- 著者
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児島 明
- 出版者
- 和光大学現代人間学部
- 雑誌
- 和光大学現代人間学部紀要 (ISSN:18827292)
- 巻号頁・発行日
- no.2, pp.117-131, 2009-03
ニューカマー児童生徒教育や国際教室の登場には、それらの展開をある一定の方向に水路づけるべく作用してきた歴史的制約、すなわち経路依存性が深く関わっている。と同時に、複数の経路が複雑に交錯してもいる。こうした複雑に交錯する経路を解きほぐす作業は、ニューカマー児童生徒教育や国際教室が、現在、共通して直面している諸課題を理解するうえで欠かせない。しかし他方、ニューカマーの受け入れは、それぞれローカルな文脈のもとでなされるものである以上、ローカルな文脈に根差した固有の教育理念や実践を生みだし、場合によっては、そうした歴史的制約との間にある種の緊張関係をもたらしもする。こうした緊張関係は、実践の当事者にはさまざまな困難を強いるものではあるが、その一方で、ニューカマー児童生徒教育の多様な展開の可能性を暗示するものでもある。本稿では、神奈川県大和市の小中学校に設置された国際教室の事例に基づきながら、ニューカマー児童生徒教育の展開に内在する問題点と可能性について検討する。