著者
小林 弘一 本郷 廣平 田中 五輪男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.81, no.9, pp.863-871, 1998-09-25
参考文献数
7
被引用文献数
6

複雑な形状物体からの散乱界あるいは散乱断面積を効率的に行う計算法は, レーダ等の電波システムを利用する分野では必要不可欠な評価ツールとなる.本論文では, 物体の表面を表す方法として2次曲面近似を利用し, この2次曲面を四角形又は三角形の区分で物体を分割表示して, 物理光学法による平面波入射の遠方散乱界を求めている.この計算法によれば, 曲率を考慮しつつFresnel積分の漸化式で放射積分を解析的に解くことが可能であり, 波長に比べて大きな物体に対して効率的で機械的な計算が期待できる.だ円体等の3次元モデルに適用した結果, 物理光学積分を直接数値積分した結果とよく一致していることが確認された.
著者
満保 正喜 深見 哲男 岡田 敏美 長野 勇 木村 磐根
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.416-423, 1997-05-25
被引用文献数
8

夜間, ロケットを用いて地上にあるVLF局と中波放送局のそれぞれの磁界強度を観測すると共にラングミュアプローブ(DCプローブ)電流を計測し, 合わせて中波のドップラー観測も行った. E層中にVLF波磁界強度の定在波分布や中波の正常波, 異常波成分が観測された. そしてDCプローブ電流を参照して, これらVLF波や中波の観測値とフルウェーブ計算による理論計算値が合うよう電子密度ならびに電子の衝突回数の高度分布を修正・推定した. このようにしてVLF波の磁界強度分布から電子密度をE層下部から上部にかけて推定し, 弱いEs層が数層あることがわかった. また, 中波のドップラー観測によりE層上部にわたる電子密度の推定に成功すると共に異常波の上昇波の強度成分から地上110 km前後における電子の実効衝突回数の値も推定できた.
著者
上原 一浩 関 智弘 鹿子嶋 憲一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.78, no.9, pp.593-601, 1995-09-25
被引用文献数
57

従来より,屋内伝搬遅延特性の解析に適用されている幾何光学的解析手法に,任意の送受信アンテナ指向性と偏波の効果を含めて計算するアルゴリズムを組み込んだ.直方体の部屋においてこれらを含めた計算を行う際に必要な角度情報等を,部屋の幾何学的性質から容易に求める手法を示した.本手法によりマルチパス伝搬環境における狭ビームアンテナの遅延波抑圧効果を定量的に示した.例えば,送受信アンテナが共に無指向性の場合に対し,半値角30°のペンシルビームを用いた場合には遅延スプレッドは1/10近くまで低減される.これらにより,屋内高速無線データ通信において高い伝送品質を実現するためのアンテナ半値角や偏波等の設計手法が示された.
著者
目黒 在 三次 仁 安藤 和秀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.476-484, 1993-05-25
参考文献数
10
被引用文献数
8

15m級の大型展開アンテナを構築するために必要な構造概念,要素技術について述べる.本論文では,15m級の大型展開アンテナを構築するために必要な構造概念として,モジュール型ケーブルメッシュ展開アンテナを提案し,モジュール化による小型化の利点とモジュール結合による誤差の影響を定量化してその特質を示している.更に,高精度鏡面構成技術としてケーブルネットワークと金属メッシュによるケーブルメッシュ鏡面を提案し,解析技術およびそれらに基づいた試作モデルにより鏡面精度0.24mmRMSが達成できることを示した.また,鏡面支持構造として同期展開トラス構造を提案した.展開トラス構造構成技術,結合展開トラスモジュールの設計方法,4m基本モジュール試作モデルと三つの縮小モジュールを結合した試作モデル,展開解析結果について示し設計の妥当性,ハードウエア構成に伴う問題点を明らかにしている.
著者
戸花 照雄 上 芳夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.812-818, 1996-11-25
参考文献数
11
被引用文献数
19

プリント回路基板(PCB)からの放射妨害波は,EMC/EMIの分野での深刻な問題である.PCBのグラウンド雑音はコモンモード放射源となる可能性が高く,そのためここではグラウンド電流が作る近傍磁界に着目している.線路パターンの位置が異なる有限な大きさのPCBの銅箔の表と裏の磁界分布について,実験的に考察し,理想的な状態で計算した磁界分布との比較を行っている.更に,基板から放射される遠方電界の測定を行い,実験から求めた基板縁の電流から簡単に求めた計算値との比較を行っている.これらの結果からPCBの線路パターンの存在する誘電体側(表側)だけでなく,PCBの裏側の部分にもかなり高いレベルの磁界分布が確認され,このコモンモード電流が放射電界に大きくかかわっていることを明らかにした.
著者
守山 栄松
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.78, no.12, pp.767-771, 1995-12-25

