著者
成瀬 宇平 角田 文 加藤 真理 秋田 正治 村松 啓義 Uhei NARUSE Aya TSUNODA Mari KATO Masaharu AKITA Takayoshi MURAMATSU
雑誌
鎌倉女子大学紀要 = The journal of Kamakura Women's University (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
no.10, pp.141-145, 2003-03-31

京料理の手法を参考に昆布だし汁のグルタミン酸量とだしの調製条件との関連について検討し,さらに昆布だしにかつお節を加えた「一番だし」の香気成分についてガスクロマトグラフィーマススペクトロメトリー(GC-MS)を用いて検討し,次の結果を得た。1)だし汁を調製する水の温度は60℃,昆布の浸漬時間が60分間のだし汁のグルタミン酸量は他の条件に比べて多かったため,京料理のだしを調製する方法は本実験と一致した。2)京料理では昆布に利尻昆布を使用するのは,濃度の薄いだしをとるためと考えられる。3)一番だしの主な香気成分はかつお節由来の成分であった。
著者
銭谷 真人
出版者
鎌倉女子大学
雑誌
鎌倉女子大学紀要 = The Journal of Kamakura Women's University (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
no.28, pp.13-24, 2021-03-31

以前の論文で人情本の序文と本文の仮名字体について比較を行ったところ、人情本においては実用的な字体と装飾的な字体の分化が既に完成されていた。本稿では洒落本について同じように比較を行った。その結果、洒落本においては分化の途上であったことが判明した。さらに人情本と洒落本の仮名字体の比較を行ったところ、以下に述べることが分かった。①洒落本の本文で使用されていた仮名字体の一部は、人情本では序文にだけ見られた。②標準的な字体と字母が同じで字形が異なる仮名字体が、装飾的な字体として用いられた。③複雑な字形の仮名字体が本文では用いられなくなった。 つまり、仮名字体の収斂の傾向は、字体の消滅ではなく立ち位置の変化であると考えられるのである。
著者
大嶽 真康
出版者
鎌倉女子大学
雑誌
鎌倉女子大学紀要 = The journal of Kamakura Women's University (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.166-158, 2018-01

本研究は、近年の諸研究の成果に基づき、従来北条時政の事績とされてきたものを精査し、真の時政像に迫ろうという意図を持つものである。その為に、本論考では鎌倉政権初期における北条氏の動向を一元的に見るのではなく時政とその子義時・政子の行動を分けて考えることを試みてみた。本稿は頼朝の没直後で考察を終えたが、今後さらに時代を下って考察を進めていきたい。
著者
若林 素子 Motoko Wakabayashi
雑誌
鎌倉女子大学紀要 = The journal of Kamakura Women's University (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
no.20, pp.21-26, 2013-03-31

カリタ式ペーパードリップ法において、 湯を、 蒸らし時間を加えながら 4回に分けて注ぐ抽出法Iと、 同量の湯を一度に注ぐ抽出法IIによりコーヒー抽出を行い、 それぞれのカフェイン濃度の違いを HPLC により定量分析した。 コーヒーとしては市販の焙煎直後のブラジル、 コロンビアおよびマンデリンの 3種を使用し、 抽出直前に粉砕した。 抽出法 I では65-93 mg/100g、 抽出法IIでは48-55 mg/100gのカフェインが抽出液に含まれることが明らかとなり、 3種いずれのコーヒーにおいても、 抽出法 I においてはIIと比較して約1.4倍から約1.7倍有意に (p < 0.01) カフェイン濃度が高くなることが示された。
著者
福田 喜一郎 Kiichiro Fukuda
雑誌
鎌倉女子大学紀要 = The journal of Kamakura Women's University (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
no.19, pp.45-49, 2012-03-31

