著者
保高 徹生 辻 英樹 今藤 好彦 鈴木 安和
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.499-506, 2013-06-05 (Released:2013-06-27)
参考文献数
15
被引用文献数
8 10

プルシアンブルー粒子担持不織布を充填したカートリッジに溶存態放射性セシウム(Cs)含有水を通水し,カートリッジに吸着させ,濃縮することにより,環境水中の溶存態放射性Cs濃度を迅速にモニタリングする技術を開発した.溶存態137Csの濃度を0.005~5 Bq L−1の範囲に調整した水を用いた試験の結果,通水速度が2.5 L min−1の場合,第1・第2カートリッジの137Csの回収率は20 L通水で90% 以上,100 L通水で83% 以上となった.また,通水速度を0.4 L min−1とした場合には,第1カートリッジの回収率が88% 以上に達した.本方法により,20 L濃縮を約10分,100 L濃縮を約50分で行うことが可能となる.また,ゲルマニウム半導体検出器の定量下限は20 L濃縮の4000秒測定で0.03 Bq L−1,100 L濃縮の43200秒測定で0.001~0.002 Bq L−1となり,従来法の前処理方法(20 Lで6時間以上)と比較して濃縮作業の迅速化が可能となる.
著者
西沢 直行 高野 靖 神立 誠
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.294-298, 1976-05-10 (Released:2009-06-30)
参考文献数
26
被引用文献数
1 3

イオン交換クロマトグラフィーによる筋肉中のカルノシン,アンセリン,バレニンの分離,分析精度の向上,分析の迅速化を試み,よい結果を得た.分析は,56×0.25cmのカラムに強酸性陽イオン交換樹脂Aminex A-5を50cmの高さに充てんし,エタノールを2.5%含んだクエン酸緩衝液(pH4.15,ナトリウム濃度0.38M)で,カラム温度57℃,緩衝液の流量5.4ml/hで行った.本方法により,アミノ酸,エタノールアミン,クレアチニンの存在下で,カルノシン,アンセリン,バレニンが迅速に精度よく定量できる.分析所要時間はカルノシンまでで5時間40分で,分析精度は(100±1.2)%であった.本方法による筋肉の1回の分析必要量は0.02gである.マッコウクジラ,スジイルカ,ヒキガエル,ホタテガイの筋肉にバレニンの存在が認められた.
著者
篠原 敏雄 松原 寛和 善国 信隆 小熊 幸一
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.851-853, 2003 (Released:2004-01-30)
参考文献数
10
被引用文献数
4 5

The determination of boron in steel was carried out by ICP-AES combined with anion-exchange separation. About 0.2 g of a steel sample was weighed in a quartz beaker and dissolved with a mixture of 2 cm3 of nitric acid, 1.5 cm3 of phosphoric acid and 4 cm3 of water by heating on a hot plate. Most of the nitric acid was evaporated off and the sample solution was transferred into a separatory funnel with 10 cm3 of 0.1 mol dm−3 nitric acid and water. About 3 g of iron(III) hydroxide oxide was dissolved in a mixture of 10 cm3 of hydrofluoric acid, 1 cm3 of 30% hydrogen peroxide and 50 cm3 of water by heating on a hot plate and added to the above sample solution. The sample solution was diluted to about 100 cm3 with water, allowed to stand for 1 h and then loaded onto an anion-exchange resin Bio-Rad AG1 column preconditioned by a fluoride solution. The iron in the sample solution passed through the column, while the boron was adsorbed as BF4− on the column and recovered with 6.5 mol dm−3 nitric acid. The effluent, containing boron, was treated with phosphoric, perchloric and nitric acids and diluted to 25 cm3 with water to be subjected to ICP-AES at 249.77 nm. The proposed method was successfully applied to the determination of boron in a steel-certified reference material, JSS 174-5, provided by the Japan Iron and Steel Federation. The detection limit was found to be 1.3 μg g−1 boron in steel.
著者
渡会 仁
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.725-744, 1996-08-05 (Released:2009-05-29)
参考文献数
130
被引用文献数
5 6