DS-SS受信機として,伝搬路の遅延プロファイルの瞬時S/Nの一番大きいパスのみを逆拡散する受信方式の特性解析を行った.本方式を,理想RAKE受信機と従来までの固定パス方式と比較した.相関器出力信号の累積分布から,S/N劣化量,実効枝数および誤り率特性の理論値およびシミュレーション値を求めた.
著者
鈴木 利則 水野 俊夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.77, no.12, pp.739-748, 1994-12-25
被引用文献数
32

差動符号化振幅変調(DASK)信号に適用可能な多シンボル遅延検波方式を提案しその特性を評価している.多シンボル遅延検波方式とは観測シンボル数をふやすことによって,その誤り率特性を同期検波の特性に近づけるものである.多シンボル遅延検波は,これまで差動符号化位相変調(DPSK)信号についてその適用が検討されているだけであった.しかし近年,DASKを用いた16DAPSK(スター16QAM)が16DPSKよりも誤り率特性がよいために,大容量伝送を目指した無線通信の変調方式として,その適用が検討されるなど注目されている.しかし従来の多シンボル遅延検波方式では差動符号化振幅変調(DASK)には適用できない.本論文では初めに,DAPSK変調方式における送信信号が与えられたときの受信信号の事後確立を求め,振幅成分を含んだゆう度算出式の導出を行う.その結果ゆう度は雑音電力Nに依存する値となるが,しかしNが十分小さい場合はNに依存しない値に漸近することを示す.続いて,最ゆう系列推定(MLSE)の観点から,そのゆう度の漸近値を最大にするDAPSK多シンボル遅延検波方式を提案する.次にDAPSK変調方式として16DAPSKを採り上げ,従来の遅延検波方式における最適パラメータを理論的に検討したうえで,多シンボル遅延検波方式を適用する.更にAWGNチャンネルにおける誤り率特性を計算機シミュレーションにより評価し,ゆう度算出式の妥当性と提案方式の有効性を確認している.
著者
飯草 恭一 手代木 扶 藤田 正晴 山本 伸一 井家上 哲史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.81, no.10, pp.936-948, 1998-10-25
被引用文献数
12

捕捉・追尾機能を必要としない衛生通信および放送のための車載用として, チルト角45度, ビーム幅18度の円偏波コニカルビームを, 15GHzにおいて同軸円筒スロットアレーアンテナで実現した.アレー配列軸に垂直な方向においては, 一般に±45度の傾きのスロットをλ_g/4間隔(λ_gは外皮導体に切られたスロットの影響を含んだ実質的な管内波長)で配置したペアを素子単位とすることにより円偏波を実現できるが, チルト方向ではスロットの垂直成分と水平成分の射影が等しくないため, 軸比が悪くなる.そこで, スロットの傾き角とペアを構成するスロット間隔の調整による軸比改善法について理論的, 実験的な検討を行った.また, 開口面分布の振幅と位相はそれぞれスロットの大きさと位置によって調整されるが, スロットの移動によりチルト方向への光路長が変化し, アンテナパターンや軸比の劣化が起こる.そこで, この光路長変化を考慮したスロット移動量の補正についても明らかにした.
著者
丸山 珠美 上原 一浩 鹿子嶋 憲一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.424-433, 1997-05-25
被引用文献数
44

屋内高速無線LAN端末用アンテナは, 設置場所のフレキシビリテイ向上のため小型でかつ全方位をカバーできることが望ましい. しかし高速化を実現する鋭いビームを得るには, アンテナの開口面積を確保する必要があり小型化は困難であった. 本論文は, この小型化を目的として, 円形地板上にモノポール八木・宇田アレーアンテナを周方向に配列したマルチセクタモノポール八木・宇田アンテナ(MS-MPYA: Multi Sector Monopole Yagi-Uda Antenna)を提案し, モーメント法を用いた解析と実験によりその設計を行った. MS-MPYAは金属フィンの設置がアレー間結合によって生じる水平面指向性のビーム割れをなくすのに有効であること, 隣接アレーを用いた指向性制御により水平面の半値幅を10゜小さくできること, 地板の影響により垂直面のビーム幅がアレー長によらず絞られることを示し, これによりアンテナの小型化が可能となることを明らかにした. 本結果をもとにアレー長, 地板長, リフレクタの高さ, フィンの長さで決まるMS-MPYAの設計法を示すと共に, 無線LANに用いる19GHz帯で試作を行い, MS-MPYAがコーナリフレクタを用いた場合の1/3の高さ6mmで所望特性が得られることを明らかにした.
著者
島田 一雄 若林 良二 鈴木 弘 武藤 憲司 田中 健二 浅井 紀久夫 結城 皖曠 近藤 喜美夫 渡辺 正子 美濃 導彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.486-495, 1998-05-25
参考文献数
13
被引用文献数
8

