著者
小濱 純 斉藤 貢一 坂本 裕則 岩崎 雄介 伊藤 里恵 堀江 正一 中澤 裕之
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1019-1024, 2007 (Released:2008-01-29)
参考文献数
21
被引用文献数
3 5

食品添加物として使用されているL-プロリンをキラル分離・定量するために,オルトフタルアルデヒド(OPA)と9-フルオレニルメチルクロロホルメート(FMOC-Cl)を使用した選択的な前処理法を検討し,液体クロマトグラフィー/質量分析法によるプロリンの高感度かつ選択的な測定法の構築を試みた.夾雑成分の1級アミノ酸をOPA試薬により誘導体化し,固相抽出カートリッジを用いて2級アミノ酸であるプロリン及びヒドロキシプロリンとの分離を行い,続いて2級アミノ酸をFMOC誘導体とした.この2ステップ誘導体化法により試料のクリーンアップが効果的に行われ,2級アミノ酸に選択的な前処理が可能となった.また,β-シクロデキストリン系のキラルカラムを極性有機相モードで用いることにより,プロリンの良好な光学異性体分離が達成された.清涼飲料水,粉ミルク及び食酢を試料として添加回収試験を行った結果,平均回収率は80∼104% 以内と良好であった.本法は液状食品中のプロリンを光学分離,測定することが可能であり,食品添加物として使用されるプロリンの安全性を確保するための有効な分析法の一つになるものと期待される.
著者
武者 宗一郎 高橋 芳久
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.395-399, 1975
被引用文献数
1

大豆たんぱく質が酸などの添加により凝固する性質及び重金属イオンと錯体形成する性質を利用して,水中の微量の金を捕集濃縮することを検討した.試料水に一定量{(10~30)ml}の豆乳(6.34%)及び凝固剤δ-グルコノラクトン(δ-GLと略記)の所定量を加えて加熱し,たんぱく質を凝固させ金を捕集する.凝固物(豆腐)を低温灰化後,原子吸光又は発光分光分析法により金を定量した.金の捕集率はたんぱく質の凝固が最もよく起こるpH4.4~5.0付近になるように適量のδ-GLを加えた場合,99%以上の最大値を示した.本法を水,人工海水,食塩水及び食塩中の超微量の金の定量に応用し満足すべき結果を得るとともに,分析の実行に伴う環境汚染問題に関し,写真操作を除いて全く問題がない点を確認した.
著者
四反田 功 板垣 昌幸 河合 大輔 渡辺 邦洋
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.183-189, 2008 (Released:2008-03-24)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

アンペロメトリックバイオセンサーの電流応答をウェーブレット変換を用いて解析した.グルコースバイオセンサーと過酸化水素バイオセンサーの2種類を作製した.グルコースバイオセンサーには,グルコースオキシダーゼをポリイオンコンプレックスで固定化した電極を用いた.アンペロメトリーによってグルコースを添加したときの酸素還元電流の減少値を測定した.測定した電流応答をウェーブレット変換したところ,ノイズに埋もれた応答を抽出することができた.シグナルノイズ比は最大で9倍に向上した.ウェーブレット変換を施すことでセンサーの検出下限は3倍になった.過酸化水素バイオセンサーには,西洋ワサビペルオキシダーゼをポリピロール膜によって固定化した電極を用いた.過酸化水素の応答は,ポリピロールの還元電流値から評価した.過酸化水素バイオセンサーの検出下限を5倍向上させることができた.
著者
前野 克行 安保 充 大久保 明
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.673-678, 2003 (Released:2004-01-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

ゾルゲル法を利用して,還元状態で呈色するメディエーターと酵素を微小管内壁に固定化した目視型酵素センサーの開発を行った.メディエーターは還元型で呈色するが,酸素との反応性が高く,バッファーを送液するだけで一定時間内に退色が観察される.酵素としてグルコースオキシダーゼ,カタラーゼを用いた場合,サンプル溶液中にグルコースが含まれていれば,その反応により溶液中の酸素が減少し,メディエーターの退色するまでの時間が長くなる.この原理を利用し,微小管にサンプルを流し,ある位置の退色するまでの時間,あるいは,ある時間における退色長さを目視することで基質濃度を定量した.定量範囲は0.1~10 mMで,相対標準偏差は4% 以下となった.また,シミュレーションプログラムを作成し,この目視型センサーが原理的に可能であることを検証した.
著者
野澤 慎太郎 笠間 裕貴 鈴木 忠直 安井 明美
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.179-183, 2007 (Released:2007-07-25)
参考文献数
8
被引用文献数
4 6

改良デュマ法によるしょうゆの全窒素分定量法を検討した.11種類のしょうゆを試料として,その0.5 gを石英ボートに量り取り,高純度酸素を助燃ガスとして870℃で燃焼して生成したNOxの酸素を銅還元管で除去し,熱伝導度検出器で検出してそのピーク面積を求めた.まず,全窒素分を2.000% に調製したリジン水溶液を分析した結果,2.002% であり,理論値とほぼ一致した値が得られた.また,改良デュマ法と酸分解条件を最適化したケルダール法との室内再現性を一元配置分散分析で検証した結果,各法で1試料に有意差が認められたが,これらの日間及び日内変動はHorwitz式から求めた併行相対標準偏差より低く,実質的な日間差はないと判断した.更に,Welchのt検定により両法の測定結果の差の有意差を確認した結果,11試料中6試料について有意差が認められたが,それらの平均値の差がHorwitz式から求めたケルダール法での併行許容差内であり,実質的な有意差はないと判断した.改良デュマ法はケルダール法より併行精度が高く,両分析法の相関性もR2 = 0.9999であった.以上の結果から,改良デュマ法はしょうゆの全窒素測定に適用可能であることを確認した.
著者
岩根 美枝 矢嶋 摂子 野村 英作 谷口 久次 木村 恵一
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.527-531, 2005 (Released:2005-08-31)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

還元剤として没食子酸エステル部位を有するカリクス[4]アレーン誘導体を用い,エタノール中で銀イオンを還元することにより生じた銀コロイドの表面プラズモン吸収を紫外可視分光光度法により観察した.その結果,銀コロイドに基づく吸収が観察され,その吸光度は時間依存性を示した.これは,生成した銀コロイドが不安定であることを示している.試料溶液を調製後,一定時間経過してから,安定剤としてポリビニルピロリドンを添加したところ,吸光度の時間変化を抑制でき,銀コロイドを安定化することができた.また,銀イオン濃度依存性について検討したところ,銀イオン濃度が1 × 10-5 M以下では,銀イオン濃度の増加に応じて吸光度が増加し,銀イオン定量の可能性が示唆された.
著者
後藤 晃範 大島 光子 高柳 俊夫 本水 昌二
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.919-923, 2004 (Released:2004-12-24)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

水溶液一相系でイオン会合反応を利用する陰イオン界面活性剤直接定量のための陽イオン性染料を新規に合成した.基本骨格はシアニンとし,二つのNに炭素数の異なるn -アルキル鎖を導入した四級塩染料を合成した.アルキル鎖の炭素数4と6のものは新規合成化合物であり,pKaを求めた.炭素数2と3の市販品と合成した陽イオン試薬を用い,吸光光度法により陰イオン界面活性剤(DBS)との最適反応条件を検討した.3,3'-ジヘキシル-2,2'-チアシアニン(DHT,C6の試薬)を用いて,10-6 MオーダーのDBSを定量することができ,検出下限は4×10-7 Mであった.また,疎水性相互作用により,非イオン性界面活性剤,陽イオン界面活性剤とも反応することが分かり,DHTとのイオン会合定数を求めた.