著者
尾崎 俊治 伏見 正則 青山 幹雄 土肥 正 岡村 寛之
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究プロジェクトでは,最終製品としてのソフトウェアシステムの品質を確保する目的で,ソフトウェアテストの妥当性検証およびソフトウェアの信頼性評価を行う手法に関する研究を行った.具体的には,(i)ソフトウェアテストにおけるランダムテストをより発展させた準ランダムソフトウェアテストあるいはランダムテストに基づいたより効率的なテストケース生成手法の確立,(ii)(準)ランダムテストに基づいたソフトウェア信頼性評価技術の精巧化を行った.
著者
青山 幹哉 松島 周一 永井 英治
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.本研究では、中世〜近世前期における尾張・三河武士の家を対象とし、事実であった「歴史」と後代に再構築された各家の「歴史」とを個別に分析することによって、後者に通底する時代的心性を考察することを目的とした。2.個別の研究成果は下記の通りである。(1)当該期に成立した尾張・三河武士の家系伝承について系図史料等から、約四十の個別事例を検証した。その結果、軍記物や敗者復活の歴史としての南朝伝説の役割の大きさ、また近世における知行地確保などを企図したさまざまな作為の存在を確認した。(2)尾張熱田の加藤氏に関しては、一定の意図のもとに選択・収集された古文書群の存在について、文書群の内容が示す言説と文書群が家に相伝されたこと自体が示す言説との両面から具体的に分析し、古文書群の存在が物語る加藤家の歴史再構築過程を追求した。(3)三河の吉良氏については、不明な点が多かったため、まず、南北朝内乱期から16世紀初頭までの吉良氏の存在形態の変遷過程を明らかにする作業を行った。この成果により、近世吉良氏によって再構築された「歴史」を事実と比較することが可能となった。3.当初の計画ではデジタル画像データベースの構築を予定した。実際、高知県の山内家宝物資料館など現地調査を実施した際にはデジタル写真を撮影し、その準備をしたが、写真の公開許可を得られなかったこと、また、収集できた史料複製の大半が紙媒体によるものであったことなどから、結果として画像データベースは小規模なものにとどまった。4.本研究の目的からすれば、作業はようやくその一歩を踏みだしたに過ぎない。今後は本研究期間中に着手した、尾張大橋氏等の個別研究をまとめ、尾張・三河における武士の歴史伝承についての総合的な分析を行う予定である。
著者
バイアライン オリファ 里村 和秋 鈴木 伸一
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

私たちは、e-LearningソフトのMoodleをベースにして、初心者レベルにある日本の学生のために、「外国語としてのドイツ語」の独習コースをどの程度まで発展させることが可能なのかを調べました。私たちは、試験や観察を通して、特に次のことを見いだしました。つまり学生は、条件つきで独習コースを受講するということです。すなわち、学生にとって、自己学習は、教育的な器具としてのコンピュータとの接触に、あまり慣れていないということです。私たちの研究のもう一つの主要なポイントは、自学自習に適しているフィードバックの方法がどのようなものであるのかという研究でした。これに関して私たちは、仮定に反して、詳細なフィードバックは必ずしも必要ではなく、いくつかの練習形式では学生を混乱さえさせることがわかりました。さらに私たちは、Moodleをベースに会話練習する場合、どのような可能性があるのか研究しました。
著者
佐々木 陽子
出版者
南山大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

異文化とコミュニケーションする能力及び感性の伸長を期待すべき若年層にとって、他者のどのような態度や外見から相手を文化背景が異なると認識するのか、その境界はどのような条件でゆらぐのか、障害者や老人などを含めた異文化とのコミュニケーション環境にどのように置かれており、それが他者への意識や関心にどう反映されているかを研究し、とくに共生的な志向や態度がどのような条件で伸長しやすいかを模索した。理論研究としては、異文化間コミュニケーションにおける「他者」を分析し、共生することと多文化主義であることがグローバリズムの中で並立するためには、「他者の」ものとして外在化した問題を「自らの」問題として再統合するイマジナリーな領域の保持が重要だと結論付けた。