著者
山本 良太 池尻 良平 中野 生子 山内 祐平
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.31-49, 2022 (Released:2022-10-07)
参考文献数
20

本研究では,プロジェクト学習においてクラウドのアプリケーションを用いて教員がどのように学習者にフィードバックを与えているのか詳細を把握し,その結果から具体的方略を考察することを目的とした。Google スプレッドシートを活用したプロジェクト学習を実践した教員のフィードバックとその意図を分析した結果,生徒が記入したセルへの【色付けによる全生徒への即時フィードバック】および【生徒間の相互参照促進】というクラウドの高い同期性を生かした方略によって,教室全体のモニタリングとフィードバックを行っていた。また,教員は実践前には想定していなかったフィードバック方略を即興的に生成し,より踏み込んだフィードバックを行っていた。このことから教員はクラウドの高い同期性を生かすこと,またクラウドの特徴を踏まえつつ学習者との相互作用を通じて適切なフィードバックを探索し実践することが重要であることが分かった。
著者
秋山 隆志郎 小平 さち子
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
放送教育研究 (ISSN:03863204)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.31-42, 1988-06-30 (Released:2017-07-18)

低年齢幼児のためのテレビ番組開発の一環として,ごく短いアニメ「こんなこいるかな」を制作した。このアニメは,実験室内の研究では,高い注視率であった。しかし家庭でもよく注視されるか,また幼児に好まれたかどうかは,実験室内のデータのみでは明らかにならない。そこで,一次調査(昭和61年11月)と二次調査(昭和62年2月)の2回にわけて,2歳〜3歳の幼児,約270人に,家庭でこれを見てもらい,反応を調査した。また,家庭において,テレビ「こんなこいるかな」を見るだけでなく,同じキャラクターの載っている月刊雑誌を付加情報として配布した場合,幼児の視聴行動は,どう変化するかも確かめた。
著者
岡野 貴誠 久保田 賢一
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.1-16, 2006-03-31 (Released:2017-07-18)

近年メディア・リテラシー研究の一つのアプローチとしてメディア観の変容に着目した研究が行われるようになってきた。それらの研究ではメディア観の変容過程はある程度明らかになりつつあるものの,その背景にある変容の要因に着目した研究は少ない。そこで本研究では関西大学で行われるメディア・リテラシー育成を目的とした「AVメディア制作論」の授業を事例に,学生が自由に議論する電子掲示板のグラウンデッド・セオリーに基づいた分析と30名の学生を対象とした半構造化インタビューを通して,学生のメディァ観の変容とその要因を検証する。
著者
村野井 均 宮川 祐一
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.28-38, 1995-12-01 (Released:2017-07-18)

『できるかな』は、NHK教育放送で21年に渡って放送された番組である。この番組には2つの映像が提示されていた。一人は男性主人公の「ノッポさん」であるが、彼は一言も話さなかった。もう一人は動物で、時々鳴き声をあげる「ゴン太くん」であった。一方、この番組には2つの音声が提示されていた。一つは「ゴン太くん」の声であり、もう一つは女性ナレーターの声である。主人公が話さない役であったため、この番組は子どもにとって音声と映像の統合が難しかった。190名の大学生の回想から、音声と映像を統合する過程に現れるつまづきを分析したところ、11.1%の学生が「ノッポさん」を女性と思ったことがあり、40.7%の学生が音声と映像の組み合わせをまちがった経験を持っていた。画面に現れないナレーターという人工的存在を認識するために、子どもは音声と映像の組み合わせを試行錯誤する経験と教育的支援が必要であることを論じた。
著者
稲垣 忠
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.69-81, 2017 (Released:2017-05-29)
参考文献数
13
被引用文献数
2

