著者
戸次 加奈江 浅見 真理 欅田 尚樹 児玉 知子
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.262-272, 2021-08-31 (Released:2021-10-13)
参考文献数
48

「持続可能な開発目標 3 」(SDG3)では,保健医療分野に関する評価・モニタリング指標の提示が求められている.本研究では,生活環境関連分野における指標の定義を確認するとともに,一般環境から労働環境までを対象に,WHO報告書から環境リスクが指摘される化合物及び物理的因子に関する国内の文献レビューを行った.その結果,室内寒暖差と死亡率との関連性や,準揮発性有機化合物(SVOC)の室内濃度や湿度環境とアレルギー疾患との関連性,大気中の微小粒子状物質と呼吸器・循環器系疾患との関連性が示唆された.また,指標3.9.2「安全ではない水,安全ではない公衆衛生及び衛生知識による死亡」はTier Iであるが,過去30年間の国内水質事故事例の情報収集等をもとにした水系感染症死亡事例による推計値は,国連指定のコーディングによる報告値よりも極めて低く,WHOのWASH定義疾病コードが開発国の状況を基にした定義となっていることが示唆された.
著者
戸次 加奈江 浅見 真理 欅田 尚樹 児玉 知子
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.262-272, 2021

<p>「持続可能な開発目標 3 」(SDG3)では,保健医療分野に関する評価・モニタリング指標の提示が求められている.本研究では,生活環境関連分野における指標の定義を確認するとともに,一般環境から労働環境までを対象に,WHO報告書から環境リスクが指摘される化合物及び物理的因子に関する国内の文献レビューを行った.</p><p>その結果,室内寒暖差と死亡率との関連性や,準揮発性有機化合物(SVOC)の室内濃度や湿度環境とアレルギー疾患との関連性,大気中の微小粒子状物質と呼吸器・循環器系疾患との関連性が示唆された.また,指標3.9.2「安全ではない水,安全ではない公衆衛生及び衛生知識による死亡」はTier Iであるが,過去30年間の国内水質事故事例の情報収集等をもとにした水系感染症死亡事例による推計値は,国連指定のコーディングによる報告値よりも極めて低く,WHOのWASH定義疾病コードが開発国の状況を基にした定義となっていることが示唆された.</p>
著者
竹原 健二 松田 智大 児玉 知子 渡會 睦子
出版者
日本エイズ学会
雑誌
日本エイズ学会誌 = The journal of AIDS research (ISSN:13449478)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.215-220, 2008-08-20
参考文献数
17
被引用文献数
1

目的: HIV感染者増加を抑制すべく, HIVスクリーニング検査の普及が図られているが, 十分であるとは言えないのが現状である.HIV検査に関する先行研究では, 受検者を対象に受検動機や検査の実施体制について検討したものは見られるものの, 一般集団を対象にした実態調査は十分行われていない.本研究では, 若者のHIV検査に対する認識と利用状況を把握することを目的に調査を実施した.<BR>方法: 本研究は2007年6月から7月に東京都近郊の5つの大学に所属する大学生の男女271人を対象とした.そのうち十分な回答が得られた233人を分析対象とした.調査は対象者がWeb上の調査票にアクセスし, 回答してもらう方法を用いた.調査項目は, Misovich, S. J.らが開発したスケールを用いた.<BR>結果: 献血時にHIV検査が同時にできると考えている者が約70%であった.HIV検査によって感染を発見できるようになるまでに「ウインドウピリオド」があることを十分に理解していないものは約40%であった.HIV検査を受けられる場所を正しく挙げることができた者は男女ともに約75%であった.今までにHIV検査を受けたことがある者は3.596であった.<BR>結論: 本研究を通じて, 献血時に同時にHIV検査ができるという誤った認識の者も多く, 適切な情報提供, および受検行動につながるような取り組みを強化する必要があることが示唆された.
著者
児玉 知子 冨田 奈穂子
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.105-111, 2011-04

近年,希少性ゆえに治療や医薬品開発が進まない難病疾患領域において,国際的なネットワークを構築することで病態把握や医薬品開発を促進しようとする動きが高まっている.欧州では1999年以降,EU加盟国各国政府共同の希少疾患対策が進められており,特にオーファネットOrphanetを中心とした疾患・研究情報の一元化が注目される.米国では欧州や開発国を含めた世界市場をターゲットとした研究戦略が展開されており,今後は我が国の研究開発においても世界的な動きを視野に入れた中長期的プランが必要と考えられる.また,患者が組織化されにくい希少疾患においては,多くの希少疾患患者を統括した巨大組織が形成され,患者権利の保護や治験に係る有害事象情報公開等のあり方について,行政,医療提供者,研究者らのパートナーとして重要な役割を担いつつある.この気運により,これまで不可能とされてきた難病の本格的治療に光明がさすことが期待される.
著者
児玉 知子
出版者
Societas Neurologica Japonica
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1283-1286, 2013
被引用文献数
1

近年,希少性ゆえに治療や医薬品開発が進まない難病領域において,国際連携による病態把握や医薬品開発への動きが高まっている.国内難病対策は1972年の「難病対策要綱」に基づき,調査研究,医療施設整備や医療費負担の軽減,福祉の充実やQOL向上を目指した総合的施策として世界に先駆けて推進されてきた.海外では希少医薬品関連法規の整備を背景に,1989年に米国NIHに希少疾患対策室が発足,欧州でも1999年にEU加盟国の優先課題として国家プランを策定,Orphanetによる疾患・治療ケア・研究開発情報の一元化が推進されている.今後はグローバルスタンダードな患者登録システムの充実,患者組織や製薬企業をパートナーとした海外連携の強化が期待される.