著者
志賀 裕二 金谷 雄平 河野 龍平 竹島 慎一 下江 豊 栗山 勝
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.418-423, 2016 (Released:2016-06-22)
参考文献数
26
被引用文献数
3 5

症例は53歳の女性である.不眠とうつ病で発症し,進行性認知機能低下,具体的な幻視,パーキンソン症状,イオフルパンSPECTで線条体への著明な集積低下,IMP-SPECTで後頭葉の脳血流低下などを認め,レヴィ小体型認知症(dementia with Lewy bodies; DLB)と診断した.亜急性に舌突出と咬舌が出現し救急入院した.レボドパ,ロチゴチン,ロピニロールの高容量投与で,ドパミンD1受容体が長期に刺激状態で,急激な増量で生じた舌ジストニアと診断した.また声門閉鎖を伴う喉頭ジスキネジアによる呼吸困難も出現した.抗精神病薬による薬剤過敏性およびレボドパ過剰投与などが関連した病態と推定され,致死的にもいたる症例であった.
著者
米田 誠 篁 俊成 栗山 勝
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

慢性甲状腺炎(橋本病)に伴い,自己免疫的機序で様々な精神・神経徴候を呈する疾患が橋本脳症として近年注目されている.本研究代表者らは,本疾患に特異的な診断マーカー(抗NAE抗体)を見出し,初めて血清による診断が可能となった.現在までに, 1350件以上の解析を行い,臨床・免疫学的特徴を明らかとし,早期診断と治療に寄与してきた.また,この抗体を含む血清や髄液が及ぼす小脳のシナプス伝達やプロテオーム(蛋白質)の変化などの病態を明らかとした.
著者
竹島 慎一 音成 秀一郎 姫野 隆洋 原 直之 吉本 武史 高松 和弘 高尾 信一 栗山 勝
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.791-797, 2014-10-01 (Released:2014-10-24)
参考文献数
30
被引用文献数
5 2

10年間で成人無菌性髄膜炎,男性203例,女性157例を経験した.毎年夏~秋に,数回の小流行をみとめた.2012年流行期の21例中17例(81%)で起因ウイルスを同定した.試料の同定率は,便71%,髄液67%,咽頭拭い液42%,血清5%であった.すべてエンテロウイルスで,エコーウイルス(E)9型9例,E6型4例,コクサキーA9型1例,3例はエンテロウイルス属まで同定できた.E9型とE6型の臨床的差異はなかった.10年間でムンプス髄膜炎14例,水痘・帯状疱疹ウイルス髄膜炎8例,単純ヘルペスウイルス髄膜炎5例をみとめたが,散発的発症であった.流行性のものはエンテロウイルスが主であり良好な経過であった.
著者
竹丸 誠 竹島 慎一 原 直之 姫野 隆洋 志賀 裕二 竹下 潤 高松 和弘 野村 栄一 下江 豊 栗山 勝
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.377-384, 2018 (Released:2018-06-27)
参考文献数
30
被引用文献数
2

可逆性脳血管攣縮症候群(reversible cerebral vasoconstriction syndrome; RCVS)11例を報告する.男性2例,女性9例で平均年齢47.9 ± 14.1歳で若年者に多かった.雷鳴頭痛と言える強度の頭痛は64%,全身けいれん27%,運動麻痺36%であった.脳内病変の合併は,脳表限局のくも膜下出血63%,皮質下出血9%,可逆性後頭葉白質脳症45%で発症初期から認めた.脳梗塞は45%に,発症後1~3週間目頃に起った.脳血管攣縮は発症1ヶ月目頃から改善傾向を認めた.誘因は,産褥,片頭痛既往,輸血,急速な貧血改善,腎不全,入浴,脳血管解離の合併などが認められた.発症時の血圧異常高値を55%に認めたが,誘因なのかは確定的ではなかった.
著者
志賀 裕二 下江 豊 千種 誠史 楠 進 森 雅裕 栗山 勝
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.385-389, 2018 (Released:2018-06-27)
参考文献数
19
被引用文献数
1

症例は28歳の男性.サイトメガロウイルス(cytomegalovirus; CMV)感染後に四肢しびれ感,両手の脱力が出現し,末梢神経障害を認めた.血清IgM抗CMV抗体,IgM抗GM2,抗GalNAc-GD1a抗体が陽性で,脳脊髄液で蛋白細胞解離を認め,神経伝導検査で脱髄型ニューロパチーを示した.CMV感染後急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(acute inflammatory demyelinating polyneuropathy; AIDP)と診断し,免疫グロブリン大量療法で軽快退院した.神経伝導検査は4ヶ月後に正常化した.CMV感染後AIDPで報告されているランビエ絞輪蛋白モエシンに対する抗体が治療前血清で陽性を示し,4ヶ月後,神経伝導検査が正常化するとともに同抗体が陰性化し,病態への関与が考えられた.
著者
竹下 潤 小林 宏光 下江 豊 曽根 淳 祖父江 元 栗山 勝
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.303-306, 2017 (Released:2017-06-28)
参考文献数
10
被引用文献数
5

症例は65歳の男性.全経過約3時間の一過性の健忘が出現した.3年前にも同様の症状が出現した.認知症状は認めず.神経学的には,小脳失調や不随意運動は認めなかったが,神経伝導検査で末梢神経障害を認めた.MRI拡散強調像で,前頭葉から頭頂葉にかけて皮質下の皮髄境界域に高信号を認め,皮膚生検で神経核内封入体を多数認め,成人発症の神経核内封入体病と診断した.家系内には類症者はおらず,孤発例である.健忘は一過性全健忘と極めて類似し,辺縁系障害が推測された.
著者
竹島 慎一 吉本 武史 志賀 裕二 金谷 雄平 音成 秀一郎 姫野 隆洋 河野 龍平 高松 和弘 下江 豊 栗山 勝
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.630-636, 2015 (Released:2015-09-11)
参考文献数
28
被引用文献数
3

2004年~2014年で,成人無菌性髄膜炎365例中,ムンプス髄膜炎は13例(3.6%,29.8 ± 7.0歳)であった.季節性はないが,地区のムンプス流行に一致した発症率であった.耳下腺腫脹は8例(61.5%),精巣炎は男性7例中2例(28.6%)に認めた.重症度,転機を含めエコーウイルス髄膜炎に類似するが,髄液の単核球比率が高かった.発症前にムンプス患者との接触は8例(61.5%),ワクチン接種は1例,非接種9例,3例は確認できなかった.抗ムンプス抗体価から判断して,6例は初感染,2例は再感染が疑われ,初感染の高齢化が認められた.ワクチン接種歴のある症例は二次性ワクチン不全と思われた.
著者
原 直之 大隣 辰哉 西原 伸治 大田 泰正 栗山 勝
出版者
Societas Neurologica Japonica
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.395-402, 2014
被引用文献数
8

特発性脊髄硬膜外血腫16例の臨床分析をおこない,脳卒中と類似した点を検討した.初診時に片麻痺を示す症例が10例(62.5%)で,ホルネル症候群を4例(25%),無痛性の発症を1例(6.3%)みとめた.また激痛発症で迷走神経反射による意識障害をきたし,くも膜下出血様の症例もみとめた.MRI画像が確定診断に有用であり,好発部位は頸髄下部であった.横断像では血腫は,左右どちらかに偏った楕円形が多く,偏在性の脊髄圧迫が片麻痺出現の要因である.発症は活動時に多く,関連要因は,抗血栓剤内服,C型肝炎,慢性腎不全などをみとめた.急速進行例は,緊急手術の適応になるが,保存的治療も可能であり,予後も良好であった.