著者
野村 貴美
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.459-467, 1990-12-15 (Released:2017-09-30)

放射性廃棄物の処理・処分は,原子力発電廃止措置に伴う解体技術の開発と核燃料サイクルのための再処理技術の開発とともに重要な課題の一つである.商業用原子力発電が1966年に運転開始してから約25年になり,より本格的に廃棄物の処理・処分の問題解決に取り組まなければならない時期を迎えている.放射性廃棄物の特徴と発生量,処理・処分の考え方,処理・処分方法について国内の現状を概説し た.
著者
田瀬 則雄
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.290-296, 2012-10-15 (Released:2016-08-31)
参考文献数
27

地下水汚染問題は必ずしも新しい問題ではないが,時代とともにその様相を変えてきている.地下水汚染については,これまでも多くの調査研究があるが,本論では地下水汚染のこれまでの経緯,現状,課題などを土壌汚染との関わりも含めとりまとめた.汚染物質としては,病原性微生物,重金属類,揮発性有機化合物,残留性有機汚染物質,油類,硝酸性窒素,医療品・生活関連物質,放射性物質など多種多様で,汚染の経緯,状況は様々である.この30 年はトリクロロエチレンなどの揮発性有機塩素化合物による地下水汚染が中心課題であったが,現在は硝酸性窒素問題に,そして医療品・生活関連物質,さらに放射性物質なども問題となってきている.
著者
岡本 正
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.23-31, 2015

東日本大震災後に弁護士らが実施した無料法律相談のうち約4 万件の分析結果が,日本弁護士連合会により公表されている.これらの分析結果は,災害後の制度改正や新規立法の根拠事実として活用され,公共政策上の一定の価値を示した.被災地のリーガル・ニーズを集約し,分析することで政策実現を目指す手法を,公共政策上のノウハウとして承継するため,2012 年度以降,中央大学大学院公共政策研究科や慶應義塾大学法科大学院等において,「災害復興法学」の講義が創設された.災害復興法学では,行政,政策,法律,防災及び危機管理等の分野を融合させた新たな公共政策教育を実践している.無料法律相談情報のデータ・ベースを活用することで,首都直下地震や南海トラフ地震など,来るべき巨大災害に備えて講じるべき法制度や公共政策上の課題を発見できる可能性がある.当該分野の研究を深めることは,防災と危機管理の分野において新しいデザインを提唱することになると考えられる.
著者
中野 冠
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.186-192, 2015-06-15 (Released:2016-07-30)
参考文献数
24

持続可能なサプライチェーンマネジメントとは,サプライチェーンが持続可能であるようにマネジメントすることと,持続可能な社会のためにサプライチェーンをマネジメントすることの2 つの意味を有する.サプライチェーンの持続的な競争優位と震災対応などリスクマネジメントは前者に,環境に配慮したサプライチェーンは後者に含まれる. 本稿では,安全工学会に関係があると思われるリスクマネジメント特に突発的に起こる破壊的事象に対する課題を中心に解説する.突発的事象には金融恐慌のような需要急変と自然災害などによる生産途絶があり,課題や対策も異なる.自然災害による生産途絶では,人道的見地が経済的側面とともに考慮される必要がある.自動車業界などの事例を用いながら,解説を行う.
著者
齋藤 剛
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.385-390, 2009-12-15
参考文献数
8

<p>形状や寸法の工夫で危険源に人が触れないようにすることは,機械のリスク低減としてきわめて本質的である。この際,適切な寸法を与えるのがISO 13857 である。また,ISO 13857 は,安全防護の正当性を計る基準でもあり,ガードの上を越えたり開口部から手を通したりしても危険区域への到達を阻止するのに必要なガードの大きさと設置位置を示す。ただし,ここで規定された数値は欧州各国で得られた人体計測値をおもな根拠にしており,欧米人と明らかに体格が異なるわが国の労働者にとって必ずしも適切とはいえなかった。本稿では,このISO 13857 の概要を述べるとともに,本規格の規定値を日本人に適用することの妥当性を検証した測定結果について紹介する。</p>
著者
齋藤 剛
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.385-390, 2009

