の記録を頭蓋骨、乳歯について行なった。また札幌医科大学、東北歴史資料館、東京大学、国立科学博物館、国立歴史民俗博物館、及び京都大学で比較対象となる縄文・弥生時代幼児人骨の計測、X線規格写真撮影等を行い、比較資料を収集した。その結果、眼窩ならびに鼻根部の形態および乳歯の非計測的な形質の一部に弥生人的な要素がみられることを確認し、弥生時代中期に、既に東北地方に縄文人以外の形質を持つ人々が流入していた可能性が示唆された。昨年11月に筑波大学で開催された第51回日本人類学会大会で、これまでの研究結果を「岩手県アバクチ洞穴遺跡出土弥生時代幼児人骨の形態学的検討」として発表した。来年度は縄文人と弥生人とでは四肢骨のプロポーションが違うとされていることから、アバクチ幼児人骨の四肢骨の計測を行ない、どの様な四肢のプロポーションを示したのかを明らかにする。また、顎骨内から摘出された形成途上の永久歯に関して、既知の縄文・弥生人の同様の幼若永久歯を用い、咬耗が進行した成人人骨の永久歯とは異なる視点からの比較を試みる。最終的に2年間で得られたデータの更なる統計学的検討を行う。
著者
高橋 孝喜 桑田 昇治 徳永 勝士
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

1991年秋に行われた国際組織適合性ワークショップのデータに関して、特に地域差、民族差の観点から解析した。また1992年9月には、シベリアバイカル湖畔のブリアート族におけるHLA調査も行った。これらの結果に加え、昨年までの成果を考え合わせると、東アジアにおいていくつかの特徴的なHLAハプロタイプが異なる分布パターンをとっていることが示された。このような複数のパターンが見られることの解釈として、東アジアにおける民族移動が単純なものでなく、いくつかの異なる先祖集団が異なる時代に異なったルートを経て移住拡散してきた可能性が高いと考えられる。特に日本人の起源と形成過程に関しては、モンゴル周辺や朝鮮半島付近に源を発する民族の影響が主体を成し一部には中国南方の集団からの影響もあったものと推定された。1)B52-DR2を高頻度にもつ集団が中国北方より朝鮮半島を経て北九州や近畿地方に移住してきた。2)B44-DR13で特徴付けられる集団が、朝鮮半島付近より北陸地方などの日本海沿岸に到った。3)B54-DR4を持つ集団は、中国南部に発して、南西諸島や九州四国、本州の太平洋岸に達した。4)B46-DR8をもつ集団はその遠祖が中国南部にあり、朝鮮半島経由かあるいは直接に北九州に到達した可能性が考えられる。今後もより広範かつ詳細な調査を進めて、以上の仮説を検証する必要がある。
著者
宝来 聰
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

モンゴロイドの子孫は今や環太平洋地帯の広い地域に分布し、さまざまな環境に適応している。モンゴロイドにおける先史時代の拡散を研究する際、重要な問題の1つとして最初のアメリカ人、つまり″新世界への移住″という問題がある。アメリカ先住民の祖先は東北アジアからベーリング海峡を越えてアメリカのさまざまな地域に分散して定住し、最終的に南アメリカの南端にまで達したということは疑う余地はない。しかし彼らがいつ、どのような遺伝的背景や文化をもってやってきたのかは未だ十分に解明されていない。16の地域集団(チリ、コロンビア、ブラジル、マヤ、アパッチ)から72人のアメリカ先住民について、ミトコンドリアDNAのノンコーデイング領域の塩基配列を決定し解析を行った。塩基配列はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法をもちいて直接決定した。72人のアメリカ先住民の482塩基対の配列を比較したところ、43の異なるタイプの塩基配列が観察された。アメリカ先住民内での塩基多様性は1.29%と推定され、これはアフリカ人、ヨーロッパ人、アジア人を含めた全ヒト集団での1.44%という値よりいくらか小さかった。また系統樹による解析からは、アメリカ先住民の系統のほとんどが4つの大きな独立したクラスターに分類できることが分かった。各クラスターの人々は他のヒト集団ではほとんどみられない特別な多型部位を少なくとも2箇所共有しており、これは、アメリカ先住民が系統的にユニークな位置付けがされることを示している。アフリカ人、ヨーロッパ人、アジア人、アメリカ原住民の計193人の系統樹を作成すると、4つのアメリカ先住民のクラスターは独立して全体の中に分散していることが分かった。これらのクラスターの大部分はアメリカ先住民で構成されているがわずかに少数のアジア人も混じっていた。このことにより異なる4つの祖先集団がそれぞれ独立して新世界に移住したのだろうと推定した。さらに同一クラススターでアジア人とアメリカ先住民の系統が最初に交わる時間から、ベーリング海峡を渡った最初の移住が1万4千年から2万1千年前ごろに起こったものと推定した。またアメリカ先住民間で観察された塩基置換の特徴より、アメリカ先住民の祖先集団はきびしいボトルネックを受けたのでもなく、新世界に移住する際に集団サイズを急に拡げたのではなかったことが示唆された
著者
亀山 義郎 阿座上 孝 福井 義弘
出版者
名古屋大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1989

