著者
小嶋 一樹 松本 邦彦 澤木 昌典
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.1313-1319, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
11

近年、地上設置型太陽光パネルの設置行為を条例に明文化し立地や意匠形態の適正化を図る自治体が増えている。本研究ではこれら116の条例を対象に、立地規制および景観保全への有効性を明らかにすることを目的に当該自治体へのアンケート調査を実施した。その結果、土地用途や都市計画法上の区分に関係なく多くの自治体が「眺望景観への影響」、「立地場所」を地上設置型太陽光パネル設置の課題点として挙げた。条例の運用効果では、60.7%の自治体が立地状況の把握が可能になった点を挙げたが、立地規制・誘導は24.6%と比較的低い。また、景観保全への効果は、設備の規模が大きいほど効果の認識は薄れる傾向にある。修景策のうち、隣地や道路からのセットバック距離やフェンスの種類・色彩、植栽といった付加的な修景策の順守度合と景観保全効果への評価が高い自治体の多くは、行政の内部資料としての指導手引きや専門家との協議制度を保有していた。そのため、景観保全には行政による景観の目標像や修景策の提示、専門家の派遣による技術的支援が有効であると考えられる。立地規制については、上位法の整備を望む回答が40.5%の自治体から聞かれ、上位法の整備の検討も必要と考えられる。
著者
松本 邦彦
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

今期は朝鮮学校と外国人教育をめぐる基礎的な資料の収集とともに、戦前期の植民地統治の一翼を担い戦後も言論界で活躍した人物でありながら、あまり注目をあびてこなかった鎌田澤一郎を中心に資料収集を進めた。まだ概略にとどまるが、鎌田の生涯と業績について以下にまとめておく。鎌田は1894年(明治27年)生まれ、学校教育は高等小学校までで、1979年に没するまで、公職や研究職、教育職には就かなかった経営者、ジャーナリストである。郷土徳島で文化活動を始め、兵役後に経済界に進出、さらに上京して出版業に進む。文化人や経済人との交友を深める一方で、鶴見祐輔、後藤新平、また鐘紡経営者・武藤山治の政界浄化運動を応援。鶴見を介して陸軍大臣時代の宇垣一成の側近となり、1931年の宇垣の朝鮮総督赴任とともに朝鮮に渡る。総督顧問をしつつ独自の研究所を設立し、講演や著作にて宇垣の「南棉北羊」政策を支持、宣伝をおこなう。1936年に宇垣が総督を辞したのちも朝鮮にとどまり、総督府支配の一翼を担ったが、南次郎総督らの創氏改名、内鮮一体政策を批判したことがあり、後年の鎌田は、これもあって戦後も朝鮮人からの感謝ありと誇っていた。敗戦後に鎌田はほぼ無一文で引揚げたが、文筆で宇垣の政界進出を支持する一方で朝鮮戦争を機に在日朝鮮人問題や日韓問題で精力的に発言し、李承晩の反日政策を批判、そしてその後の朴正煕の維新革命やセマウル運動を支持した。戦後の鎌田の主張が在日朝鮮人政策に与えた影響はまだ判然としないが、朝鮮支配が「宥和と培養」であったという主張(1950年『朝鮮新話』など)が、日韓交渉を決裂させた1953年の久保田発言に影響していた可能性が判明し、彼の戦後日韓政策への影響力は意外に大きい可能性も出てきている。
著者
明見 駿 松本 邦彦 澤木 昌典
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.436-443, 2023-12-11 (Released:2023-12-11)
参考文献数
28

本研究は、広域的な視点からの効率的な図書館配置に向けた条件を明らかにすることを目的とした。この施設配置分析では、公平に提供されるべき図書館サービスの評価指標値を設定した。さらに、複数の市町が連携して策定している立地適正化計画と、近隣市町の図書館へのアクセス利便性を考慮して4つの施設配置シナリオを作成した。その結果、効率的な図書館配置を実現するためには、都市機能誘区域への図書館移転が有効であることが明らかになった。そのため、市町村は、公共交通機関へのアクセスが便利な都市機能誘導区域内に図書館を移転した場合、他の市町村の図書館へのアクセシビリティが向上することを考慮した図書館配置計画を策定することが求められる。
著者
中江 拓二郎 松本 邦彦 澤木 昌典
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.65-68, 2018 (Released:2018-07-25)
参考文献数
6

