著者
Chiyo MATSUSHITA Hiroyuki MIZUGUCHI Hitoshi NIINO Yuko SAGESAKA Keisuke MASUYAMA Hiroyuki FUKUI
出版者
Medical and Pharmaceutical Society for WAKAN-YAKU
雑誌
Journal of Traditional Medicines (ISSN:18801447)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5+6, pp.133-142, 2008 (Released:2008-12-19)
参考文献数
61
被引用文献数
2

ヒスタミンはアレルギー反応における主要メディエーターである。 近年緑茶の抗アレルギー効果が報告されているがヒスタミンシグナルにおける緑茶の効果については明らかでない。 我々は toluene-2, 4-diisocyanate (TDI) 感作により作成した鼻過敏症モデルラットを用いて TDI 発作誘発に伴う鼻粘膜ヒスタミン H1 受容体 (H1R) 及び Th2 サイトカイン mRNA 上昇への緑茶の効果を検討した。 緑茶抽出液を 3 週間連日投与することにより TDI 誘発による鼻粘膜 Th2 サイトカイン mRNA レベル上昇が有意に抑制され H1R mRNA レベルも抑制傾向を示した。 抽出液をカラムクロマトにより分画し, 各画分における効果を検討したところ EGCG が主要成分である TOYOPEARL HW40EC カラム80% ethanol 溶出画分に RBL-2H3 細胞の抗原抗体刺激による Th2 サイトカイン mRNA 上昇の抑制効果が認められた。 EGCG は濃度依存的に IgE 刺激による IL-4 mRNA レベルの上昇及び PMA 刺激による H1R mRNA レベルの上昇を抑制した。 鼻過敏症モデルラットにおいても EGCG の 3 週間連日投与によりくしゃみ回数が減少し TDI 誘発による H1R 及び IL-4 mRNA 上昇が抑制された。 以上の結果より EGCG は鼻過敏症モデルラットの H1R および IL-4 遺伝子発現を抑制することにより IL-4 シグナルだけでなくヒスタミンシグナルも抑制し鼻過敏症症状を軽減することがわかった。
著者
Suresh AWALE Thein Zaw LINN Myint Myint THAN Maung Maung THET Thein SWE Ikuo SAIKI Shigetoshi KADOTA
出版者
Medical and Pharmaceutical Society for WAKAN-YAKU
雑誌
Journal of Traditional Medicines (ISSN:18801447)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.178-183, 2006 (Released:2007-06-21)
参考文献数
17

ミャンマーの伝統医療における医学的慣習は神秘に包まれている。世代を超えて永続しているその慣習は,現地の人々の宗教的信仰に基づいているものが多い。ミャンマーの一部の地域では,全人的治療法として仏陀の時代の頃から存続している知識がいまだに保存されていて,それが慣習的に使われている。この論文ではミャンマーの仏教文化の中で,伝統医によって行われている牛の尿を用いた驚くべき治療法について強調している。
著者
Hiroshi IWATA Yasuhiro TEZUKA Shigetoshi KADOTA Akira HIRATSUKA Tadashi WATABE
出版者
Medical and Pharmaceutical Society for WAKAN-YAKU
雑誌
Journal of Traditional Medicines (ISSN:18801447)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.281-286, 2004 (Released:2007-12-28)
参考文献数
14
被引用文献数
3

