著者
ヤノベ ケンジ
出版者
京都造形芸術大学
雑誌
京都造形芸術大学紀要 = Genesis
巻号頁・発行日
no.16, pp.10-11, 2012-10
著者
金澤 弘 吉岡 健二郎 古田 真一 羽生 清 木下 長宏 井上 明彦 並木 誠士 松原 哲哉 金澤 弘
出版者
京都造形芸術大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

近代国家は自国民のアイデンティティ確保の体系を整えていったが、これは自己目的的な有機体としての国家のイデオロギーを創出することであった。有機体の概念は芸術制度に対しても適用されたが、実のところそれは元来芸術作品を範型として考えられたものである。この本来的な両義性が、近代国家における芸術の制度化に際して二つの側面をもたらした。一つは芸術を積極的に社会組織に同化させようとするものであり、もう一つは芸術を国家道徳から乖離させるものである。日本においては、近代化が国家主義的な反動を一八八〇年代に引き起こした。たとえば、岡倉天心によって押し進められた日本画の特権化である。しかし、これは実際には一種の西欧的芸術概念、すなわち国家の自己主張を表明するものとしての芸術という考えを導入したものである。他方、一つの典型的に日本的な(そして中国的ではない)伝統があって、それによれば芸術の世界は社会的政治的生からの対蹠物としてみなされる。それが芸術家、とりわけ小説家や文人画家の何人かをして、みずからの芸術を西欧化に対し均衡を保つためのものとして考えさせることになった。夏目漱石の場合はそれである。文化的アイデンティティとしての芸術は、こうして二つの方向にその機能を分岐させた。国民国家の有機体モデルと、生来の(これもまた人為的な)自己なるものへの参照物である。しかしまさにこの時、芸術に対する歴史的な態度が普及していき、その近代的な考え方にもう一つの観点を付け加えることになった。それによれば芸術はもはや自分以外の何者の有機体のモニュメントでもなくなり、芸術についての自律的学問に博物館学的資料を提供する領域となる。またそれと同時に、国家的アイデンティティの方も、芸術の領域以外のところ、とりわけマス・コミュニケーションのうちに次第に有効性を見出していったのである。
著者
土坂 義樹
出版者
京都造形芸術大学
巻号頁・発行日
2011

博士論文
著者
藤澤 三佳
出版者
京都造形芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

障害者の芸術活動に関して精神障害を中心として社会学的考察をおこない、人間の自己表現の必要性とその意味を明らかにし、社会からの孤立を強いられがちな人々が、芸術活動を通して、他者からの共感を得て、社会のなかに生きている意識や生の充実感を再獲得する変化のプロセスを明確にした。また、医療・福祉と芸術の分野の交差領域にある芸術社会学の理論枠組みを示し、各領域がどのように融合され、そこで社会学的研究が可能かを明確にした。
著者
牛田 あや美
出版者
京都造形芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

日本でのペンネーム北宏二こと、金龍煥は現在では謎の挿絵家であり、マンガ家でもある。活躍した時代は長く、60年に渡っている。資料が多く、散逸しており、まだ調査の最中である。本年度は現段階での調査とし、資料からみえてきた日本の美術の歴史から、北宏二の空白の期間(1945年~1959年、朝鮮・韓国で金龍煥名義)を中心に論文を作成した。彼は1912年、日本統治下の朝鮮で生まれた。韓国では彼の作り出したキャラクター「コチュブ」は、まだ健在である。韓国では漫画・マンガの父として知られているが、日本での彼の活躍はベールに包まれている。時代を経、忘れ去られてしまったことは否めないが、彼の育った時代が、彼の功績を隠している。戦前、戦中において雑誌で活躍した挿絵家や漫画家にとり、読者への戦意高揚を促す日本の国策から逃れられる者はいない。ましてや彼は外地出身者である。彼のように戦前の日本に留学をし、日本の新聞社や出版社と仕事をした人々が解放後、言論の自由を得、新聞社や出版社を立ち上げていった。彼らがアジアの近代化を自国ですすめていった。また近代における「日本のマンガ」を語るとき、学校で勉強をしていた人たちが、マンガ家になったという経緯がある。漫画の父と呼ばれる岡本一平は東京美術学校、現在の東京芸術大学出身である。現在ですら、芸大や美大出身者のマンガ家が多いように、日本が鎖国を解き、国を開いた時から、マンガは独学で、というよりも美術同様に教師から学ぶことから始まったといってもいいだろう。アジアのなかでいち早く近代化した日本には、ヨーロッパからの芸術家が来訪していた。日本の漫画・マンガもルーツを探るとフランス人のジョルジュ・ビゴーとイギリス人のチャールズ・ワーグマンがでてくる。日本での留学時代の人脈、挿絵家としての活躍が、彼の朝鮮・韓国での成功へと繋がっている。
著者
徳山詳直著
出版者
京都造形芸術大学
巻号頁・発行日
2014
著者
森田 都紀
出版者
京都造形芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

昨年度までの史料調査をふまえ、今年度は、主に一噌流宗家伝来の史料から重要と思われるものの解析を進めた。具体的には、『一噌流笛秘伝書』(早稲田大学演劇博物館蔵)、『矢野一宇聞書』(早稲田大学図書館蔵)、『笛の事』(法政大学鴻山文庫蔵)、『一噌流笛唱歌付』(早稲田大学演劇博物館蔵)、『貞享三年符』(早稲田大学演劇博物館蔵)、『順勝院噌善手記』(早稲田大学演劇博物館蔵)、『能学(ママ)秘伝書』(早稲田大学中央図書館蔵)、『寛政三年平政香笛唱歌』(法政大学鴻山文庫蔵)などをはじめとする、初世から八世までの代々の宗家の影響下にて成立した諸史料である。役者個人の忘備録として記されたものと、子孫や弟子に伝承するために記されたものとがあり、史料により性格は異なっている。またその内容も、由緒や芸談を記すものから、唱歌付や頭付等の演奏を記した楽譜の類まで幅広い。そこで、研究対象史料の性格を明らかにするために、史料の基本事項のデータベース入力を進めた。また、それと平行して、由緒や芸談等に記された記事の内容と、唱歌付や頭付を読み解くことで明らかになった演奏実態とを照合し、両者の記述を相互補完する形で演奏技法の具体相を総合的に検証しようとした。以上により、流儀としての演奏技法が成立する道筋の一端を窺えたが、一方で、史料数に制約があることと、伝書によっては記述が断片的であることなどによって、歴史的変化を体系的に考察できず、まとまった成果につながらなかった。
著者
町田 香
出版者
京都造形芸術大学
雑誌
京都造形芸術大学紀要 = Genesis
巻号頁・発行日
no.21, pp.150-157, 2017-11-30