1 0 0 0 OA 歯周治療とEBM

著者
古市 保志
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.18-27, 2015 (Released:2015-02-17)
参考文献数
43

歯科医学および歯科治療学においてEBM(Evidence Based Medicine) あるいはEBD(Evidence Based Dentistry) の概念が提唱されて久しい.1965年に歯周病が歯肉辺縁部歯面に付着したプラークであることがヒトにおける実験的歯肉炎によって証明されて以来,歯周病学および歯周治療学について様々な科学的データが蓄積され,それに伴い歯周治療は急速な発展を遂げた.まず,1970年代に,プラークコントロールを基本とする歯周治療の科学的な根拠が提示され,歯周基本治療および歯周外科を中心とする修正期歯周治療の内容が確立された.それに続き1980年代から2000年にかけて,GTR法およびエナメルマトリクス蛋白の応用などの歯周組織再生療法が開発され,世界各国の研究機関でその有用性について検証が行われた後,多くの国で臨床応用に至っている.また,歯周組織の長期的な安定を保つには,歯科補綴的な介入が不可欠であり,その科学的な根拠も示されている.ここでは,現在一般的に行われている歯周治療の科学的な根拠を提示すると共に,それらの歯周治療の実践によって長期的保存の予知性が低い歯でも保存可能であったことを報告した論文を提示する.
著者
友枝 圭
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 = Annals of Japan Prosthodontic Society (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.436-439, 2013-10-10
参考文献数
4

<b>症例の概要</b>:患者は54歳・女性.上顎左側遊離端欠損部のインプラント治療を希望し紹介来院した.初診時における口腔内診査において,下顎右側臼歯部ブリッジに破折を認めたため,両欠損部においてインプラントによる補綴治療を行った.<br><b>考察</b>:十分なインフォームド・コンセントを行った結果,患者はインプラントによる補綴治療を希望した.今回,インプラントによる補綴治療3年経過後の時点においてインプラント周囲に炎症や異常な骨吸収等の所見はみられず,機能的にも審美的にも良好な口腔環境が維持されていると考えられる.<br><b>結論</b>:本症例では,上下顎の補綴治療にインプラントを応用することで良好な予後を得ることができた.
著者
飯島 俊一
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.28-34, 2012-01-10 (Released:2012-07-18)
参考文献数
1

インプラントを選択することにより,インプラント治療の合併症を減らす.より長期の成功を獲得するために,コニカルコネクションタイプのインプラントを選択する.コニカルコネクションのインプラントは,インプラント周囲炎を減少する.上部構造は,CAD/CAMで,強度の高い材料を使用する事により,破折の防止をする.インプラントヘッドは,強度が高く,症例に応じ,太さ,長さを適切にする.骨縁下インプラントとの組み合わせにより,より長期の使用が可能となる.
著者
竹内 沙和子 佐藤 裕二 北川 昇 下平 修 原 聰 磯部 明夫
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.70-77, 2010-04-10 (Released:2010-07-08)
参考文献数
27
被引用文献数
2 5

目的:有床義歯補綴治療のための適切な診断を行う上で,義歯支持粘膜のバイオメカニクス特性の評価は重要である.当教室では粘膜の硬さと厚さの両者の関連を明らかにするため超音波による粘膜厚さの計測と,周波数の減衰を応用し弾性率の計測を行った.しかし,厚さと弾性を別々に測定することは操作が煩雑で臨床応用が難しく,義歯支持粘膜の粘弾性的性質を総合的に評価できない.そこで,義歯支持粘膜の粘弾性的特性を客観的に評価するために,荷重量と厚さを同時計測する新システムを開発した.本報では,荷重と粘膜厚さの変化量の同時測定手法の確立を目的とする.方法:超音波厚さ計の90°の探触子と45°角度付探触子の柄にひずみゲージを貼付し,厚さと荷重量の同時計測を行った.測定条件は最大荷重量3.0 N,測定時間15秒とした.測定対象は,擬似粘膜として想定した厚さ3.0 mmの軟性裏装材と有歯顎者の口蓋粘膜にて弾性率の計測を行った.結果:擬似粘膜において弾性率を比較したところ,45°角度付探触子に水準器を付与することで,90°の探触子とほぼ同等の計測値が得られた.したがって,口腔粘膜においては臨床応用範囲の広い45°角度付探触子の使用が可能であることが示された.結論:45° 角度付探触子を用いた新システムにおいて荷重量と厚さの同時計測を行うことで,口腔粘膜の粘弾性について評価できる可能性が示唆された.
著者
新本 竜也
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.122-125, 2010-04-10 (Released:2010-07-08)
参考文献数
3

