著者
板東 敬子 五十嵐 順悦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.73-79, 2017-02-05 (Released:2017-03-22)
参考文献数
10

有機化合物中の硫黄及びハロゲン(フッ素,塩素,臭素及びヨウ素)分析において,あらかじめ燃焼装置内で硫黄及びハロゲンを含む有機化合物を燃焼分解し,ガス化された硫黄酸化物及びハロゲン化物を吸収液に通じて捕集して溶解・回収したのち,これをイオンクロマトグラフで定量する自動分析装置が開発されている.硫黄が共存する化合物中の臭素及びヨウ素の分析値については,異常値が得られることがこれまでに度々指摘されてきた.当該装置に著者らが開発した流通装置を接続して検討を行ったところ,許容誤差範囲内(計算値±0.3% 以内)の良好な分析値が得られることが判明し,5元素同時分析法を開発できたので報告する.
著者
大槻 荘一 足立 公洋
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.41, no.12, pp.639-642, 1992-12-05 (Released:2010-02-16)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

光学的湿度検出法を目的として,ローダミン色素を含むヒドロキシプロピルセルロース・フィルムの感湿膜としての特性を調べた.ローダミン6G(R6G)又はローダミンB(RB)を含むフィルムは0%から90%までの相対湿度の増加に対して,それぞれ50%又は88%の蛍光強度の減少を示した.0%と90%の間で相対湿度変化を繰り返すと,R6Gフィルムの蛍光強度は可逆的な変化を示した.RBフィルムの蛍光強度は湿度変化のサイクルで最初は減少し,その後一定の値となった.エージング後のRBフィルムの蛍光強度は可逆的な変化を示した.蛍光強度の減少は色素の励起状態の水分子による失活が原因と考えられる.段階的な湿度変化に対するRBフィルムの90%応答時間は6~15分であり,湿度の高い領域で早い応答を示した.
著者
長島 弘三
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.395-400, 1955-08-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
4

化学分析では,重量分析にはもちろん,熔融,灼熱,濾過等にるつぼを用いることが多く,種類も通常の灼熱秤量,熔融用の他に,種々の濾過るつぼや酸素や窒素気流中で加熱するための特殊な形のものもある.しかしそれらの特殊のるつぼは分析法も進歩せず,分析化学者の主要な目標が原子量の測定にあって,特殊な沈殿形,秤量形を選ばざるを得なかった先人の苦闘の跡と称すべきものが多く,沈殿形,秤量形も楽なものが選べるようになった現在では特殊なるつぼは殆んど用いられなくなった.殊に有機試薬等の進歩により沈澱は焼灼せずに秤量可能のものが多いので,多くはガラス製濾過るつぼで事足り他の濾過るつぼの必要性も少くなった.使用の稀なものも含めて代表的なるつぼを挙げる.1.濾過るつぼ:グーチるつぼマンローるつぼ(以上は濾層を自分で作る)ガラス製,石英製,磁製の濾過るつぼ(濾層ができている)2.灼熱および熔融用のるつぼ:白金(純Pt,Pt-Cu,Pt-Ir,Pt-Rh合金製等)金(純Au,Au-Cu,Au-Pd合金等がありアルカリ熔融用)銀(アルカリ熔融用)ニッケル,鉄,石英,磁製,タンタル(Taは殆んど白金と同様に使える,王水に耐える)ジルコニウム(アルカリ熔融に最適といわれる)アルミナ,トリヤ,ジルコニヤ,ベリリヤ(以上4種は冶金或いはその研究用に)黒鉛(分析用ではないが炭酸ナトリウムの熔融に耐える.多量の試料の分解に用いて便.高温の実験のさやるつぼ.熔融塩電解に際して電極兼用のるつぼにも使われる).3.酸素,窒素等の気流中で灼熱するために作られたものとしては,磁製,白金製のるつぼの蓋に側管が接属して,外から気体を送るように考案されたものがある.1および2の各種のるつぼのうち,現在定量分析に多く用いられているものにつきその性質,使用法を述べる.
著者
和田 紀子 張 経華 陣野 信孝 大久保 明 山崎 素直
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.843-846, 2003 (Released:2004-01-30)
参考文献数
14
被引用文献数
3 3

