著者
奥田 慶文
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.7, pp.287-293, 2023-07-01 (Released:2023-07-01)

ITビジネスの新潮流として,メタバースへの注目が高まりつつある。本稿ではメタバースに関心があり,これからこのテーマについて調査をする人が全体像を把握できる情報を提供する。まず,メタバースの定義,市場規模,応用分野などを紹介する。ビジネスの面では,様々な企業が既に事業を進めており,代表的な企業の動向を紹介する。メタバースは複合的な技術によって実現されている。その中でも主要とされる技術を取り上げ,その技術の概要を説明する。また,メタバースに関する標準化と政策動向についても言及する。更に,米国特許の動向として,特許出願における主要企業,技術分野,企業間の注力分野の違いなどを示す。
著者
早川 浩平 佐藤 裕哉 胡 絵美帆
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.7, pp.294-298, 2023-07-01 (Released:2023-07-01)

日本パテントデータサービス㈱の提供する特許情報検索サービス「JP-NET/NewCSS」は,公報情報,審査経過情報といった国内外の特許情報を収録し,特許調査で必要な機能や効率化を図る機能を多く備えている。その中でも特徴的な機能を検索・表示・出力・情報共有のカテゴリ別に紹介,いかに漏れがなく,ノイズの少ない検索や,案件情報を正確に素早く把握し,目的の情報にたどり着けるかを紹介する。また,各種特許マップの作成,統計・分析機能や情報共有機能を活用することで,傾向や対策すべき状況の把握,事業を円滑に進められる環境構築といった特許情報を中心に重要な役割を担うサービスである点も紹介する。
著者
伊藤 孝佑 久慈 渉 後藤 昌夫
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.7, pp.256-261, 2023-07-01 (Released:2023-07-01)

特許庁では,特許行政事務の高度化及び効率化を目的に,2016年度から人工知能(AI)技術の適用可能性の検討を着実に進めており,2017年及び2022年に公表された「人工知能(AI)技術の活用に向けたアクション・プラン」に沿って,企画,実証,導入のフェーズで各プロジェクトを進めてきた。本稿では,これまで策定してきた2つの「アクション・プラン」について,経緯を含め紹介するとともに,新しいアクション・プランに沿った最新の取組として,自然言語処理分野での新たな技術を活用した,「特許事前学習モデルに関する実証的研究事業」に関して説明する。
著者
パテントドキュメンテーション委員会
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.7, pp.255, 2023-07-01 (Released:2023-07-01)

過去10年間の知財情報検索を取り巻く環境の変化を振り返ってみると,人工知能(AI)の発展と切り離せないことがよく分かります。AI搭載を謳った「KIBIT」の登場が2015年のことです。以降,発明の進歩性・新規性を判定するシステム(AI Samurai)や特許価値評価機能を搭載した検索システム(PatentSight他),充実した解析機能を搭載したツール(Amplified AI他),教師データを用いてノイズ特許と正解特許を切り分けるツール(Deskbee他),ニューラル機械翻訳の導入による特許公報の機械翻訳精度の向上(特許庁)と,AI技術によって各種の機能が提案され,あるいは実現され現在に至っております。そして昨年11月には「ChatGPT」が公開されて大きな話題となりました。「生成系AI」と呼ばれ自然な文章を作成するChatGPTの可能性は,知財情報検索をも変えてしまうかも知れないとのインパクトを持って受け止められています。このようにAI技術で変化してきた知財情報検索ですが,この大きな変化の中で自分は何をやればよいのかで迷われている方も多いことでしょう。さらにこれからの10年間で知財情報検索がどうなっていくのか,そして自分はどこに向かって進んだらよいのかも重要な関心事であると推察いたします。本企画はAIと知財情報検索との現在の関わりをまとめるとともに,次の10年の進む方向に思いを馳せるために立案いたしました。最初に特許庁の伊藤孝佑氏,久慈渉氏,後藤昌夫氏に,特許庁で進められているAI活用に向けた取り組みの最新動向についてご紹介いただきました。二本目は旭化成株式会社の佐川穣氏と中村栄氏に,旭化成における現在までのIPランドスケープの取り組みと,新たな価値を生み出すためのこれからのIPランドスケープ,さらにそれらを推進する人材の育成について事例を交えて分かりやすく紹介していただきました。三本目は,AIPE認定シニア知的財産アナリスト(特許)の佐藤貢司氏に,AIとIPランドスケープのこれからについてご提案いただきました。二本目と合わせて読んでいただくことでIPランドスケープへの理解がより一層深まることと思います。四本目はスマートワークス株式会社の酒井美里氏に,公報査読に際してのAI活用の可能性についてご意見をいただきました。日々,公報査読に悩まれている方にはヒントをいただける内容になっていると思います。五本目は東洋製罐グループホールディングス株式会社の岡本耕太氏に,AI搭載ソフトを知財業務に活用する際の留意点をユーザー視点でご提案いただきました。最後に株式会社日本電気特許技術情報センターの奥田慶文氏に,新しいビジネスとしてのメタバースについて分かりやすくご紹介いただいております。読者の皆様におかれましては,これらの論文から次の10年に向かってのヒントを受け取り,元気に前向きに歩んでいくための後押しになればと考えております。INFOSTAパテントドキュメンテーション委員会
著者
佐藤 貢司
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.7, pp.268-273, 2023-07-01 (Released:2023-07-01)