<p>形状や寸法の工夫で危険源に人が触れないようにすることは,機械のリスク低減としてきわめて本質的である。この際,適切な寸法を与えるのがISO 13857 である。また,ISO 13857 は,安全防護の正当性を計る基準でもあり,ガードの上を越えたり開口部から手を通したりしても危険区域への到達を阻止するのに必要なガードの大きさと設置位置を示す。ただし,ここで規定された数値は欧州各国で得られた人体計測値をおもな根拠にしており,欧米人と明らかに体格が異なるわが国の労働者にとって必ずしも適切とはいえなかった。本稿では,このISO 13857 の概要を述べるとともに,本規格の規定値を日本人に適用することの妥当性を検証した測定結果について紹介する。</p>
著者
新井 充
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.229-232, 2008-08-15 (Released:2016-10-31)
参考文献数
3

本稿では,物質安全の基礎の最終回として,混合危険の定義,一般的特徴,法規制,評価試験方法,注意点,事故事例等について概説する.薬品類の混触による発火が,火災の原因になるという事実は,地震の際の化学実験室等で観測されているが,このような発火現象に代表される混合危険は,地震時以外にも災害をもたらす可能性があり,注意が必要である.
著者
平松 雅伸
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.195-204, 2016

2015 年8 月12 日夜,中国天津市の危険物倉庫で大きな爆発火災事故があり,消火にあたった数百人の消防士が殉職,負傷するとともに,多数の住民が死傷し,また,住宅建物設備の損壊も生じ,生活・生産・物流・環境汚染等の面で深刻な影響があった. 事故発生当初の速報としては,インターネット上を始め,かなりの情報が発信されていたが,直後から当局の情報管理や制限により,被害状況,調査の進捗や報告の状況,再発防止策が見えにくかった. 公開された事故情報やその後の調査報告書から見えてきたのは,事業者の法令遵守の逸脱や規制当局の違法許可,消防技術の教育不足等の課題であり,総合的にみて事業者の安全文化から社会構造までにわたり根の深い問題と捉えられた.
著者
中村 順
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.67-72, 2011-04-15
参考文献数
12

<p>警察は産業事故についても事実を明らかにし,原因を究明して安全を確保する責務がある.対象となる事故は,死傷者を伴う事故や,社会的に関心の高い事故となる.現場検証は裁判所の令状に基づく公式な事故を記録するものである.関係者の供述についても証拠化され,他の調査機関と異なり,人に関する事故に至る背景,事情までも含めて調査を行うことになる.事故原因を明らかにして,責任を明確にすることが求められている.責任者の処罰ではない.</p>
著者
三角 育生
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.500-505, 2015

2015 年9 月4 日,サイバーセキュリティ基本法に基づく初めての基本的な計画であるサイバーセキュリティ戦略が閣議決定された.この戦略は,「自由,公正かつ安全なサイバー空間を創出・発展させ,もって『経済社会の活力の向上及び持続的発展』『国民が安全で安心して暮らせる社会の実現』,『国際社会の平和・安定及び我が国の安全保障』に寄与することを目的とするものである.本稿では,同戦略の概要と,その背景となる主要なコンセプト及びいくつかの同戦略に基づく施策の例について概説をする.
著者
平川 幸子・村上 佳菜・義澤 宣明・滝澤 真理・河合 理城・佐藤 理・高木 俊治 中村 尚司 義澤 宣明
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.167-172, 2014

<p>2011 年3 月11 日に発生した東日本大震災に伴う原子力発電所事故直後から環境中及び露地野菜,原乳,水道水等から,ヨウ素131 が検出された.本稿では,主にヨウ素131 による内部被ばく線量の再評価の参考となる,事故直後の福島県住民の避難状況及び避難者の避難中の食生活及び流通実態について調査し,課題を整理した. 調査結果からは,事故直後に避難者が摂取した食品等の多くは事故前からの備蓄品又は被災地外からの支援物資であったことが確認された.さらに,対象野菜の出荷制限,水道水の摂取制限の他,流通施設の被災,小売店舗の閉鎖,等の状況からヨウ素131 で汚染された食品等が大量に消費される状況ではなく,一般に広く流通した可能性は低いことが示唆された.</p>