近年、各地で路上での喫煙を禁止する取り組みが行われており、路上喫煙禁止地区を指定する自治体が増えている。しかしながら路上喫煙禁止地区内での路上喫煙者は依然として散見される。本研究では路上喫煙禁止地区内の屋外空間を対象に、喫煙者の発生・滞留状況を把握し、喫煙者が滞留する空間の特徴を明らかにすることを目的としている。神戸市三宮・元町地区を対象に行った観察調査から、26か所の喫煙者の滞留空間を確認し、その空間の特徴を分析した。その結果、路上喫煙を禁止する条例の効力が及ばない民有地に多くの喫煙者が滞留すること、裏通りにおいて形成された喫煙空間に喫煙者数が多いこと、また人目につかない空間、他者からの視線を遮ることができる自動販売機や電柱等の構造物がある空間を選好されている傾向が把握できた。
著者
山石 季沙 松本 邦彦 澤木 昌典
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.121-124, 2022 (Released:2022-07-25)
参考文献数
4

本研究では、歴史的町並みを有する観光地において、域外資本店舗が画一的な印象を与えるファサード構成要素の状 態を明らかにすることを目的とした。評価構造を把握するため、評価グリッド法を用いた印象評価実験を行った。実験の結果、被験者は観光地景観に「特別感」と「安心感」が感じられたときに景観を「好ましい」と評価することが明らかになった。域外資本店舗による、地区のイメージと合致しない商品の取扱、写真やキャラクターを使用した過剰に内容を演出した広告とその過剰な掲示が、「宣伝が誇大だ」「工夫が感じられない」「安っぽい」と感じられ、これらの評価項目が「特別感」に反する「どこにでもある」という印象形成に寄与していることが明らかになった。
著者
近藤 紀章 松本 邦彦 石原 凌河 笹尾 和宏 竹岡 寛文 中野 優
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.448-455, 2022-03-03 (Released:2022-06-08)
参考文献数
95

本論では、文献から「散歩」に関する研究の拡がりを明らかにするために、都市空間や都市デザインとの関係性の観点から95編の文献を整理した。散歩の定義や目的として、実社会の要請に応えるために「都市活動」が定着した時期が転換期といえる。また、研究の拡がりとしては、人を対象とした研究は蓄積されているものの、空間や文献を対象とした研究、時系列比較や国際比較の研究の蓄積が少ない。目的を持って歩くことが実際の都市空間に適用されることで、「いかに人を(より)歩かせるか」という計画の視点が組み込まれている。しかし、「人はなぜ無目的に歩くのか」という原論が求められた初期の方が、自由で大胆な発想が、散見された傾向がある。
著者
中江 拓二郎 松本 邦彦 澤木 昌典
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.65-68, 2018

近年、各地で路上での喫煙を禁止する取り組みが行われており、路上喫煙禁止地区を指定する自治体が増えている。しかしながら路上喫煙禁止地区内での路上喫煙者は依然として散見される。本研究では路上喫煙禁止地区内の屋外空間を対象に、喫煙者の発生・滞留状況を把握し、喫煙者が滞留する空間の特徴を明らかにすることを目的としている。神戸市三宮・元町地区を対象に行った観察調査から、26か所の喫煙者の滞留空間を確認し、その空間の特徴を分析した。その結果、路上喫煙を禁止する条例の効力が及ばない民有地に多くの喫煙者が滞留すること、裏通りにおいて形成された喫煙空間に喫煙者数が多いこと、また人目につかない空間、他者からの視線を遮ることができる自動販売機や電柱等の構造物がある空間を選好されている傾向が把握できた。
著者
松本 邦彦
出版者
山形大学法学会
雑誌
山形大学法政論叢 = Yamagata University, the journal of law and politics
巻号頁・発行日
no.33, pp.35-73, 2005

はじめに 2004年4月にイラクでおきた国際協力活動家の高遠莱穂子氏と今井紀明氏、ジャーナリストの郡山総一郎氏ら日本人3人の「人質事件」では、被害者とその家族に対して一部の政治家とメディアから集中的に批判・非難がおこなわれた。これについては、「在外邦人保護」をめぐる法的側面から、日本社会論について、またその重要な舞台の一つとなったインターネットについて、など各方面から分析・考察がおこなわれている。この「イラク人質事件」においては「自己責任」論が脚光を浴びたが、国際協力活動にたずさわる当のNGOの側がこの事件をどう受け止めていたかに着目すると、そこには単純な責任の有無ではとらえきれない状況が見受けられるように思われる。本稿は、「イラク人質事件」をめぐる言説について、被害者たちがおこなおうとしていた活動の側面つまり「NGO」「ボランティア」「国際協力」等の側面から整理をおこなうものである。なお文中で引用・参照する文献については、単行本は著者名・発行年『書名の一部』、新聞・雑誌記事は筆者名・掲載誌の発行年「記事名の一部」のような略号で示し、末尾に文献リストを付した。
著者
三木 怜 松本 邦彦 澤木 昌典
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.829-835, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
10