学習活動に明確なゴールを設定し,児童が探究的な学習に従事するプロジェクト学習は,アクティブ・ラーニングを促す指導法の1つであり,その学習過程にはタブレット端末の活用場面が含まれると考えられる。本研究では,端末を活用したプロジェクト学習の実践可能性と留意点を明らかにするため,教師が単元設計に用いたデザインシートの分析,教師対象の質問紙調査,11名の教師を対象にしたインタビュー調査を実施した。その結果,ペアやグループによる端末の活用場面が明らかになり,児童が端末を授業で活用する機会が増加した。教師は探究や協働学習の実施とそこでのICT活用に対する自信が高まり,意識の変容が確認された。単元設計の留意点は,ゴール設定,多様な協働場面の設定,操作スキルへの配慮が確認された。
著者
木原 俊行 田口 真奈 生田 孝至 水越 敏行
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.1-14, 1996-03-31 (Released:2017-07-18)

本研究では映像視聴能力の発達差を明らかにするために小学生5、6年生、中学校1、2年生、そして大学生を対象とした質問紙調査を計画・実施した。まず、映像視聴能力の構造を再考し、これに場面把握、状況把握、先読み、技法理解、主題把握、感情移入の6つの柱を設定した。次いで、この能力を厳密に測定するために、セリフのない映画『裸の島』を調査用刺激に選定した。そして、この映画の内容等に関する8つの問題を設定して質問紙を構成し、調査をおこなった。515名の回答を分析した結果、多くの映像視聴能力の構成要素について小学校5年生と小学校6年生の間に断層がみられること、技法理解や先読みについては中学校2年生と大学生の間の能力差も激しいことなどの映像視聴能力の発達的側面を明らかにすることができた。
著者
大西 好宣
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.39-53, 2000

ラオスは人口483万人という熱帯の小国である。国際的な注目度は低く、情報も少ない。だがこの国にとって日本は第一の援助供与国であり、人的資源開発への支援を通じて今後ますます関係が深まるだろう。本稿では、最も情報が手薄な分野のひとつであるラオスの教育とメディアについて、タイとの比較という観点から、筆者が首都ビエンチャンで実施した調査の結果を踏まえて報告したい。もともとラオスの教育は、成人識字率わずか58%という数字が表すように、大きな問題を孕んでいる。このような中でメディアがその役割を果たし、質の高い教育番組を提供できれば、学校・教員数の少なさは補完できる。国営テレビ局は、「ラオス人はタイのテレビばかり見ている」との風評とは裏腹に比較的健闘している。タイの番組に比較すれば視聴者の自家製番組の質に対する評価は総じて低いものの、ラオス国民のタイに対する複雑な感情が数字を通じて見えてくる。
著者
川村 義治
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.31-41, 2006

この論文では,イメージは描写的な側面と記述的な側面が一体になった心的表象であるという観点から,英単語の記憶保持における身振りの運動イメージの役割に関して論述した。最初に,イメージとは何かを議論したイメージ論争とイメージの役割を評価した二重符号化理論を再考して,新たなイメージ観とイメージと記憶をめぐる本稿の理論的枠組みを示した。次に,身振りの運動イメージを非言語情報として用いた筆者の二つの実験結果を報告して,身振りの運動イメージが英単語の記憶保持に効果があることを確認した。さらに,人間は外部世界での身体的な経験から抽出したイメージ・スキーマに基づいて外部世界を意味づけるという認知言語学の見解を検討した。もし言語と身振りイメージの概念構造が同じスキーマによって動機づけられているならば,単語の概念を身振りの動作イメージで捉えることで,単語の記憶保持が高まるという結論に至った。
著者
高桑 康雄 平沢 茂
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
視聴覚教育研究 (ISSN:03867714)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.39-54, 1980