現在, 大学, 高専等の高等教育機関が教育・研究に利用しているディジタル衛星通信システムは, 二つに分けられる.文部省が大学間教育交流を主目的に推進しているSCS(Space Collaboration System)と研究を主目的として自主的に組織されたディジタル衛星通信の大学間高度共同利用研究協議会(UnSAT協議会:University's Joint Study Group for Digital Satellite Communications)である.本論文は, 平成9年5月30日に航空高専で開催された国立高等専門学校協会(以下, 国専協と略記)主催の「高等技術教育フォーラム'97」を上述のSCSとUnSATの異なる二つの衛星通信システム接続により, 終日, 6高専と3大学に配信する実験を行った結果を取りまとめたものである.最初にSCSとUnSATの概要を述べ, 続いてフォーラムの内容を紹介する.つぎに予備実験とフォーラム当日実施した本実験について述べる.更に, 予備実験と本実験に対する参加者へのアンケート調査に基づく主観評価結果の一部を示す.続いて, 1ホップと2ホップの場合の画像劣化の比較を行うために試みた画像の客観評価の結果について述べる.最後に考察を行い, 2衛星通信システム接続による教育・研究交流ネットワーク構築への手がかりが得られたことを示す.
著者
米澤 ルミ子 小西 善彦 千葉 勇 浦崎 修治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.515-522, 1998-05-25
被引用文献数
8

本論文では無線LANのようなシステムにフェーズドアレーアンテナを用いることにより, ビーム形成のための素子アンテナの励振位相を制御することによって広帯域にわたって近傍への電波干渉を低減する方法について検討した.この方法はアレー状態での遠方および近傍の各素子アンテナの振幅位相成分データをもとに, 方向拘束付き出力電力最小化アルゴリズム[1]を用いて各素子アンテナの最適励振位相を決定するものである.ここで示す方法は近傍での干渉をおさえるだけでなく, ビームを向けたい遠方の所望の方向での放射レベルを維持する効果もある.迷信フェーズドアレーアンテナの位相を制御することにより近傍への干渉波を抑圧する方式について, 方向拘束付き出力電力最小化法を用いた方法について検討した.また, 8素子のパッチアレーアンテナを用いた実験において周波数9.55GHz, 帯域500MHzの範囲で13.2dB, 中心周波数の1点のみで31.7dBの干渉波の抑圧を確認した.更に, 位相制御用にディジタル移相器を用いた場合に起こる量子化誤差の影響を除去する方法を示し有効性を確認した.
著者
佐和橋 衛 安達 文幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.233-239, 1994-05-25
被引用文献数
3

周波数ホッピングは,フェージングによるバースト誤りをランダム化し誤り訂正効果を高める手段として効果的である.本論文では,ディジタル信号処理による周波数変換法を適用して,高速切換えを実現した周波数ホッピング送受信機の構成を述べている.まず,周波数ホッピング変調信号の生成と周波数変換フィルタを用いたホッピング信号の受信についてそれらの原理を述べる.次に,試作した96周波間(12.288MHz帯域幅)をホッピング可能な1.5GHz帯送受信機の構成(128kbit/s,差動符号化π/4シフトQPSK変調,遅延検波)について述べる.送信側(受信側)の周波数切換え時間はそれぞれ2(32)μsであり,約75μsでホッピング信号の周波数変換,検波が行われることを確認している.最後に,フェージング環境下における周波数ホッピングと誤り訂正の適用効果について実験的に評価している.本提案の方法は分周器と位相同期ループで構成される従来の周波数シンセサイザの代わりに固定周波数発振器を用いるので周波数切換えを高速にできるほか,ベースバンド処理を用いているのでLSI化に向いており,無線機の小型,低消費電力化に適している.
著者
田中 正人 木村 繁 手代木 扶 松本 泰 伊藤 猛男 赤石 明 水溜 仁士 大久保 茂
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.442-451, 1993-05-25
被引用文献数
20

