著者
中井 敏夫
出版者
日本化學雜誌
雑誌
日本化學會誌 (ISSN:03694208)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.126-132, 1939

試料岩石を溶液と爲してエマナチオンを抽出,其の放射能を測定し之よリラドンと平衡に在るラヂウムの量を求める.<br>試料を溶液とする方法として,先づ炭酸ナトリウムと熔融し融塊を水と鹽酸で抽出して後不熔の珪酸を弗化水素酸處理により除去し,更に殘滓に就て炭酸ナトリウム熔融を行ひ溶液とする炭酸ナトリウム熔融法と,先づ試料を硫酸,弗化水素酸にて處理して珪酸を除去せる後殘滓に就て炭酸ナトリウム熔融を行ひ溶液とする弗化水素酸處理法とに就て吟味を試みた.箱根火山熔岩13個,淺間火山熔岩7個に就ての測定の結果は弗化水素酸處理法による測定値は炭酸ナトリウム熔融法による測定値に比し常に小なる値が示された.一定既知量のラヂウムを含有するラヂウム溶液を用ひ,上記の試料溶液調製法を試みた結果,炭酸ナトリウム熔融法に於ては特にラヂウムの逸失は認められなかつたが,弗化水素酸處理法によるときは處理の途中に於て可成りの量のラヂウムが見掛け上失はれることが實證せられた.<br>ラヂウム含有10<sup>-13</sup>g Ra/g,及び10<sup>-12</sup>g Ra/gの岩石試料のラヂウム定量を行ふに當り,試料約20gをとり炭酸ナトリウム熔融法により溶液となし,之に就て測定を行ふときは測定誤差前者の場合に於て2&times;10<sup>-14</sup>g Ra/g,後者の場合に於て1&times;10<sup>-14</sup>g Ra/g以内にて測定が可能である.
著者
藤田 安二
出版者
日本化學雜誌
雑誌
日本化學會誌 (ISSN:03694208)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1213-1215, 1940

フィリッピン,ダバオ産サルピシア精油は<i>d</i>-Limonene30%, <i>d</i>-Perillaaldehyde大約65%よりなる.この精油の原植名は未だ不明である.なぼPerillaaldehydeの誘導體中<i>p</i>-Nitropheny1hydrazone, 2-4-Dinitrophenylhydrazone, &beta;-Naphthochinchoninieacid等の新誘體が作られた.
著者
小杉 正紀 右田 俊彦 永井 洋一郎
出版者
日本化學雜誌
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.92, no.6, pp.477-490, 1971
被引用文献数
3

脂肪族化合物の塩素分子と次亜塩素酸t-ブチルによる遊離基的塩素化に対する構造と反応性の関係を系統的に研究する目的で, 2, 2-ジクロルプロパンのメチル水素1個の反応性を基準とする相対的反応性を求めた。<br> CH<sub>3</sub>-X型化合物についてHammett-Taftの取り扱いを行なった結果,相対的反応性の対数とTaftの極性置換基定数&sigma;<sup>*</sup>値との間には直線関係が存在することが明らかになり,塩素原子に対する水素引き抜き反応においては&rho;<sup>*</sup>値は-0.95, t-ブトキシ遊離基に対する水素引き抜き反応においては&rho;<sup>*</sup>値, -0.69を得た。塩素原子による水素引き抜きに関してはクロルアルカン類とそのケイ素類似体の反応性の比較について検討を加えた。ケイ素化合物については&sigma;<sup>*</sup>値を用いて反応性を体系化することはできないが, NMR<sup>13</sup>C-Hカップリング定数を用いると相当する炭素化合物と定量的に反応性を比較検討することができた。<br> また脂肪族化合物を〓,型化合物と考え,置換基(R, R', R'')の極性効果に加成性があるとして取り扱うことにより反応性におよぼす影響を感応効果,共役効果,立体効果に分離できることを示した。
著者
野口 喜三雄
出版者
日本化學雜誌
雑誌
日本化學會誌 (ISSN:03694208)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.7-17, 1939

