著者
ベッカー カール
出版者
人体科学会
雑誌
人体科学 (ISSN:09182489)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.61-69, 1992-04-30

本論文は、宗教的治癒を客観的且つ科学的な立場から考察するものである。過去50年の間に、実験、調査、心理学のケース・スタディ等によるデータがかなり増加した。これらのデータを分析する目的で、本論文では、以下の3つの側面から考察を試みる。即ち、1)手かざし、2)精神による治癒、3)物心的接触及び患者の意識に因らない治癒、である。これら3つの側面は全く個別的な特徴ではなく、同一の事例に二つ以上並列的に見られる場合もある。なお、本論文は究極的な結論を導き出すものではなく、むしろ今後の討論の叩き台となる試論であることを予め述べておきたい。1.手かざし 様々な科学的な実験を通じて、受け手側の精神状態と無関係に、手かざしの治癒的効果は証明されている。それらの実験には人間を対象としたものだけでなく、動物や植物を対象としたものも含まれている。治癒者の手を調査し、何らかの測定可能な変化が見られるかを検討した研究では、治癒者と患者の間で交わされる筋肉や神経による交流が現在注目されているが、治癒者の手や体の場所よりも精神的な態度の方が治癒の効果に大きな影響を与えることが明らかになっている。その結果、セラピューティック・タッチのメカニズムが完全に解明されていなくとも、極めて完全な付属的医学方法として、幅広く急性及び慢性の病気に効果があると、その医学的有効性が認められるようになった。2.精神による治癒 伝統的なシャーマンや現代の精神療法の治癒者は、体系的な宇宙観に基づいて病気の性質や原因を解明しようとする。その際、治癒者自身の病理観や宇宙観を患者に伝えることは、治癒にとって不可欠な要因である。精神的治癒の場合、1)患者と治癒者の親近感、2)儀礼の効果に対する信頼感、3)病気の原因が自分にあるとする患者の罪悪感からの解放、という要因が治癒の成功には不可欠であるとされている。手かざしに関しては、ねずみや大麦の精神とは無関係に手かざしで好ましい効果が得られたという事実が認められているが、治癒者の手から対象の人(物)が全く離れた場合、むしろ患者の信仰や渇望の方が重要な要素であるように思われる。治癒されることを目的として、慢性患者が宗教の巡礼で聖地やカリズマティック・ヒーラーを訪ねることは、多く見られる現象である。3.物質的接触及び患者の意識に因らない治癒物質的接触及び患者の意識に因らない治癒の中では、治癒者が患者とは離れ、患者に知られていない事例が典型的である。そのような例を説明するには、物質的な接触や患者の信仰の説明だけでは不十分に思われる。長距離テレパシーが科学的に証明されていても、医者側はそのような現象を単なる偶然と決め付け、無視する傾向にあるが、時代や文化を越えて、治癒者がその場にいない「不在治癒」の例が数多く記録されている。なお、昏睡状態にある患者の場合や言語取得以前の幼児の場合は、患老の信仰のみによって治癒を説明することは出来ない。本論文で引用した実験や文献は、心身的な健康のためには物質的環境、精神的状況及び信仰の体系を含めた一層包括的な視点が必要であることを示している。
著者
ベッカー カール 谷田 憲俊 得丸 定子 岩田 文昭 山崎 浩司
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

目的意識や前向きな姿勢、倫理観などを高める教育を研究した。対象は教室の生徒や学生をはじめ、家庭内の親子、病院の新看護師等を含んだ。方法は、例えば講義やグループワーク、文学作品やアニメ、さらにはイメージトレーニングや瞑想法まで利用した。それらの影響は、主観的感想のみならず、唾液中の活性アミラーゼでも測ってみた。分析は今後も続くが、講演や書籍出版で詳細な成果を還元する計画である。
著者
位田 隆一 甲斐 克則 木南 敦 服部 高宏 ベッカー カール 藤田 潤 森崎 隆幸 山内 正剛 増井 徹 浅井 篤 江川 裕人 加藤 和人 熊谷 健一 玉井 眞理子 西村 周三
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、ゲノム科学、再生医療、臓器移植、ヒト胚研究等の生命科学・医学の諸分野の科学的発展と課題を明らかにし、そこに生じうる倫理的法的社会的問題を把握し、学際的に理論的および実際的側面に配慮しつつ、新しい社会規範としての生命倫理のあり方と体系を総合的に検討して、生命倫理基本法の枠組みを提言した。具体的には、生命倫理基本法の必要性と基本的考え方、生命倫理一般原則群、分野別規範群、倫理審査体制、国や社会の取り組みを提示した。それらの内容は国際基準及びアジア的価値観とのすり合わせも行った。