著者
阿部 英樹
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

高レベル廃棄物に高濃度に含まれる代表的な3種のイオン、Cs^+、Sr^<2+>、La^<3+>を、マトリックス材である酸化チタン(TiO_2)と共にモリブデン酸溶融塩に溶解後、電気分解することによって、それぞれ、チタン酸単結晶固化体Cs_xTi_8O_<16>、SrTiO3、La_<2/3>TiO_3の形態で電気分別固化することに成功した。高温・高圧水中でのリーチ耐性評価により、Cs_xTi_8O_<16>およびSrTiO_3単結晶固化体が、いずれも高い腐食耐性を示すことを明らかにした。現実の高レベル廃棄物に対する電気分別固化法の高い実効性が証明された。
著者
田代 健太郎
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

お椀型の非平面パイ共役系を有するコラニュレンの集積化について、種々の周辺置換基を有する誘導体を用いて検討した。金とコラニュレン周辺置換基中の多数のチオエーテル部位との多価の相互作用により、金ナノパーティクル表面をコラニュレンのケージで被覆することが可能であった。ドデカンチオールで表面修飾した同じサイズの金ナノパーティクルと比べ、コラニュレンで覆ったパーティクルのSHGが8倍程度増強されることを見出した。また、周辺置換基の適切な選択により、液晶性を示すコラニュレンを初めて作製し、その電場配向能を明らかにした。
著者
小林 尚俊 吉川 千晶 服部 晋也
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

細胞膜上の受容体や接着分子の分子認識はナノメートルの大きさで規定されており、材料表面への生体分子(タンパク、脂質、糖鎖)の吸脱着や細胞の接着・非接着などを人工的に制御するためには、ナノメートルオーダーの分子設計からミクロ-マクロの高次構造の制御が必須不可欠である。そこで、生体材料の構造制御による機能向上およびその機構解明を試みた。具体的には高分子ファイバー及び濃厚ブラシを対象とし、(1)「ファイバーの二次/三次元配列構造の制御」および(2)「濃厚ポリマーブラシの三次元構造制御」を行い、その生体機能特性を詳しく調べた。得られた知見から、機能化された新規細胞足場材料のコンセプトが開発された。
著者
早川 竜馬
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、近年、フレキシブルな機能を有する電子デバイスとして注目されている有機トランジスタの特性を有機ヘテロ界面での電荷移動を光により制御することによって変調することである。下地となるクォテリレン有機トランジスタの高性能化に成功し、2分子層程度でも良好に動作する薄膜トランジスタの作製に成功した。有機ヘテロ界面での効果的な電荷移動を誘起させるために電子受容性が極めて高い電荷移動錯体を用いて積層型トランジスタを作製した。電荷移動錯体分子を蒸着することによりクォテリレントランジスタの閾値電圧を変化させることに成功した。この結果から、有機ヘテロ界面を利用したデバイス制御が可能であることが示された。
著者
山瀬 博之
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

フェルミ面の自発的対称性の破れは理論先行の新しい概念であるが、最近、二層系ルテニウム酸化物、銅酸化物及び鉄系高温超伝導体でその可能性が実験的に示唆された。実験的に浮上した問題点を足がかりにして、強磁性や他の電荷不安定との競合関係の包括的解析、方向対称性の破れの揺らぎによる超伝導機構の提案、ラマン散乱による直接検証に向けた理論的予言、汎関数繰り込み群によるフェルミ面の揺らぎや強磁性揺らぎの解析、スケーリング理論による相転移点近傍での一般的性質の解明とその実験的検証、フェルミ面の揺らぎによる一電子スペクトラムの非摂動論的解析を行った。
著者
佐々木 泰造
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、電池材料・不動態膜などで重要な固体酸化物中の金属イオンや酸素イオンの原子拡散ついて電子論的手法(密度汎関数法)により、理論的研究を行った。Al2O3中のAlの拡散については、SiやTiを添加した場合についてこれら元素の近傍で2eV程度エネルギーが低下し、拡散において非常に重要であることが示唆された。一方、LaSi酸化物中の酸素拡散について、従来の測定結果をよく説明する拡散障壁値が得られ、その拡散機構を明らかすることができた。
著者
原田 幸明 芳須 弘 山口 仁志 井島 清 井出 邦和 片桐 望
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

地球環境問題に対応するサスティナブルな物質・材料の設計・選択・評価に資するための、物質・材料のマテリアル・リスク指標を、"持続的供給リスク"、"環境変動リスク"、および"毒性リスク"としてとらえ、それぞれに対する指標を数値化した。この数値化において、元素ごとに共通の手法を用いることで横断的な比較を可能とし、材料や部材の設計に用いることができるようにした。さらに、これらの指標の適用方法を"持続的供給リスク"を表す関与物質総量を中心に例示した。とくに、リサイクルの適用に関して実際のリサイクル技術の開発と合わせて都市鉱石化の評価に関与物質総量を用いるという新しい適用方法も明らかにした。
著者
田中 秋広 河野 昌仙
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

多体系の低エネルギーの振る舞いを記述する有効作用に「ベリー位相項」が存在すると、統計力学的な平均操作を行う際には配位間の量子位相干渉効果が生じて、新奇な挙動、特に新しい量子臨界現象に導く可能性がある。このシナリオが実現するケースとして、磁場中の反強磁性体の磁化プラトー間転移、トポロジカル絶縁体の量子相転移などについて詳しく調べた。
著者
津崎 兼彰 山口 隆司 増田 浩志 木村 勇次
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、超高力ボルト創製に関する基礎研究を材料・建築・土木分野の研究者が共同で行った。その結果、1800MPa級超高力ボルトを実現するための最適材料化学成分と金属組織ならびにボルト形状を提案した。
著者
河野 昌仙
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

1次元の厳密解と鎖間結合が弱い極限からの近似法とを組み合わせた方法によつて、異方的2次元フラストレート系の磁場中で現れる準粒子について調べた。その結果、今回得られた準粒子は、通常の磁性体の準粒子として知られているマグノンや1次元系の準粒子とは異なる様々な特異な性質を示すことが明らかになった。特徴的は振る舞いとして、磁化に強く依存した波数におけるスピン密度波型の非整合秩序、複数の準粒子による磁場中のクロスオーバー、高エネルギー領域に現れる強いスペクトル強度をもつモードなどを挙げることができる。これらの振る舞いは、通常の線形スピン波理論では説明することができず、また、発現メカニズム、動的構造因子の形状、秩序化の有無、次元性、統計性などにおいて1次元系の準粒子とは異なる。これらの特徴的振る舞いは、その発現メカニズムに起因している。つまり、通常のスピン波理論では、マグノンは自発的対称性の破れによって安定化するのに対し、今回の準粒子は1次元準粒子の鎖間ホッピングによつて形成される結合状態とみなすことができる。したがつて、発現メカニズムはマグノンよりもむしろフェルミ液体で現れる集団励起のものに似ており、基底状態の対称性の破れに依らず、個別励起間の多粒子プロセスによつて生じる。この意味で、今回得られた準粒子は、異方的2次元のスピン液体または、1次元準粒子であるプサイノン、反プサイノン、2-ストリングの準粒子の液体とみなすことができると考えられる。また、今回得られた準粒子描像によって、異方的三角格子反強磁性体Cs_2CuCl_4の磁場中で観測されていた様々な異常な振る舞いを統一的かつ定量的に説明することに成功した。