著者
Kiyomi Nagumo Yumiko Kunimi Susumu Nomura Masatosi Beppu Keizo Hirayama
出版者
Societas Neurologica Japonica
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.311-319, 2015 (Released:2015-05-30)
参考文献数
26
被引用文献数
1

Objective: Ataxic gait can be remarkably improved by a simple method called the “handkerchief guide” involving the patient and caregiver holding opposite ends of a handkerchief and walking together. Our objective was to assess the effect of the handkerchief guide on gait in patients with cerebellar ataxia. Methods: Gait analysis was carried out on seven patients with degenerative cerebellar disease (DCD), seven patients with unilateral cerebellar vascular disease (CVD), and seven healthy control (HC) subjects. All subjects performed two walking tasks: free walking (FW) and handkerchief-guided walking (HGW) on a 10 m pathway. In the HGW condition, each subject walked with the caregiver while maintaining slight tension on the handkerchief. The HCs and patients with DCD held the handkerchief with their right hand, while the patients with unilateral limb ataxia due to CVD grasped it with their affected and unaffected hands in different trials. We measured 10 gait parameters. Results: The HGW attenuated body-sway, lengthened step, and increased gait velocity in patients with cerebellar ataxia. In DCD, the HGW significantly improved seven parameters. In CVD, HGW with the affected hand improved five parameters, and HGW with the unaffected hand improved seven parameters. Conclusions: The HGW stabilized upright posture in patients with cerebellar ataxia during level-ground walking, probably by enabling subconscious postural adjustments to minimize changes in the arm and hand position relative to trunk, and in arm configuration. This led to improvement of gait performance. The handkerchief guide may be useful for walk training in patients with cerebellar ataxia. Abbreviations: COM, center of mass; COG, center of gravity (projection of the COM onto the ground plane); COP, center of pressure; CVD, cerebellar vascular disease; DCD, degenerative cerebellar disease; FW, free walking; HAT, head, arms, and trunk segment; HC, healthy control; HGW, handkerchief-guided walking.
著者
木村 淳
出版者
Societas Neurologica Japonica
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.792-797, 2008-11-01
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

日本神経学会は1960年に設立されましたが,当時神経学を学べる施設は,東大,新潟大,九大などに限られていました.僕は,のちに京大総長を務められた平沢興先生の錐体外路系に関する解剖講義に憧れてこの道を志し,インターン修了後すぐ渡米しましたが,1)神経系が人体のもっとも重要な,人間が人間たるゆえんである脳の機能を主要な対象としていること,2)複雑難解にもかかわらず理路整然とした学問で,解剖学の知識に基づいて病巣の局在が可能であること,3)新しい領域で,将来への展望が明るいことなどにも強く魅かれました.半世紀近くを経た今も思いは同じですが,これに加えて分子生物学をはじめとする神経科学分野の目覚しい発展により,病態の確立のみならず以前は対症療法に甘んじていた多くの疾患にも新しい治療法が続々と開発され,4)患者の治る神経内科,が神経学の新たな魅力となり,これは僕達のスローガンでもあります.神経学の国内外の進歩にともない,この分野を目指す若い先生方への期待は日増しに大きくなってきました.わが国の神経学は僕がアイオワ滞在中に飛躍的な発展を遂げ,これに貢献された多くの先達が新しい世代に求めるところは,先生方の個人的な経験を踏まえ,千差万別かと思います.この機会に日米で神経学を学んだ者の一人として,僕の次世代への期待を纏めますと,1)国際的な視野で仕事をする,2)診断に役立つ新しい技術を開発する,3)臨床に直結する基礎研究を展開する,そしてそのすべてを集結して4)患者の治る神経内科をめざすことです.いずれも実現可能な目標ですが,いうはやすく,おこなうは難しの部類です.とくに,実力に見合った国際的な評価を確立するのはわれわれがもっとも不得手とするところで,僕自身の体験でも,海外の学会活動で欧米の学者と互角にわたり合うのはかなり難しく,常に意識的な努力が必要と実感しています.国際学会での論争で,実力は伯仲しているのにいつもこちらに分が悪いのは,主に発表態度の差によるものと考えられます.我が国は儒教の影響もあり,古くから「知るを知らざるとなすは尚なり」の考えが根強く,10を知って1を語るのが良いとされます.その逆にアメリカ人は,幼稚園での「Show And Tell」を手始めに,中学校で習う「Five Paragraph Essay」で鍛え上げられ,1を知って10を語る輩が多いようです.また,日本人は完璧主義ですから,とちっても平気な欧米人とはちがいアドリブの発表が苦手です.英語でも上手く話せなければ,我は黙して語らずと達観している人もありますが,外国語ですからBrokenでも当たり前です.僕の国際性の定義は,1)実力をつけて,あとは対等と自信をもつ,2)知ってることはどんどんいう,3)失敗しても愛嬌と思って気にしない,4)英語は意味がわかればよいので,あえて流暢に喋ろうとしない,ことです.若い先生方がこれからの国際舞台でますます活躍されることを願って止みません.<br>
著者
岡澤 均
出版者
Societas Neurologica Japonica
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.63-72, 2012

ハンチントン病ではハンチンチン遺伝子のCAGリピート伸長により,変異RNAと変異タンパクが産生され,神経細胞の機能障害と最終的な細胞死を誘発する.私たちは20年近く,網羅的アプローチ(オミックス)をもちいてハンチントン病ならびに関連するポリグルタミン病の分子病態を解析してきた.その結果,PQBP1,Ku70,HMGB,Maxer,Omiなどの新たな病態関連分子を同定し,転写,スプライシング,DNA損傷修復という核機能に深くかかわる新たな分子病態が存在することを,機能変化の面から明らかにしてきた.今後,これらのターゲット分子を介した分子標的治療の開発が期待できる.<br>
著者
吉良 潤一
出版者
Societas Neurologica Japonica
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.939-946, 2014
被引用文献数
1