症例の概要:患者は60歳男性で,咀嚼障害を主訴に来院した.左右の下顎大臼歯欠損によるものと診断し,インプラントを用いた固定式補綴物による治療をおこなった.考察:両側遊離端欠損の症例に対して,インプラントを用いた咬合再構成をおこない,十分に機能回復をすることが出来た.5年経過した現在において最終補綴物およびインプラントは良好である.結論:術前の咬合診断および,プロビジョナルレストレーションから始まる補綴処置を通じて,咀嚼筋筋電図を記録することにより,咀嚼障害の改善を確認できたことから,補綴治療における機能評価を行うことの重要性が示唆された.
著者
松永 興昌
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.321-324, 2014 (Released:2014-08-12)
参考文献数
1

症例の概要:初診時54歳の男性.下顎右側臼歯部ブリッジの違和感と左側臼歯部欠損による咀嚼障害を主訴に来院した.下顎右側臼歯部ブリッジ予後不良と診断され,ブリッジを除去し,ブリッジの支台歯を抜歯したため両側遊離端欠損となり咬合支持を考慮してインプラント補綴治療を行った. 考察:インプラント支台による固定性補綴の咬合支持は,良好な咀嚼機能回復が行うことができた.最終補綴物装着から現在3年以上が経過しているが,約4カ月毎のメンテナンスと口腔衛生指導を継続していることでインプラント部と残存歯を経年的に維持できることが示された. 結論:適切なインプラントの位置と上部構造の設計,補綴物装着後のメンテナンスは,可撤性の両側遊離端義歯に比べ咀嚼機能の良好な回復と有効な咬合支持を獲得できることが示された.
著者
高梨 琢也
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.67-70, 2014 (Released:2014-01-31)
参考文献数
8

症例の概要:患者は61歳の女性.義歯での咀嚼困難を主訴に来院した.臼歯部の咬合支持は喪失しており,上顎前歯には軽度の動揺を認めた.インプラントでの咬合回復を検討したが,上顎欠損部は骨量が乏しくインプラント埋入が困難であった.下顎欠損部をインプラント,上顎欠損部を可撤性義歯にて補綴を行った.考察:治療終了後3年経過しているが,咬合状態,義歯の適合状態は良好に保たれている.上顎前歯は正中離開,フレアーアウト等認めず,初診時に認めた動揺は軽減しており,臼歯部の補綴が上顎前歯の負担軽減につながったと考えられた.結論:臼歯部咬合回復の結果,咀嚼障害の改善と上顎前歯の負担軽減が可能であった.
著者
熱田 生
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.44-46, 2014 (Released:2014-01-31)
参考文献数
18

歯科用チタンインプラントにおいて,歯肉貫通部での上皮封鎖は,細菌などの侵入を防ぐなどの働きから治療成功への重要な鍵と考えられている.しかし同部位における低封鎖性も報告されており,特に長期症例で生じるトラブルを防ぐためその改善が望まれている.一方近年になって,間葉系幹細胞はその高い増殖能と幅広い分化能から再生治療における細胞の供給源となる一方,炎症を調整する制御能から自己免疫疾患などの治療法として歯科領域でも注目されている.本研究ではこの幹細胞をインプラント周囲に応用し,上皮封鎖性の向上に有効かを明らかとする.
著者
飯田 崇
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.75-78, 2014 (Released:2014-01-31)
参考文献数
3

症例の概要:歯科恐怖症に起因した多数歯の歯冠崩壊による咀嚼障害,および審美障害に対して,保存不可能な歯を抜歯して治療用義歯を製作,その後に最終義歯に移行し良好な予後を得た.考察:初診時に適切な医療面接を行い,歯科治療に対する恐怖の原因を正確に把握し,患者に無用な恐怖感を与えず治療を遂行できた.さらに早期に審美性の向上を図り,患者の治療に対する関心を高めた.今回は,これらの対処により継続的な補綴治療が可能になったと考えられる.結論:歯科恐怖症を有する患者においても,恐怖の原因を正確に把握し,それに対応して治療を行い,口腔内の改善を認識させることで,全顎的な補綴治療が可能である.
著者
神野 洋平
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.47-50, 2014 (Released:2014-01-31)
参考文献数
2

症例の概要:患者は初診時61歳の男性.悪性リンパ腫に対する放射線治療後の部分無歯顎に対する補綴治療の症例である.765|部にインプラントを埋入し、コーヌス型オーバーデンチャーで補綴を行った.考察:インプラント体埋入位置が限定され,最終補綴装置の設計も力学的に問題のある設計となった.しかし,最終補綴装置装着後の定期的なメインテナンスによりインプラント体自体に大きな問題は生じていない.今後さらに経過を観察していく必要がある.結論:放射線治療後の下顎部分無歯顎症例に対し,インプラントを用いたコーヌス型オーバーデンチャーで咬合支持を再建することができた.