著者
上野 友稔
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.9, pp.369-373, 2023-09-01 (Released:2023-09-01)

本稿では,電気通信大学附属図書館が,Ex Libris社製Almaを国立大学の図書館で最初に導入した事例について,Almaの導入に至るまでの背景や課題,運用の詳細,運用開始後の課題とともに紹介する。図書館のシステム更新時に重要となる仕様の要件検討では,電子書籍・電子ジャーナルの普及への対応とともに,検索サービスとディスカバリーサービスの一本化を重視した。さらに,システムの運用に関する職員教育,ワークフローの変化,新しい機能等への対応等の運用の実態を説明するとともに,運用中で見いだされた図書館システムの更新を検討する際の視点として,図書館職員としてのメンタリティ等の課題について触れる。
著者
渡辺 哲成 池下 綾乃
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.9, pp.362-368, 2023-09-01 (Released:2023-09-01)

大学図書館や専門図書館向けの図書館システムベンダーである弊社の経験から,「図書館・学術情報システムの移行」のポイントをいくつか紹介した。特にシステム調達フェイズから導入作業フェイズ,そして本稼働後にいたるまで非常に影響力の大きい2つのテーマ「仕様書」と「データ移行」に関することを中心に説明している。「仕様書」については,記載すべき内容や記述の粒度,ベンダー仕様書の使用の可否,クラウド型図書館システムの場合などについて解説しており,「データ移行」については,データ抽出作業の諸問題や,データ移行を円滑に進めるコツ,納品ドキュメントについて等を解説している。
著者
尾谷 有里奈
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.9, pp.394-398, 2023-09-01 (Released:2023-09-01)

昨今,知的財産への投資・活用を含めた知財戦略は企業の将来的な経営戦略を見据えた際にとても重要なことであるという意識が強まってきている。しかし経営層と知財部の連携が上手く取れていない,知財部としての体制が整っていない,という企業も少なくない。企業としての知財価値を守り,成長していくために,知財部として,サーチャーとして何ができるのか。本稿では知財業務において効率的に精度の高い特許検索と精査方法,そして知財部としてどのように企業の経営戦略に貢献していくことができるのかについて,弊社が提供しているツールをメインに紹介していく。
著者
牛頭 哲宏 髙松 邦彦 酒井 智行
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.336-340, 2023-08-01 (Released:2023-08-01)

神戸常盤大学は2015年度からクラウド型教育支援システム「manaba」を活用した教育実践を行ってきた。その結果,多くの教職員がmanabaを使いこなすノウハウを身に着けた。この実践が功を奏し,2020年度のコロナ禍でも,神戸常盤大学は迅速にオンデマンド式の遠隔授業を実施し,学生の学びの質が損なわれないように工夫している。本稿では,manabaの活用によって,どのように遠隔授業が実施され,どのような教育効果があったのかについて報告する。また,manabaに蓄積された学生の学習データにもとづいた大学改革の成果についても紹介する。
著者
永田 正樹
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.329-335, 2023-08-01 (Released:2023-08-01)

静岡大学では情報機器の老朽化やICT社会に関する時勢の変化などにより情報基盤を4,5年おきに全面更改している。ここ十数年のICT業界はクラウドコンピューティングの普及により情報資産は所有から利用へと変化した。静岡大学においても数回の更改を経てクラウドコンピューティングを全面適用した情報基盤に変化している。本稿では情報基盤更改に対して,クラウドコンピューティング導入前後の技術面,運用面,調達手法の変化を概説する。
著者
河井 良太
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.324-328, 2023-08-01 (Released:2023-08-01)

東大阪市では,令和3年4月より電子図書館サービス「ひがしおおさか電子図書館」を提供している。本稿では,当該サービスの導入経過や活用事例などについて紹介する。「ひがしおおさか電子図書館」は,サービス開始当初から“日本最大級の蔵書がある電子図書館”として広報することで利用拡充を図ってきた。また,学校連携事業の一環として,市立小中学校の全児童生徒がGIGAスクール構想のタブレット端末を用いて電子図書館を利用できるようIDを付与しており,子どもたちの読書環境の充実に努めている。今後さらなる市場拡大が期待される電子図書館であるが,リアルの図書館とのバランスを考えながらうまく共存させていくことが大切である。
著者
谷守 正行
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.312-317, 2023-08-01 (Released:2023-08-01)