1994年打上げ予定の技術試験衛星VI型に搭載して我が国初の衛星間データ中継実験を行うSバンド衛星間通信用アンテナ(SIC)について述べる.SICは衛星搭載としては世界初のオンボードビーム形成マルチビームフェーズドアレーアンテナであり,電気的にビーム走査を行い複数の周回衛星(ユーザ衛星)との間で同時にデータ中継することができ,また,オンボードマイクロプロセッサを用いてユーザ衛星の位置を計算し自動的にビームを向ける,などの特徴を有している.オンボードビーム形成方式は米国のデータ中継衛星の方式に比べて我が国のようにユーザ衛星が比較的少ない場合に周波数と電力の有効利用が図れるなどの利点を有する.本論文ではまず,SICの機能・構成について述べ,つぎに温度変動等に起因する位相・振幅誤差の影響を含めたアンテナ解析について述べる.更に,主要コンポーネントとして新たに開発した広帯域マイクロストリップアンテナ,小型で位相誤差の少ないビーム形成回路,ユーザ衛星の軌道計算を行う移相器コントローラについて述べる.最後にSICの搭載モデルの総合試験結果を述べる.
著者
佐藤 正治 倉本 昇一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.80, no.9, pp.791-799, 1997-09-25
被引用文献数
11

ビルに直撃雷を受けると, 柱や梁, 壁等に流れる電流の影響によって, 通信装置が故障することがある. このため, その電流分布特性を明確にし, 防護対策を確立する必要がある. 従来, ビルの電流分布推定には, 柱や梁を集中定数で表す線形モデルが用いられてきた. しかし, 実際のビルの検討例は数少なく, 現実に存在する大地やビルの壁, 床をどう取扱うか等, モデルと実際の対応付けが大きな課題であった. このため著者らは, 複雑な形の柱や梁の等価インピーダンスを実験的に検討すると共に, 大口径ロゴスキーコイルを設計して実際の柱や梁の電流を測定できるようにしてきた. 本論文では, これらの結果をベースに, 壁や床のないビル縮小モデルと実際の鉄筋コンクリートビルを用いて雷電流印加実験を行い, 大地や壁, 床の影響を検討すると共に, 従来の線形モデルの計算法との比較を行ったものである. この結果, 柱や梁の電流分布特性を明らかにすると共に, 電流分布の計算では, 柱や梁の等価インピーダンスに加えて大地抵抗率を考慮する必要があることを示した. また, ビルの外周がコンクリート壁の場合, その外壁の鉄筋に流れる電流は, ビルに流入する電流の約30%であることを示した.
著者
小菅 義夫 亀田 洋志 真野 清司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.414-421, 1996-07-25
参考文献数
7
被引用文献数
42

あらまし 目標位置をレーダ観測値として,直交座標により,位置,速度等の目標運動諸元の真値を推定する追尾フィルタについて検討している.その代表例は,カルマンフィルタあるいはα-βフィルタを使用したものである.カルマンフィルタは,追尾精度は良いが演算負荷が重い.α-βフィルタは,追尾精度に問題があるが演算負荷が軽く実用的である.演算負荷の軽いα-βフィルタがカルマンフイルタと同程度の追尾精度をもてば,更に実用的になる.そのため,α-βフィルタがカルマンフィルタに近似できるための条件を検討した.本論文では, 目標位置ベクトルを1軸とするレーダ座標を平滑値(現サンプリング時刻に対する目標運動諸元の推定値)算出に使用する. この場合,目標運動とともに座標軸が回転するレーダ座標の回転および目標の角速度が微少で,駆動雑音(目標運動モデルのあいまいさを示すパラメータ)が座標間で独立で同一の値としたとき,α-βフィルタがカルマンフィルタに近似できることを証明する. この結果は,目標が低速度,目標距離が大,あるいは目標がレーダに向かって直進しているとき,α-βフィルタがカルマンフィルタに近似できることを示すことになる.
著者
元満 民生 山根 宏 服部 光男 徳田 正満
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.461-470, 1995-06-25
参考文献数
6