The adaptation of a halophyte, Suaeda japonica, in a saline environment was surveyed by analysing the cellular components, such as the major inorganic and organic constituents, as well as glycine betaine between halophytic and non-halophytic plants grown along the seashore of Ariake Sea. In contrast to non-halophytes, a remarkable accumulation of salt in leaf cells of halophytes, Suaeda and Artemisia, was accompanied by the accumulation of a compatible solute, glycine betaine. In a culture experiment under saline conditions, glycine betaine looked to be most effectively induced in the concentration of salt of around 250 mM NaCl.
著者
北川 豊吉 丸山 康博
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.366-370, 1970

タリウム(III)オキシンキレートはpH5.5の水溶液でほぼ完全に沈殿するが,110~120℃で乾燥しても完全に脱水しない.130℃付近から分子内電子移動反応が起こり,タリウム(III)からタリウム(I)に還元を受け,同時に8-ヒドロキシキノリンも遊離する.したがってタリウム(III)をオキシン塩として重量分析する場合には,厳密な条件下で行なわねばならない.熱重量分析,紫外および赤外吸収スペクトル,ポーラログラフ法および元素分析法を用いてタリウム(III)オキシンキレートの熱分解生成物について検討した.
著者
上野 景平
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.207-214, 1959
被引用文献数
2
著者
池田 知穗 中原 良介 西岡 有佳 黒川 央 山口 敬子 藤田 芳一
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.675-679, 2009 (Released:2009-10-09)
参考文献数
20
被引用文献数
2

陰イオン性界面活性剤のドデシル硫酸ナトリウム共存下,色素のピロガロールレッド(PR)と金属イオンのモリブデン(VI)間で生成する呈色錯体の退色を利用する亜硝酸イオンの簡便で高感度な吸光光度定量法を開発した.本法は,0.04~0.46 μg mL-1亜硝酸イオン濃度範囲でBeerの法則が成立し,みかけのモル吸光係数は1.0×105 L mol-1 cm-1と高感度であり,亜硝酸イオン0.23 μg mL-1での6回での相対標準偏差は1.92%(n=6,0.23 μg mL-1)と再現性にも比較的優れていた.
著者
浅田 栄一 安達 孝明
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.14, no.12, pp.1100-1104, 1965
被引用文献数
1

鉄板上の亜鉛メッキ,カドミウムメッキ,スズメッキの厚さを,下地のケイ光X線FeKαを計測することによって測定する方法について検討した.<BR>その結果,これらの試料では,一次X線のメッキ層による吸収効果はほぼ無視することができ,それゆえ,FeKαのメッキ層による質量吸収係数,ケイ光X線の取り出し角およびメッキ金属の密度が既知であれば,純鉄板のFeKαの強度とメッキ試料のFeKαの強度値とから,標準試料と比較することなしにメヅキ層の厚さがほぼ推定できるものと結論された.<BR>なお,さらに精度を高めるためには,一次X線の吸収・励起効果について考察を深める必要がある.

1 0 0 0 OA 同位体の分離

著者
中根 良平
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.91-101, 1963-01-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
45
著者
村上 博哉 神谷 修平 柘植 政宏 葛谷 真美 森田 健太郎 酒井 忠雄 手嶋 紀雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.387-392, 2016

