著者
小池 聖一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.148-152, 2016-04-01 (Released:2016-04-01)

大学アーカイブズは,必ずしも全ての大学に設置されているわけでないが,大学の個性に対応した形態をとり,その個性に相応する個人文書を所蔵している。反面,大学アーカイブズでは,これまで機関アーカイブズとして,当該機関の諸記録に目配りすることが忘失されがちであった。その点で,二室体制をとる広島大学文書館では,公文書管理法の政令指定機関となり,公文書の統一的管理を果たす一方,大学史資料室が個人文書を学術的資料として収集・整理・公開し,多様な個人文書を所蔵している。今後,アーカイブズは,全体として検証と底辺拡大の二方向を有しているが,課題は大きい。個人文書については,国立国会図書館憲政資料室,大学アーカイブズ,その他のアーカイブズとの連携による調査・研究機関が必要ではないだろうか。
著者
和田 一夫
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.143-147, 2016-04-01 (Released:2016-04-01)

過去の企業経営を知ろうと思えば,経営体が自ら生み出した文書(経営文書)の利用が不可欠となる。ただ日本で文書というと「手書き文書」のみを連想しがちである。しかし複製技術の進展だけでなく,企業規模の拡大もあって19世紀後半から「複製文書」が経営文書の中心になっている。こうしたことを踏まえて,かつ「複製文書」のデジタル化が進行していることを考えにいれながら文書の保存体制を整えていく必要がある。経営文書の保存について,日本の場合を考えて見ると,どこに何が保存されているかという利用者にとって重要な情報さえも整備されていないのが実情である。
著者
加藤 亮 坂口 誠一郎 林 浩平 五十嵐 康伸
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.508-513, 2014

ビッグデータ時代に入り,ビジネス課題に対するデータ活用法(イシュー)を導出する方法論が企業では必要とされている。しかし,具体的なイシュー導出の過程や時間配分について記述している先行研究は殆どない.そこで本論文では,筆者等が参加し準優勝したデータサイエンス・アドベンチャーを事例とした事後分析に基づき,ビジネスにおける有用性及び実現性の高いイシューを導出する方法としてデータ・イシューサイクルを提案する。このサイクルは,探索期,調査期,調整期,実証期から成る。分析の結果,予測モデルの構築を行う実証期の日数は全体の1割以下であり,残り9割以上の時間はイシュー導出のための議論やデータの調査・加工を行う他3つの期間に割り当てられていたことが分かった。
著者
沖 祥嘉 伊藤 徹男
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第7回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.83-87, 2010 (Released:2010-11-01)
参考文献数
1

中国、台湾、韓国特許の審査経過情報が各特許庁データベースにより提供されているが、自社特許の出願管理用として、また、他社特許のウォッチング用としてどのように活用できるか、そこに収録されている内容(項目)について調査、検討した。その結果、各特許庁審査経過情報について、どのような内容が検索でき、表示、印刷、ダウンロードが可能か、また、ウォッチングなどに活用するにはどうすればよいかを明らかにした。これら審査経過情報から得られる失効特許を解析することにより、各社の出願戦略も垣間見ることができることについても考察した。
著者
中山 愛理
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.573-578, 2009
参考文献数
37

アメリカの図書館は,どのような法制度に基づき運営されているのか。アメリカの図書館法制度を歴史的に取りあげて紹介する。地方自治体の図書館に関する決議や州による図書館設置認可に関する法律,州が図書館の設置全般を規定した法律,州図書館振興法などを概観する。また,かつて州の専権事項として図書館行政に乗り出すことに連邦政府は消極的であったが,連邦法制定により図書館行政に乗り出した。その連邦政府の図書館に対する補助金交付政策の根拠になった,図書館サービス法,図書館サービス建設法,図書館サービス技術法,博物館・図書館サービス法なども取りあげる。その上で,図書館法に関しての基本的なあり方を論じる。
著者
坂口 貴弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.28-33, 2011
参考文献数
17

実証的な歴史研究等の材料となる文書・記録の信頼性について考察すべく,偽造されたヒトラーの日記,ライブドアの堀江貴文元社長が送ったとされたメール,沖縄返還時の密約文書に関する調査を事例として取り上げる。次に,文書の真偽鑑定から出発した古文書学が分析対象とするポイントとその成立過程を概観する。一方でアーカイブズ学は,同時代の視点と管理者の視点という独自のアプローチから,記録の信頼性という課題に取り組んできた点を指摘する。電子(化)記録の登場を契機にこれらの伝統的手法が再評価されつつあることに言及し,その信頼性確保のための手法として,電子署名,タイプスタンプ,光ディスクの評価,電子化作業の記録を紹介する。
著者
花田 岳美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.41, no.12, pp.895-901, 1991
被引用文献数
3 6

少部数で配布先が限定されていたりして所在確認と入手の困難な灰色文献には重要な資料も多く,新日米科学技術協力協定中に見られるように国外からの要望も大きい。日本国内で生産され,灰色文献と見なすことのできる文献の種類を概観し,灰色文献を扱っている情報サービスの動きを述べ,灰色性を薄める方策を論じた。
著者
大島 茂樹
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.49-54, 2010
参考文献数
30
被引用文献数
1

記録メディアの劣化・陳腐化やファイルフォーマットの陳腐化は,デジタル情報保存にとって大きなリスクとなる。これらの問題への対処としては,適切な記録メディアの劣化防止策をとること,マイグレーション(新しい記録メディアへのデータ移行)を行うこと,ファイルフォーマットの陳腐化のリスクを管理し,フォーマット変換等の対策をとることなどが考えられる。本稿では,主な記録メディアの劣化寿命および劣化防止策について述べ,そのマイグレーション方策についても検討する。また,主に海外で行われている,ファイルフォーマットの陳腐化のリスクを管理するための取り組みを紹介する。
著者
三輪 眞木子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.2-8, 2013
参考文献数
24

