著者
浅井 和行 久保田 賢一 黒上 晴夫
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.35-49, 2009-03-31

メディア・リテラシー教育の重要性は,近年幅広く認識されつつあるが,実践の広がりや定着の度合いは,十分であるとはいえない。メディア・リテラシー教育を公教育の中にカリキュラムとして正式に位置づけ,実践を行っているイギリスとカナダ,そしてオーストラリアのメディア・リテラシー教育カリキュラムを比較し,日本のメディア・リテラシー教育を改善するための留意点を検討した。その結果,日本におけるメディア・リテラシー教育のカリキュラムは,(1)長期的なもの(2)批判的思考について系統的に教えるもの,(3)教科横断的なもの,という3つの留意点をもとに考案すべきものであることが分かった。また,実際の教育を実践していくにあたっては,教員養成や教員研修においてメディア・リテラシー教育をとりあげていくことも大切であることが確認できた。
著者
木村 明憲 黒上 晴夫
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S46017, (Released:2022-08-12)
参考文献数
4

本研究では,児童が自己調整スキルを発揮しながら主体的に学びを進めることができる方策として,学習計画表であるレギュレイトフォームを開発した.レギュレイトフォームには,「本時の目標」と「振り返り」を記述する枠を設けている.これらの枠に記述された事柄を自己調整スキルの下位項目である「適用スキル」「目標設定スキル」「自己評価スキル」「帰属スキル」と対応付けて分析したところ,本フォームが児童の自己調整スキルの育成を促すことに一定の効果が確認されたとともに,本フォームを活用する際の指導・支援のあり方が明らかになった.
著者
木村 明憲 黒上 晴夫
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.133-150, 2021 (Released:2021-05-08)
参考文献数
21

本研究では,小学校社会科の6年生の歴史学習で,自己調整的な学習を行いながら,歴史に関わる知識の習得を保証し,情報活用能力を身につけられる学習過程モデルを開発した。そして,その効果を検証するために,①単元の最後に実施した単元テストについての調査,②単元の導入時に指導者が示した重要語句(小学校学習指導要領解説社会科編の内容の取り扱いで示されている指導事項及び,第一筆者がその時代の歴史を学習する上で必要であると判断した語句)が,単元の終盤に作成する連続資料(児童が収集した情報を整理,分析し,単元の最後に表現,創造した文書資料を連続資料と示す)で説明された割合についての調査,③児童が作成した連続資料のルーブリック評価による調査,の3つの調査から分析を試みた。その結果,本学習過程モデルで授業実践を行うことで,知識の習得については問題がないこと,情報活用能力の収集力,整理力,分析力,表現力,創造力が身につくことが示唆された。
著者
黒上 晴夫
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.521-526, 2017-10-01 (Released:2017-10-01)

シンキングツールの活用が広まっている。これはアイデアを可視化して考えを生み出したり,共有して協働的に考えたりすることを助けるツールである。考えるためには,一定の制限が有効にはたらく。シンキングツール上の図式や視点がその制限となる。活用にあたっては,考えを生み出す手順として思考スキルをイメージすることが重要である。思考スキルは,小学校低学年から高等学校まで徐々に高度化しながら活用する。思考スキルとシンキングツールを対応させることによって,その手順が可視化できる。しかし,この対応は一様ではなく,シンキングツールを使う場面やトピックの対象となる事項の数・質,活用の目的によって変わる。
著者
三宅 貴久子 久保田 賢一 黒上 晴夫 岸 磨貴子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Suppl., pp.221-224, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
8

本研究の目的は,児童が持つルーブリックに対するイメージを分析することを通して,教師と児童が共同的にルーブリックを作成する意味について明らかにすることである.ルーブリックは,教師が児童のパフォーマンスを質的に評価するための道具として活用されることが多い.同時に,授業において,教師と児童が共同的に学習目標を設定するための道具としても利用されている.本研究では,教師と児童が共同的にルーブリックを作成することの意義を,児童の観点から明らかにする.そのため,A 小学校の4年生64名に対してイメージマップを活用した調査を行った.分析の結果,児童はルーブリックを共同的に作成するプロセスを通して,学習目標を意識し,主体的に学習活動に取り組んでいることがわかった.さらに,学習目標を自分で設定することの重要性とその方法についても学んでいた.一方で,一部の児童の発言を中心に目標設定されてしまうことへの抵抗感,目標設定に授業の多くの時間を費やす必要性への懐疑,活動目標を設定することへ参画することの難しさがあることがわかった.
著者
泰山 裕 小島 亜華里 黒上 晴夫
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.375-386, 2014

近年,小学校の教育課程において,体系的な情報教育が求められている.しかし,小学校の教育課程には情報教育を扱う専門教科は設定されておらず,情報教育に関わる目標は各教科の中に分散されており、明確に記述されていない.本研究では,体系的な情報教育のために教科横断的な思考スキルの指導が重要であると考える.先行研究において教科別に抽出された思考スキルを,個別に検討することで教科共通の19種類の思考スキルを得た.また,思考スキル同士の関係について,質的解釈と量的検討の2つの視点から分析を行うことで整理し,思考スキルの関係図としてまとめた.
著者
木村 明憲 黒上 晴夫
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.46005, (Released:2022-06-30)
参考文献数
8