学校において,教育メディアの効率的な管理・利用を目ざして,学校では校内教材センターを設けるべきである。一方,地域における教育機関や教育関係者が教育メディアを利用するために視聴覚教育関係者の間では地域教材センターが構想されている。また,地域に住む人々は誰でも望むときにこれらのメディアを利用して学習しうることを期待している。地域教材センターは戦後各地に設けられた視聴覚ライブラリーを拡充することによって実現されるように思われる。しかし,視聴覚ライブラリーに関する調査や統計によれば,それが多くの問題を抱えていることは明らかである。本研究は,利用者の視点による観察報告を分析することによって,視聴覚ライブラリーが直面する問題を解明することを目的とする。そこで,我々は,大学の学生に任意の視聴覚ライブラリーを訪問し,観察し,その結果を感想文として提出することを課した。感想文の総数は266。得られたキー・ワードはK-J法によって分類・整理した。291の有効なキー・ワードは図1.のように整理される。これによつて得られる結論は次のようになる。(1)最も中心的な問題は,視聴覚ライブラリーに優秀な専門職員,その他の職員を配置する必要があること。(2)視聴覚ライブラリーを設置し,維持するためには十分な予算が確保されるべきこと。
著者
久保田 真弓 鈴木 有香
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.45-57, 2021 (Released:2021-10-29)
参考文献数
10

コロナ禍で急遽要求されたオンライン授業に不慣れな教員等を対象にZoom利用に関するワークショップが実施された。そこで本研究では,参加者の躓き要因をデザイン原則の観点から明らかにし,ワークショップの意義を提案する。異文化コミュニケーション学会が開催した1回2時間の初級(2回),中級(3回)の合計5回のワークショップを取り上げ,延べ参加者62名の躓き要因とデザイン原則との関連を分析した。ワークショップの内容は,初級レベル14項目,中級レベル12項目ある。そのうち,参加者の躓き要因は,「シグニファイア」,「制御感」,「想定外」,「重層構造」にまとめられた。「シグニファイア」による躓きは,記号や用語の使用方法であり,的確なフィードバックで解決する。一方,「制御感」「想定外」「重層構造」による躓きは,ユーザーの概念モデルの多様化が背景にあると考えられた。デザイナーが示すシステムイメージの変化にユーザーの利用習慣がついていけないのである。そこで,ワークショップでファシリテーターが参加者の潜在意識のレベルでの違和感を見抜き躓きに対応することで,デザイナーとユーザーの概念モデルのギャップを縮めることができることを提案した。
著者
大久保 紀一朗 佐藤 和紀 中橋 雄 浅井 和行 堀田 龍也
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.33-46, 2016 (Released:2017-09-14)
参考文献数
7
被引用文献数
5

本研究は,マンガを読解・解釈・鑑賞する活動を通してメディア・リテラシーを育成する学習プログラム(小学校第5学年対象)を開発し,その有効性を検証したものである。国語科の漫画家を題材にした説明文の学習を通して,マンガの表現技法について学んだ上で,漫画家の作品を読み込み,マンガレポートや本の帯やポップを作成する活動を行った。能力評価尺度を用いた事前調査と事後調査の平均点を比較したところ,全ての項目で事後調査の平均点が高く,有意な差を確認することができた。また,開発した学習プログラムを実施したクラスの平均点は,実施していないクラスの平均点よりも高く,有意な差を確認することができた。評価基準による3者の評価の平均点が3点満点中2.5点以上であったこと,Kendallの一致度係数はすべてW=.7以上であったことから,本論で示した学習プログラムは有効であったことが示唆された。
著者
佐々木 輝美
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
放送教育研究 (ISSN:03863204)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.57-71, 1986

The possible effects of TV violence on regular television viewers have been a critical problem. Study results have supported that there is a positive relation between the amount of violence viewed on TV and viewers' aggressiveness. However, these are cases mostly in America or in Europe and it can possibly be said that, in Japan, there have been no studies to clarify the relation between them. Thus, one of the purposes of this study was to clarify the relation between the amount of violence viewed on TV and viewers' aggressiveness. 473 (249 junior high and 224 senior high school) students were asked to choose up to five programs from among 25 violent programs and to answer 20 questions about their daily violent bahavior. The result indicates that there is a positive relation between them. The second purpose of this study was to clarify the relationship between the violence viewed on TV and the viewers' degree of desensitization toward violent scenes. The author hypothesized that the more people watch TV violence the more they become used to it and are no longer upset by witnessing violence. Subjects were asked how they would react when they witnessed violent scenes. The result indicates that there is no positive relation between them. However, the data indicate that there is a positive relation only in the case of senior high school students. This may suggest that the more years people are exposed to TV violence the more they become used to it. The third purpose of this study was to verify the effects of different types of programs on viewers' aggressiveness and on the degree of desensitization towards violent scenes. The author referred to Iwao's three categories of violent television programs; random violence, purposive violence and passive violence programs. Subjects were asked what type of program they frequently watch and were categorized into three viewing types; random violence viewing, purposive violence viewing and passive violence viewing types. The relationship between the amount of violence viewed on TV and the degree of desensitization towards violent scenes was analyzed for each viewing type. The result indicates in each case, there is no positive relation between them. The relationship between the amount of violence viewed on TV and viewers' aggressiveness was also analyzed for each viewing type. The result indicates that for each type, there is a positive relation between them and especially in the cases of viewing random violence and passive violence, the relation is stronger than when viewing purposive violence.
著者
秋山 隆志郎 小平 さち子
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
放送教育研究 (ISSN:03863204)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.31-42, 1988

