著者
辻 禎之 関谷 直也
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.439-444, 2006-12-15 (Released:2016-11-30)
参考文献数
5
被引用文献数
1

2006 年8 月11 日フィリピンのタンカー沈没事故では,重油の大量流出によりギマラス島周辺の広い範囲が汚染され,自然環境への被害のほか,漁業や養殖にも重大な被害をもたらした.日本国内においても海上での重油や毒劇物等による汚染事故が度々発生している.近年では,日本に接近する台風および上陸する台風の数が以前よりも増加しており,台風による船舶の座礁や漏洩事故も度々発生している. 自然災害の分野では,地震や河川氾濫等では直接被害より間接被害が大きい場合が多く,間接的な経済的被害の評価への注目が高まっており,調査研究が進められている.国内の風評被害への補償事例としては,ナホトカ号重油流出事故で風評被害による海産物への補償が行われており,JCO 臨界事故では風評被害による海産物や農産物への補償が行われている.国内における海産物のブランド化(価値向上)や間接被害への関心の高まり,途上国における権利意識の向上等によっては,海上汚染事故による風評被害が,補償問題を含めて現在よりもより重大な問題となる可能性もある. このような背景を受けて,本稿では,海上汚染事故に伴う風評被害を中心として,風評被害による経済的損失の評価モデルや被害の低減について考察する.
著者
早坂 洋史・田代 徽雄 古積 博 田城 〓雄
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.9-14, 1992
被引用文献数
2

<p><tt><b>高速度(1秒間に20画面)での撮影が可能なサーマルカメラを使い,灯油プール火災火炎の放射熱特性を明らかにした.サーマルカメラで計測したみかけの温度は,簡単な式を使って放射熱に変換して,熱伝堆型の広角放射計の測定値と比較し,変換の妥当性を確かめた。また,1秒ごとの灯油プール火災火炎の変動傾向や代表的な高・中・低の各放射強度火災の放射熱分布,70枚の熱画像データの平均値による放射熱分布を示すとともに,統計計算の結果についても述べ,灯油プール火災の放射熱特性を明ら </b></tt><tt><b>かにできることを示した. </b></tt></p>
著者
中川 良三 加藤 龍夫
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.99-108, 1991-04-15 (Released:2017-08-31)

新潟水俣病事件は,昭和39年8月ごろから新潟県阿賀野川流域住民の問に発生した有機水銀中毒事件である,「農夫症」という説があったように,原因については昭和電工鹿瀬工場の排水説と地震で流失した水銀農薬説が論争された、現在,阿賀野川流域の環境試料の水銀調査を行っても,四半世紀前の事件の痕跡は皆無であった.しかし,当時の資料を化学的に検討した結果,水銀中毒事件の発生原因は,工場排水が直接の基盤をなしたとはいえず,新潟地震とその直後の集中豪雨によって流失した水銀農薬が 関与していたと推察された。 本研究の議論はあくまでも,公表された記録の数値と,永年,水銀の研究をしてきた著者らの経験を基に,推論したものであり,決して工場排水説を否定するものではない.いずれにしても,この事件を契機に,人々が水銀の毒性,環境汚染というものを理解したことは意義のあることであった.
著者
次田 彰
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.142-147, 2002-06-15 (Released:2017-02-28)

文部科学大臣の私的懇談会である失敗知識活用研究会(会長:佐藤文夫(株)東芝相談役)は,実際の失敗事例の報告に基づき,失敗経験を積極的に活用することの意義,問題点および活用方策等についての検討を実施,報告書を取りまとめた(平成13年8月).当該報告書の提言は,科学技術振興事業団が実施している「失敗知識データベース」の構築に反映されている.これまでに機械,材料,化学物質・プラント,建設の4分野それぞれにおいて,数百の事例の収集,分析,知識化等を実施しており,本年 度中に公開の予定である.
著者
西 晴樹
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.54-55, 2004-02-15 (Released:2017-01-31)
参考文献数
2
著者
菅田 誠治
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.359-363, 2013-12-15 (Released:2016-07-30)