溶媒抽出機構に関する速度論的研究の最近の進歩についてまとめ,その特徴を論じた.まず,この分野の研究の歴史的経緯を述べ,抽出速度の測定法の進歩について解説した.そして,キレート抽出系,イオン会合抽出系及び協同抽出系における速度論的抽出機構の新たな知見についてまとめた。ミセル及びマイクロエマルションを溶媒抽出の微視的モデル系と考える新しいアプローチについても解説した.溶媒抽出速度における界面の役割の発見は,近年のこの分野の研究における最大のブレークスルーとなっている.液液界面における抽出試薬の吸着と酸-塩基反応,界面での錯体生成反応と配位子交換反応,界面近傍における拡散律速過程,水相内錯生成反応そして界面吸着と界面反応を支配する諸因子について論じた,溶媒抽出類似系である遠心分配クロマトグラフ法及びフローインジェクション法と抽出速度の関連についても言及した。
著者
服部 考成 福士 惠一 早川 真 湊 太郎
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.737-741, 2013-08-05 (Released:2013-09-04)
参考文献数
12

We developed a capillary zone electrophoresis method with direct UV detection for the determination of inorganic anions (Cl−, NO2−, and NO3−), organic acids (oxalic acid, citric acid, and malic acid), and amino acids (aspartic acid and glutamic acid) in the common ice plant (Mesembryanthemum crystallinum L.). As the background electrolyte, a 20 mmol L−1 disodium hydrogenphosphate dodecahydrate solution adjusted to pH 10.6 was used with the addition of 0.001% (w/v) hexadimethrine bromide to reverse electroosmotic flow. The detection responses for the above analytes were improved by 3.5 – 580 fold in terms of the limits of detection (LODs, S/N = 3) in comparison with conventional indirect UV detection. The LODs for the analytes were 0.040 – 2.9 mg L−1. The values of the relative standard deviation (RSD, n = 4, intra-day) of the migration time and the peak area were, respectively, 0.081 – 0.43% and 0.28 – 9.3% when extract from the common ice plant was analyzed. Using the proposed procedure, Cl−, NO2−, NO3−, and oxalic acid in the common ice plant were detected within 9 min; citric acid, malic acid, aspartic acid, and glutamic acid were detected within 12 min.
著者
徳永 裕司 木村 俊夫 川村 次良
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.154-158, 1977-03-05 (Released:2010-05-07)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

17-デスオキシコルチコイドをピロールを用いて定量する方法を報告したが,その原理を17-ヒドロキシコルチコイドの定量に応用した.この方法は,プレドニゾロン,メチルプレドニゾロン,プレドニゾン,ヒドロコルチゾン,コルチゾン及びテトラヒドロコルチゾンでは陽性であるが,21位のアセチル化体及び16位にメチル基又は水酸基を持つコルチコイドは陰性であった.又,この定量法では,試料の(0.625~7.5)μg/mlの範囲内でベールの法則が成立し,吸収極大波長は(587~600)nm,見掛けのモル吸光係数は(2.66~3.5)×104の範囲内にあった.この方法を市販のプレドニゾロン錠の定量に応用し,従来法と比較検討した.
著者
西浜 章平 吉塚 和治 Louis SCAMPAVIA Jaromir RUZICKA
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.349-349, 2006 (Released:2006-08-30)

掲載論文の取り消しについて 取消論文: 西浜章平,吉塚和治, Louis Scampavia and Jaromir Ruzicka: 分析化学(Bunseki Kagaku), 52(12), 1187-1192 (2003). "マイクロシーケンシャルインジェクション分析法の最適化" (Received 16 July 2003, Accepted 10 September 2003)「分析化学」編集委員会及び著者は、上記論文が先に投稿された下記の論文と重複していることから取り消すことに決定致しました。したがって、上記論文を今後引用することのないようにご注意ください。 先行論文: Syouhei Nishihama, Louis Scampavia and Jaromir Ruzicka: J. Flow Injection Analysis, 19(1), 19-23 (2002). "μSI: Optimization of reagent based chemicals chloride in Lab-on-Valve system." (Received 9 January, 2002, accepted 28 February, 2002)
著者
田丸 素子 薮谷 智規 本仲 純子
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1435-1440, 2004 (Released:2005-03-28)
参考文献数
13
被引用文献数
9 13