低年齢幼児のためのテレビ番組開発の一環として,ごく短いアニメ「こんなこいるかな」を制作した。このアニメは,実験室内の研究では,高い注視率であった。しかし家庭でもよく注視されるか,また幼児に好まれたかどうかは,実験室内のデータのみでは明らかにならない。そこで,一次調査(昭和61年11月)と二次調査(昭和62年2月)の2回にわけて,2歳〜3歳の幼児,約270人に,家庭でこれを見てもらい,反応を調査した。また,家庭において,テレビ「こんなこいるかな」を見るだけでなく,同じキャラクターの載っている月刊雑誌を付加情報として配布した場合,幼児の視聴行動は,どう変化するかも確かめた。
著者
佐藤 知条
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1-2, pp.25-36, 2012-03-31 (Released:2017-07-18)

本稿では映画の教育利用を推進する全日本活映教育研究会の監修で1933年に作られた理科の教材映画『石炭』の内容を分析して教師や教育関係者の思想との関連を考察した。映画は教科書だけで授業を展開させるのが難しい部分を補完するように作られていた。これは教師が教材映画に求めていたことと一致していた。このことは娯楽性と興行性の排除とも関連するため,興行映画製作者を排除し教育関係者の手で教育映画を作ろうとする思想の表れとも解釈できる。一方で映画には教科書にはない場面も存在した。ここには,時間とともに場面が変化するメディアであるために映像の一貫性やつながりへの考慮が生じるという映画特有の事情が影響していたと考えられる。教師はこの場面に映画の教科横断的な利用可能性を見出していたことから,『石炭』は当時の教師の教育映画観を反映したものであるとともに,彼らの教育映画観に影響を与えるものでもあったと考えられる。
著者
村井 明日香 堀田 龍也
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.81-99, 2021 (Released:2021-05-08)
参考文献数
48

テレビ・ドキュメンタリーに係わるリテラシーの構成要素を抽出することを目的に,日本のテレビ番組制作者(以下,番組制作者)による書籍の記述の分析を行った。その結果,「制作」では,スポンサーの発言力の大きさ,テレビ局と制作会社の上下関係,総務省の力の大きさ,憲法の知る権利,放送法の「不偏不党」に対する意識等の項目が抽出された。「言語」では,編集で撮影順と異なる組合せにすること,できる限り映像で見せること,ナレーションは映像等の要素と補い合うものであること等の項目が抽出された。「リプレゼンテーション」では,撮られる側がカメラやスタッフを意識するため,普段通りではなくなること,番組制作者が撮られる側にはたらきかけを行うことで真実を伝えること,ドキュメンタリーは世界を再構成し再提示していること,正確な情報を伝えるべきと考えていること等の項目が抽出された。「オーディアンス」では,日本国民のマジョリティや高齢者をターゲットにしていること,興味を引く様々な工夫をしていること等の項目が抽出された。
著者
宮崎 寿子 秋山 隆志郎 坂元 昴
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
視聴覚教育研究 (ISSN:03867714)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.13-42, 1981

