著者
和田 正人
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.20-24, 1999-12-20

本研究は、笑い中心型暴力番組接触の影響は自分より他人が大きいとする第三者効果を実証的に明らかにすることであった。そこで、次の仮説が設定された。仮説1:笑い中心型暴力番組の影響は自分よりも他人の方が大きいと認知する。仮説2:笑い中心型暴力番組の第三者効果において、他人の影響は、接触と関連する。この仮説を検証するために、大学1年生423名を調査対象として、笑い中心型暴力番組11番組について、自分自身と他人(一般人)の影響と接触の推測が測定された。被調査者は自分自身への影響の大きさで3群に分けられた。分析結果より、影響小群のみが仮説1、2を支持した。影響小群では、自分自身の番組接触が他人よりも大きいにもかかわらず、自分自身への影響は他人よりも小さいことが明らかにされた。
著者
後藤 康志
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.27-42, 1996

本研究では、ハイパーメディアによる情報検索活動と直接体験を組み合わせたオープン性の高い単元を構成し、児童の学習の支援を目指した。単元の学習を分析した結果、学習は情報検索の活動から情報発見と新たな活動へ、そして見学を含む他のメディアによる情報活動に発展していき、その結果(1)伝統工業に携わる人々の苦労に関する知識の構成と、(2)知識の実感とそれに基づく知識の再構成という、クローズドな学習ではできなかった学習の支援が可能になったことが明らかになった。
著者
苅宿 俊文 朝川 哲司 石井 理恵 中尾根 美沙子
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-11, 2012-03-31

本研究では,コミュニケーション能力の育成を目的とした,東京都内の私立中学校にて実施されたコミュニケーション・デザイン教育における具体的な学習成果を視覚化することを試みた。学習成果の視覚化に際しては,参加生徒による内省的な振り返りを目的として書き記した外在化カードのデータを用い,同データの分析法として,テキスト・マイニングによる形態素解析と質的研究法による概念形成を組み合わせた方法を導入した。同分析法を通じて18の概念を生成し,改めてアンケート調査を用いて,これらの概念のクラス内での共有の度合いを確認した。また,次年度の同活動にて継続的な妥当性の検証を行った。これらの検証を通じて,18の概念の全てが,同教育活動向けに開発した学習プログラムの有効性を認め得る学習成果として視覚化することができた。
著者
岩井 俊祐 川本 佳代 橘 啓八郎
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.13-25, 2001-03-30

ハイパーメディア学習は、構成主義的学習観を実現する学習の1つとして期待されている。さらに、コンピュータネットワークの発達に伴い、共同学習への応用が可能となった。ハイパーメディアを用いた共同学習では、学習者が、自身の自主性、興味・関心、発想などに応じた学習を行い、異なる思考や経験を交流し、たがいに気付かなかったことを発見しながら創造的学習を行うことが期待できる。本研究では、その創造的学習への可能性を示し、さらに、学習者特性として社交性を考慮した分析を行った。その結果、社交性の高い学習者には「特恵モデル」、低い学習者には「補償モデル」として創造的学習を促進することが分かった。このことから、ハイパーメディアを用いた共同学習は、創造的学習を促進する動機付けとなり、学習者が主体的に考え、自分を表現し、自立的で積極的な姿勢を身に付けるのに効果的な学習であると考えられる。
著者
保崎 則雄 鈴木 広子
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.25-37, 1997-03-31

字幕つき映像においては、画面上で視るものが、映像情報と文字情報の2種類存在する。その情報内容は、音声と映像の提示技術と相まって、重複したり、異なったりという様相を絶え間なく繰り返しつつ進行するため、初級者にとっては、認知負荷が増し、混乱を招き、理解の干渉になっていることが確認されている。一方、英語上級者にとっては、字幕は新たな効果的情報源となりうると示唆される。ところが、その上級者の視聴過程に踏み込んで分析した研究は、ほとんどない。本研究では、現在までに収集した英語上級者の字幕つき音声映像の特徴的な視聴モデルを紹介する。映像と字幕間の三角形の情報処理パターン、ネイティブスピーカーの多角形視聴パターン、安定した字幕読みのパターン、上級者と初級者の視点注視時間のパターンの違いなどを具体的な視線運動の分析を中心として示し、上級者の視聴モデルについて実例を交え考察する。
著者
西貝 雅人
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.49-56, 0000

映像制作には守られるべき文法ともいえる幾つかの原則がある。"イマージナリー・ライン"(被写体となる複数の人物の間を結ぶ仮想上の線)もその一つで,イマージナリー・ラインを超えて撮影したカットをそのまま編集して繋げると,視聴者が正確に人物の位置関係を把握できなくなる。そこで講師はシナリオA,Bを用意し,高校生の作業班に撮影課題として与えた。2日に渡って行なったワークショップのうち,初日は何も解説せずにシナリオAを撮影・編集させた。2日目にイマージナリー・ラインに気づかせる誘導を含む講義・解説を挟んで,シナリオBの撮影・編集をさせた。この結果,シナリオAを制作した全てのグループがイマージナリー・ライン越しのカットを撮影したが,指導後の制作でイマージナリー・ライン越しのカットを排除した作品制作が出来るようになった。