研究目的:マイクロ波の熱作用と放射線の電離作用のいずれも、胎児大脳が高い感受性を示すため、両者が複合して作用した場合、単独では障害効果が少ない条件でも、脳に非可逆的障害をもたらす可能性がある。本研究はこの点を検討するため、マウス胎児にマイクロ波、γ線のそれぞれ単独および併用照射を行い、大脳発達障害を検索した。研究方法と結果:妊娠13日のSlc:ICRマウスに2.45GHzのマイクロ波をON15秒、OFF15秒で反復照し、10分後から直腸温が42.5℃を越えないようにOFF時間を調整した。処理時間は15分と20分の2条件、マイクロ波の比吸収率は葉480mw/gあった。マイクロ波処理9時間後に胎児を採取して組織切片にし、大脳外套の細胞死の頻度を調べたところ、対照群の0.14%に対して、15分、20分処理によってそれぞれ1.6%、3.0%に増加していた。一部の母獣を出産させ、生後6週で観察した仔獣は、20分処理群の脳重が低値を示した。後頭部大脳皮質の組織切片から算出した神経組織切片た神経細胞の核の直径は、対照群に比較して有意に小さく、細胞密度は有意の高値を示した。Co-60δ線0.24Gyに被曝させ、その直後にマイクロ波15分処理を行った実験では、δ線単独被爆の9時間後の大脳外套の細胞死は8.5%であったのに対し、δ線とマイクロ波に複合被爆したものでは19.5%に上昇していた。この結果はδ線とマイクロ波の作用が相互的以上であることを示している。なお、生後6週の観察では、複合被曝群の大脳は小さく、組織学的に大脳皮質の菲薄法化、皮質構築加乱れを示す例がみられた。今後は、マイクロ波と放射線の被曝間隔を変えて、マウス胎児大脳への複合効果を検討する予定である。
著者
中堀 豊
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

最近,ヒトのY染色体の解析が進むにつれY染色体上にも様々な遺伝子が存在することが分かってきた。特に,生殖細胞の分化,男性機能に関する遺伝子に注目が集まっている。我々は,ヒトY染色体の構造を研究してきたものであるが,Y染色体の構造異常と症状の検討から,無精子症遺伝子を長腕真性クロマチン部のもっとも遠位端に,また成長を規定する遺伝子を長腕の近位部にマップした。これらの遺伝子をクローン化し,その働きを知ることが本研究の目的である。Y染色体上には精子形成に関与するいくつかの遺伝子があると考えられている。外国の研究者がYRRM遺伝子,SMCY遺伝子,DAZ(deletion in azoospermia)遺伝子などを精子形成に関与している候補として発表した。現在までのところ我々の研究でも,他の研究室でもこれら候補遺伝子の点突然変異による無精子症は認められていない。したがって、これらとは別のより重要な遺伝子が存在すると考えている。Y染色体長腕欠失の父子例(父親が妊性があるのに息子は無精子)に注目し,欠失近位側の切断点を含む領域のYACからコスミドコンティーグを作成し、父子間の欠失の差を見つけだすことを目指した。しかし,この過程で我々が解析している長腕の領域には,短腕に相同な部分があり通常の解析では区別できない場合があることが分かった。今まで単一コピーのDNAとして解析していたものが、実は複数ある前提で解析を進めることにし,切断点を含むと考えられるYACyOX21から図のようなコスミドコンティグを作る一方,コンティグに含まれるコスミドの局在のチェックのためにFiber FISH法の導入を試みた。その結果,コスミドの全てが短腕に相同領域をもつこと,また長腕の比較的狭い範囲に同様の配列が4コピー以上あることが分かった。
著者
二木 宏明 松沢 哲郎 久保田 競 岡部 洋一 岩田 誠 安西 祐一郎
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1990