テレビ視聴の低年齢化は,最近の多くの報告書が示す通り,確実に進行している。極く最近のNHK放送世論調査所による"幼児の生活とテレビ"に関する調査(1980, 10月)でも,2歳児の一日平均視聴時間は,首都圏・地方を問わず,2時間を越している。特に1〜3歳児は4〜6歳児に比べて午前中の視聴時間が長く,未だ保育園に行かない在宅幼児が午前中に放送される幼児番組をかなり視聴していることがわかる。これらのデータからみても,現在の幼児番組においては,対象児の低年齢化と,その年齢に即した番組制作が要請されていると言えよう。このような状況を踏まえて発足した2歳児テレビ番組研究会(代表:白井常)では,1979年から2歳児番組の形成的研究と番組の効果研究を行なってきたが,本稿では1980年度に行なった4月と9月の実験の中から,"技能・生活習慣"に関するテレビセグメントと,"お話"に関するテレビセグメントを取りあげ,これらのセグメントに対する,2歳児の注視行動を中心に論ずる。
著者
大久保 紀一朗 和田 裕一 窪 俊一 堀田 龍也
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.13-29, 2020 (Released:2020-09-17)
参考文献数
29

本研究ではマンガの読解指導について検討するための基礎的知見を得るために,小学校高学年を対象に,(1)マンガを含むメディアへの接触頻度,(2)マンガの読み方,(3)マンガへの意識・態度に関する調査を行った。その結果,マンガの読み頻度は1990年に行われた調査と比較して低いことが示された。一方で,児童を取り巻くメディア環境が大きく変化した今日においても,小学校高学年児童の多くはマンガに対して肯定的な意識をもっていることが示された。マンガに対する意識を測る尺度得点について因子分析を行った結果,マンガの有用感,マンガの分かりやすさ,マンガの悪影響,マンガへの低評価という4因子構造が得られた。それらの下位尺度得点と,読み方の関係を検討するために相関分析を行った。その結果,マンガに対して肯定的な意識をもっている児童は,マンガを深く理解する読み方をしていることが示唆された。そこで,マンガの読み方を目的変数,マンガに対する意識を構成する4つの因子の下位尺度得点を説明変数として重回帰分析を行ったところ,マンガに対する有用感がマンガの読み方に影響を与えていることが示唆された。
著者
小林 祐紀 中川 一史 村井 万寿夫 河岸 美穂 松能 誠仁 下田 昌嗣
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.49-57, 2007-10-31 (Released:2017-07-18)

学校教育におけるICT教育の推進に関わる現状の把握と推進のための課題を整理するために、ICT活用に関する研究助成に応募し、採択された学校のICT活用を推進するリーダー(以下ICT推進リーダー)を対象に、「研修」「働きかけ」「カリキュラム」についてアンケート調査を行った。その結果、ICT機器の整理、管理(保守点検)、校内ネットワークの整備・管理を中心とする働きかけをおこなっていることが明らかになった。その一方で、校内の他の教師の求める支援との間に齪飴が生じている現状が明らかになった。また、今後の校内におけるICT活用推進の課題として、教員のICT活用スキルの格差への対応、ICT推進リーダーがICT機器の維持・管理のために費やす時間や負担の軽滅、ICT活用が学校全体の教育活動に位置つくためのカリキュラムの充実、ICT活用推進を支える校内体制の確立の4点に整理することができた。
著者
浅井 和行
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.67-79, 2000-03-20 (Released:2017-07-18)
被引用文献数
2

「総合的な学習」に取り組む学校のカリキュラムとメディアの関係を明らかにするために、本研究では、環境教育指定を受けている小学校のカリキュラムとメディア使用に関するデータを収集した。具体的には、3年間の研究紀要から、カリキュラムの変化とメディアの使われ方の変化を調査した。そして、個別に特徴を検討した後、2つの関わりについて考察した。分析の結果、カリキュラムが教科型から教科関連型になり、「総合的な学習」としての一体型に変わってきたことが確認された。メディアは、カリキュラムの変化の中で、教師が提示する教材から子どもが使う学習材に変わってきていることが明らかになった。