著者
泉本 勝利
出版者
岡山大學農學部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.99, pp.85-95, 2010-02

食肉生産はコストと労力がかかり、比較的高価な食品素材である。食肉は栄養的価値のみならず嗜好的にも優れ、人気の高い食品素材である。明治時代以降、肉食禁止令が廃止され、政府も奨励した結果、消費量が増加した。近年、飽食、グルメ時代といわれる一方、自給率低下など日本の危うい食事情について危惧されている。食品の選択は栄養価などよりも、まず嗜好性、美味しさが最優先されていることからも、食品は量的確保のみならず品質の良いことが要求される。品質劣化で廃棄されれば負の生産になってしまう。食品は嗜好性、栄養分、安全性、経済性などが総合的に判断されて消費者に選択される。「これらのうち嗜好性が最も受諾性に影響する。」といわれるが、日本に限らず世界史は食糧難の歴史であり、つい最近まで供給側が経済的に有利であった。この状況では量が優先され、消費者は粗悪品でも甘受せざるを得なく、品質の向上について意識的に取り組まなくても済んでいた。近年、少なくとも先進国では食料の生産性、保存技術の飛躍的進展によって、量の確保は十分に行えるようになった。すると、需給関係は逆転し、経済的に消費側が有利になっており、際限なく品質への要求が高くなっている。本稿は食品とくに食肉の品質について述べる。本稿では食肉の品質について焦点をあて、まず、評価と管理について説明する。続いて、色調品質の特性解析と管理の自動化、テクスチャー品質のヒューマンインターフェース、安全性に関わる事項のヘムタンパク質による細胞DNA損傷の抑制、機能的品質に関わる亜硝酸を使わない発色およびACE(アンジオテンシン�T-変換酵素)阻害活性について述べる。
著者
後藤 丹十郎 石井 真由美 藤原 一毅
出版者
岡山大學農學部
巻号頁・発行日
no.100, pp.25-29, 2011 (Released:2012-12-03)

ブプレウルム(Bupleurum rotundifolium L.)は,種子のロットによって発芽や生育が異なることが生産上大きな問題となっている。本実験では種子のロット(No.021793,025090,026247,027668)および採種時期が生育,発芽および開花に及ぼす影響を調査した。ロットによって発芽率は異なった。発蕾および開花は025090で最も早く,026247で最も遅く,027668と021793はその中間だった。自家採種種子は採種時期により発芽が異なり,6月中旬から7月上旬の高温期に採種した種子は発芽率が著しく高かった。しかし,高温期採種種子は著しく開花が遅れ,節数が多く,切り花品質が低下したのに対し,低温期採種種子は開花が早く,切り花形質が優れる傾向があった。種子のロットによって生育や開花が異なった。親個体のロットによる違いがほとんど認められなかったので,採種種子の性質の違いは親個体のロットによる違いよりも採種時期の環境条件の方が大きく影響していると考えられた。
著者
松浦 健二
出版者
岡山大學農學部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.73-79, 2005-02

ヤマトシロアリの配偶システムと単為生殖に関する最新の研究結果をレビューした。まず、シロアリの生活史について述べ、特に群飛から異性探索、そしてコロニー創設に至るまでの行動特性に関する新たな知見について述べた。ヤマトシロアリの雌の有翅虫は、群飛後に雄と配偶できなかった場合、単独、または二雌の共同でコロニーを創設し、単為生殖により繁殖することが明らかになった。単為生殖で産まれた子は、わずかな卵期間の延長を除けば、有性生殖の子と同様に正常発育する。染色体観察およびマイクロサテライト遺伝子解析により、ヤマトシロアリの単為生殖では末端融合型のオートミクシスにより二倍体に核相回復することが示された。さらに、単為生殖の進化に必要な条件、単為生殖の伴う遺伝的・発生的制約に加え、生態学的制約について考察した。
著者
奥島 史朗
出版者
岡山大學農學部
巻号頁・発行日
no.62, pp.39-44, 1983 (Released:2011-03-05)
著者
西井 賢悟 小松 泰信 横溝 功
出版者
岡山大學農學部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.67-74, 2003-02
被引用文献数
1

