著者
三嶋 公明 杉山 日出男
出版者
日本芝草学会
雑誌
芝草研究 (ISSN:02858800)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.189-195, 1983-11-25 (Released:2010-06-08)
参考文献数
9

(1) マメコガネに対しての室内試験では, 接触・食毒効果が強いのは, DDVP, MEP, メソミル, サリチオン, イソキサチオンであった。しかし野外散布による残効性試験ではDDVP, サリチオンは, ほとんど残効がなかった。比較的, 良かった殺虫剤はイソキサチオン, メソミル, それと室内では強い殺虫力を示さなかったNAC, PMP, DEPであるが, それでも効果があると思えるのは約1週間と短いものであった。また, 降雨があると薬剤の葉からの流亡のため急激に効果が落ちた。固着剤の加用は, NAC, PMP等水和剤タイプの殺虫剤では効果アップが認められた。コイチャコガネ, ウスチャコガネに対して室内で最も強い殺虫力を示したのは, クロルピリフォス, 次いでMEP, イソキサチオン, NACであった。マメコガネは他の2種に比べ, 葉剤に対しては強かった。(2) マメコガネ成虫の食誘引物質試験では, 多量発生していたゴルフ場では, 2ケ月間に12, 065匹を1個のトラップで捕獲する事ができたが, トラップの設置場所により, 相当な差がみられたので, 設置場所をよく検討する必要があろう。(3) マメコガネ防除については, 誘引剤使用での捕殺と殺虫剤散布をうまく組み合わせ, 成虫を効率よく防除する事により, 幼虫の密度を下げる事が芝草への被害を減少させる方法として有効だと思われるが, 現状では殺虫剤の残効が短いため, 残効をのばす方法を更に検討する必要があろう。
著者
梅本 信也 山口 祐子 伊藤 操子
出版者
日本芝草学会
雑誌
芝草研究 (ISSN:02858800)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.20-24, 2001-11-10 (Released:2010-06-08)
参考文献数
17
被引用文献数
1

スズメノカタビラの1変種であるツルスズメノカタビラP. annuaL. (1753) var.reptansHaussknecht (1891) の実在性と分類群としての概念規定を考察するために, 世界の分類学的文献や雑草学と芝草学的研究成果, 京都大学大学院理学研究科植物標本庫 (KYO) 所蔵の176枚のさく葉標本, 全国アンケート時に入手できた7枚のさく葉標本を包括的に検討した。その結果, H. C. HaussknechtによるP. annuavar.reptansの初原記載はいわゆるbook speciesであるが, 彼の意図は匍匐的栄養繁殖にあると推定された。Haussknecht (1891) の記載を引用し, 本変種の典型挿図を掲載したのが, Magchev (1912) である。したがって, 本変種はPoa annua L. var.reptansH.C. Haussknecht (1891) sensuA. Magchev (1912) と表現するのが現状ではより適切である。
著者
白川 憲夫 深澤 正徳
出版者
日本芝草学会
雑誌
芝草研究 (ISSN:02858800)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.113-123, 1998-03-31 (Released:2010-06-08)
参考文献数
22

木酢液のシバに対する生育調節作用を検討した。1.ケンタッキーブルーグラス1品種, ベントグラス3品種を供試して水耕栽培で木酢液の作用を調べたところ, 地上部の生育はいずれのシバの場合も処理濃度が増加するにしたがって抑制されたが, 根部では逆に生育促進作用が見られ, 共通する最適処理濃度は0.05%と考えられた。しかし, 0.5%以上の処理ではいずれのシバに対しても強い根の伸長抑制作用を示した。2.ベントグラス・ペンクロス, ケンタッキーブルーグラス, コウライシバのソッドの生育に及ぼす木酢液の影響を水耕栽培で検討したところ, 栽培液のpH調整の有無にかかわらず0.05%処理が, 供試シバに共通して根部の生育を促進した。しかし, ベントグラス・ペンクロスではとくにpH調整区の0.25%以上の処理, コウライシバでは0.5%以上の処理は根部の生育を抑制した。一方, 地上部の生育はベントグラス・ペンクロスの場合pH調整区の0.25~0.5%処理, pH未調整区の0.1%処理, 同様にケンタッキーブルーグラスではそれぞれ0.01~0.1%処理, 0.05%処理, コウライシバではpHの調整有無にかかわらず0.05~0.1%処理で生育促進作用が見られたが, それ以上の処理濃度ではケンタッキーブルーグラス及びコウライシバの場合0.5%以上の処理で生育抑制作用が発現した。3.土耕栽培のシバ4種を供試して, 木酢液の長期連用試験を行ったところ, コウライシバ, ノシバ, ケンタッキーブルーグラスの1a当り0.1~1l, 12回処理で地上部の生育促進作用が見られた。ベントグラス・ペンクロスでは, 最大15%程度の地上部重の減少が見られたが, 根部乾物重は1a当り0.1~1l処理で他の供試シバと同様に増加した。4.コウライシバを用いて木酢液の耐寒性向上作用を調べたところ, 1a当り1~54処理で明らかに低温生育性は向上した。5.以上の結果から, 木酢液はシバの生育及び耐寒性に良好な影響を与えることが認められたが, 今後は圃場試験により上記の作用を確認してみたい。
著者
佐々木 寛幸 阿部 佳之 松浦 庄司 山本 博
出版者
日本芝草学会
雑誌
芝草研究 (ISSN:02858800)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.30-32, 2009-10-31
参考文献数
4