本研究は、商店街に立地し、地域との関わりを持つ小規模宿泊施設(以下、対象施設)に着目し、これらの交流機能や周辺店舗に依存する性質等が、商店街の活性化に寄与すると仮定を立てた。対象施設へのアンケート調査や、対象施設・商店街組織へのヒアリング調査から、対象施設が商店街へどのような影響を与えているのかを明らかにすることを目的とする。アンケート調査より対象施設の運営主体は、商店街への帰属意識や商店街関係者との協力の程度が、開業時と比較して強くなっている傾向があることが明らかになった。また対象施設は4類型に分類でき、主要な開業目的が商店街や地域の活性化である商店街主導型3件と地域活性化主体型5件、地域活性化を目的としない多機能型5件と宿泊機能重視型10件であった。商店街主導型と地域活性化主体型では、宿泊者向けの商店街他店舗との交流を誘発するサービスを提供しているが、地域住民の商店街利用が増加するような影響はあまり確認できなかった。一方、多機能型は宿泊者以外の商店街利用が増加する効果もみられる等、結果的に商店街活性化に寄与していることが明らかになった。
著者
小暮 哲理 松本 邦彦 澤木 昌典
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.109-112, 2017 (Released:2017-07-30)
参考文献数
5

本研究は、市街地再開発事業によって建設されたビル(再開発ビル)の空き床解消に向けた施策である公共施設の導入の改善を目的としている。市街地再開発事業が完了した地区において、竣工後に公共施設が導入された再開発ビルを対象とした。自治体や管理会社へのヒアリング調査結果から、公共施設導入によって施設利用者の満足度の向上やビル来館者の増加などの効果が得られたことが分かった。一方で、公共施設が導入されたことによって他の空き床に新しいテナントが入居するなどの波及的な効果が得られた事例は少なく、それらの事例では自治体・管理会社・ビル内民間店舗等の協力があることが分かった。
著者
松本 邦彦
出版者
北東アジア学会
雑誌
北東アジア地域研究 (ISSN:1882692X)
巻号頁・発行日
no.18, pp.23-34, 2012

In recent Japan, "multicultural community building" has become an official ideology. For instance, the Ministry of Internal Affairs and Communications has created a promotion plan for multicultural community building and has been promoting such policy practices to all local government entities. On the other hand, starting from "Hate Korea Wave, A Comic (Manga Kenkanryu)," there are louder voices who insist on xenophobia against Korean living in Japan. This paper focuses on the recognition of the history of Japan's colonial occupation in which anti-Korean arguments are based in order to analyze Japanese policies on multicultural community building. The study has led to the following conclusion: In Japan, multicultural community building has been promoted by ignoring the issues of the recognition of history. As foreign workers increase in Japan, xenophobia such as the "Hate Korea" movement will be a threat to such multicultural community building policy practices. People who are attracted to the "Hate Korea Wave" support the concept of Japan's colonial occupation on the ground of a theory of self-responsibility.
著者
ファン ル 松本 邦彦 澤木 昌典
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.866-871, 2015

2008年5月に中華人民共和国四川省汶川県でマグニチュード8.0の四川地震が発生した。水磨鎮は震源地から5kmの距離に位置する甚大な被害を受けた被災地の一つである。地震の前は農業や工業が主な産業であったが、地震の後は町の持続的発展を目的とした観光開発による復興が計画され、2008年から2010年にかけて建物の再建、新たな商業街区の整備、被災者の移転・入居などの様々な事業が実施された。その結果、水磨鎮は人気の高い観光地となったが、2012年以降は観光業がやや不振に陥り、店舗の経営状況の悪化、新設住宅での居住環境上の問題などが見られる。 そのため本研究では、水磨鎮における震災復興の背景やプロセスを調べた上で、新規に観光を導入した地域復興の状況を把握する。その上で、店舗経営者及び住民の居住環境に対する満足度、観光開発に対する意見・評価を把握し、居住上・経営上の問題を明らかにすることを目的とする。そして、現存する問題の解決策を検討し、今後の観光産業の振興に基づく被災地復興計画に参考となる知見を得る。