26 種の生薬のシトクロム P450 3A4 (CYP3A4) 及び 2D6 (CYP2D6) に対する阻害作用を調べた。 生薬エキス粉末から調製されたメタノール可溶性画分を NADPH 生成系存在下, ヒト肝ミクロソームとプレインキュベーションした後の CYP3A4 の残存活性 (erythromycin N-demethylation 活性) と CYP2D6 の残存活性 (dextromethorphan O-demethylation 活性) を測定した。 その結果, 16 種の生薬がCYP3A4 活性をプレインキュベーション時間依存的に低下させた。 中でも, 呉茱萸による CYP3A4 活性の低下作用が最も顕著であった (30 分間プレインキュベーションした後の活性の残存率は 22.3%)。 次いで, 蘇木, 羌活, 五味子, 牛蒡子, 白, 大黄が顕著な低下を示した (30 分間プレインキュベーションした後の活性の残存率は, それぞれ 40.6, 41.2, 53.4, 47.1, 53.4, 59.2%)。 これら 7 種生薬による CYP3A4 活性低下作用は, CYP3A4 に対する不可逆的阻害剤である troleandomycin による残存率 (49.4%) に匹敵した。 CYP2D6 活性に対してプレインキュベーション時間依存的な活性の低下を示した生薬は, 5 種であった。 最も CYP2D6 活性の低下作用が大きかった生薬は, 羌活であり, 30 分間プレインキュベーションした後の活性の残存率は 61.9%であった。 以上の結果から, 呉茱萸, 蘇木, 羌活, 五味子, 牛蒡子, 白芷, 大黄等の複数の生薬エキス中に, CYP3A4 に対する metabolism-dependent inhibitor が含まれていることが示唆された。
著者
Shigeki Nabeshima Kenichiro Kashiwagi Kazuhiko Ajisaka Ken Kitajima Shinta Masui Hideyuki Ikematsu Seizaburo Kashiwagi
出版者
Medical and Pharmaceutical Society for WAKAN-YAKU
雑誌
Journal of Traditional Medicines (ISSN:18801447)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.148-156, 2010 (Released:2010-09-15)
参考文献数
36

インフルエンザに対する麻黄湯の効果を検討するため,2008年冬期に季節性インフルエンザAに罹患した成人に対し,麻黄湯またはオセルタミビルを投与した。20人(男13 例,平均年齢28.4歳)のうち,12 例に麻黄湯を,8 例にオセルタミビルを5日間投与し,症例スコアと体温を1日に3回記入してもらった。そこで発熱持続期間,症状持続時間,毎日の症状スコア,体温,アセトアミノフェンの頓用回数を検討した。麻黄湯群の平均発熱持続時間(21.4時間)と症状持続時間(80.8時間)は,オセルタミビル群のそれ(20.0時間と84.4時間)と有意差は認められなかった。治療第1日夜における麻黄湯群の平均体温(37.6℃)は,オセルタミビル群(38.4℃)より有意に低下していた。また,麻黄湯群では,アセトアミノフェンの平均頓用回数(0.6回)はオセルタミビル群(2.4回)より少ない傾向が認められた。麻黄湯群では,1 日目から 3 日目まで「頭痛」スコアがオセルタミビル群より有意に低かった。以上よりインフルエンザにおいて,麻黄湯はオセルタミビルと同等の発熱および症状改善作用をもち,特に治療初期にその効果が顕著であることが解った。
著者
Osamu FUKUTOMI Satomi SAKURAI Kunitoshi NADA Hideyuki MORITA Takahiro ARAI Keiko SUZUKI Yusuke AOKI Toshiyuki FUKAO Hiroko IWAKOSHI Yumiko CHIKAMATSU Tadao ORII
出版者
Medical and Pharmaceutical Society for WAKAN-YAKU
雑誌
Journal of Traditional Medicines (ISSN:18801447)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.151-152, 2006 (Released:2007-06-21)
参考文献数
6

小児の急性胃腸炎による嘔吐に対し,五苓散の注腸を行い有効性について検討した。症例は 6ヶ月から11歳までの336例で,平均年齢は3.7±2.3歳であった。方法は五苓散エキス顆粒2.5gを温生理食塩水20mlに溶解し注腸した。その後の症状の経過で有効性を評価した。症例全体の有効率は79%であった。この有効率は年齢による差は認めなかったが, 受診までの嘔吐回数とは有意な相関関係を認めた(p<0.01)。五苓散の注腸の有効率は他の報告でも高く評価されている。今回の結果でも有効率が高く副作用もないことから,小児の嘔吐を伴う急性胃腸炎の,点滴を行う前に行う治療としての有用性が示唆された。