鉄鋼に含まれるリンは,冷間脆性を起こす原因物質となることから低含有量であることが望まれている.その一方で,切削性や耐候性の向上を目的として添加されることもある.そのため,リンの含有量は厳密な管理が必要不可欠である.しかし熟練者の一斉退職に伴い,化学分析の技術継承が危ぶまれており,視覚情報を取り入れた効率的な継承支援策の確立が喫緊の課題となっている.標準的な定量法として「JIS G 1214鉄及び鋼─りん定量方法」があるが,初心者がこの定量操作を行うと,過塩素酸白煙(蒸気)によるリンの酸化処理の開始の見きわめが早まる傾向が見られた.これはリンのオルトリン酸イオンへの酸化が不十分という好ましくない状況を招く.そこで本研究では技能伝承の一助として,適切な状態から過塩素酸白煙処理が行われるように,この操作を可視化した.また,鉄鋼試料分解後のモリブドリン酸青吸光光度法をスキルフリーなフローインジェクション分析(FIA)法によって自動化した.本法により2種類の認証標準物質中のリン濃度を定量した結果,両物質の定量値共に保証値と良く一致した.
著者
中島 彩子 牛島 太郎 右田 潤二
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.384-388, 1986

オルトフタルアルデヒド,2-メルカプトエタノールによるラット血清中の3,5-ジメチル-4,6-ジフェニルーテトラヒドロ-2-<I>H</I>-1,3,5-チアジアジン-2-チオン(NIP-200)の迅速かつ高感度なHPLC-ポストカラム蛍光定量法を確立した.ラット末しょう血中のNIP-200濃度は極めて低く,HPLC-紫外部吸収検出法では検出できない.蛍光検出は励起波長335nm,蛍光波長450nmにて行った.定量は絶対検量線法を用い,定量限界値は2.5ng/mlであった.相対標準偏差は2.5ng/mlで6.97%,5.0ng/mlで5.02%であった.検量線はNIP-200注入量当たり0.2~10ngで直線性を示した.
著者
佐藤 健二 瀧内 伸 角田 美里 鈴木 龍馬 佐々木 秀明 坂本 直道
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.535-540, 2013-06-05 (Released:2013-06-27)
参考文献数
15
被引用文献数
5 5

放射性物質によって汚染された土壌からの放射性セシウムの除去と吸着に関して検討した.除去操作では,汚染土壌として砂試料,除去溶液としてチオ尿素を添加した比較的低濃度の硫酸溶液を用いた.汚染された砂試料1 kgに対し少なくとも0.1 Mチオ尿素を含む1 M硫酸溶液1 Lを用い90℃ で加熱することで除去率80% が得られた.また,チオ尿素を含む硫酸溶液の液量を増やすことで90% 以上,そして除去操作を2回繰り返すことで96% の除去率が示された.本法を実用的のあるものとするために特注のステンレス製除去装置を用い検討した.その結果,基礎的な実験結果とほぼ同様な除去率が得られた.吸着操作では,砂試料から除去した放射性セシウムを含む汚染水,吸着剤としてゼオライトと活性炭を用い検討した.秋田県産のゼオライト2種と市販の活性炭3種を用い放射性セシウムの吸着について検討したところ活性炭へはほとんど吸着されなかったが,ゼオライト2種では共に96% 以上の吸着率が得られた.さらに,放射性セシウムの吸着について振とう時間やゼオライト量を変化させ吸着率への影響について検討すると共にゼオライトをガラス製カラムに入れたフロー式による吸着についても検討した.
著者
中島 美香子 小坂 雅夫 門間 英毅
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.707-714, 2002-09-05
参考文献数
7
被引用文献数
1

X線回折計により物体の表面粗さを測定する方法では, 直接物体からの回折線を利用せず, 物体表面に金属薄膜を蒸着し, 表面粗さを複写した膜 (表面レプリカ膜) からの回折線を利用している. 得られた回折プロフィルを分離し, 各ピークの回折角2&theta;, 回折強度<i>I</i>, 積分強度<i>S</i> などを求め, 回折角のずれ&Delta;2&theta;から偏心量<i>x</i>, 強度比から面積比を演算すると統計結果が偏心量-面積の階段状のグラフとして数値化できる. 本報ではより最適な測定条件 (測定波長・金属膜・照射面積) の組み合わせを求めるため, 凹凸が既知の試料を作製し, 実験・検討したところ, 管球としてCu, 表面レプリカ膜としてAuが最適であり, スリットの幅で決まる有効照射面積は16.2&times;10mm<sup>2</sup>と確定できた. 更にこれらの条件を用いた実用例として, 電着水酸アパタイトの表面凹凸測定結果を求めた. その結果, 数種類の凸面の高さを持つ試料の凹凸面積比を統計的に得ることができた.
著者
穂積 啓一郎 北村 桂介 田中 喜秀
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.259-262, 1989
被引用文献数
2 2