(1) 淺間火山附近諸種湧水,井戸水,河水等33種のラドン含有量を測定したるに河水は此測定法の精度に於ては零であつた.湧水,井戸水等に於ては測定値の最大は小瀬温泉1.25マツヘ,最小は片山要藏氏井戸水,つるや旅館井戸水等の0.05マツヘである.著者は之等33種の測定結果よりラドン分布を圖示し,且ラドン含有量と水温, <i>p</i>H,溶在瓦斯量・重水濃度,蒸發殘滓, Fe, Ca, Cl, SiO<sub>3</sub>等との間の關係の有無を檢討し,其結果よリラドンの根源に就て論述した.<br>(2) 著者は地獄谷噴氣孔溜水及び地獄谷湧水に就て稍長期のラドン含量連續測定を行つた結果,地獄谷噴氣孔溜水に就てはラドン含有量は淺間火山の活動の旺盛である時は著しく増減する.ラドン含有量と水温との間には統計的に觀察する時は一つの曲線關係が成立し,水温が低下するほどラドン含有量は増加する傾向を示した.又ラドン含有量と湧水量との間には統計的に觀察する時は直線關係がほぼ成立し,湧水量増加するほどラドン含有量増大する傾向を示した.尚測定値の最大は0.31マツへ,最小は0.07マツへである.次に地獄谷湧水に就てはラドン含有量と淺間火山の活動との間には關係なく,又ラドン含有量と水温,湧水量等との間にも關係は見出せない.此湧水のラドン測定値の最大は0.23マツへ,最小は0.05マツへである.<br>(3) 菱野鑛泉(花崗宇三郎),地獄谷蛇堀川源水,蛇堀川端湧出水(橋の測I)等に就ては其ラドン含有量を昭和11年及び昭和12年の二囘測定したが大なる變化を示さない.
著者
小竹 宏志
出版者
日本化學雜誌
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.707-709, 1958
被引用文献数
1

伊豆縮砂より得られるアルピノンに対して木村は (I) をあたえているが,これは一般のフラボノイドにその例をみない特異な位置にメチル基をもっている。もしこの構造が正しいとするとフラボン類の生合成機構などを再検討する必要が生じてくることになる。したがって (I) を合成してアルピノンの構造を確定することはフラボノイドの化学の上から大変重要であると考えられる。著者は (II) より (I) の物質を合成したが, このものが天然のアルピノンと一致しないことを見出した。そこでアルピノンの構造を再検討した結果これは3, 5-ジオキシ-7-メトキシフラバノンであるとの結論に到達し, このものを合成して確認した。
著者
小竹 宏志
出版者
日本化學雜誌
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.703-706, 1958

伊豆縮砂より得られるアルピノンに対して木村は (I) をあたえているが,これは一般のフラボノイドにその例をみない特異な位置にメチル基をもっている。もしこの構造が正しいとするとフラボン類の生合成機構などを再検討する必要が生じてくることになる。したがって (I) を合成してアルピノンの構造を確定することはフラボノイドの化学の上から大変重要であると考えられる。著者は (II) より (I) の物質を合成したが, このものが天然のアルピノンと一致しないことを見出した。そこでアルピノンの構造を再検討した結果これは3, 5-ジオキシ-7-メトキシフラバノンであるとの結論に到達し, このものを合成して確認した。
著者
北川 豊吉
出版者
日本化學雜誌
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.83-85, 1960

錯形成剤してトリリン酸ナトリウム (TPA) を用い, 過マンガン酸カリウムでマンガン酸化滴定する方法ついて検討した。終点指示には白金回転電極を用いる定電位電流滴定法を用いた。+0.35V(vs.SCE), +0.75V(vs.SCE) を設定電位とし, TPA 2g および Triton X-100 数的を加え, pH 6.5-7.0 で滴定を行った結果, 1.6-10mg のマンガンを相対誤差 0.8% 以内で定量できた。本法により数mgのマンガンを迅速に, かつ精度よく滴定することができる。なおコバルト, ニッケル, 鉄, クロムイオンの影響についても検討した。
著者
古賀 昭人 川上 弘泰 野崎 秀俊
出版者
日本化學雜誌
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1280-1284, 1958

酸性硫化水素泉と含食塩重曹泉とについて40℃, 60℃のおのおのに老化現象として認められるもの-pH, 含有ガス, 濁度, 酸化還元電位, 過酸化水素分解速度定数, 吸収スペクトルなどについて同時測定を行い, つぎの結果を得た。<BR>いずれも含有ガスの逸脱によって幾多の老化現象が起り, 高温になるほどはやくなる。また泉質により異なり酸化還元電位は酸性硫化水素泉は低く時間による変動も大きく強力なる還元力泉であるに反し, 含食塩重曹泉は変動はずっと小さい。また過酸化水素分解速度定数の泉温による違い, 泉質による違いや人工泉との差異もはっきり形が現われており, 種々の変化はおのおの関連性があって時間的に一致している。硫化水素泉の大きな特長は吸収スペクトルの吸収端が一方に動かず反転することである。つまり一度,短波長側にうつりつぎに反転して長波長側に吸収が移動する。含食塩重曹泉はこれに反し長波長側に移行するのみであった。これらの点につき種々考察を行った。