著者
横堀 將司 山口 昌紘 五十嵐 豊 亦野 文宏 廣中 浩平 恩田 秀賢 桒本 健太郎 荒木 尚 布施 明 森田 明夫 横田 裕行
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.220-228, 2016 (Released:2016-03-25)
参考文献数
27

頭部外傷や脳卒中, 心停止後症候群 (post cardiac arrest syndrome : PCAS) など, 神経救急疾患において脳保護・脳蘇生を指向したモニタリングの重要性が強調されている. また, 依然challengingではあるが, 各種モニタリングを治療方針決定に生かす試みも始まっている. 新しいモニタリングとしてPCAS患者でのaEEG・rSO2による予後予測, 神経外傷モデルによるバイオマーカー (UCH-L1, GFAP) 測定などが挙げられる. これらモニタリングと治療の往復がさらなるエビデンス構築に寄与すると期待される.  本稿は神経救急分野におけるモニタリングの重要性と, それらを加味した治療戦略確立の重要性を提示する. 救急脳外科疾患における “判断と行動” の一助になれば幸いである.
著者
杉生 憲志 平松 匡文 徳永 浩司 菱川 朋人 大熊 佑 春間 純 清水 智久 伊達 勲
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.37-43, 2013 (Released:2013-01-25)
参考文献数
35
被引用文献数
4 4

硬膜動静脈瘻では脳・脊髄の硬膜上に動静脈短絡が形成され, その症状と予後は主として静脈側によって規定されることから, 静脈導出路の形態に基づく分類が臨床的にも重要である. 特に脳表静脈に逆流がみられる例では, 早急な治療が必要とされる. 治療は手術, 放射線, 血管内治療が単独, または併用で行われてきたが, 現在ではその中心的役割を担うのは血管内治療である. 一般に, 病変が静脈洞壁に存在するsinusal type (海綿静脈洞部や横静脈洞部など) では罹患静脈洞をコイルで閉塞する経静脈的塞栓術 (TVE) が, 静脈洞のない硬膜上に存在するnon-sinusal type (前頭蓋底やテント部, 脊髄など) では液体塞栓物質で瘻孔部を閉塞する経動脈的塞栓術 (TAE) が主流となる. 血管内治療で根治が困難な, あるいは治療リスクの高いnon-sinusal typeに対して, 手術による瘻孔閉塞 (静脈側の凝固切離), あるいは状況によっては定位的放射線治療が行われる.
著者
宮嶋 雅一 下地 一彰 木村 孝興 新井 一
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.564-573, 2017 (Released:2017-08-25)
参考文献数
11
被引用文献数
4 2

2014年11月にJNS Pediatricsに掲載された米国ガイドラインに基づいた小児水頭症の標準治療について概説する. このガイドラインでは以下の9つの臨床的課題が取り上げられている. すなわち, ①未熟児出血後水頭症の管理, ②脳室カテーテル留置における内視鏡, 磁場式ナビゲーション, 超音波の有用性, ③シャント術と内視鏡的第三脳室底開窓術の予後の比較, ④種々のシャントバルブによる治療効果の比較, ⑤抗生剤の術前投与の有効性の有無, ⑥抗生剤入りのシャントシステムと通常のシステムの比較, ⑦シャント感染の治療法, ⑧脳室穿刺部位と脳室カテーテル先端の留置位置の比較, ⑨脳室サイズの測定はシャント治療効果の判定となるか否か. これらの問題に対してシステマチックレヴューが行われ, エビデンスベースのガイドラインとして報告されており, それぞれの研究結果および推奨する方法が紹介されている.
著者
野田 公寿茂 谷川 緑野 太田 仲郎 小田 淳平 原口 健一 木下 由宇 宮崎 貴則 近藤 智正 渡邉 定克 上山 博康
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.65-68, 2021 (Released:2021-01-25)
参考文献数
1

脳神経外科疾患に対する治療手段の多様化などにより, 開頭術者は限られた症例で効率的に手術手技を学ぶ必要性が高まっている. さらに, “働き方改革” など社会情勢が変化する中, 外科医にとっても時間生産性向上が求められている. デジタルイラストレーションの特徴を踏まえ, 筆者らが行ってきた時間生産性, 教育効率性向上を目指した手術イラストを用いた手術教育について報告する.
著者
橋口 公章 秦 暢宏 吉開 俊一 谷村 晃
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.8, pp.564-569, 2003-08-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
17
被引用文献数
5 6

悪性腫瘍の硬膜転移に伴う硬膜下血腫の2症例を経験した.症例1では腫瘍細胞の硬膜静脈内への浸潤がみられた.硬膜静脈の閉塞の結果,硬膜内層の毛細血管からの出血が起き,硬膜下血腫が形成されたと推測した.さらに,腫瘍細胞の静脈洞閉塞により頭蓋内圧亢進が生じたと推測した.症例2では,血液凝固異常あるいはDICが血腫形成に関与していた.また,血腫外膜が未発達であることが,大量の間欠的な硬膜下腔への出血に関与していると思われた.
著者
横田 裕行
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.12, pp.942-950, 2014 (Released:2014-12-25)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

重症頭部外傷は, 高い死亡率とさまざまな後遺症の可能性から外傷学の分野でも大きな位置付けがなされている. そのような中で, 頭部外傷を合併した多発外傷患者では体幹外傷を専門とする外傷医と脳神経外科医の密接な連携が必要となるが, 本邦における外傷治療は「防ぎ得る外傷死」の回避のための標準的治療と, 重症頭部外傷治療における治療と管理のガイドラインの発刊によって大きく進歩してきた. 一方, わが国の著明な高齢化社会を反映して高齢者頭部外傷の増加が大きな問題となっている. 高齢者頭部外傷は身体機能の低下, さまざまな既往症の存在から若年者に比較して予後が不良となる. このような背景から重症頭部外傷, 特に高齢者において病態把握の目的でさまざまな頭蓋内モニタリングやバイオマーカーの測定が行われている.  以上のような頭部外傷の治療や管理の困難性の共通認識のもとに, 2014年に日本脳神経外傷学会総会・学術集会と日本外傷学会総会・学術集会でジョイントシンポジウムが企画された. このシンポジウムでは高齢者を含む頭部外傷患者の転帰を改善するための多くの課題や新しい試みなどが議論された.
著者
坂井 恭治 西口 充久 谷本 尚穂 寺坂 薫 菅谷 廣司 東 徹 杉生 憲志
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.8, pp.537-540, 2001-08-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
24
被引用文献数
1

症例は60歳, 女性で, 末梢性前大脳動脈瘤破裂による左急性硬膜下血腫で発症した.来院時, 昏睡状態, 瞳孔は両側とも散大し対光反射は消失, 除脳硬直肢位を示した.緊急に開頭し, 硬膜下血腫を除去, 外減圧術を行った.その後, 意識レベルは徐々に改善したが, 左片麻痺が明らかになった.MRI T2強調画像で小脳テントの延長線上の右大脳脚に病変を認めた.これはKernohan's notch周囲のmyelin destructionをとらえていると思われた.