屋上緑化にオガクズを副資材とする牛ふん堆肥をそのまま使用することの可能性を検討した。<br>栃木県北部にある建物の屋上において, 市販の稲稚苗用育苗箱に牛ふん堆肥を充てんし, オノマンネングサ (<i>Sedum lineare</i>), メキシコマンネングサ (<i>Sedum mexicanum</i>), サカサマンネングサ (<i>Sedum reflexum</i>) を挿し芽した。その後12回にわたり上方部から写真撮影し, 画像処理により個体ごとの被覆面積の経時変化を計測した。その結果, 堆肥100%であっても, 3種のセダムは枯死することなく生育したが, オノマンネングサとメキシコマンネングサについては対照区と比較すると低い生育量となった。
著者
広田 秀憲 小林 正義 関東 良公 上田 一之
出版者
日本芝草学会
雑誌
芝草研究 (ISSN:02858800)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.125-130, 1987
被引用文献数
1

著者らの観察ではセンチピードグラスは新潟市の気象環境の下でも10数年は生きるものと考えられ, 耐寒性はバーミュダグラスとほぼ同じ程度に強く, 冬の極値が12°F (-11℃) 以上の気温で生育する。晩秋の霜枯れしたあと生育を停止する。年平均気温13℃の地域を北限としているため, 限界地帯では年によりかなり冬枯れするが, すべて枯死することはなく春になれば再び旺盛に生育を始める。<BR>ほふく茎は2次茎も3次茎も太く, 葉幅も3~4mmと芝草の中では広い方である。芝地としては管理しやすい草種である。病虫害にも強い。早春と秋にモグラの害を蒙ることがありモグレスなどの忌避剤をまく必要がある。<BR>本草種の用途としては, ゴルフ場のラフ, 公園の植込みの間, 運動場のフィールドや観覧席, あるいは道路, 堤塘などにおける平面や斜面の緑化などに普及性が高い。ほふく茎のもつ被覆力, 各節からの旺盛な発根力をもつと種々の方面に活用したいものである。<BR>なお, 本草種は飼料としての価値はあまり高くないとみられているが, 平準的な季節生産性を利用して兎, 羊など中小動物による放牧利用の可能性がまだ残されている。
著者
古谷 誠治 水田 良三 大段 宗久 長倉 純幸 細辻 豊二
出版者
日本芝草学会
雑誌
芝草研究 (ISSN:02858800)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.49-60, 1979

関東地方の4住宅団地の芝生地における雑草を調査した結果, 夏季は35科122種, 秋季は34科99種, 総計38科143種が認められた。このうち優占種としては, 団地, 季節により異なるが, アキメヒシバ, オヒシバ, カゼクサ, メヒシバ, ヒメムカシヨモギ, カタバミ, ヒメジヨオン, タンポポ, シロツメクサ, ツユクサ, スズメノカタビラ, ハルジヨオン, オオバコ, ハコベ, ノゲシなであった。中でもアキメヒシバ, スズメノカタビラ, ヒメムカシヨモギ, ハルジヨオン, カタバミは全団地に共通かつ優占的に出現した。<BR>これらの芝生雑草種は, 樹園地・水田裏作・畑地の雑草種の半数以上と共通であり, 牧草地の雑草種より共通種の比率は高く, 住宅団地の芝生地は牧草地よりはむしろこれら樹園地等に近い。しかし出現雑草種の半数以上を示める優占科については, 牧草地・畑地・芝生地とも極めて共通的である。なお, 水田雑草とは種・科とも大いに異なる。
著者
広田 秀憲 小林 正義 関東 良公 上田 一之
出版者
日本芝草学会
雑誌
芝草研究 (ISSN:02858800)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.125-130, 1987-02-28 (Released:2010-06-08)
参考文献数
6
被引用文献数
3

著者らの観察ではセンチピードグラスは新潟市の気象環境の下でも10数年は生きるものと考えられ, 耐寒性はバーミュダグラスとほぼ同じ程度に強く, 冬の極値が12°F (-11℃) 以上の気温で生育する。晩秋の霜枯れしたあと生育を停止する。年平均気温13℃の地域を北限としているため, 限界地帯では年によりかなり冬枯れするが, すべて枯死することはなく春になれば再び旺盛に生育を始める。ほふく茎は2次茎も3次茎も太く, 葉幅も3~4mmと芝草の中では広い方である。芝地としては管理しやすい草種である。病虫害にも強い。早春と秋にモグラの害を蒙ることがありモグレスなどの忌避剤をまく必要がある。本草種の用途としては, ゴルフ場のラフ, 公園の植込みの間, 運動場のフィールドや観覧席, あるいは道路, 堤塘などにおける平面や斜面の緑化などに普及性が高い。ほふく茎のもつ被覆力, 各節からの旺盛な発根力をもつと種々の方面に活用したいものである。なお, 本草種は飼料としての価値はあまり高くないとみられているが, 平準的な季節生産性を利用して兎, 羊など中小動物による放牧利用の可能性がまだ残されている。