近年AI技術が大きく進歩しており,知財業務で注目を集めているIPランドスケープでの活用に期待も大きい。IPランドスケープはその重要要素である情報分析(3つのプロセス,1.情報を集める,2.項目ごとに分ける,3.状況を理解する)に加え,4.提案する,というプロセスが加わる。これらの各プロセスにおいて,AI活用による正確性や効率向上への期待も大きく,本稿では,IPランドスケープに取り組んでいる立場から,それぞれのプロセスについて筆者の考え方を述べるとともに,AIに対してどのような機能向上が求められているのかを担当者の視点から述べている。
著者
安達 修介
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.199, 2023-06-01 (Released:2023-06-01)

今日,科学研究分野・学術コミュニケーションでは,特に自然科学分野において,英語を用いて研究成果の発表をすることが主流となっています。しかし,英語が「共通言語」となっていることから生じている問題もあると考えられます。Science誌によると,カリフォルニア大学バークレー校の博士課程の学生が英語を母語としない49名のコロンビア人生物学者に対して調査をした結果,英語での論文執筆はスペイン語よりも12日以上多くかかること,約半数が英語の文法を理由に論文を却下されたこと,1/3が英語の発表に不安があり学会参加を諦めたことなどが明らかになったとされており1),日本でも同様の問題が生じていると推察されます。そこで,今号では科学研究分野・学術コミュニケーションにおける言語問題の現状や,問題への対応策について特集しました。まず,天野達也氏(クイーンズ大学)に,科学研究分野において英語が共通言語になっていると同時に,そのことが障壁を生み出している現状について紹介していただきました。環境科学分野における近年の研究を中心に,3通りの言語の障壁について紹介していただいたうえで,それぞれの問題解決のための解決策についても提示していただいています。次に,田地野彰氏(名古屋外国語大学)に,言語問題を大学英語教育研究の視点から整理し,その解決・改善に向けた方策について論じていただきました。研究を重視する大学の一つである京都大学の全学的な英語教育の取り組みを中心として,大学英語教育に関連する研究を紹介していただいています。続いて,米澤彰純氏(東北大学)に,人文社会科学の分野における,研究成果の国際発信の取り組みについて紹介していただきました。教育学分野での英語論文執筆を通じた国際発信を題材として,日本から人文社会科学の国際発信を推進していくための現状・課題・展望を取り上げていただいています。さらに,柳瀬陽介氏(京都大学)に,言語問題を解決するための方策として,AIを活用して英語論文を執筆する方法について紹介していただきました。AIが不得意としている領域の作業に執筆者が最善を尽くして最終成果物の質を上げること,論文の執筆者とAIが相互補完的に作業を進めることなど,作業の際の留意点を取り上げていただいています。最後に,今羽右左デイヴィッド甫氏・清水智樹氏(ともに京都大学)に,学術コミュニケーションの例として,効果的な研究広報について論じていただきました。広報のストーリーを立て,そのストーリーに基づいて,日本語と英語を駆使し,国内外に向けて研究成果を広報する方法について紹介していただいています。研究のグローバル化やオープン化の進展により,共通言語としての英語の重要性はますます高まっています。英語が第一言語でない研究者にとってこの状況は障壁となりますが,本特集が,そうした状況を正しく認識したり,克服・解決したりしていくための一助となれば幸いです。(会誌担当編集委員:安達修介(主査),尾城友視,鈴木遼香,水野澄子)1) “Science’s English dominance hinders diversity—but the community can work toward change”. Science. https://www.science.org/content/article/science-s-english-dominance-hinders-diversity-community-can-work-toward-change (accessed 2023-05-04)
著者
天野 達也
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.200-205, 2023-06-01 (Released:2023-06-01)