エスノグラフィック・リサーチでは、高校の国際事情クラスや偏見低減教育から収集したデータを分析し、共感の喚起や追体験的要素が「他者の問題を自らに統合する態度」と関わりがあることを見出した。質問紙調査は、愛知県と東京都の高校生を中心にした若者約3000人を対象に、先行の異文化間コミュニケーション能力に関する研究や多文化主義(教育)に関連する研究から、関連する心理尺度を使用したうえ、社会心理学における接触仮説をもとにした接触と偏見の関連、さらに心理係数および国際化とされる態度のうちとくにグローバリゼーションにおける共生的態度との関連を調べた。接触仮説は支持されたが、心理係数のうちあいまい耐性尺度と共感尺度の接触仮説への影響が確認された。また、経験した教育内容や、平素の友人や外国文化とのコミニニケーションの取り方や興味もまた、接触仮説を揺るがせる要因として大きく、そこから、教育における共生的態度や偏見のない認知の育成への可能性を見出した。
著者
A Cardenas 加藤 隆浩
出版者
南山大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本研究の課題は、メキシコの多文化主義的教育を教条的になぞることではなく、その実践のなかに見え隠れする「綻び」の原因を明らかにすることであった。そこで、研究代表者らは初年度には、教育現場で使われる教科書の分析を多文化主義、多文化共生に注目して行い、2年目には先住民文化と国民文化とがどのように関係づけられ、それがインディヘニスモに裏づけられたメキシコ版多文化主義を基盤とする国民国家の形成にどのような形でかかわるかを公立小中学校の教員からの聞き取り調査をもとに見てきた。その結果、生徒と最も接触の多い教員に注目すると、彼らの語る多文化教育の理念と実践との問に大きな乖離があり、それは教育環境を整えるための財政支援不足ゆえのことであるという認識があることが分かった。研究期間のうちの2年を教育現場を中心に調査研究を進めてきたが、最終年度の今年は、その問題を国がどのように認識しているかを教育行政に直接携わり、自ら政策を立案し実践していく国民教育省(SEP)の官僚からの聞き取りにより調査した。そこで明らかになったのは、これまでに幾度となく多文化教育の理念を練り直され、それが啓蒙活動に利用できるような形で冊子、著作として纏められ教員や保護者に無料配布されてきたこと、またその理念に合わせたさまざまな副教材が作成され、教育現場で使用されていること、しかし、そうした実践のための膨大な人的・財政負担(近年、減少傾向にはあるが)にもかかわらず、期待されるような結果が出ていないという厳しい現状があること、その原因は、然るべき教授法を身につけた教員がほとんどいないという点を教育省の官僚らが認めていることなどであった。要するに、「綻び」は教育現場でも官庁でも共通に認識されているが、前者では予算不足を原因とし、後者では現場の教員に責任を転嫁しているように見える。もちろん「綻び」の責任の所在がどこにあるかが問題ではなく、それにどのように対処すべきかが重要である。そのためには、立場を超え、多文化教育の「綻び」に真摯に向き合う必要と思われる。本研究を実施する中で研究代表者らにとって驚きであったのは、多文化教育の理念に関する研究は膨大にあるのに、その「綻び」に関してはほとんどなかった、という点である。この問題の分析は、まだ始まったばかりということである。なお本研究では、家庭教育にも注目し、家庭学習用として安価で売り出されているモノグラフィアにも注目した。
著者
鈴木 貴之
出版者
南山大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、現代の自然科学的世界観のもとで価値や規範にかんする実践はどのように変化するかという問題を、神経科学を具体例として考察することにある。本年度の研究では、前年度の研究成果をふまえ、神経科学の発展が司法制度に与える影響について考察を進めた。具体的には、論文「神経科学と刑罰」としてまとめた前年度の研究成果をもとに、この問題についてさらに考察を進め、神経科学の発展は現在の刑事司法制度に根本的な変化をもたらす可能性があり、さらには、自由や責任をめぐる常識的な世界観を揺るがす可能性もあるということを明らかにした。これらの研究成果は、2007年10月に南山大学社会倫理研究所で行った講演「脳科学と社会-司法制度への影響を例として」、2007年11月に日本倫理学会で行われたワークショップ「脳神経科学の倫理-ニューロエシックスの展開」における提題「脳神経科学と司法制度」として発表された。後者の内容は朝日新聞2007年12月14日29面でも紹介された。これらの成果は、信原幸弘編『脳神経倫理学の展望(仮)』(勁草書房、近刊)に収録の論文「脳神経科学と司法制度」として公刊予定である。また、本年度には、本研究の成果をもとに、南山大学における共通教育科目「モダンの系譜(科学の諸相)」で「脳科学と現代社会」と題した講義を行った。これは、大学学部レベルの授業で神経倫理学を紹介する日本で初めての試みと思われる。
