著者
山本 忠行 Tadayuki Yamamoto
出版者
創価大学通信教育部学会
雑誌
通信教育部論集 (ISSN:13442511)
巻号頁・発行日
no.16, pp.69-89, 2013-08

「直接法」をめぐる議論は、単に媒介語を使用するかどうかという点に矮小化されがちである。しかし、19世紀末に始まった言語改革運動、すなわち文法訳読法からグアン法やオーラル・メソッドへの転換は、説明と翻訳による理解を重視する「事柄教育」から、インタラクションを通じて、学習者自らが意味を察し、類推によって表現法をつかみ取る「表現教育」への転換であり、言語教育観そのものの革命であった。それは現代の外国語教授法と共通する考え方に根ざしており、創価教育の目指す知識伝授型教育からの脱却を意味するものでもある。
著者
清水 強志 SHIMIZU Tsuyoshi
出版者
創価大学通信教育部学会
雑誌
通信教育部論集 (ISSN:13442511)
巻号頁・発行日
no.25, pp.54-70, 2022-08-07

「不安の社会学」という本研究の目的は、現代社会において増加している不安の特徴を社会学的に明らかにすることである。また、これまでの不安についての社会学理論を再考し、さらにそれらの研究・整理を通して、現代におけるデュルケーム社会学の意義を検討することにある。 その序章にあたる本稿では、まず、フロイトを手がかりに、社会学的研究の対象としての「不安」について明らかにした。その上で、サムナーの「内集団/外集団」論を、フロイトの成長の初期段階における「外」への認識をふまえつつ、ギュルヴィッチの「われわれ意識」およびデュルケームの「社会統合論」によって拡充し、心理現象としての「不安」を社会学的に研究するための中範囲の理論を確立した。
著者
山本 忠行 YAMAMOTO Tadayuki
出版者
創価大学通信教育部学会
雑誌
通信教育部論集 (ISSN:13442511)
巻号頁・発行日
no.25, pp.71-91, 2022-08-07

「教科書で教える」ことは日本語教育の基本姿勢とされるにもかかわらず、定義が曖昧で、人によってその捉え方が異なる。一般教科、英語、国語などと比較しながら、「教科書で教える」ことの意義を再確認した上で、問題のある日本語教師が「教科書を教える」ことしかできないことを明らかにした。さらに初級と中上級で具体的にどのように「教科書で教える」のかを例示し、「教科書で教える」ことこそ、教育実習で身につけさせるべき技能であることを論じた。
著者
宗像 武彦 MUNAKATA Takehiko
出版者
創価大学通信教育部学会
雑誌
通信教育部論集 (ISSN:13442511)
巻号頁・発行日
no.24, pp.127-139, 2021-08-09

新学習指導要領が告示され、現場で施行されている。その趣旨と流れは一人一人が主体的に対話的に深い学びをしつつ、新たな社会の価値を創っていく教育であり、本学創立者池田大作(「池田」と書く)の「人間教育」の考えと同じ方向であると考える。その新学習指導要領の趣旨は、「人間教育」を進めることでより充実した実現が図られると考えている。それはどのような教育なのか。 筆者は、本学で学び小学校の教壇に立ち教職の道を歩んできた。本学は、『創価教育学体系』(以下『体系』と述べる)を著した牧口常三郎が創始者である。その『体系』では「教育の目的は、子供の幸福」といわれ、その幸福とは自己と他者の幸福の確立であり、そこから自分の人生を切り拓き、様々な困難を受け止め、そこから新たな価値を創造していくことを「創価教育学」として打ち立てた。それをもとに、「池田」は、本学の三つの指針の中に「人間教育の最高学府たれ」といわれ、人間教育を目指す取り組みの大事さを示されている。 この「人間教育」を「池田」は、教育ではなく「人間教育」の言葉を使われている。本来教育は人間の営みで教育でもいいと考えるが、人間第一に大事にする教育することを根幹にしていくために「池田」は「人間教育」と表現したと考えている。筆者は、現在まで小学校や小中一貫校の現場で34年間教育に携わってきた。本学の卒業生として、一人一人の児童生徒とのかかわりと育みを第一に「人間教育」の実践を心がけてきた。その実践の根幹は、一人一人の児童生徒が自ら立って律していくことが未来に向かって生きていく力になることであり、その力は「自尊感情」であり、その育みのためには「人間教育」の基本となると考え教育の実践をしてきた。 では、その「自尊感情」とは何か。それが教育上どのような役割を持つのか。「自尊感情」は心理学的分野だが、教育上大事な分野ととらえつつ、学校現場での実践と文献の特徴的なものを取り上げ「自尊感情」とは何かを明らかにしていく。さらに、「人間教育」と「創価教育学」との関係から「人間教育」と「自尊感情」がどうかかわっているのか、具体的な実践から明らかにしていく。