カントは意外なことに、無神論者が道徳的に誠実であり続けることには限界があると主張している。しかし、これはその道徳的意志の自律の原理と矛盾するものではない。道徳を行為の次元に、信仰をハビトゥスの次元におけるものとして区別し、自律の原理から道徳的ニヒリズムの可能性を回避しているのである。さらにかれは同時に、「最高善」もしくは神の存在との関係で、自然としての非道徳的世界に新しい実践的意味を与えようとしている。その意味を発見しこの世界に対する信頼を獲得するのが反省的判断力である。筆者の解釈では、カントはこの意味でライプニッツ的な恩寵の世界の理念を受け継ぐ真の擁護者と称しうるのである。Zu unserer Überraschung behauptet Kant,dass das Bestreben des Atheisten, seine sittlich rechtschaffe Eigenschaft zu bewahren, begrenzt sei. Aber diese Behauptung von der moralischen Begrenzung des Atheisten steht beileibe nicht im Widerspruch zum Grundsatz der Willensautonomie bei Kant. Er führt dabei seine Unterscheidung des moralischen Actus vom religiösen Habitus ins Feld, um solchen moralischen Nihilismus zu vermeiden. Er versucht zugleich weiterhin, der amoralischen Welt als Natur eine neue praktische Bedeutung beizulegen, was "das höchste Gut" oder das Dasein Gottes betrifft. Es ist m. E. die reflektierende Urteilskraft, die diese Bedeutung entdeckt und das Vertrauen zu dieser Welt gewinnt. In diesem Sinne kann Kant als der eigentliche Verfechter der Idee des Gnadenreichs von Leibnitz bezeichnet werden.
著者
柴村 抄織
出版者
鎌倉女子大学
雑誌
鎌倉女子大学紀要 = The journal of Kamakura Women's University (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.114-101, 2018-01

源氏物語五十四帖中、柏木は、若葉上巻、若葉下巻、柏木巻を中心に登場する。女三の宮への想いに苦悩する柏木の人生について、柏木のモデルとなった歴史上の人物である藤原道信に関連する和歌表現によって、紫式部は柏木の人間像を描写している。
著者
伊藤 甲之介
出版者
鎌倉女子大学
雑誌
鎌倉女子大学紀要 = The journal of Kamakura Women's University (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.113-119, 2017-03

This paper describes the differences between the self-reliance activity of children with visual impairment, auditory impairment, physical handicap, and poor health at special-needs schools and the self-reliance activity of children with intellectual disability with reference to the history of self-reliance activity. This study also examines the relation to the context of subject-specific guidance. The education for the disabled other than for those with intellectual disability is supposed to provide the same education as a normal school (equivalent education). However, for intellectual disabilities education, there is a correspondence from the characteristic of the disability in the subject of the content for under first year of elementary school. Self-reliance activities address the difficulties from disabilities other than intellectual disabilities, however, for the mentally retarded itself, subject-specific guidance address. Here we describe the differences and relationships of self-reliance activities.
著者
吉田 啓子 桑原 礼子 Keiko YOSHIDA Reiko KUWAHARA
雑誌
鎌倉女子大学紀要 = The journal of Kamakura Women's University (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
no.11, pp.75-82, 2004-03-31 (Released:2017-05-30)

台所で常に利用し、食品や器具類と接する機会の多い洗浄用のスポンジ・たわしは衛生的取扱が難しく、煩雑になりやすいと考えられる。そこで台所用スポンジ・たわしの微生物学的実態調査を行うと共に、Esherichia coli IAM12119[T], Bacillus subtilis IAM12118[T], Pseudomonas fluorescens IAM12022 [T]をそれぞれをスポンジに接種し、乾燥させた状態あるいは湿った状態で20℃、30℃と温度を変えて保存しそれぞれの消長を観察し2, 3の知見を得た。([T]は上つき文字) When we clean the utensils, we frequently use sponge scourers and scrubbing brushes in the kitchen. Therefore we investigated the actual conditions of these utensils and examined the surval and growth of bacteria in the preservation test of sponge scourers and scrubbing brushes. The samples that were inoculated with Esherichia coli IAMIAM12119[T], Bacillus subtilis IAM12118[T], pseudomonas fluorescens IAMIAM12022 [T] respectively, were inoculated and kept in an incubator at 20℃ or 30℃ for I day under wet or dry conditions. A few results were obtained, and we discuss them in this paper.([T] is subscript)
著者
岩田 建 Ken Iwata
雑誌
鎌倉女子大学紀要 = The journal of Kamakura Women's University (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
no.22, pp.35-42, 2015-03-31