ホタテ貝中腸腺中金属元素の多元素同時定量法の開発を行った.試料の溶液化はマイクロウェーブ密閉容器を用いる酸分解法で行い,金属元素測定には誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)及び誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)を用いた.分析値の評価にはNIST頒布の標準試料SRM 1566b Oyster tissueを用いた.試料0.5 gを採取し,硝酸,フッ化水素酸,過塩素酸の混酸によるマイクロ波酸分解を行った.分解後の試料をICP-MS及びICP-AESで測定した結果,K,Na,Zn,Mg,Ca,Fe,Al,Cu,Mn,Ba,Sr,Cd,Ni,Co,Pb,Y,希土類元素の定量が可能であった.得られた定量値はPbを除き認証値及び参考値とよく一致した.測定精度はPb,Ni,希土類元素を除きすべて相対標準偏差4% 以内であった.本法を青森産ホタテ貝中腸腺試料の分析に適用したところ,30元素の定量が可能であった.特にカドミウムは中腸腺中に69.0 mg kg-1含まれており,中腸腺中元素濃度と頁岩中元素濃度及び海水中元素濃度の比に基づき算出した生体濃縮係数は他の金属元素と比較して非常に高い結果が得られた.
著者
片瀬 隆雄 和田 英太郎
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.451-456, 1990-08-05 (Released:2010-01-18)
参考文献数
16
被引用文献数
7 10

炭素及び窒素安定同位体比測定の試料を得る目的で,クロロフィルaをアオコ(Microcystis spp.)から1~10mgオーダーで単離する方法を検討した.凍結試料を無水硫酸ナトリウムと共に乳鉢中で混合し,アセトンで抽出後,同液からジオキサンで粗性クロロフィルを沈殿させ,更にジエチルアミノエチル-トヨパール陰イオン交換樹脂及びセファロース・ゲル濾過担体カラムでクロロフィルaを単離する方法を検討した.この方法で,実際に諏訪湖から経時的に採取したアオコの4試料からクロロフィルaを2.3~3.8mg単離し,未処理の乾燥アオコ及び単離の過程で得られた分画物を合わせて18試料の炭素同位体比(13C/12C)及び窒素同体比(15N/14N)を測定した.その結果,アオコ単離のクロロフィルaの炭素・窒素同位体比が経時的に変化していることが明らかとなった.
著者
杉原 喜四郎 斎藤 俊英
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.139-142, 1958-03-05 (Released:2010-02-16)
参考文献数
3
被引用文献数
1 2

試薬食塩中の不純物としての重金属をジチゾン抽出後,塩酸で再抽出してこれを蒸発乾固しポーラログラフによって定量することは,すでに鉛について行ったが,今回は銅,亜鉛について行った.操作法は,亜鉛については鉛の場合と同様であるが,銅についてはジチゾン抽出の際,ジチゾンを200倍位過剰にし,抽出時間は10分以上要した.支持塩としては前報のごとく,0.1M酒石酸+0.5M酢酸アンモン(pH:5.0),0.025Mロダンカリ+0.1M醋酸アンモン(pH:4.6)を用いた.抽出率は30%純食塩水中の15~40γの銅については約98%,10~23γの亜鉛については約101%であった.実際の試薬食塩およびチタンホワイトについて,鉛,銅,亜鉛の定量を行った.
著者
小原 慎弥 上原 隆志 木村 圭一郎 吉田 哲郎 藤原 翔平 水口 裕尊 布施 泰朗 山田 悦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.231-240, 2009 (Released:2009-05-04)
参考文献数
16
被引用文献数
4 5