雷サージが原因で生じる符号誤りには,通信装置に設置されている避雷器の動作によって引き起こされる符号誤りと回線の不平衡によって心線間に現われる雷サージが伝送信号に重畳されることによって引き起こされる符号誤りがある.本論文では,この二つの符号誤りを考慮し,シミュレーションで符号誤りを推定・評価する方法を提案した.そして,本提案法を用いてAMI符号ディジタル伝送方式の加入者端末装置における雷サージによる1雷雨当りの平均符号誤りを求めた.その結果,避雷器動作が原因で発生する符号誤りは避雷器の動作電圧の-1.8乗に,心線間雷サージによって引き起こされる符号誤りはしきい値レベルの-1.8乗にそれぞれ比例することがわかった.そして,雷発現時の符号誤りは,ディジタル伝送システム固有の符号誤りに比べてかなり大きくなる可能性があることを明らかにした.更に,シミュレーションに用いるサンプル数と推定誤差の関係についても検討を行い,妥当なサンプル(標本)数は50〜100個であることを明らかにした.
著者
貝沼 昭司 村山 泰啓 森 弘隆 五十嵐 喜良
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.422-425, 1996-07-25

通信総合研究所(CRL)では,日米国際共同研究の一環としてアラスカ大学等と共同で,アラスカにおいて極域中層大気の総合的な研究観測を行う計画を推進している.256ビームイメージングリオメータは,CRLがこの計画のために新たに開発している観測装置の一つである. この論文では,システムのデザインと,国内試験観測結果について述べる.
著者
坂本 宏 上野 健治 田中 博 堀川 浩二 高畑 博樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.881-891, 1996-11-25
被引用文献数
4

地球局の小型化,通信容量の増大,静止軌道/周波数の有効利用を可能にするマルチビーム衛星通信方式の実現のため,衛星搭載用固定通信および移動体通信用機器を開発し,技術試験衛星VI型に搭載した.本衛星は1994年8月28日宇宙開発事業団種子島宇宙センターより打ち上げられ,きく6号と命名された.衛星はドリフト軌道投入のためのアポジエンジンの故障によって静止化を実現できなくなり長だ円軌道に投入された.このためドップラー効果による周波数偏位が大きく,また静止軌道に対して準備した地球局アンテナでは高速に移動する衛星を長時間にわたって追尾することができず,高速広帯域通信実験の実施は極めて困難となった.一方,搭載通信機器の軌道上での基本性能評価は短時間の測定でも可能と判断し試験を進めた.本論文では,性能評価試験を可能とさせるための衛星システム運用および評価試験方法を述べ,軌道上で測定した結果から,新たに開発したマルチビーム搭載通信機器が所期の性能を満足し宇宙実証できたことを述べる.
著者
松本 紘 臼井 英之 竹中 聡
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.257-264, 1997-03-25
被引用文献数
3

地球往還型宇宙機が地球大気圏に再突入する際に起こるブラックアウト現象に関する調査には, OREXやHYFLEX等の実際の再突入実験が実施されたが, このような宇宙実験は膨大な予算が必要となる. そこで, 我々はプラズマ電磁粒子コードを用いて, 計算機上でブラックアウト現象の再現およびその解析を行うことに成功した. また, ブラックアウト回避法として, 機体前面に生じる高密度プラズマ層に磁場をかける方法に着目し, その効果を調査する目的で計算機実験を行った. 今回は簡単のため, プラズマ層に印加する磁場を一様磁場とした. 計算機実験の結果, 機体からの通信電波が,高密度プラズマ層中ではホイスラモードおよびLモードで伝搬可能であることが確認された.
著者
佐藤 和夫 西川 訓利 鈴木 徳祥 小川 明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.892-900, 1996-11-25
被引用文献数
75

人体近傍に置かれた携帯無線機用アンテナの特性をFDTD法を適用して解析し,アンテナが人体から受ける影響を明らかにする.解析モデルは人体頭部と携帯無線機を握る手からなる人体モデル,および金属きょう体に取り付けられたアンテナから構成される.本解析モデルを用いて計算した結果は実験値とよく一致し,人体モデルの影響を含めて携帯無線機用アンテナの特性を精度良く解析できることを示した.この解析モデルを用いて,携帯電話,およびPHSの周波数帯において,携帯無線機に取り付けられたλ/4モノポールアンテナおよび平板逆Fアンテナの特性を計算した.その結果,放射効率は人体モデルの影響を大きく受け,45%以下にまで劣化することがわかった.更に,人体モデル頭部の形状や携帯無線機を握る手の位置が放射効率に与える影響を明らかにし,アンテナの種類によって人体から受ける影響が大きく異なることを示した.