科学研究における共通言語としての英語は,国際的なコミュニケーションを容易にすることで,科学の発展に対して大きな便益をもたらす一方で,いくつかの大きな障壁ももたらしている。本稿では,(1)英語が第一言語でない研究者に対する言語の障壁,(2)科学的知見の応用に対する言語の障壁,(3)科学的知見の集約に対する言語の障壁,という3種類の障壁について,環境科学分野における近年の研究を中心に紹介する。またそれぞれの問題解決のために,研究者個人や学術誌,学会などが実行できる解決策についても紹介し,学術界における言語の障壁という問題について認識を高め,国内外で問題の解消に向けた動きを促進することを目的とする。
著者
竹居 祥行
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.242-245, 2023-06-01 (Released:2023-06-01)

各官庁や団体から統計データが報告されており,それらのデータは今後の業界の需要を予測するうえで重要なデータであると考えられる。また,特許や論文は世界中で発行されて公開されており,広い範囲の技術がカバーされていることから,これらの情報が需要予測の予測モデルに適用できれば有力であると考えられる。本稿では,特許の出願件数や出願人数,特許の価値評価指数,論文の被引用情報等を用いて,需要予測モデルを作成し,光触媒とリチウムイオン電池の分野において当該モデルの適用可能性と,どの因子が需要に関連するのかを検討した。
著者
田地野 彰
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.206-211, 2023-06-01 (Released:2023-06-01)

学術研究活動における英語の重要性は広く認められている。たとえば,学術会議での研究成果発表や学術論文の執筆などは一般に英語を用いて行うことが期待されている。こうした研究活動における英語の使用が,近年,英語を母語としない非英語圏の科学分野の研究者にとっての「英語の壁」として問題視されている。本稿では,この「英語の壁」問題を,大学英語教育研究の視点から整理し,その解決・改善に向けた方策について考察する。具体的には,研究重視型大学の一つとされる京都大学の全学的な英語教育の取り組み(「学術研究に資する英語教育」)を中心に関連研究の一部を紹介する。
著者
田澤 綾子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.230-233, 2023-06-01 (Released:2023-06-01)

CAS SciFindernはCASが提供する科学情報検索ツールである。世界中の論文・特許,化学物質,反応,物質の規制情報や試薬カタログ情報など,科学に関係する情報を網羅的に検索でき,解析機能も充実している。本稿では,CASが独自に開発したAIベースの先行技術文献を検索する機能Prior Art Analysis,特許の共同出願,共著者,主題などが視覚的にわかるKnowledge Graph,および物質の構造類似性に基づき特許マップを作成するChemscape Analysisの3つの解析機能について紹介する。
著者
松本 光司 今井 奈月 鶴森 熊子 谷為 昌彦 河村 光偉 池田 元子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第8回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.71-75, 2011 (Released:2011-10-14)
参考文献数
9