日本初の独立した神経内科を九州大学に設立した黒岩義五郎先生のモットーは,Keep Pioneeringだった.私は1980年に黒岩先生のもとで多発性硬化症研究を始めた.この間,神経科学と免疫科学は驚異的な進歩を遂げ,神経系と免疫系との間の密接な関連性がみいだされ,両者を統合する神経免疫学という新しい学問領域が形成された.神経科学と免疫科学の最先端のコア部分を絶えず取り込み統合していくことで,神経難病の新たなパラダイムシフトが生まれ,未来の医療が拓かれると期待したい.他方,根治療法のない神経難病患者に対しては,1998年に全国に先駆け難病コーディネータを配置した福岡県重症神経難病ネットワークを立ち上げ,重症神経難病患者の長期・短期レスパイト入院先の確保と療養相談にあたってきた.Keep Pioneeringは,明日の医学を切り拓く研究にとどまらない.今いる難病患者へのケアにも取り組み,社会に対して責任を果たす神経内科をめざすことが望まれる.
著者
阿部 康二
出版者
Societas Neurologica Japonica
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1348-1350, 2012

2011年3月11日金曜日の東日本大震災・東北大津波から1年が経過したが,未だ被災地では復興がほとんど進んでいないのが現状である.被災直後は救命処置が主体のはずであったが,地震のみの被害とことなり津波被害のばあいはほとんどのケースがall or nothingで津波に飲み込まれての溺水死か,走り逃げてまったく身体的障害がなかったかに2極分化したことであった.一方,高齢者や認知症,神経難病など多くの神経内科疾患患者さんは災害弱者でもあって,地震や津波などの災害時における避難にはきわめて不利な立場にある.そこで日本神経学会ではIT化推進委員会が中心になって,2012年1月から今災害時の被災地支援意見交換メーリングリスト登録の先生方と共同で「日本神経学会災害支援プログラム」を策定する作業に入っている.その趣旨は今後予想されうる自然災害や人的災害に際して,日本神経学会として神経内科疾患全般の患者さん方への災害時の緊急受入れ体制ネットワークの整備や災害時医療支援チーム派遣の組織化などについて,IT技術も活用して構築することである.具体的には今後想定される災害やそれによる具体的被害,想定される神経内科疾患患者,災害時患者受入れ施設ネットワークの確立,災害時医療支援チーム派遣組織化,関連団体との折衝他について委員会案を作成中である.5月までに委員会案を神経学会ホームページに公開して,会員の皆様や患者さんからも広くパブリックコメントをいただいた上で,5月の学術大会終了後からプログラムに基づいて実際のネットワーク構築作業に入る予定である.本シンポジウムではこれまでの経過報告をさせていただき,参加者の皆様からご意見をいただきたいと考えている.<br>
著者
中島 孝
出版者
Societas Neurologica Japonica
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.872-876, 2009-11-01
被引用文献数
1 2

Anti-disaster measures along with disaster medicine aims at reducing loss of property and life and facilitating grief work of the suffered people. In contrast the care system for patients with intractable disease has the same aim. According to the experiences of two large earthquakes including Chuetsu (2004) and Chuetsu-oki earthquake (2007), earthquake-resistant buildings are necessary for maintaining hospital function as well as reviving community after occurrence of large earthquake. A list of patients living with ventilator and their individual care plan designed for disaster need to be prepared to transport each patient to the hospital at appropriate timing, when electricity and visiting nurse care system are damaged. Satellite telephone is very useful for communicating with such patients and medical teams because telephone connection is limited to only the specific calling number just after occurrence of earthquake.<br>
著者
児玉 知子
出版者
Societas Neurologica Japonica
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1283-1286, 2013
被引用文献数
1

近年,希少性ゆえに治療や医薬品開発が進まない難病領域において,国際連携による病態把握や医薬品開発への動きが高まっている.国内難病対策は1972年の「難病対策要綱」に基づき,調査研究,医療施設整備や医療費負担の軽減,福祉の充実やQOL向上を目指した総合的施策として世界に先駆けて推進されてきた.海外では希少医薬品関連法規の整備を背景に,1989年に米国NIHに希少疾患対策室が発足,欧州でも1999年にEU加盟国の優先課題として国家プランを策定,Orphanetによる疾患・治療ケア・研究開発情報の一元化が推進されている.今後はグローバルスタンダードな患者登録システムの充実,患者組織や製薬企業をパートナーとした海外連携の強化が期待される.
著者
原 直之 大隣 辰哉 西原 伸治 大田 泰正 栗山 勝
出版者
Societas Neurologica Japonica
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.395-402, 2014
被引用文献数
1

特発性脊髄硬膜外血腫16例の臨床分析をおこない,脳卒中と類似した点を検討した.初診時に片麻痺を示す症例が10例(62.5%)で,ホルネル症候群を4例(25%),無痛性の発症を1例(6.3%)みとめた.また激痛発症で迷走神経反射による意識障害をきたし,くも膜下出血様の症例もみとめた.MRI画像が確定診断に有用であり,好発部位は頸髄下部であった.横断像では血腫は,左右どちらかに偏った楕円形が多く,偏在性の脊髄圧迫が片麻痺出現の要因である.発症は活動時に多く,関連要因は,抗血栓剤内服,C型肝炎,慢性腎不全などをみとめた.急速進行例は,緊急手術の適応になるが,保存的治療も可能であり,予後も良好であった.