酸素フラスコ燃焼法は,操作が簡便な特徴を有するが,塩素定量の場合,濾紙の汚染による誤差が問題であり,特に超微量領域で著しい.一方,カリウス湿式封管分解法は,加熱分解中爆発の危険があるうえ,分解後強酸が残留して定量操作に障害となりやすい.そこで,今回酸素を充たした小封管中で試料を完全分解し,この後塩化物イオンを電位差滴定する新しい超微量定量を試みた.1mg以下の試料を一端を閉じたガラス管に取り,管内を酸素で置換した後,開口端を針状に引き伸ばして封じた.これを580℃の電気炉で1時間加熱分解した後,吸収液を入れたビーカー中に針端部を押し付けて割り,浸入した吸収液に分解ガスを30分放置して吸収させて,封管内壁を洗浄し,0.001M硝酸銀-2-プロパノール標準液で電位差滴定を行った.本法を用いて諸種の標準物質の定量を行った結果,標準偏差として約0.2%が得られた.
著者
四ツ柳 隆夫 山口 拓 後藤 克己 永山 政一
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.16, no.10, pp.1056-1061, 1967
被引用文献数
1

2価金属のシアノ錯体を含むアンモニアアルカリ性溶液に還元剤(L-アスコルビン酸塩)を添加するとMn<SUP>2+</SUP>イオンだけが選択的にEDTAと反応することを見いだした.<BR>[Mn(CN)<SUB>6</SUB>]<SUP>3-</SUP>+<I>e</I><SUP>-</SUP>+EDTA<SUP>4-</SUP>→MnEDTA<SUP>2-</SUP>+6CN<SUP>-</SUP><BR>この反応を詳細に検討し,1個の試料を用いてCa<SUP>2+</SUP>+Mg<SUP>2+</SUP>,Mn<SUP>2+</SUP>およびZn<SUP>2+</SUP>を滴定する方法を確立した.すなわち,鉄およびアルミニウムを除去したのち大量のシアン化カリウムを加えてZn<SUP>2+</SUP>とMn<SUP>2+</SUP>とをマスクし,Ca<SUP>2+</SUP>+Mg<SUP>2+</SUP>をEDTAにより滴定する.ついでMn<SUP>2+</SUP>に対して過剰のEDTAと還元剤とを加え,60~70℃に加温して上記の反応を完了させ,余剰のEDTAをMg<SUP>2+</SUP>標準溶液で逆滴定しマンガン量を求める.さらに,この溶液にホルムアルデヒドを添加して,Zn<SUP>2+</SUP>を脱マスクし,EDTAにより滴定する.この方法を上記の金属イオンを含む金属鉱山排水の分析に応用した.
著者
内山 一美
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.559-573, 2019-08-05 (Released:2019-09-05)
参考文献数
49

ピエゾ型インクジェットを用いたピコ〜サブナノリットルの微小液滴を用いた分析化学について著者らの報告を中心に述べる.インクジェットは吐出位置を制御することで,生成される微小液滴を任意の位置に送達するためのデジタルナノピペットとして活用できる.微小液滴をキャピラリー内に送達することで,微小反応場で抗原─抗体反応を行うことができ,免疫測定法の迅速・高感度化が可能になる.本稿では,著者らの研究成果であるキャピラリーを利用したイムノアッセイ法を紹介する.また,デジタルナノピペットにより,ポリマービーズの懸濁液を基板に吐出することで,規則配列3次元構造体を作製し,高感度イムノアッセイに応用した.インクジェットで形成させた微小液滴そのものを反応場として,分析化学に応用できることを示してきた.著者らが開発してきたオンラインデジタルPCRによるDNA分析及びインクジェットからの分散媒中に高分子プレポリマーを直接吐出する高分子微粒子の生成方法を概説した.
著者
古沢 源久 橘 正樹 林 裕二
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.229-235, 1982-05-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
5
被引用文献数
11 10