元来,定期配達や定期購読の意味でしかなかったサブスクリプションサービスが,いったいどうしてあらゆる世代の購買行動の変革を促すに至ったのであろうか。それを検討するためには,そもそもサブスクリプションとは何なのかを明らかにする必要がある。そこで,最初にサブスクリプションの定義を行い,サブスクリプションたる機能要件を明らかにした。そのうえで,商業的な意味で使われるサブスク進化形態や従来のシェアリングサービスとの比較検討を通して具体的に検証した。最後に,サブスクリプションサービスと購買行動の変化の関係性を検討し,事業者および利用者それぞれに対するサブスクリプションのメリット/デメリットを述べる。
著者
海老澤 直美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.311, 2023-08-01 (Released:2023-08-01)

サブスクリプションサービスは一般的に,定額制でさまざまなコンテンツやサービスを利用できる仕組みとされ,これまでは主に本,音楽,映画などのデジタルコンテンツに関連して語られることが多くありました。しかし,最近ではソフトウェアやクラウドサービスなど,さまざまな分野で利用されています。特にコロナ禍による自宅時間の増加や外出制限の影響で,サブスクリプションサービスの利用は加速しました。所有から利用へのライフスタイルの変化が広まり,個人だけでなく企業や図書館,教育機関などでも同様の変化が起きています。サブスクリプションサービスは社会への影響も大きいと言えます。利用者は,低コストで多様なコンテンツやサービスを利用できるようになりました。一方,提供側は,定期的な収益の安定化や顧客との関係構築の機会を得ることができます。本特集では,「サブスクリプションサービスが社会に与えた影響」と題し,サブスクリプションサービスの概要を解説するとともに図書館や教育機関における具体的な事例も紹介します。まず谷守正行氏(専修大学)に,サブスクリプションサービスの概要をわかりやすく解説していただくとともに,購買行動の変化についても説明いただきました。図書館においては,学術雑誌の転換契約への移行とオープンアクセスの取り組みが重要なテーマとなっています。これについては,平田義郎氏,山崎裕子氏,金子芙弥氏,野中真美氏(大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE))に,JUSTICEにおけるオープンアクセスの取り組みとあわせて詳説いただきました。また,河井良太氏(東大阪市教育委員会)には,公共図書館における電子図書館サービスの導入経過と活用事例などについて紹介いただきました。教育機関では,情報基盤の変遷が進んでいます。この変化については,永田正樹氏(静岡大学)に,クラウドコンピューティングの導入事例を通じて具体的に解説いただきました。さらに,牛頭哲宏氏(神戸常盤大学),髙松邦彦氏(東京工業大学),酒井智行氏(株式会社KEI)には,大学におけるmanaba(学習支援システム)の活用事例とその教育効果などについて紹介いただきました。本特集が,サブスクリプションサービスや図書館,教育機関に関心を持つ読者にとって有益な情報となることを願っています。(会誌担当編集委員:海老澤直美(主査),青野正太,今満亨崇,長谷川幸代)
著者
岡本 耕太
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.7, pp.281-286, 2023-07-01 (Released:2023-07-01)

現在,人工知能技術の研究開発において,第4世代AIの取り組みが世界中で始まっている。日本国は,他国との差別化されたシステムの構築・開発,いわゆる「信頼されるAI」が日本の勝ち筋として推進を強化している。一方,世界の知的財産管理ソフトウェア市場は,2026年までに155.7億米ドル,2020年度比で2.5倍に達すると予想されている。AIが搭載された知的財産管理ソフトウェアも商用化されている。本稿では,知的財産部門業務の特性に基づき,AI搭載のソフトウェアの同部門業務への適用について検討した。知財AI活用研究会の成果と,私見ではあるが,課題と今後の展開を述べる。
著者
佐川 穣 中村 栄
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.7, pp.262-267, 2023-07-01 (Released:2023-07-01)

IPランドスケープ活動が知財業界に急速に広がり,AIを活用したツールも導入されてきている。これからのIPランドスケープは,製造業においてビジネス競争力を大きく左右する要素になっている知財・無形資産を分析・活用し新たな価値の創造に貢献する必要がある。本稿では,この貢献のポイントである経営/事業戦略の高度化への貢献(社内・社外のコネクト,戦略の提案と実行),知財情報(データ)活用の民主化(内外の環境分析,具体的な提案に落とし込み)について我が社の取り組みを例に挙げながら考察する。また,これからのIPランドスケープを担う人財,ハードスキル,ハイジェネリックスキルについても解説する。