地上付近で発生した物質は,大気境界層の中にあり,昼夜の境界層の盛衰や他の気象の影響を受けつつ,主に地表面付近を風の流れにより運ばれる.一部の物質は自由大気に出て,より長距離の輸送を受ける.越境輸送の影響が及ぶかどうかは風向を見れば容易に推測できるが,その際の物質濃度を定量的に予測することは,輸送途中での境界層の状態,自由大気との出入り,気象条件次第の輸送形態とそれに伴う水平方向の気塊の拡がり,降水による除去等の様々な要因が複雑に絡んで非常に難しい.
著者
坂井 秀夫
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.421-427, 2008-12-15 (Released:2016-10-31)
参考文献数
1

東京電力(株)技術開発研究所ヒューマンファクターグループでは,人間の特性に基づいた技術を開発し,広く社内外に展開することで,リスク低減,ヒューマンパフォーマンス向上を目指している.本報では,安全にかかわる教育,技術継承という観点から自主開発し,外販に至った二つの支援ツール(SAFER およびK─SHOW)を紹介する.事例分析手法SAFER は,トラブル事例の原因分析から対策立案,効果確認までのPDCA を体系的に手順化したもので,第一線職場が自ら活用し,効果的な再発防止を狙った手法である.また,技術継承支援ツールK─SHOW は,動画を中心として,現場の操作や作業を効果的に表現・伝達し,技術・技能継承や教育訓練を支援できるツールである.
著者
菱山 正樹
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.441-444, 2008-12-15

<p>いつ,どこで起こるかわからないのが災害です.いざという時,あわてないように,しっかりと防火防災についての知識と技術を身につけておくことが必要です.また,災害に強い街づくりのためには,住民一人ひとりの防火防災意識の高揚と防災行動力の向上が不可欠です. 防災館は,災害時における行動を楽しみながら,効果的に学んでいただくことを目的に設置された防災体験学習施設です.</p>
著者
山隈 瑞樹 荒井 充 畑中 修二 細谷 文夫 飯田 光明 小勝 一弘
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.165-173, 2005-06-15 (Released:2016-12-30)
参考文献数
13

煙火薬製造における静電気危険性を把握するために,主要な工程を対象に帯電量の測定等を行った.その結果,ふるい分け作業において原料粉体が強く帯電することが判明した.硫黄の帯電量は際だって大きく,過塩素酸カリウムおよびアルミニウムはほぼ同等の帯電量であった.作業者が帯電防止をしていない場合には,2 kg のアルミニウム粉体のふるい分け作業によって最大15 kV に帯電した.小分け作業においては,アルミニウムをポリエチレン製スコップで取り扱った際に大きく帯電した.帯電した煙火粉体を絶縁性容器に入れた場合には,接地導体を接近させると粉体表面との間で着火性のある静電スパークが観測された.通常の作業条件においては,3 ~10 kg 程度の雷薬をふるい分けて絶縁性容器に入れると,これに着火可能な放電が発生すると見込まれた.
著者
古積 博・岩田 雄策 山﨑 ゆきみ 寺園 淳
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.113-120, 2013-04-15 (Released:2016-07-30)
参考文献数
7

ここ数年,金属スクラップの火災が輸送中(船舶,陸上),港湾施設で頻発している.そこで,最近の火災事例を現地調査し,また,問題点,火災原因を明らかにするため,各種危険性評価実験を行った.金属スクラップ自体は容易に火災になることはないが,火災となった場合,高温となり,消防隊が接近しにくいこと,消火までに長時間を要することも多く,海上交通の安全や環境への影響等が懸念されている.ここでは,著者らが現地調査を行ったいくつかの事例を紹介するとともに,金属スクラップ火災の現状と消火活動上の問題点について実験的に検討した.その結果,電池類の短絡,トナー粉の摩擦等による発火の可能性があることがわかった.
著者
松山 久義
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.220-226, 2000-08-15
参考文献数
4