アントラセン,カルバゾール,ペリレン,ナフタセン,ジベンゾフラン,アセナフテン,フルオレン,ナフタレン,フェナントレン,ピレン,フルオランテン,クリセン及びビフェニルの13種類の蛍光性多環芳香族化合物のシンクロ蛍光法による定量法について検討した.この結果,3nmから7nmの狭い波長間隔で測定しても比較的強いシンクロ蛍光強度を示し,シンクロ蛍光法の特性を生かした分析を実施しうる物質は,アントラセン,カルバゾール,ペリレン,ナフタセン,ジベンゾフラン,アセナフテン及びフルオレンであった.これらの物質を定量する際の最適波長間隔,分析精度,共存物質が比較的多量に含まれている場合の影響,同時定量の可能性など,定量に必要な諸条件について検討した.これらの結果をフェナントレン中の不純物の分析に応用したところ,少量のカルバゾールとアントラセンを容易に同時定量しうることが認められた.
著者
山本 隆彦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.36, no.10, pp.592-596, 1987
被引用文献数
1 4

塩化物イオン,臭化物イオン及びヨウ化物イオンそれぞれ0.5mg以下を含む溶液50cm<SUP>3</SUP>に硝酸銀溶液を加え生成するハロゲン化銀の沈殿を0.45μmメンブランフィルター上に薄膜状に捕集し,蛍光X線分析法による各ハロゲン化物イオンを測定する方法を検討した.約0.9M硝酸酸性溶液中に生成したハロゲン化銀は過剰の銀イオンで溶解せず沈殿は定量的に形成される.沈殿条件を5℃,5分間とした.検量線は塩化物イオンは0.1mg以下で直線性を示すが,0.1~0.5mgでは曲線となった.臭化物イオン及びヨウ化物イオンは0.5mg以下で直線性を示した.検出下限は,塩化物イオンで0.2μg,臭化物イオンで0.1μg及びヨウ化物イオンで0.5μgであった.再現性は各ハロゲン化物イオン80μgで相対標準偏差(<I>n</I>=5)は2%以下で良好であった.これらの3ハロゲン化物イオンが共存した試料に本法を適用したところ±3%の誤差で同時定量が可能であった.本法を雪中のハロゲン化物イオンの測定に適用するに当たって,通常の雨水中に含まれるイオンを対象として共存イオンの効果を検討したが,妨害はほとんどなかった.日本海側の雪中のハロゲン化物イオンを測定し,満足すべき結果を得た.
著者
荒川 秀俊 唐沢 浩二 佐野 佳弘
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.497-509, 2016-09-05 (Released:2016-10-08)
参考文献数
28

医療現場におけるDNA分析法は,診療所やベットサイドでの利用(Point of care test; POCT)を考慮し,コンパクトであることや簡易性,迅速性,感度に優れていることが必要である.そこで著者らは,迅速,簡易かつ高感度な検出法として,生物発光法を用いたDNA分析法を開発した.ここで用いる生物発光は,ホタル由来のルシフェリン-ルシフェラーゼ反応である.本生物発光は,ルシフェラーゼの存在下,ルシフェリンが酸素により酸化され,生じたオキシルシフェリンが励起状態を生成し,基底状態に戻る際に発光すると考えられている.この反応はきわめて高感度で,応答が速く,特異性に優れているなどの特徴を有する.さらに検出器は光源を必要としないため,測定器を小型化することができる.本稿では,この生物発光法を用いてDNAを迅速に検出するために,polymerase chain reaction(PCR)や一塩基伸長反応の際に副生成されるピロリン酸の高感度分析法を開発し,その応用として歯科領域で有用とされる齲蝕細菌遺伝子の分析,がん遺伝子であるK-ras及びp53遺伝子の一塩基多型(SNPs)解析法,さらに腫瘍マーカーとしてのテロメラーゼ活性測定法の開発について,著者らの研究を中心に概説する.