2006年12月から琵琶湖水を採水し,湖水中の溶存有機物質(DOM)を疎水性樹脂(DAX-8)で疎水性酸(HoA),疎水性中性物質(HoN)及び親水性有機物質(Hi)にカラム分画し,DOM及びその画分の鉛直分布や月変化など動態解析を行った.DOMとその画分の鉛直分布は,5月までは水深に関係なくほぼ均一だが,夏季6~9月には水温躍層(水深10~20 m)の間で大きく変化した.表層水のDOM,Hi及びHoA濃度は,5~9月に増加し,水深の深い所との濃度差が大となった.これらが増加した春季から夏季にはクロロフィルの増加が見られ,フミン物質の増加に加えて内部生産によるHi濃度の増加が影響していると考えられる.トリハロメタン(THM)生成能は,水深10 m付近で高く,水深20 m以下では35~40 μg/Lの値で水深による変化は小さかった.培養時における藻類由来有機物の単位有機炭素当たりのTHM生成能はMicrocystis aeruginosa>Cryptomonas ovata>Staurastrum dorcidentiferumの順で,その種類によってかなり異なり,土壌起源のフミン物質のTHM生成能より低い値を示した.一方,生分解時における藻類由来有機物の単位有機炭素当たりのTHM生成能は,その種類による違いは少なく,湖水の値に近い値を示した.
著者
姚 俊学 吉村 和久 栗崎 弘輔 井倉 洋二 高相 徳志郎
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.785-789, 2011 (Released:2011-11-28)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

クロモトロープ酸を担持した長さ1 cmの陰イオン交換カラムを用いて,既に報告した微量ホウ素のオンライン吸光光度定量法の改良を行った.pHを3にした試料を流すだけでカラム内での錯生成を促進することができ,その後pHを8に変えて段階溶離を行うことで,ホウ素を安定な錯体として未反応の呈色試薬などから分離できた.その吸光定量を350 nmで行った.試料3.2 cm3を用いたときの分析時間は約12分,検出限界は0.06 μg dm−3であった.既報に比べて,分析時間および感度を大幅に改善できた.本法を琉球列島西表島の天然水中のホウ酸の分析に応用した.降雨および二つの河川水中のホウ素濃度は,それぞれ3.1~40.8,20.3~28.5,14.7~20.9 μg dm−3であった.いずれの場合も,非海塩性由来のホウ素の分率は高く,アジア大陸からの長距離移流によるものであることが示唆された.
著者
丸田 俊久 向山 朝之
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.18, no.11, pp.1312-1316, 1969-11-05 (Released:2010-02-16)
参考文献数
17

油脂中の微量の鉄と銅を迅速で精度よく定量する方法について研究した.油脂に濃硫酸を添加し,60%の過酸化水素水を徐々に加えて油脂を分解する方法を確立した.この方法の特長は操作が簡易で分解時間が短く,過酸化水素の分解生成物は水と酸素のみで,から試験値が小さいことである.試料を分解して得た硫酸酸性溶液中の鉄と銅の吸光光度法による定量には,酸性溶液で鋭敏に作用する試薬を用いた.鉄はチオシアン酸第二鉄としてメチルイソブチルケトンで抽出し,銅はジベンジルジチオカルパミン酸銅として四塩化炭素で抽出し,それぞれ495,438mμの吸光度を測定して定量した.本法によれば,分析所要時間は約60分で,鉄は0.1ppm,銅は0.02ppm程度まで定量できた.
著者
秋山 朝子 今井 かおり 石田 幸子 伊藤 健司 小林 正志 中村 秀男 野瀬 和利 津田 孝雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.787-792, 2006 (Released:2006-11-17)
参考文献数
7
被引用文献数
2 3