<p><tt><b>1986年度に発足した認定保安検査実施者の制度が,直接的に設備管理を利益に結びつけたために,化学・石油精製プラントの設備管理の質は近年飛躍的に向上している.しかし,一方では,競争の劇化に伴い,保全費の削減,オペレータ数の削減,保全部門の分社化などの逆風が吹き荒れている.したがって,従来のように,設計,製作,施工の不具合を設備管理に背負わせ,設備の不具合をオペレータに背負わせてプラントの安全を確保するという方法はとれなくなってきた。このような状況に適応するた</b></tt><tt><b>めに,設備管理と異常時対応システムを見直すことが本稿の目的である. </b></tt></p>
著者
萱沢文男糸井素一
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.138-144, 1978-06-15 (Released:2018-04-30)
著者
和田有司阿部祥子
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.63-67, 2012-02-15 (Released:2016-08-31)
著者
橋本 邦衛
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.306-314, 1979-12-15 (Released:2018-03-31)

安全人間工学とは何かについて日本人間工学会・専門部会の考え方を述べ,その主対象とする自動化システムがオペレータに与えるプラス面とマイナス面を挙げて,人間因子にかかわる安全問題の大部分はこのマイナス要因に基づくと指摘した.また人的エラーや操作ミスは人間特性の弱点や限界から生起するが,それを事故につなげるには内的な主体的条件(生理的には大脳の活動フェーズ)と外的な背後要因(四つのM)との偶発的な結合が必要であり,両者の連繋を断つ方向で安全工学と人間工学は提携したい と提言した.
著者
上田 三夫・矢代 晴実
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.99-105, 1996-02-15 (Released:2017-06-30)

阪神・淡路大震災をきっかけに「危機管理」という言葉が注目を集めている.阪神・淡路大震災における被災企業の危機管理の死角にっいて明らかにし,現在の危機管理の問題点を示した.そして企業が危機管理を考える場合の企業の行動を,緊急事態への準備,緊急事態発生直後の対応,業務の復旧のステップに分けて,それぞれのステップにおける項目を整理し,問題点を明確に示した.これらを基に,企業における危機管理の考え方の一例を示した.
著者
田中 龍郎
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.428-435, 2008-12-15 (Released:2016-10-31)

航空会社にとって「安全」はまさに経営の基盤である.安全性を維持向上させていくためには,運航安全のリスクマネジメントや内部安全監査など仕組みを構築することと同時に,社員一人ひとりが決して事故は起こさないという強い安全への意識を持って業務に当たることが必要である. ANA グループ安全教育センターは社員の教育・啓発を目的として,過去に起きた事故を風化させないという意思とともにヒューマンファクターに関する基礎的教育の要素を付加した施設である.このセンターではパイロットや整備士など高度な専門性を必要とする職種に対するプロフェッショナルな教育とは別に,ANA グループ全社員を対象とした教育・啓発を実施している.本稿ではセンターのコンセプトと教育内容を紹介するとともに,企業の安全文化・風土の醸成について考える.
著者
長尾 隆司
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.183-190, 2004-06-15 (Released:2017-01-31)
参考文献数
26

地球の長い進化の歴史の中で,厳しい環境に適応してきたものが現在まで生き残っており,その数は200 万種を超えるといわれている.その中のたった一つの種であるわれわれ人間も,かつては厳しい自然と対峙することによって自らを環境に適応させる能力を身につけてきた.しかし現在,われわれはその適応能力をほとんど使うことなく,技術によって厳しい自然から隔絶した快適な人工環境を作るという生き方を選んでいる.一方,昆虫は地球上のさまざまな環境の変化にそれぞれ巧みに適応した結果,100 万種以上もの種類に分かれて進化の一方の頂点に立っている.3 億5 千万年もの昔から厳しい自然環境の中を生き抜いてきたコオロギの生き方を通して,身の丈をはるかに超えてしまった私たち人間の生き残り戦略について考えてみたい.
著者
三角 育生
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.500-505, 2015-12-15 (Released:2016-07-01)

2015 年9 月4 日,サイバーセキュリティ基本法に基づく初めての基本的な計画であるサイバーセキュリティ戦略が閣議決定された.この戦略は,「自由,公正かつ安全なサイバー空間を創出・発展させ,もって『経済社会の活力の向上及び持続的発展』『国民が安全で安心して暮らせる社会の実現』,『国際社会の平和・安定及び我が国の安全保障』に寄与することを目的とするものである.本稿では,同戦略の概要と,その背景となる主要なコンセプト及びいくつかの同戦略に基づく施策の例について概説をする.