検索の歴史を振り返り将来を展望した。システム志向とユーザ志向のアプローチの立脚点を概観し,研究開発の歴史を両者のせめぎあいから歩み寄りに至るプロセスと位置づけ,両アプローチの概念モデルを紹介した。検索システムの進化を捉える軸として,適合性,情報探索プロセスモデル群,コストと時間削減のあゆみ,および学習や調査のための探索型検索への対応を取り上げた。あらゆるタスクやゴールを目指すユーザがいつでもどこにいても制約なく楽しみながら求める情報を入手することを検索の目標と位置づけ,その実現のために,適合性に代わる検索システム評価基準として知識の変化を測定する尺度の必要性に言及した。
著者
浅川 智恵子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.192-197, 2012
参考文献数
15

障害者にとって,情報技術は教育や就労をはじめ社会参加の機会を劇的に拡大させる重要な手段である。文字認識や音声合成といったインターフェース技術,パーソナル・コンピューター,Web,ソーシャル・ネットワークといった製品・サービスの登場により,障害者の情報アクセス環境は大きく変化してきた。本稿では,視覚障害をはじめ印刷された情報の利用が困難な障害を持つ人々を対象としたアクセシビリティ技術を中心に,それらの技術がユーザーの情報アクセス環境へもたらしてきたインパクトを振り返り,高齢者や非識字者などを対象とした新しいアクセシビリティ研究における将来の展望を述べる。
著者
兼松 芳之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.288-295, 2012

情報が集まる図書館は,資料管理等の面で自然と情報の管理を行ってきた。一方,情報サービスの面では情報および知識の管理はこれからという状況である。そこで,この10年前後におけるナレッジマネジメントと図書館の動きを振り返ると共に,図書館の情報サービスにおけるナレッジマネジメントの一例として,国立国会図書館のレファレンスサービスにおけるナレッジマネジメントとツールを紹介する。具体的には,国立国会図書館の近年のレファレンスサービスに関連する知識のマネジメントについて,共同化,表出化,連結化,内面化の4ステップと照らし合わせながら,インフォメーションカード, FAQ機能,REX,リサーチ・ナビ,レファレンス受理処理,レファレンス協同データベースというツールを提示したい。
著者
尾身 朝子 時実 象一 山崎 匠
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.120-123, 2006
参考文献数
22
被引用文献数
4 3

電子ジャーナルのオープンアクセスの動きは,米国の国立衛生研究所(NIH)の助成研究成果論文公開の方針で新しい段階を迎えた。NIHは2005年2月に助成研究の成果については,論文刊行後12ヵ月以内にNIHの電子ジャーナルサービスPubMed Centralにその最終原稿の電子版を提供し,無料公開するように求める方針を発表し,この方針は2005年5月2日から実施された。また,英国の有力な研究助成団体であるWellcome財団も,5月にオープンアクセスの方針を発表した。これら海外の動きが日本の学協会へ与える影響も少なくない。日本化学会が6月にオープンアクセスオプションを発表した。オープンアクセスの議論点を整理し,考えられる影響や必要な対応について述べる。
著者
高山 正也
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.428-433, 2012
参考文献数
7

2011年4月1日を期して公文書管理法が施行された。この法律がつくられたのは年金記録や自衛艦航海日誌などの杜撰な扱いが社会の注目を集め,長年にわたり関係者からの公文書管理体制の整備の声を無視し続けた行政当局も何らかの対応の必要性に迫られた結果であった。しかし公文書の管理という事象は日本の行政面を中心とする文化を集約している。一つの法律で長年にわたり培われた文化が変わるものではない。そこで,本稿では日本の公文書管理体制,公文書の実態,公文書による行政情報の管理等の諸問題についてその従来の状況と法律による是正策と現状での業務紹介の一端として東日本大震災における水損公文書の復旧支援活動のあらましを概観する。
著者
平鍋 健児
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.498-504, 2009
参考文献数
6
被引用文献数
1

絵と文字を使って発想を大胆に描いていくマインドマップ。この手法をビジネスや教育,システム開発の現場でどのように利用していくかを,実例を用いて解説する。マインドマップの特徴である「ひろげる」発想術と「まとめる」整理術を使って,自己紹介,議事録,ブレインストーミング,システム開発での例を示しながら,その具体的な手法と利点をまとめる。
著者
増田 豊
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.268-274, 2009
参考文献数
10

電子ジャーナルは学術図書館における定期刊行物予算の多くを占めているが,その管理をどのようにシステム化するかに関しては模索が続いている。本稿では,電子情報資源管理システム(ERMS)とリンクリゾルバーが電子ジャーナルの業務にどのような効果をもたらすのか,代表的な製品であるEx Libris社のVerdeとSFXの機能を概説することにより考察する。また,ERMSとリンクリゾルバーとの連動,その他の図書館システムとの相互運用性や,出版機関との連携とその背景にあるデータの標準化の動向などを通じて製品の位置づけの現状を近未来も含めて報告する
著者
宮入 暢子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.92-98, 2024-03-01 (Released:2024-03-01)

社会のデジタルトランスフォーメーションが進む現在,デジタルアイデンティティの必要性が国際的に重要な議論となっている。自己主権型や分散型といった新しいアプローチによるデジタルアイデンティティのフレームワークは,社会経済基盤だけでなく,学術コミュニケーションのエコシステムにも影響を与えようとしている。本稿では,新しいデジタルアイデンティティの基本概念について先行モデルとの比較とともに概観し,研究者識別子が新たなモデルを採用することにより得られるメリットについて検討する。