著者
下塩 義文 三好 正純 古賀 広昭 徳田 正満 高井 朋昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.81, no.9, pp.883-891, 1998-09-25
被引用文献数
30

平衡ケーブルの対地平衡度は, 平衡ケーブルに存在する, あるいは何らかの原因で生じた不平衡成分の大きさや分布状態によってどのように変化するか明確にされていない.本論文は完全に平衡と仮定したケーブルに任意に不平衡成分を付加することにより, 実際の平衡ケーブルを表すことを提案し, その対地平衡度の計算法を明らかにしたものである.大地を考慮した平衡ケーブルおよび不平衡成分を表す付加並列アドミタンス, 付加直列インピーダンスの入出力特性を3導体の継続行列で表現し, これらの継続行列を用いて, 任意の不平衡状態における平衡ケーブルの対地平衡度の解析を行った.実験例として, 端末機器接続や浸水等の障害により生じる静電容量不平衡が存在する場合, および試験接続時の対地平衡度の計算値を求め, 実測値とよく一致することを確認した.
著者
中村 隆 徳丸 仁
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.200-207, 1995-03-25
被引用文献数
22

近年の電波利用の増加に伴い,電波の人体への悪影響が懸念されている.特に,職業上強い電波照射を受ける人々にとっては,大きな問題である.本論文では,強い電波を扱う研究者を対象に,人体への影響で問題となる吸収電力を完全導体のシールドを用いて低減させるという手法を提案し,その基礎段階として,完全導体のシールドを着けた円柱人体モデルに平面波が入射する場合の電力吸収率(SAR)の低減効果を計算し,シールドの有効性を示した.
著者
高野 忠 名取 通弘 大西 晃 三好 一雄 井上 登志夫 水溜 仁士 箭内 英雄 広澤 春任
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.81, no.7, pp.673-682, 1998-07-25
被引用文献数
11

長さを定めた柔軟ケーブル群は, 伸展マストで張力を加えることにより, 放物面を近似できる.その上にメッシュを張れば, アンテナの主反射鏡面となる.マストを縮めて張力を抜けば, 反射鏡面は小さくたためる.この形のアンテナは, 展開/収納の容積比を大きくできる特長がある.本論文は, この張力ケーブルトラス構造を応用して衛星搭載用大口径アンテナを構成する場合の問題点と, その解決法について述べる.まず構造, 展開法, 使用材料を説明する.つぎに多数のケーブル類や伸展物を用いる本アンテナにおいて, 絡み防止法と重力補正法の必要性と具体的方法を記す.最後に主反射鏡の精度と電気特性を推定する.なお, 本アンテナは実際に, スペースVLBI(超長基線干渉計)衛星に搭載されて打ち上げられ, 宇宙で展開された.
著者
佐々木 重信 菊池 久和 朱 近康 丸林 元
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.77, no.11, pp.655-664, 1994-11-25
被引用文献数
5

本論文では,筆者らがこれまで検討してきた並列組合せSS通信方式の一方式として,差動並列組合せSS(DPC/SS)通信方式を提案する.並列組合せSS方式は,複数のデータビットを+,-の状態をもつ拡散系列の組合せに変換して送信することで周波数利用効率を高めたSS方式である.本論文で提案する方式は,送信する系列にかかる+,-の状態データに送信側で差動符号化を施し,受信側で<は拡散系列の組合せを包路線検波により復調し,また+,-の状態データを遅延検波を用いて復調する.このため,受信側で搬送波の位相を再生する必要がなく,伝送路における位相変動が激しい移動体通信に有効と考えられる.本論文では,DPC/SS通信方式の基本的な性能として,白色ガウス雑音のみの伝送路,レイリーフェージング伝送路における誤り率特性,またレイリーフェージング伝送路においてダイバーシチを適用した場合の効果を明らかにした.その結果,本方式を従来のDPSKやBPSK方式と同等のデータ伝送速度で加法性白色ガウス雑音伝送路に適用した場合,ビット誤り率10^<-8>における情報ビット当りの所要SN比を,DPSKやBPSK方式に比べて,1dB以上削減できることが明らかになった.またレイリーフェージング伝送路において受信側にダイバーシチを適用した場合,ブランチ数の増加に伴うビット誤り率の改善効果が従来のDPSKによる直接拡散SS方式に比べて大きいことが明らかになった.
著者
佐藤 尚登 宮崎 保光 山下 享子 竹中 康雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.175-182, 1995-03-25
被引用文献数
3