著者
清田 夏代 黒崎 勲
出版者
南山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

平成19年度及び平成20年度は,主にシティズンシップ教育政策の枠組みの部分を中心とした研究を行ってきたが,最終年度である平成21年度は,これまで構築された枠組みに基づき,英国における実地調査を行った.英国においては平成22年5月に総選挙が予定されており,既に労働党及び保守党の両党を中心とした選挙戦が繰り広げられている.それらの争点には教育政策も含まれており,本研究の課題と関わるものとしては,学校の規律の立て直しをめぐる提案や,PSHEの義務化の提案などをめぐる諸問題が議論の対象となっている.そうしたなか,平成22年2月に英国におもむき,英国における若者に対する民主主義的理解を振興させるための機関(政治的には中立である)であるハンサード協会シティズンシッププログラムの責任者を訪問し,英国におけるシティズンシップ教育の現在,方法及び課題等についてインタビューし,同時に,今後予想される政治的な影響などについて聞き取りを行った.同時に,人権教育を主体としたシティズンシップ教育研究を展開しているオードリー・オスラー教授(リーズ大学及び香港大学客員教授)及び,共同研究者であるヒュー・スターキー教授(ロンドン大学教育研究所)を訪問し,英国における政治的動向と,それがシティズンシップ教育の実践にどのような影響を及ぼしうると考えられるかということについて,聞き取りを行った.現地におけるこれらの調査は,今後の研究の課題の枠組みとして展開される予定である.
著者
野口 博史 黒沢 浩
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

プレアンコール期碑文出土報告地点の約70%を踏査し、これに基づいて土器・陶磁器の分布と変遷・レンガ中モミガラ約50件の実測と解析・寺院建築実測十数件が行われた。これらの関連から、カンボジア南部と北部では、境界は必ずしも明確ではないものの、モミガラ形態分布・土器・陶磁器の分布に相違が見られること、これらには時期的な連続性がある程度確認できることが明らかになり、碑文学的に指摘された国家形成における地域的な重点の相違と歴史的連続性が示唆された。
著者
伏見 正則 田口 東 大山 達雄 腰塚 武志 三浦 英俊 栗田 治
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1.都市の平面交通に関する数理的研究:東京都のような放射・環状道路網を有する都市,あるいは札幌や京都のような直交格子状道路網を有する都市において、通勤や物資の輸送等のために生ずる交通量について、種々の特性を数理的に求め、それに基づいて、渋滞を避けるために必要な道路面積、就業地域と住宅地域の最適な配分等についての知見を得た。また、東京都を例にとって、実際のデータと理論の整合性についても検討した。2.都市の高層ビルにおける移動時間の分析と、ビルの効率的面積配分に関する研究:高層ビル内の移動に関して重要な役割を果たすエレベータとエスカレータに関して,適切な役割分担、ゾーニング方式の最適設計、移動に必要な部分の面積とオフイスに使える面積を考慮したビルの最適形状等について数理的な検討を行った。また、ビル間の移動に要する時間を考慮した場合に、交通路と居住地をどのように配分するのが適切かについても数理的に論じた。さらに、新宿の高層ビル群で移動に要する時間の実地調査を行い、数理的なモデルの妥当性を検証するためのデータを得た。3.都市間交通網の評価:道路網あるいは鉄道網による都市の結びつきの強さをグラフ理論を使って評価する方法を検討し、それを使って、北海道の道路網およびユーラシア鉄道網の評価を行った。このような研究は、新線建設の重要度評価などのために有用であると考えられる。4.公共施設の最適配置:高額な高度医療機器や老人福祉医療施設などの公共施設の配置に関する地域間格差を調査し、それに基づいて、施設を適正に配置するための数理的手法について検討を行った。
著者
服部 裕幸 美濃 正 大沢 秀介 横山 輝雄 戸田山 和久 柴田 正良