An analytical method for the determination of aromatic compounds exhalated from hand skin has been proposed. The sampling of exhalated aromatic compounds was performed as follows: after the intake of aromatic compounds included in chewing gum or a capsule, exhalated skin gas was collected from a hand. The hand was covered with a sampling bag of poly vinyl fluoride (PVF) for 30 min. Then, the inner space of the sampling bag was sprayed with a 25% of ethanol aqueous solution. After removing the hand from the bag, the trapped solution containing skin gas was collected. The aromatic compounds in the trapped solution were extracted to the solid phase as Twister® (stir bar coated with poly dimethyl siloxane, Gerstel). Extracts were determined by gas-chromatograph mass spectrometry using a thermo desorption system and a selective ion mode. Linalool, citronellol and geraniol, which are the main components of rose essential oil, were detected from the skin of a hand after an oral intake of rose oil. The exhalated absolute amount of linalool, citronellol and geraniol increased in 30 to 60 min, and then decreased after intake. The recoveries of linalool, citronellol and geraniol were 53.5%, 66.7% and 55.1%, respectively. The correlation coefficient of the standard curves for linalool, citronellol and geraniol were 0.9977, 0.9994 and 0.9987, respectively. Each compound exahalated from the skin of a human body during 6 hours after intake was estimated to be, according to the amount of intake, 0.39%, 0.09% and 0.25%, respectively, for one subject. The absolute amount of geraniol exhalated from a hand increased significantly after oral intake for 8 subjects (P<0.025). This is the first report to present hard proof that an aromatic compound was exhalated from human skin after its intake as food.
著者
神田 武利
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.175-192, 2010 (Released:2010-04-29)
参考文献数
35

シリカをシリコーンポリマーでコーティングした後,二重結合を有する各種化合物を白金触媒下で反応させることにより,ポリマーコート型カラム充填剤を合成した.ポリマーコーティングは,シリカの細孔をつぶすことなく,約7 Åの薄膜で行われていた.本充填剤は,シリカ系カラム充填剤の特長である分離性能をもつと同時にアルカリ性条件下でも使用可能であり,シリカ系とポリマー系充填剤の両方の利点を有していた.またポリマーコーティングは,残存シラノール基の影響を最小限に抑制し,ポリマーコーティング量とC18導入量を最適化したポリマーコート型C18充填剤は,メタノール及びアセトニトリル系の中性移動相下においても,強塩基性化合物であるアミトリプチリンのピーク形状は良好であった.ポリマーコート型カラム充填剤はシリカ基材の表面の活性をコーティングによって不活性化しているため,一般的な化学結合型カラム充填剤と比較して,ロット再現性も良好であった.
著者
三井 利幸
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.811-817, 2008 (Released:2008-11-17)
参考文献数
6
被引用文献数
1

主成分分析法による混合物の非分離定量法は,既に主成分回帰分析(PCR)に応用されているが,PCRでは3種類以上の化合物が混合している場合には,混合比の明らかな多数の既知試料で検量線を作成しても精度の良い定量結果を得ることは困難である.それに対し,混合している可能性のある各化合物の純品と未知試料で主成分分析を行い,得られた最終主成分の既知試料の主成分得点を用いて定量する本方法は,複数の化合物が混合している未知試料中の各化合物の混合比を精度良く定量できる方法である.本方法を質量分析の測定値に応用したところ,有機溶媒中の各化合物の混合比を極めて精度良く定量できることが明らかとなった.更に,本方法を回収された有機溶媒の産業廃棄物に応用したところ,迅速に精度良く定量できた.
著者
橋本 哲夫 本間 悟 兼田 朋廣
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.147-154, 2002-03-05 (Released:2009-03-13)
参考文献数
15

爆心地からほぼ500m地点で採取した長崎被爆瓦の溶融表面に白雲母を検出材として固定し, 原子炉中性子照射に基づくフィショントラック (FT) を観測した. その結果, 残留核分裂核種を含む微粒子 (残存ホットパーティクル, HP) に由来する典型的な星状FTを裏面に比較して数十倍の高密度で観察できた. 20個の星状FT解析から0.72~5.7×107Pu原子がHP中に残存していると見積もれた. 更に, FT長が短いことを基に, HPが瓦表面から少々深い箇所に存在していることを確認した. 一方, 爆心から700mに位置する広島城被爆瓦からは, 石英粒子を抽出し, 再現法を用い青色熱ルミネセンス (BTL) 測定により, 13.0Gyの被曝線量を評価できた. 次いで, 長崎被爆瓦表面のルミネセンスの熱処理特性変化から, 約0.5mmの溶融被膜を除去した部位でも, 1100℃以上の被熱を受けていることを明らかにした. したがって, 残存HPはこの被熱温度をはるかに超えた融点の物質から成っていると判断した.
著者
山中 弘次
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.265-272, 2010 (Released:2010-05-24)
参考文献数
12
被引用文献数
1