巨大な海洋構造物である南備讃瀬戸大橋付近において,LF帯無線測位システムの電磁波じょう乱が観測された.既に,約100kHzのデッカ電波による磁界強度の測定結果から,じょう乱源は橋梁を支える2本の主塔であり,両主塔をそれぞれ静電容量が0.2μF程度の微小垂直ダイポールアンテナとみなすことができた.本論文では,船位誤差がどの程度起きているのかを解析するために,100kHzのロランC単一送信局からの電波の位相測定を行い,トランシットによる高精度の船位と比較して位相誤差を求めた.その結果,橋のごく近傍を除けば位相誤差の測定値はおおむね計算結果と一致していた.従って,橋の両側約200mから1,500mの広い範囲において,位相じょう乱は時間の単位で±0.2μs〜±0.4μs程度もあり,距離に換算すれば約±60m〜±120mの大きな船位誤差が発生することがわかった.
著者
加藤 喜久 大鐘 武雄 小川 恭孝 伊藤 精彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.1-9, 1998-01-25
被引用文献数
19

低アンテナ高基地局, すなわち各アンテナ素子に生じるフェージングがそれぞれ無相関となる場合について, アダプティブアレーによる干渉除去特性を検討した。本論文では特にアンテナ本数, 干渉波数が多い場合について着目し, SINR特性, BER特性の評価を行った。SINR特性の検討により, 平均SNRが大きい場合には, ダイバーシチ利得がほとんど得られないのに対して, 平均SNRが小さい場合には, ダイバーシチ利得が大きくなることが明らかになった。BER特性においては, アンテナ本数が7本程度までは, ほぼアンテナ本数増加による利得のみとなった。しかし, 10本以上になると若干ながら余剰自由度によりダイバーシチ利得が得られることがわかった。フェージング変動(上り回線, 下り回線)による影響の検討では, 上り回線において, RLS法, SMI補間法では規格化ドップラー周波数が1×10<-4>以下では劣化が少なくほぼ追従できているという結果が得られた。下り回線においては, SMI1次外挿法, RLS1次外挿法, 双方とも規格化ドップラー周波数が1×10<-4>以下ではフロア誤りが1×10<-2>以下となり, ある程度適用可能であることがわかった。
著者
佐藤 正治 倉本 昇一 松岡 浩一 太田 稔 竹本 孝次
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.765-772, 1993-09-25
被引用文献数
3

センタビルに対する直撃雷の観測や,ビルを用いて雷の印加実験を行う際には,そのビルの柱やはり,壁などの電流を測定できる電流センサが必要である.電流センサとしては,測定対象の周囲にコイルを配置し,その誘導電圧をピックアップするロゴスキーコイルが多く用いられており,市販品も数多くあるが,これらの電流センサは小形であり,ビルの柱やはりを測定できるような大形のものはなかった.このため本報告では,ビルの柱やはりなどを囲むことができる長さで,かつ現場の状況に柔軟に対応してセットできるようなフレキシブル性を有するロゴスキーコイルを検討した.まず,コイルと積分器を集中定数で等価回路化すると共に,有効周波数帯域幅と感度特性について目標値を設定し,それに最適な構造条件を明らかにした.この結果より,ビニルパイプを心材とする空心コイルを試作した結果,長さ1-10mで,周波数300kHz,電流-電圧変換ファクタ1/100のロゴスキーコイルを実現することができた.更に,被測定電流の位置依存性を測定した結果,本コイルのような長尺構造でも十分実用に供し得る特性が得られた.
著者
浜口 清 笹岡 秀一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.445-453, 1995-06-25
被引用文献数
8

ディジタル陸上移動通信における,周波数利用効率の向上と高品質伝送を目指した伝送方式である直交SFH/16QAM方式について特性を明らかにした.本方式は,高能率伝送の観点からパイロットシンボル挿入形フェージングひずみ補償による16QAMで伝送する.但し,16QAMは耐干渉性に乏しいため,セルラシステムに適用する場合は何らかの方策を必要とする.そこで,誤り訂正手法の改良による新しい耐干渉復号を提案する.直交SFHでは,セル間移動局は互いに異なるホッピングパターンをとるため,他セルからの干渉波は希望波に対してランダム化される.この性質を利用してスロットに周期的に挿入した間げきより希望波に重畳した干渉波レベルを検出・推定し,重み付けユークリッド距離最小復号して16QAMの耐干渉性を向上する.周波数選択性下における計算機シミュレーションでは本方式は遠近問題に強く,セルラシステムの上り回線への適用が特に有効であることがわかった.下り回線についてはボイスアクチベーション制御の導入が有効である.またSFHによる周波数ダイバーシチ効果から,緩慢なフェージングに対しても特性の劣化が少ないという結果を得た.