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

われわれはコネクショニズムと古典的計算主義の対比を行ないつつ、コネクショニズムの哲学的意味の解明を行なった。美濃は、ホーガン&ティーンソンのアイディアを援用し、古典的計算主義を超えつつも、いくつかの点で古典的計算主義と前提を共有する立場の可能性を模索した。服部と金子はコネクショニズムにおける表象概念(すなわち分散表象)がはたして「表象」と呼ぶに値するかということを研究し、その有効性の度合を明らかにした。金子はどちらかといえば、分散表象を肯定的に評価し、服部は否定的に評価しているので、この点についてはさらに具体的な事例に即した研究が必要であることが明らかとなった。柴田と柏端は、「等効力性」議論を検討することを通じて、「素朴心理学」的説明による人間の行為の説明が真ではないとする主張の意義を研究し、柏端は、コネクショニズムが素朴心理学の消滅よりはむしろその補強に役立ついう評価をするに至った。他方、柴田は、条件つきではあるものの、素朴心理学は科学的心理学を取り込んだ形で生き残るか、道具主義的な意味で残るであろう、と結論するに至った。戸田山と横山はコネクショニズムが認知の新しい理論であると言われるときに正確には何が言われているのかということを研究した。特に横山は、コネクショニズムを科学についてのより広いパースペクティヴから見なければならないと結論した。大沢は、古典的計算主義における古典的表象のみならずコネクショニズムにおける分散表象もともにある種の限界をもつと論じ、それに代えて新たに像的表象の概念を提案し、そこでの論理を具体的に提案した。しかし、この点はまだ十分に展開しきれてはいないので、今後も引き続き研究する必要のあることが判明した。
著者
榊原 秀訓 岡田 章宏 大田 直史 庄村 勇人 友岡 史仁 洞澤 秀雄 田中 孝和 上田 健介 萩原 聡央 和泉田 保一
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

行政組織だけではなく、サードセクターを含む民間組織が行政サービスの提供を行ってきている。また、目標設定・協定締結や検査・評価が多用されてきた。公益事業関係では消費者組織の権限が強化され、都市計画領域では住民参加も進んでいる。同時に、サービス提供主体間の協働、透明性・情報公開やアカウンタビリティの確保、サービス提供労働者の労働条件確保、利用者の人権保障を目指した改革がなされ、公務員の伝統的価値を守る規範も策定されている。
著者
沢木 勝茂 國田 寛 赤壁 弘康 岩城 秀樹 竹澤 直哉 徳永 俊史
出版者
南山大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

澤木:本年度は、新株引受権、ロシアオプション、他社債転換社債、リアル・オプション、および仕組債の評価式の導出とその数値計算に関する研究を中心に実施した。これらの研究成果を国際会議(INFORMS、Bachelier Finance Society、日本ファイナンス学会、RASOR2007)および国内学会(日本オペレーションズ学会、日本ファイナンス学会、日本経営数学会、JAFEE等)において発表した。3年間の萌芽研究の成果を踏まえて、ワークショップの開催と科学研究費補助金研究成果報告書を作成した。また、研究代表者は日本オペレーションズ・リサーチ学会より学会賞(実施賞)を受賞した。本研究分担者の研究実績は以下の通りである。國田:"Jump diffusion processes and their average options", RASOR 2007,2007.3赤壁:「観光ブームの発生と消滅に関するもうひとつの力学モデル-角本論文に対するRejoinder-」,日本観光学会第94回全国大会,姫路獨協大学,2006.12、「遊園地・テーマパークの生残り策としてみた会計的手法-サンリオ「ピューロランド・ハーモニーランド」の事例を中心として-」,南山大学経営学部講師長谷川高則、同教授斎藤孝一との共同報告,日本観光学会第93回全国大会,奈良県立大学,2006.6、「高収益を稼ぎ出す投資ファンドのからくり〜リスクとリターンの関係から〜」,大学コンソーシアムせと,2006.10、「あなたもリスクに無関心ではいられない時代-資産運用とファイナンスを学ぶ意味-」,学科長が語る南山の現在第10回,2006.10岩城:"Speculation and stock prices -An analysis from the herding approach-",Workshop on Mathematical Finance and Stochastic Control,北海道大学,2006.9竹澤:本年度は、Lamberchetらのリアルオプションモデルを情報エントロピーへ応用した評価方法、部品調達戦略の柔軟性についての評価オプションなどについて、INFORMS、日本ファイナンス学会、日本リアルオプション学会などにおいて、研究報告を行なった。