市販の500mL ペットボトル入りミルクティー ( 6 社 8 種) を用いて、 官能評価の結果を、 商品解析に用いられているプロダクト・マッピングの手法に応用し、 味の特徴について系統的に分類することを試みた。 さらに、 商品の販売数と商品の味の特徴とに関連性が見いだせるかどうかを検討した。 この結果、 商品の味を、 「甘さ」 が強いか 「苦さ」 が強いかの軸と、 「紅茶風味」 が強いか 「ミルク風味」 が強いかの軸の 2 軸で考えることで、 系統的に配列できる可能性が示唆された。 また、 販売数と商品の味との関連は低く、 広い味の範囲で好まれていると考えられた。Several commercial milk teas served in 500 mL plastic bottles were attempted to be classified according to tastes. The tastes of milk teas were tended to be correlated with 2 indexes, which were, the index of between sweetness and bitterness, and between milk flavor and tea flavor. The results suggested that commercial teas can be systematically classified according to these 2 indexes. However, the sales of these teas were not associated with their tastes, teas with various tastes seem to appeal many people.
著者
福留 温子
出版者
鎌倉女子大学
雑誌
鎌倉女子大学紀要 = The journal of Kamakura Women's University (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.71-82, 2017-03

「らうたし」は、奈良時代にはなく、『うつほ物語』『蜻蛉日記』『落窪物語』の時代になり使用されるようになる形容詞である。「非力な者に何とかしてやりたい気持ちを表す」と辞書等に説明されるが、語を使用する主体と対象の関係は明らかにされていない。小稿では『落窪物語』の「らうたし」を分析し、結果、この語は親から子、夫から妻などの庇護者から被庇護者にしか用いられない形容詞であり、「らうたし」と思うことを動機として直後に庇護者として庇護行為をするケースがほとんどであり、『落窪物語』の「らうたし」は主体の庇護行為の意思を含む願望を表す語であることがわかった。また落窪が窮状に耐え努力する姿を道頼が「らうたし」と思い、庇護しようという意思・願望をもつことがストーリーを動かす力となっており、この語は当該物語を象徴する語であるといえる。
著者
柴村 抄織 Saori Shibamura
雑誌
鎌倉女子大学紀要 = The journal of Kamakura Women's University (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
no.21, pp.128-114, 2014-03-31

源氏物語篝火巻には源氏から玉鬘への贈った歌がある。 源氏は、 自分の心情を庭園の篝火の煙に喩える。 玉鬘も、 玉鬘自身の状況についての考えを空と煙の和歌で返歌する。 紫式部は、 この表現によって玉鬘の人物造型を巧みに描写している。 この表現の調査によって、 贈答歌の新解釈を行った。
著者
福田 喜一郎 Kiichiro Fukuda
雑誌
鎌倉女子大学紀要 = The journal of Kamakura Women's University (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
no.13, pp.39-50, 2006-03-31

Kant stand nach seiner Aufklärung-Schrift (1784) verschiedenen Schwierigkeiten gegenüber. Seine Unterscheidung zwischen dem öffentlichen Gebrauch und privaten Gebrauch der Vernunft wurde von Hamann streng getadelt. Kant wurde danach in den Spinoza-Streit zwischen Jacobi und Mendelssohn hineingezogen und für Atheisten gehalten. Ferner gab es heftigen Angriff der Schwärmer auf die in Berlin entwickelte Aufklärung. Kant hat in dieser Phase seine Orientierung-Schrift (1786) geschrieben, um die Idee von seiner Aufklärung in praktischer Absicht zu erklären. Seine Idee wurde neu als "Selbstdenken" vorgelegt, dessen Maxime heisst: "den obersten Probierstein der Wahrheit in sich selbst suchen".
著者
大滝 世津子 Setsuko Otaki
雑誌
鎌倉女子大学紀要 = The journal of Kamakura Women's University (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
no.22, pp.13-22, 2015-03-31