超純水の定義,性質,利用分野,製造方法を概観した後,ppq(pg/L)レベルに迫る超純水の超高純度化を可能にしたイオン吸着膜を紹介する.また,超純水製造システムにおける水の再利用,薬品使用量低減技術について述べ,更に,超純水の新しい可能性として,洗浄能力を高めた水,機能水についても紹介する.
著者
田中 龍彦 林 裕也 小宮 佳和 奈部川 英則 林 英男
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.327-332, 2007 (Released:2007-06-20)
参考文献数
13
被引用文献数
5 8

酸性溶液中,ヨウ素酸カリウムとヨウ化カリウムとの反応で生成したヨウ素に一定過剰量のチオ硫酸ナトリウムを加え,未反応のチオ硫酸イオンを電量ヨウ素滴定する方法により,ヨウ素酸カリウムの絶対純度を測定した.本研究では逆滴定の手法を採用しているので,濃度が精確に分かったチオ硫酸ナトリウム溶液を必要とすることから,まずチオ硫酸ナトリウム溶液の調製方法と安定性について検討した.使用直前に煮沸して冷却した高純度水に市販特級のチオ硫酸ナトリウム5水和物を溶解することにより,酸素,二酸化炭素及び硫黄バクテリアに起因するチオ硫酸イオンの分解は起こらなかった.また,テフロン細口試薬瓶に保存した約0.5 mol kg−1チオ硫酸ナトリウム溶液は調製直後でも非常に安定であり,安定剤の添加なしに約1か月間濃度変化はほとんど認められなかった.保存容器の材質としてはプラスチックが適していた.この溶液をヨウ素酸カリウム標準物質純度の電量測定に使用した結果,満足できる精確さが得られた.
著者
福士 惠一 辻本 淳一 横田 久里子
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.175-178, 2005 (Released:2005-04-08)
参考文献数
8
被引用文献数
6 6

We have determined the concentrations of inorganic components in jellyfish, such as Aurelia aurita (with and without aeration), Stomolophus nomurai, and dried sludge of Aurelia aurita using absorptiometry, flame photometry, ICP emission spectroscopy, atomic absorption spectrometry, or ion chromatography to examine the potential usefulness of jellyfish as a fertilizer for vegetable fields. The concentrations of the total nitrogen (9800 mg/kg), total phosphorus (19000 mg/kg), magnesium (17000 mg/kg), and calcium (27000 mg/kg) in the dried sludge of Aurelia aurita were 23, 1360, 14, and 96-times higher than those in Aurelia aurita (without aeration, 420, 14, 1200, and 280 mg/kg in fresh weight), respectively. Although the dried sludge of Aurelia aurita seemed to have some potential as a fertilizer, it contained high concentrations of iron (190000 mg/kg) and aluminum (2200 mg/kg), which might be undesirable for the growth of plants. On the other hand, the concentration of total nitrogen (750 mg/kg) in Stomolophus nomurai was 1.8-times higher than that in Aurelia aurita (without aeration), although the concentrations of total phosphorus (2.3 mg/kg) and calcium (75 mg/kg) were 1/6 and 1/4 of those in Aurelia aurita (without aeration). Stomolophus nomurai could also be expected to have potential as a fertilizer. Spinach was cultivated using a suspension of Aurelia aurita and Stomolophus nomurai, and the dried sludge of Aurelia aurita as a fertilizer. Stomolophus nomurai was most effective for the growth of spinach. The high concentrations of iron and aluminum in the dried sludge of Aurelia aurita seemed to decelerate the growth of spinach.