また、石油化学プラントのリアルオプション評価に関する著書および半導体子会社の調達契約に関するリアルオプション評価を用いたリスクヘッジに関する論文を出版した。なお、研究代表者および研究分担者の刊行論文については、次頁に記載した通りである。
著者
山岸 敬和
出版者
南山大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、アメリカ合衆国の医療保険が1950年代から1960年代にかけて医療保険分野で、どのように政治的ダイナミズムが変化し、1960年代にメディケア(高齢者向け公的保険)とメディケイド(貧困層向け公的保険)が成立したのかを明らかにすることである。より具体的には、退役軍人向けの医療プログラムと、福祉政策の発展がどのように利益集団政治を変容させていったのかに焦点を当てる。平成20年度は国内外で主に資料の収集を行った。特にワシントンDCでの資料調査では退役軍人団体であるAmerican Legionに関する古い資料を入手することができた。本研究の最終年度に当たる平成21年度は主に前年度に収集した資料を使いながら論文執筆を行い三本の論文を執筆した。
著者
加藤 泰史 青山 治城 入江 幸男 大橋 容一郎 篠澤 和久 直江 清隆 舟場 保之 別所 良美 松井 佳子 松田 純 宮島 光志 村松 聡 山内 廣隆 山田 秀 高田 純 RIESSLAND Andreas
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究の研究成果としては、(1)現代価値論の観点から「尊厳」概念を絶対的価値として基礎づけることの可能性と重要性が明らかになったこと、(2)ドイツの「人間の尊厳」理解として義務論的なハーバマスにせよ(人間の尊厳/人間の生命の尊厳)、功利主義的なビルンバッハーにしても(規範的に強い意味での尊厳/規範的に弱い意味での尊厳)、「尊厳」概念は二重構造を持っており、それが一般的に妥当性を持つとして広く受け入れられていること、しかしまた同時に(3)ドイツの「尊厳」理解において身体性を重視する議論が新たに提示され始めており、この点で従来のパラダイムが転換する可能性があること、それに対して(4)日本の「尊厳」概念史がほとんど研究されていないことが判明し、本研究でも研究の一環としてそれに取り組み、一定程度明らかになったが、その根柢には「生命の尊厳」という理解が成立しており、それはきわめて密接に身体性と関連していて、この点で(3)の論点と哲学的に関連づけることが可能であり今後の重要な哲学的課題になること、(5)「人間の尊厳」概念から「人権」概念を基礎づけることの重要性が明らかになったこと、(6)近代ヨーロッパの「尊厳」概念成立に際してヨーロッパの外部からの影響が考えられうることなどを指摘できる。これらの研究成果は、まずは『ドイツ応用倫理学研究』に掲載して公表したが(第2号まで公刊済み)、第一年度の平成19年度以降各年度に開催されたワークショップやシンポジウムの研究発表をもとにして論文集を編纂して差しあたりドイツで公刊予定(たとえば、その内のひとつとして、Gerhard Schonrich/Yasushi Kato (Hgg.), Wurde als Wert, mentis Verlagが編集作業中である)である。そして、これらの論文集の翻訳は日本でも刊行を予定している。また、特に(4)に関しては、加藤/松井がこの研究プロジェクトを代表してドイツのビーレフェルト大学で開催されたワークショップ「尊厳-経験的・文化的・規範的次元」において「Bioethics in modern Japan: The case for “Dignity of life"」というテーマで研究発表した。さらに研究成果の一部は最終年度の平成22年度の終わりにNHK文化センター名古屋教室の協力を得て市民講座「現代倫理・「人間の尊厳」を考える」で江湖に還元することもできた。
著者
SWANSON Paul MOLLE Andrea
出版者
南山大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