本研究では人間における言語機能の神経心理学研究とチンパンジ-における数の概念の研究を足がかりとして、思考や言語の基礎をニュ-ロンレベルで解明する手掛かりをつかむべく、サルの前頭前野のニュ-ロンにおける高次の情報処理の特徴を調べる。一方、思考と言語の脳内メカニズムのモデル化の研究においては、脳のような並列階層的システムが論理的推論をどのような形で行っているかという脳内表現の計算機構を説明できるモデルを提案することを目的としている。岩田は、H_2 ^<15>O PETを用いて漢字、仮名黙読時の脳血流を測定した。仮名単語の読字は漢字単語の読字より広汎に局所脳血流を増加させ、両側の角回も賦活されていることが明らかになった。松沢はチンパンジ-の数の概念の研究をおこなった。アラビア数字1から9までの命名を形成し、反応時間の分析をしたところ、ヒトと同様の二重の計数過程が示唆された。久保田は、アカゲザルで学習が進行するのに伴って、手掛かり刺激の色の違いに特異的に応答するニュ-ロンの数が増えることを明らかにした。二木は、ヒトのカ-ド分類と類似の課題を遂行中のサルの前頭前野のニュ-ロン活動を記録し、注目すべき次元の違いに依存して、ニュ-ロン活動の応答が異なることを明らかにした。岡部は、概念がどの様に運動ニュ-ロンにパタ-ン化されていくかについて2関節の指の運動のシミュレ-ションを行った。その結果、極めて自然な関節運動の得られることを確認した。以上のごとく、初年度にもかかわらず着実に成果がありつつある。
著者
岡部 洋一 柴田 克成 北川 学
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

本研究では、ネットワークの振動現象における振動振幅および周波数情報の、モデレ-ショニズムによる学習、および、時間スケールとして、より微視的なパルス時系列の時間相関情報の学習について研究を行っている。モデレ-ショニズムとは、生体は適当なレベルの入出力信号を好みそのレベルに近い入出力信号を築くように学習するとしたフィードバック学習の一種であるが、さらに環境の変動を積極的に利用する方向に改良した、振幅に対するモデレ-ショニズムを提案した。この信号振幅モデレ-ショニズムを用いて、自己結合などのフィードバック結合を有するニューロンを含むネットワークに関してフィードバック結合の効果を検討し、さらに自励発振しうる回路に外界から信号が注入された場合の挙動について、シミュレーション解析を行った。結果として、自励発振が可能なネットワーク構成を示し、そのネットワークに対して外界からの信号を注入した場合、微小入力時にはネットワーク自身の自励周波数で発振し、信号強度を増加するにしたがって、外部周波数に引き込まれることを示した。さらに外部周波数に引き込まれたネットワークは、外部入力を遮断した後にも、外部入力周波数で発振することを示した。より短期の時間スケールにおけるパルス時系列に対する、時間相関学習について提案を行った。ニューラルネットワークにおいてパルス列伝送を考えた場合、複数のパルス列の自己あるいは相互相関関数によって、情報を表現することが可能である。これらのパルス列の時間相関に表現された情報をネットワークに記憶させるために、最急降下学習およびトポロジカル・マッピング学習を行った。結果として、2系列に対する相関について最急降下学習によって、さらに3系列以上の相関についてトポロジカル・マッピングによって学習が可能であることを示した。