本研究では,はじめに児童が自己調整スキルを発揮し,創造物を主体的に評価・分析,改善するための学習の流れを考案した(Self-reflection モデル).そして,考案したモデルの学習プロセスに沿って授業実践を行ったことが,自己調整スキルを発揮して学ぶことに対して効果的であったかについて検証した.本モデルの効果を検証するにあたり,フィードバック結果から得た改善案と完成した創造物の修正箇所(以下修正事項)の関連を,本モデルの学習プロセスと対応づけて分析した.その結果,児童が自己調整スキルを発揮しながら創造物を評価・分析し,改善する上で効果的な学習モデルを開発するに至った.
著者
稲垣 忠 内垣戸 貴之 黒上 晴夫
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.103-111, 2006-09-20 (Released:2016-08-03)
参考文献数
22
被引用文献数
3

遠隔地の学校間で電子メール,電子掲示板,テレビ会議システムなどを用いて交流する学校間交流学習は,インターネットを用いた授業実践として広く取り組まれている.筆者らは,学校間交流学習における,学習者の活動プロセスと教師の学習環境設計に着目した授業設計モデルの開発を試みた.モデル開発の方法として,1)先行研究および構成主義の学習観に基づくモデル構築,2)実践経験者への調査によるモデルの精緻化,を行った.その結果,学習の活動プロセスを明確にする「枠組みモデル」と,設計の順序を示す「手順モデル」から構成した授業設計モデルを,学習論と実践経験者の知見を反映したものとして開発することができた.
著者
長尾 尚 小林 直行 市川 隆司 黒上 晴夫 稲垣 忠
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.125-128, 2004-03-05
被引用文献数
1

本論文の目的は,「匿名性」と「即時一覧性」機能のある電子掲示板システムを活かした授業方法を開発し評価することにある.高校の学級という比較的規模の小さな日常空間においても「授業中」には,自由闊達に発言できない状況が生じる.その克服には,複数の相手に対面した状態で自分の意見を表現しやすい環境の支援が必要となる.そこで上述した2つの機能を備えた電子掲示板を開発しそれを組み込んで授業設計をすることで議論を活発にし新たな意見を導けないかと考えた.2回の授業実践の結果,匿名の電子掲示板上では,匿名性によって少数意見を導き出しやすく,即時一覧性により議論が活性化されるという2つの効果が明らかになった.
著者
水越 敏行 木原 俊行 黒上 晴夫 生田 孝至 竹内 理 久保田 賢一 黒田 卓 田中 博之
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

4年間で主として以下のような研究に取り組んできた。1.国際協力ボランティアとの交流を通した高校の総合的学習の研究2.中学校および高校における情報教育の開発研究3.総合的学習と情報教育を中心とした学校の診断的研究4.環境番組の連続視聴が視聴者に及ぼす影響についての研究5.異文化間理解教育における外国制作による日本用地理番組の効果に関する実証研究6.学校放送番組とWebを連携させた交流学習システムの開発と評価7.動画クリップ活用に関する実証的研究8.大学における遠隔双方向学習の事例分析と評価9.諸外国におけるICT教育の事例の動向把握10.メディアに対する子どもの態度に関する実証的研究(学校教育におけるインターネット利用の有無、諸外国間の比較に注目して)11.携帯電話などの新しいメディアについての調査研究12.高等教育における外国語教育でのマルチメディア活用そして、4年間にわたる研究成果を報告書としてまとめた。1.総合的学習と情報教育の接点(水越敏行)2.中学校の情報教育(水越敏行)3.高等学校の情報科(黒田卓)4.諸外国の情報教育(木原俊行)5.子どもはメディアをどう見ているか-比較文化的考察-(生田孝至)6.日常文化の中でのメディア教育(岡田朋之)7.テレビとインターネットをつないだ共同学習(黒上晴夫)8.遠隔学習の新しい可能性(久保田賢一)9.外国語教育におけるメディア利用(竹内理)
著者
菅井 勝雄 黒田 卓 西端 律子 前迫 孝憲 三宅 正太郎 山内 祐平 黒上 晴夫
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

初年度(平成11年度)は、総合学習における本研究テーマをめぐって、理論的検討を実施した。すなわち、J.Deweyの「児童中心」教育を中心に、近年の社会的構成主義、文脈主義、研究方法論やアプローチなどを討議した。その結果、総合学習における設計と評価では、「コミュニティにおける協同活動」や、「ポートフォリオ評価」などが理論上重要であることが確認され、論じられた(菅井)。また、試行期間にある総合学習の実践校として、大阪府下の2校をはじめ、研究分担者がそれぞれの地域校で研究を開始することにした。第2年度(平成12年度)は、密接な打ち合わせと連絡のもとに研究を推進したが、大阪府下の中学校と大阪大学との間で連携の試みをスタートさせるとともに、大阪大学(前迫)と富山大学(黒田)との間で、情報ネットワークを利用した交換指導の試みを実施した。このような経緯の結果、最終年度(平成13年度)の3年間にわたる研究成果報告書には、下に示す研究成果を公表することができた。(1)総合学習における児童・生徒の学習意欲と授業設計との関わりについて、調査法を用いて明らかにした(三宅)。(2)総合学習における小・中学校の情報活用能力をめぐるカリキュラム編成法や評価法を探求し、併せて自然環境の中での生徒の体験活動とメディア利用の実践を展開し、ひとつのモデルを提示した(黒田)。(3)総合学習との関連で、学校図書館の捉え直しが論じられ(森田)、メディアリテラシーのアプローチが探求された(山内)。(4)最近の脳研究から総合学習の基礎研究が試みられ、興味ある知見が得られた(村井)。(5)中学校と大学の連携のモデルが示された(西端)。