モッレ、アンドリア氏は平成20年度には「日本の新宗教運動と武道」をテーマに、主に以前行われたフィールドワークに基づき、データベースを作成し、研究を纏めた。訪問先やフィールドワークの対象になったものとして、名古屋大学合気道クラブ、名古屋の居合道道場、少林寺拳法名古屋東道場、合気道大阪武育会、栃木県気Society本部、東京の合気会本部道場、合気神社などである。新宗教運動として主に崇教真光を中心に研究を進めたが、綾部の大本教にもより、インタービュウーなどの研究活動をすすめた。また、インターネットやメールを通しての情報収集を行ってきた。データ(研究ノート、写真、書類、など)はNvivoによって入力・管理し、データをStOCNETによって分析をしている。また、この研究に基づき、多くの報告(著書の章、学術論文、研究報告、書評、翻訳、インターネット上の報告、など)を発表した。最後の一年間には引き続きフィールドワークを実施し、データを纏め、さらなる論文を作成し、今後の研究につなぐ準備をした。
著者
山田 望
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ペラギウス派の思想史的起源は、アクイレイアのルフィーヌスによるオリゲネス、バシレイオス、エヴァグリオスらのラテン語訳、さらにペラギウス派のキーワードである「キリストの模範と模倣」の概念においては、ルフィーヌスの前任者であったアクイレイアのクロマティウスによる著作からの影響のあることが判明した。これらアクイレイア司教たちの手による翻訳や著作に、オリゲネス主義者として知られるエヴァグリオスやオリゲネスの影響を決定的に受けていたバシレイオスの著作も含まれることから、オリゲネス主義が思想史的起源ではないかとの当初の仮説が証明されたと結論づけることができる。
著者
田中 恭子 荒井 茂夫 白石 昌也 黒柳 米司 真栄平 房昭 田中 明彦 中田 睦子
出版者
南山大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

計画研究「中国とアジア太平洋の広域世界」は、研究分担者6名、公募研究者6名、研究協力者2〜3名による共同研究を進めてきた。3年間にあわせて15回の研究会を行い、そのうち2回は領域研究の他の班(中華世界班、社会班)と、1回は特定領域研究「南アジアの構造変動とネットワーク」の世界システム班と合同で開催し、学際的研究を進めた。また、第5回研究集会において「アジア太平洋世界と中国」セッションを主宰し、班の研究成果を領域研究全体で共有するよう努めた。3年間の研究活動の結果、次のような共通認識を持つに至った。(1)冷戦の終結は、米ソ中3極構造を崩壊させ、中国を「地域化」させた。中国の影響力および経済関係は、アジア太平洋地域にほぼ限定され、その外交戦略もまた、近隣のアジア諸国との関係緊密化によって、平和な環境を維持し、アメリカの「脅威」に対処するものである。(2)東南アジア諸国には新たな「中国脅威論」が浮上しているが、これは、中国の「建設的関与」促進によって緩和可能と考えられていること、華人はもはや争点でないことの2点において、冷戦期の「脅威論」とは質的に異なっている。(3)経済的には、香港・台湾を含む華人ネットワークが中国の発展の重要要因となっている。とくに、広東・福建の僑郷(香港住民・海外華人の出身地区)の発展は、ほぼ全面的に彼らに依存してきた。このため、北京も僑郷地区も海外華人との連係強化に懸命である。(4)これらの動向は、いずれも何らかの構造的変化を示すものであり、1997年の香港返還およびアジア経済危機がさらなる構造変動を促すことかどうか注目される。
著者
PATRICK Rebollar 松村 剛 丸岡 高弘 真野 倫平 クーロン ダヴィッド ペロンセル モルヴァン 一丸 禎子
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は東京大学総合図書館所蔵コレクション『マザリナード集成』約2700点を完全デジタル化し、世界に先駆けマザリナード文書のオンライン・デジタルコーパスとしてインターネット上に公開した。これにより世界的にも貴重な原資料の保護と継承のみならず、新たな学術研究の可能性を開くことに貢献した。本研究により実現したコーパスの特徴は従来型データ・ベースと異なり、研究者によって絶えず更新され、最新の知識が一般にも共有されることである。日本が発信したこの新しい知の共有・集積方法(マザリナード・プロジェクト)は最も先端的かつ学際的な「マザリナード文書の研究用プラットフォーム」として国際的に機能し始めている。