著者
鈴木 亨
出版者
物理教育研究会
雑誌
物理教育通信 (ISSN:24238988)
巻号頁・発行日
vol.175, pp.53-63, 2019 (Released:2019-07-06)
参考文献数
7

高校物理の教育課程のほぼ終わりに,原子の構造,特にボーア理論と呼ばれるもの が不変の教材として置かれている。これは,水素原子のスペクトル公式を説明できる ものの,現代的な視点からは完全な理論ではないとされる。1913 年の原論文を読み返 すと,再評価されるべき面もあり,そのことを通じて,高校課程の教材としての意義 が改めて浮かび上がってくる。
著者
石川 謙
出版者
物理教育研究会
雑誌
物理教育通信 (ISSN:24238988)
巻号頁・発行日
vol.177, pp.17-23, 2019 (Released:2020-03-04)
参考文献数
8

中谷宇吉郎は、1947 年に子ども向けの科学雑誌「にじ」に虹についての解説を書いている。この解説で中谷は、 「虹の色彩は一律ではなく、スペクトル色ではない」など、世間に出回っている解説には見られない事柄を紹介し、 光の干渉まで踏込んで光学現象としての虹の説明を行い、その上で現象をきちんと観察するという心構えを語って いる。優れた解説であるにも関わらず、残念ながら、ほとんど知られずに埋もれている。本稿では、この埋もれて いる解説を紹介する。
著者
勝田 仁之
出版者
物理教育研究会
雑誌
物理教育通信 (ISSN:24238988)
巻号頁・発行日
vol.186, pp.49-55, 2021 (Released:2022-02-13)
参考文献数
11

物理教育研究において,生徒の概念理解度や授業効果を測定する際,FCI をはじめとする概念調査テストの実施が広く行われている。一方でその集計や解析については,各教員が Excel などを用いて個別に行なっている。同じ作業を多くの教員が個別に行い時間を浪費することは,大きな社会的損失である。本稿では著者の作成した R言語プログラムを公開することで,誰でもすぐに概念調査テスト,特に多肢選択肢テストの解析が自動でできるようになることを目指す。
著者
森 雄兒
出版者
物理教育研究会
雑誌
物理教育通信 (ISSN:24238988)
巻号頁・発行日
vol.182, pp.34-46, 2020 (Released:2021-03-09)
参考文献数
10

計量法の成立にともない、経産省は国民に対しては、kg の意味の混用政策を実施すると同時に、公教育では全面 SI 化を実施するという矛盾した政策を推進した。このダブルスタンダードな政策の影響で、力学を学習する生徒に混乱がおきることが予想された。高校新 2年生にこの調査を実施したところ、深刻な混乱の事例が明らかになった。
著者
村尾 美明
出版者
物理教育研究会
雑誌
物理教育通信 (ISSN:24238988)
巻号頁・発行日
vol.177, pp.60-63, 2019 (Released:2020-03-04)
参考文献数
4

気柱に入射した音波が両端で反射して重なり、次第に振幅が大きくなっていく様子 を定量的に示した。また、共鳴時の最大振幅も求めた。シミュレーションにより気柱 が共鳴していないときにも振幅小の定常波ができていることが分かった。
著者
西村 塁太
出版者
物理教育研究会
雑誌
物理教育通信 (ISSN:24238988)
巻号頁・発行日
vol.181, pp.33-38, 2020 (Released:2020-11-05)
参考文献数
3

高校2年生対象の物理基礎の授業で,休校期間中の探究課題として,「スマートフォンを用いた身の回りの運動の解析」を課した。生徒たちは自らの興味・関心に基づき,エレベーターの運動や水滴の落下運動など,様々な運動をスマートフォンを用いて解析し,グラフ化して分析した。未提出者も相当数いたものの,多くはオンライン授業で学習した運動の知識・理解を,活用することができていた。
著者
山田 盛夫
出版者
物理教育研究会
雑誌
物理教育通信 (ISSN:24238988)
巻号頁・発行日
vol.174, pp.155-160, 2019 (Released:2019-07-06)
参考文献数
5

高校で扱う電流の自由電子モデルに①加速-衝突モデルと②雨滴モデルの二つあるが,その源流はドルーデ(Drude)理論にある。最近の高校物理では①の加速-衝突モデルは姿を消し,②の雨滴モデルだけのようである。①への批判1), 2)は,ドルーデ理論では平均自由時間
著者
前野 昌弘
出版者
物理教育研究会
雑誌
物理教育通信 (ISSN:24238988)
巻号頁・発行日
vol.186, pp.8-19, 2021

大学生に熱力学を教えていて感じることを素材に,熱力学を教えることの難しさ がどこにあるのかを示しつつ,物理の教え方について考えてみたい。「熱」という 言葉による誤概念と,熱力学以前の力学(特にエネルギー)との統一的理解の不足 が熱力学を難しく感じさせる要因となっていると思われる。より力学と結びついた 流れで記述された大学熱力学の教科書についても述べる。
著者
吉岡 裕幸
出版者
物理教育研究会
雑誌
物理教育通信 (ISSN:24238988)
巻号頁・発行日
vol.176, pp.34-40, 2019

10 数年ぶりに中学二年生を担当し,電気回路の授業に取り組んだ。中学生として最終的には,「ショート回路がなぜ危険なのか」,「タコ足配線がなぜ危険なのか」ということを,オームの法則をもとにして理解し,電池の定電流概念を乗り越えてほしいと考えた。しかし,多くの失敗をして生徒を混乱させる結果になった部分もある。それでも生徒たちはよく考え,理解を進めてくれたように思う。
著者
鈴木 亨
出版者
物理教育研究会
雑誌
物理教育通信 (ISSN:24238988)
巻号頁・発行日
vol.174, pp.78-84, 2019

2018 年度東京大学前期入学試験物理問題に疑問の出題があった。グラフ選択問題であるが,正解と思われる図が必ずしも典型的な概形ではなく,出題ミスとまで言えないまでも,不適切であったかもしれない。題意は運動量と力積の関係に注目するというシンプルなもののようであるが,予備校の解答速報等を見ると,題意が明確に伝わっていない可能性が高い。問題点を指摘するとともに改善案を提案する。