1995年に岡山県南西部の総社市農協、真備町農協、山手村農協、清音村農協、そして吉備昭和農協の五農協の広域合併によって設立された吉備路農業協同組合(以下JAきびじと略す)管内のモモ共販を事例とし、次のような検討を行う。第一には、農協の広域合併にともない成立した産地の組織機構と各組織構成主体の概況・役割について明らかにする。第二には、当事例において合併後に行われた共販一元化の話し合いが決裂していることから、この状態を産地という組織がコンフリクト状態に陥ったと捉え、マーチ=サイモンの組織論、特に組織コンフリクト論を適用してその発生のメカニズムを明らかにする。そして第三には、共販一元化の話し合い決裂後に各出荷組合がとった行動をコンフリクトに対する適応行動と捉え、その行動の意味と産地における農協共販の展開方向について考察する。
著者
泉本 勝利
出版者
岡山大學農學部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.99, pp.85-95, 2010-02

食肉生産はコストと労力がかかり、比較的高価な食品素材である。食肉は栄養的価値のみならず嗜好的にも優れ、人気の高い食品素材である。明治時代以降、肉食禁止令が廃止され、政府も奨励した結果、消費量が増加した。近年、飽食、グルメ時代といわれる一方、自給率低下など日本の危うい食事情について危惧されている。食品の選択は栄養価などよりも、まず嗜好性、美味しさが最優先されていることからも、食品は量的確保のみならず品質の良いことが要求される。品質劣化で廃棄されれば負の生産になってしまう。食品は嗜好性、栄養分、安全性、経済性などが総合的に判断されて消費者に選択される。「これらのうち嗜好性が最も受諾性に影響する。」といわれるが、日本に限らず世界史は食糧難の歴史であり、つい最近まで供給側が経済的に有利であった。この状況では量が優先され、消費者は粗悪品でも甘受せざるを得なく、品質の向上について意識的に取り組まなくても済んでいた。近年、少なくとも先進国では食料の生産性、保存技術の飛躍的進展によって、量の確保は十分に行えるようになった。すると、需給関係は逆転し、経済的に消費側が有利になっており、際限なく品質への要求が高くなっている。本稿は食品とくに食肉の品質について述べる。本稿では食肉の品質について焦点をあて、まず、評価と管理について説明する。続いて、色調品質の特性解析と管理の自動化、テクスチャー品質のヒューマンインターフェース、安全性に関わる事項のヘムタンパク質による細胞DNA損傷の抑制、機能的品質に関わる亜硝酸を使わない発色およびACE(アンジオテンシン�T-変換酵素)阻害活性について述べる。
著者
岡本 五郎 後藤 新太郎
出版者
岡山大學農學部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.9-13, 2005-02

岡山県新庄村で栽培されているサルナシ果実の健康食品としての評価を行うために、同地区のサルナシ園で生産された3品種(光香、峰香、在来種)の果実、及び近隣の山地で収穫された野生サルナシ果実の成分分析を行った。参考として、岡山市内のマーケットで購入された輸入のキウイフルーツ(ヘイワード)、レモン(品種不明)、及び国産のリンゴ(ふじ)の成分も調査した。サルナシ栽培品種では、収穫適期でも硬熟状態のものと軟熟状態のものが混在し、さらに普通の果実の半分程度の小果実(すべて軟熟)も混在した。果汁のビタミンC含量は、峰香の硬熟果と光香の小果で220-260mg/100mLと非常に高い値を示した。市販のキウイフルーツのビタミンC含量は約100mg、レモンで50mg、リンゴは4mg/100mL程度であった。サルナシ果汁の全ポリフェノール含量とラジカル消去能はキウイフルーツと大差がなかったが、リンゴに比べれば有意に高かった。サルナシはキナ酸含量が最も高く、無機成分のN、Ca、Mg、Mn含量が高かったが、糖含量は低かった。本分析結果から、サルナシ果実はビタミンとポリフェノールが豊富で、現代人の食事で不足しがちなミネラルも多いことから、健康食品として評価されうる。