知的財産権に関する訴訟は、企業にとって大きなリスクを伴うものであり、権利情報の 1 つの側面でもあることから、企業の情報担当者または知財担当者はこれら訴訟情報にも精通していることが求められる。今回、日本と米国における訴訟情報について、『判例情報』と『経過情報』とに内容を分けて、それぞれの情報源および調査手法の検討を行ったので報告する。なお、本内容は平成 22 年度日本 FARMDOC 協議会 (JFA) での「日米における訴訟情報の調査手法研究会」の成果の一部である。
著者
長谷川 豊祐
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.311-316, 2011-08-01 (Released:2017-04-20)
参考文献数
34
被引用文献数
1

設置母体における経営環境の悪化に伴い,図書館でも「管理」が注目されている。はじめに,外部環境と内部環境の変化と,図書館に求められる機能と能力について以下の2点を明らかにする。1)図書館は,経営資源が縮小しているにもかかわらず,利用対象と機能を拡大したサービスを迫られている,2)図書館全体としては,経費と職員は減少傾向にあるが,増減の多少は個々の館で大きな差がある。従って,図書館には,場当たり的な彌縫策ではない業務改革や業務管理が求められる。そこで,業務管理の手法として,SWOT分析とバランスト・スコアカードの概要について解説する。
著者
関根 禎嘉
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.169-175, 2023-05-01 (Released:2023-05-01)

テレビ放送番組のアーカイブ利用のためのメタデータモデル構築を行う。「番組」は放送されるコンテンツを指す基礎的な用語でありながら,その範囲について明確な定義が存在しない。本研究では放送ライブラリー公開番組データベースを例にして,「番組」の階層構造や放送番組を特徴づける各実体を定義し,メタデータモデルを汎用的な記述言語であるRDFを用いて構築する。構築したメタデータモデルは,放送番組を構成する要素をContents,Agent,Eventの3つのドメインに分類した。その上で,必要に応じて独自語彙を用いてクラスおよびプロパティを設定した。
著者
今満 亨崇
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.167, 2023-05-01 (Released:2023-05-01)

TP&Dフォーラムという研究集会があります。整理技術・情報管理の世界,より具体的には図書館分類法,Indexing論,情報検索,情報管理,目録法といった領域を対象とする研究集会です。情報科学技術協会(当協会)は長年この研究集会を後援してきました。さらに,2022年度より連携を強化し,ここで発表された内容や,そこで行われた議論についてまとめた記事を,当雑誌へ掲載しております。本号では最初に佐藤久美子氏に2022年のフォーラム概要をまとめて頂きました。その後,具体的な発表内容の記事が続きます。関根禎嘉氏には,テレビ番組メタデータモデルの構築について,発表内容及びフォーラム内で行われた議論を踏まえて,論文としてまとめて頂きました。コンテンツ,放送イベント,エージェントを大枠とするこのメタデータモデルは,単純に映像作品ではなく“番組”を管理する上で特有の概念を含有しています。またRDFを用いていることもあり,他のデータとつなげることで,メタデータをより活用できる可能性を感じます。永田知之氏には,日本の書籍目録に占める漢籍の位置について,発表内容及びフォーラム内で行われた議論を踏まえて,論文としてまとめて頂きました。漢籍といえば四部分類ですが,日本ではどのように導入されていったのでしょうか。本研究では,過去の目録での採否とその特徴を調査しております。さて,これら論文執筆のためにTP&Dフォーラム内でどのような議論が行われたのか,李東真氏および木村麻衣子氏にそれぞれ,討議報告の形でまとめて頂きました。研究内容について他の研究者はどのような評価をしたのか,どのような質疑が行われたのか,会場の関心はどこにあったのか,など論文には書かれることのない情報が多く記されております。そういった研究活動の裏側に注目しながら読んでも得るものが多くあります。インフォプロの業務は,様々な学問的背景,研究領域を有しています。その中でも,TP&Dフォーラムが対象としてきた領域は,インフォプロの専門性を支えるコア領域の一つです。本特集が,整理技術・情報管理の重要性を再確認し,将来について考えるきっかけとなれば幸いです。(会誌担当編集委員:今満亨崇(主査),青野正太,長谷川幸代,森口歩)