本研究は幼児の性自認に関する諸理論に対し、 社会学的観点から批判的検討を加えることを目的とし、 有効性と限界を検討した。その結果、 以下の点が明らかになった。 (1)発達同一視理論、 ジェンダー発達理論、 パーソンズの社会化論は、 家庭内における大人-子どもという垂直軸を基本としており、 子ども同士のピアという水平軸が含まれていなかったという点に限界があった。(2)社会的学習理論、 認知発達理論、 ジェンダー・スキーマ理論、 言語的認知説は、 家庭外における大人や仲間の影響を指摘している点に有効性があるが、 幼稚園や保育所のような組織的集団の中で生じた集団力学の影響等については説明していない点に限界があった。
著者
梨本 加菜
出版者
鎌倉女子大学
雑誌
鎌倉女子大学紀要 = The Journal of Kamakura Women's University (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.15-27, 2019-01

青少年の放課後の文化活動に対する関心は、日本経済の深刻な状況や高額な学校教育費、また社会的・経済的に厳しい家庭を背景にしながら十分では無い。先行研究や優れた事例により、児童館や居場所事業、学校や公民館の「カフェ」、また博物館の教育活動の有用性が明らかになっている。障害者の文化活動も重要である。青少年の自主的で固有の活動と文化の観点から、発展的な研究が行われる必要があろう。
著者
東 ゆかり Yukari Azuma
雑誌
鎌倉女子大学紀要 = The journal of Kamakura Women's University (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
no.21, pp.31-41, 2014-03-31

本研究の目的は、 東京女子師範学校附属幼稚園開設時に日本人初の保母となった豊田芙雄 (1845-1941) が歌詞を作成した保育唱歌 「六球」 について、 豊田自筆の6種類の文書の分析を通して、 従来の保育唱歌研究の中でその存在が謎に包まれていた 「六球」 の唱歌がどのようにして作られたのか、 その一端を明らかにすることにある。 文書の分析の結果、 9曲からなる 「六球」 の唱歌は、 最初の 1曲が作られ、 それに続けて赤色から間色までの 8曲がほぼ同時に作成されていたことがわかった。 特に、 赤色・黄色・青色の 3曲については、 何度も歌詞の推敲がおこなわれていたことが明らかになった。
著者
柴村 抄織
出版者
鎌倉女子大学
雑誌
鎌倉女子大学紀要 = The Journal of Kamakura Women's University (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
no.27, pp.66-53, 2020-03-31

『源氏物語』五十四帖中、浮舟は、手習巻で出家する。手習巻の自然描写は、浮舟の内面と関連し、『伊勢物語』八十二段と八十三段を受容している。紫式部は、『伊勢物語』の描写によって、聖と俗の境、人物の内面を描写している。
著者
前野 澄子 Sumiko MAENO
雑誌
鎌倉女子大学紀要 = The journal of Kamakura Women's University (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
no.10, pp.159-165, 2003-03-31

19世紀におけるイギリスのアジア,アフリカヘの植民地政策,さらに20世紀後半のアメリカ合衆国の世界における政治・経済力の増大という二つの要因により,英語は世界共通語の地位を得たかに見える。英語は世界各地で使用され,それは必然的に地域の言語,社会文化の特性を色濃く反映した数多くの変種英語を生み出すこととなった。変種英語は言語学的にも英語の方言として認められ,世界中でこの分野の研究が盛んに行われている。今,英語は英語圏内外で大きな変容の時にある。英語の未来はいかなるものか,それが日本に及ぼす影響はいかなるものか。本稿では最近の文献を中心に本問題を概観する。The English language gained the status of a global language in the mid 20th century. As English has come to be used in various parts of the world, many modified Englishes have been born. These Englishes strongly reflect the culture of the local people. These varied Englishes, called New Englishes, are recognized as part of the English language family and are being studied by many scholars. English is changing rapidly. What is in store for the future of the English language and what influence will it have in Japan? This paper will provide a brief overview on these issues.